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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2021/02/17(水)
第202回【恋愛編】「何が女性蔑視か分かってない!」
【Q】
五輪組織委員会の森会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」っていう発言にはびっくりしました。案の定辞任になっちゃって。辞任表明の時には「女性を蔑視しているつもりはない」みたいなこと言ってましたけど、何が蔑視なのか分かってないんだなって思いました。彼ともその話で盛り上がって、その流れで結婚の話になったんですけど、その時彼から飛び出した言葉がなんと「俺も家事手伝うよ。育児だってやれると思う。必ず幸せにするから」。「はあ?」ってなりました。それって「私が家事の中心で彼が補助」みたいな言い方ですよね。だいたい、彼に幸せにしてもらおうなんて全然思ってないし…。家事もやらない「お〜い、お茶」男よりはましかもしれないけど、何が女性蔑視か分かってない1人なんだなって。要するに家庭の中心は男、家事は女って考え方で男女平等じゃないんですよ。結婚も考えてはいるんですけど、ちょっと迷っちゃいます。

【A】
全世界の女性が共感したという小説「82年生まれ、キム・ジヨン」をお読みになりましたか?
現代女性が抱える重圧や絶望を社会問題を織り交ぜながら鮮明に描いています。2016年に韓国で刊行されるとすぐ女性達の共感を呼び130万部を突破し、日本、イギリス、フランス、スペイン、イタリアを含む16カ国で翻訳されています。日本でも発売2日目に重版が決定し映画化もしました。結婚出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨン。社会から切り離されていく孤立感、自分の存在意義を見出せない苦悩に読者や映画を見た観客は自分たちを重ね合わせたと言います。

私が一番印象に残ったのは夫がジヨンに「僕たち子どもを持とうよ」と言う箇所です。ジヨンは夫があまりにも軽々しく言うので「あなたはまるでデパートへノルウェー産のシャケを買いに行くように言うけれど…」と言い、夫は「僕だって手伝うよ、家事も育児も」と答える。彼女は「私たちが子どもを持つことであなたは何か失うものがある?」と尋ねます。そして「私はほとんど全てのものを失うのよ。今まで築いてきたキャリアも人間関係も。そしてこれからの未来も時間も。自分の健康さえ失うかもしれないのよ。あなたは何も失う物はないでしょ」と言うと夫は「僕だって失うさ。仕事の後、仲間と飲んでくる時間や人間関係。その代わりに赤ん坊を寝かしつけたりフロに入れたり、手伝うよ」みたいなことを云うんですよね。

これは私の記憶なので脚色があるかもしれませんが『手伝う』という言葉があなたと同じように気になって、読んだ後2年経った今も心の中にわだかまっています。あなたも彼の「手伝う」を「彼は家事・育児の補助」とちゃんと正しく受け止めていますよね。家事や育児の中心は女性。男は女を幸せにすると言うのに女は決して「私はあなたを幸せにしてあげる」とは言わないのに…。

森元会長の女性蔑視は底が深く「みなさんはわきまえていらっしゃる」という言葉からは自分にとって都合のいい女性かどうか選別できるという特権意識がうかがえます。あなたが迷っていらっしゃるというのは、とても素晴らしい感覚です。私の研究所へいらっしゃる方の中には「中学生の兄と一緒の部屋だった時、今考えれば性虐待をされていて母に泣いて訴えても『女の子でしょ、我慢しなさい、お母さんも我慢したんだから』」と言われた方もいます。
会合では笑いが起きたとのこと、「差別意識を支える組織や社会構造を変える必要があります。まず、あなたの気持ちを彼に伝え、話し合ってみてください。

(文:大関洋子)

2021/01/29(金)
第201回【職場編】「“外で会ってよ!”と誘われて」
【Q】
3年前離婚して、男性相手の接客業をしながら、シングルで6歳と4歳の子どもを育てています。これまで生活費に困ることなく何とかやってきたんですけど、緊急事態宣言で客足が減って、以前の4分の1くらいの収入になってしまいました。このままお店に出ていても、以前と同じような収入に戻るか分からないので、お店をやめてスーパーや飲食店でのパートに変わろうかとも思うんです。でもパートの収入だけでは生活出来ないんです。状況を話したわけじゃないんですけど、お店の様子から状況を察したのか、何度か指名してくれていた男性に「外で会ってよ!」と誘われました。今まで仕事とプライベートはきっちり分けてきたので、そういう誘いがあってもすべて断ってきました。でも、それで生活出来るのなら、ありかなって思うようになりました。ただ、これまで自分が越えずに来た一線を越えてしまうと、これまでの自分が壊れてしまいそうでとても不安です。

【A】
売買春の人類的起源はあまりハッキリはしていないのですが、その一番古い例のひとつは、紀元前の古代オリエントにおける寺院売春です。それには、見知らぬ男たちに身を任せる女性が宗教的にあがめられた神聖売春と、奴隷が売春による収入を神殿に収める2種類の形があったとされています。しかしこれが現代の産業化され、同時に非合法化された売買春と同じ行為とは言えないという見方もあります。

日本での売買春が成立したのは10世紀の初め頃、「遊女」や「白拍子」という歌舞音曲の奉仕をして、支配層の裕福な人々から報酬を得ることから始まりました。近世になると江戸吉原に遊女達が集められ文化サロンとしての華麗な文化が花開いた一方、農村の貧しい女性たちがわずかな金銭を親に渡すだけで売買され、過酷な労働条件の中で性病をはじめとする病気になっても、ろくな手当もされず多くの女性たちが命を落としたり、絶望して自ら命を絶つ遊女も多かったそうです。

近現代でも、第二次世界大戦後、米兵相手の売春を整備するために組織された「赤線」の設置は1956年に売春防止法で一応の流れに終止符を打ったことになっていますが、1990年以降、売買春をめぐる議論は、成人女性の自己決定に基づく売春を犯罪視する根拠ではないとする意見も台頭し、それをセックスワークとして非処罰にすべきだという声も出てきました。しかし売春防止法は売る女性のみ罰し、買う男性をとがめないという極めて不合理なもので「性道徳の二重基準」と女性を「性欲処理の対象」とする明らかなジェンダー・バイヤスがあります。

コロナ禍の中で幼いお子さんを2人育てる困難さはお察しいたします。これまで性を売買して生活の糧を得ることに一線を画していたとは言え、あなたの人格が守られていたとは言えないのではないですか?今回、特定の男性と外で会うことで収入を得ることになると増々、仕事とプライベートの区別をつけづらくなり、「自分が壊れてしまいそう」とおっしゃっています。当然、あなたのような女性に行政、国がしっかりとした支援をすべきですが、企業や自粛要請のかかった飲食店の経営者には支援金が出されるのに、風俗営業店や従業員、中でも性処理を直接の仕事としている方にはまったく支援がありません。とても理不尽なことですが、このことをきっかけに、行政の窓口や支援団体(Grow As People)も開設されていますので、そういったところに相談し、スーパーや飲食店のパートに仕事を切り替え、頑張ってくださることを願っています。
(図解雑学「ジェンダー」海老原暁子他参照)

(文:大関洋子)

2021/01/14(木)
第200回【子親編】「父が母に手を挙げた」
【Q】
2度目の緊急事態宣言が出され、私たち夫婦も時差通勤や在宅ワークが増えました。子どもたちは学校があるので、夫と2人で過ごす時間を楽しめるかなあと思ったんですけど、お互い相手の一挙手一投足が気になって、イライラ、ブリブリ。コロナ離婚なんていう言葉が出来るくらい離婚の危機に直面している夫婦も多いようで、私たちも例外じゃありません。とはいえ、私たちは感染対策をきっちりして外に出られないわけじゃないので、たまには息抜きも出来るんですけど、深刻なの両親です。80歳を過ぎている両親は外出が難しい。2人で生活しているので、テレビでも観て家で過ごすように言ってるんですけど、最近の番組って若者をターゲットにした番組ばかりで父と母が楽しめるような番組なんて相撲くらいしかありません。先日、母から電話があり来てくれって言うから行ってみると、顔に痣があるんです。父に殴られたって言うんですよ。父は母に手を挙げるような人じゃなかったので驚きました。どこか気持ちのやり場をと思うんですが、この状況でどうしたらいいのか困っています。

【A】
まずはじめに気になったのは、実家のお父様は今までお母様に「手を挙げるような人じゃなかったので驚きました」とあなたがおっしゃっていることです。新型コロナの感染拡大防止のために緊急事態宣言が出され、80歳を過ぎたご両親が外出もままならず、テレビでも観るしかない毎日で、お父様がイライラしてお母様の顔に痣ができるほど暴力を振るった、と心配してのご相談です。

このコロナ禍の緊急事態宣言によって日常生活が大きく変わったのは確かですが、環境の変化がキッカケで、もしかしたら「認知症」の症状を発症したのかもしれません。認知症の原因や治療法は未だ解明されていませんが、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れ、物事を理解する力や判断する力がなくなって、社会生活や日常生活に支障が出てくるようになる症状です。年齢とともに、物覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりします。こうした「物忘れ」は脳の老化によるものです。

認知症は「老化による物忘れ」とは違い、放っておくとだんだん進行して「忘れたことの自覚がなく」「体験したことを丸ごと忘れる」ようになります。お父様のように今までお母様や子ども達に暴力を振った事がない穏やかな人柄だった人が、感情のコントロールが効かず急に理不尽に暴力的になったり、「もの盗られ妄想」に陥って、自分の財布や大事な物を盗られたと言ってお母様を責めたり、ひどくなると徘徊をしたりするようになります。アルツハイマー型にしてもレピー小体型認知症にしても「誰もがなり得る病気」ですが、治る認知症もありますし、早期発見、早期治療で進行をかなり遅らせることもできます。2018年の調査では65歳以上の約7人に1人は認知症(厚労省研究班)と報告されています。

受診もお父様が嫌がるのであれば、はじめから神経内科や物忘れ外来ではなく、かかりつけのお医者様に相談するのがいいでしょう。医師の診断にはふだん本人の様子を知っている家族の話が役立ちますので、お母様とあなたが付き添って、「最初の異変(お母様に暴力を振るった)はいつ頃か?」「物忘れはないか?」「この半年の間の様子」「他の病気や服用中のお薬」等を整理してメモしておくといいでしょう。
診断の結果、「認知症でない」ということであれば、ご両親の言い分をよく聴いて、お父様に「暴力はいかなる理由があってもダメ」と話してください。

(文:大関洋子)

2020/12/24(木)
第199回【親子編】「娘の帰宅時間が…」
【Q】
高校2年生と中学2年生の娘がいます。上の娘には同じ学校に通うボーイフレンドがいて、たまにうちに連れてきたりもしていました。とても真面目で優しい少年なので、私も夫も認めていて、夕飯を一緒に食べたりもしていたんです。コロナ禍で学校もいろいろ制約を受けているし、当然のことですけれど、うちに連れてくれば私も夫も強い調子で怒るので、連れてこなくはなったんです。ところが、外で遊びだして、かなり遅い時間まで帰宅しなくなってしまいました。今の状況が分からないような2人ではないと思うので、先日娘にはよく話をしたんですが、その後も帰宅は遅いままです。そんな姉の様子を見て、下の娘もどんどん帰宅時間が遅くなってしまっています。

【A】
人は思春期に入ると初恋を経験します。この時期は性ホルモンの分泌が盛んになり、身体的な変化や性衝動がアイデンティティの確立を脅かすことも珍しくありません。アイデンティティという言葉は、日本語では「自我同一性」「自己同一性」と訳され、20世紀にエリク・エリクソンという心理学者が作り上げた概念と言われています。
「自分は誰であるか? Who am I?」「どこへ行こうとしているのか? Where am I going?」とか、「自分が存在していることの認識や価値」「自分らしさや個性」「自分がどういう性格でどんな人間なのか」等々に迷い、考え悩むのが、あなたのお子さんたち、中学2年くらいから大学くらいの年齢です。

エリクソンは、「人の発達には、それぞれの年代に「発達課題」と呼ばれる、乗り越えることで人が精神的に発達し、幸福な人生を歩むことが出来る課題がある」と8つのステージに分け課題を指摘しています。
このような急激な心身の発達の中で経験する恋愛は、多くの場合、思うように実らず終わりがちです。お互いにはまだアイデンティティを確立していないため、相手からよく思われたいと強く思ったり、自分に対する評価が気になって関係が長続きしないことが多いのです。

しかし、こうした恋愛と失恋がアイデンティティの確立を促すことになり、心身共に成熟した大人へ成長するきっかけとなります。たとえ傷ついても、健全な発達過程には大切な経験となり、自他の欠点も認め合い、精神的に支え合える誠実な人間関係を築けるようになっていきます。
ただ、上のお子さんのように家で会っているということになると、現在のコロナ禍で大きなリスクを背負うことになり、万一感染でもすると2人のお子さんにはほとんど症状がなくても、親であるあなた方夫婦、同居の親族に高齢の方や持病のある方があれば命の危険があることになります。
やみくもに家で会うことを叱っても、思春期の子どもたちにとっては、かえってそれが刺激となりお互いを求め合うようになってしまうこともあります。少年は真面目で優しい子だとのこと。お子さんと2人に丁寧に今の逼迫した医療状況や感染の拡大について、出来ればお父さんも含めて話し合い、会う回数と時間を減らして自宅で会うルール作りをする。下のお子さんにもその様子をきちんと見せるようにしてはどうでしょうか?

(文:大関洋子)

2020/12/08(火)
第198回【夫婦編】「“この方が楽”と思ってしまっている私」
【Q】
結婚して5年です。子どもがいないので、私も夫も会社勤めをしています。コロナの影響で、2人ともたまに出社はしますけど、在宅ワークが中心です。コロナ前と比べると一緒にいる時間は増えたんですけど、リズムがすっかり狂ってしまって、なんだか落ち着かないんです。最初のころは一緒にいられることを単純に喜んでいたんですけど、長くなるとお互いに相手の存在がうっとうしくなってきて、夫は毎晩ペットの犬と一緒に寝るようになってしまいました。今では部屋も別々です。以前の私なら、そういう状況を寂しいと思っていたと思うんですけど、今は“この方が楽”と思ってしまっているんです。

【A】
昔々、原始時代は、男女が気ままに求婚する「共同婚」が行われていて、男が女の家に通う「妻問婚」の形態に発展していったと考えられています。古墳時代には、この「妻問婚」が行われていたようで、その後書かれた古事記や日本書紀、万葉集などにも「ツマドイ」の語が見られます。
妻問婚は、男が女の家の窓や戸の隙間から呼んだり、男の求婚歌に女が答歌するなどの方法で行われる「自由恋愛」でした。あの有名な竹取物語も何人もの貴族の男性が、かぐや姫の「婿」になろうとしてあらゆる手段を用いて「よばい」つまり「求婚」(呼ばい)を試みています(後に「よばい」は「夜這い」という風習につながっていきますが)。

しかし、この求婚(よばい)によって結婚が成立しても、夫婦は「別居」でした。子どもが生まれると、生まれた子は母のもとで育ち、その家の財産は女性が相続するという母系氏族制が奈良時代、平安時代と続きますが、鎌倉時代、武士の勢力が強くなり、「嫁取り婚」、家と家の結婚が現れ、母系家族の形が崩れていきます。それまでの長い歴史の中で、女性は生まれ育った実家で比較的自由に生活したり子育てをしたりしてきたと思われます。通ってくる男性、夫のことが嫌になれば門を閉ざし、会わないことも出来ました。もちろん、男の方も嫌になって足が遠のくこともあるわけですが、女性は経済的にも精神的にも実家に守られているので、もし男が通ってこなくなっても打撃は少なくてすみます。

さて、あなたは夫と寝室も別になり、彼はあなたの代わりにペットの犬を抱いて寝ている。はじめはそれを寂しいとも思ったけれど、今は“この方が楽”と思ってしまっている。そして、そう思う自分が「いったい夫のことを愛しているのか」、そしてその逆も心配になってご相談なさっているんですよね。
千五百年も昔の「妻問婚」の話をしましたが、戦いが常に行われ、武士、男性の力が強くなった鎌倉時代以降は「嫁取り婚」になり、女系制が崩れ、女性は夫や夫の親族の顔色をうかがって、ビクビクオドオド暮らすことが多くなりました。あなたは「妻問婚」で言えば、夫が訪れてこなくなり、妻もその方がのびのび楽に暮らせているということですよね。

コロナ禍での生活は、これまで経験したことのない生活なので、心がついて行くのにも時間がかかります。これまでは、仕事の時間は別々の生活で、眠っている時間を除けば、夫婦がお互いに相手に関わる時間はほんのわずかでした。夫婦の関係だけを見れば、仕事をしている時間も自分の時間(プライベートな時間)だったわけです。それが少なくなり息苦しさを感じる人も増えています。2人にとって最も良好な距離感はどれくらいの距離感なのか、よく話し合ってください。話し合っても納得がいかないのであれば、一緒に生活するのは難しいかもしれませんね。


(文:大関洋子)

2020/11/19(木)
第197回【恋愛編】「実際に会って肌と肌が触れ合わないと…」
【Q】
私は医療関係の仕事をしています。2年前、彼が私の勤めている病院に入院したことで知り合いました。ドラマとかではよくあるパターンですけど、実際は少ないんです。医療関係の人は、医療関係の人と付き合って結婚っていうのが多いので。患者さんとは話す機会も少ないし、すぐ退院しちゃうので、付き合うとこまでいかないんです。休みも合わないし…。私の場合も、彼はエンジニアでデートの時間を作るのが難しかったので、私が休みの時に彼の家に泊まりに行っていたんです。でもコロナ騒動で…。最初、彼は「おいでよ」って言ってたんですけど、医療現場の感染リスクが高いことがわかると、「おいでよ」のトーンがだんだん下がって、電話やラインが多くなったんです。私も職業柄絶対に感染できないし、最低限の休みしか取れなくなっちゃったんで、都合がよかった面もあるんですけど、会いたがらないっていうのは、距離が遠くなったってことですよね。電話で話しても、お互いに仕事の話ばっかり。2人の将来の夢みたいな話が出来なくなったんです。やっぱり、実際に会って肌と肌が触れ合って、相手を身近に感じられないと気持ちが離れちゃうんですかねえ?今でも彼のことは大好きだし、彼もそう思ってくれてるとは思うんですけど…

【A】
「精神0」という映画(想田和弘監督)に寄せて、映画ライターの月永理絵さんはこう書いています。「顔を寄せ合い対話すること。手を重ね合わせること。それがどれほど貴重で脆いものであるかを、私たちはついに知ってしまった」(5/1朝日新聞夕刊)と。

この映画は、精神科診療所の引退間近の老医師、山本昌知さんを撮ったドキュメンタリーで、前作の「精神」という映画(2008年)の第2弾として発表されたものです。長年にわたって精神医療に携わってきた山本医師が引退を決意し、その後の人生を認知症を患う妻とともに歩み出そうとする姿を、妻、芳子さんとの愛の形にも迫って記録した観察映画です。精神科診療所では患者、家では認知症を患う妻の声に、根気よく耳を傾ける老医師の姿から映画ライター、月永理絵さんは、人の尊さや信頼も、生きることの喜びも見つめ合い、聴き、手を当てて、そういう行為の積み重ねの中でしか生きられないと感じたのでしょう。

昔から「手当てをする」という言葉は、医者や看護師など、医療従事者の専売特許のように使われていますが、痛いところへ「手を当て」てもらうだけで痛みが軽く感じられた経験は誰でもあると思います。小さい子どもが転んで痛がって泣いている時、お母さんやおばあちゃんが、痛い場所辺り(辺りでいんです)を撫でたりしながら「痛いの痛いの飛んでけっ!」と2、3回やると、それまで大声で泣いていた子どもがすっと黙るのを見ますよね。

「コロナ」という壁があってもそれをなんとか克服して、たとえあなたが医療関係の仕事に就いている感染リスクの高い人だとしても、むしろだからこそ不安を「手当て」して、不安を少なくする工夫をしてこそ、本当の恋人、愛しているという証拠なのではないですか。確かに、2人が抱き合えば完全に濃厚接触者。どちらがどちらに感染させても大変なことです。ですから、肌と肌を触れ合って会うことが少なくなるのは仕方のないことなのですが、あなたの場合、「電話で話しても、お互いに仕事の話ばっかり」と不満げですよね。

彼のエンジニアとしての話、自分の世界と違う話には興味がわきませんか?
「2人の将来の夢みたいな話」が出来ないと嫌ですか?
今、離れていなくてはならないからこそ、電波に乗って流れてくる彼の「声」に耳を当てているだけで嬉しく「愛」を感じられませんか?
電話は直接「耳」を通して身体の内面に入るので、とても「愛」を感じやすいものです。
今の状態を受け入れられないのであれば、あなたと彼は別れた方がいいかもしれません。

(文:大関洋子)

2020/11/10(火)
第196回【職場編】「よっしゃー、ゲットー!」
【Q】
今の会社に勤めて3年、何人かの男性に興味は持っていたんですけど、自分から声をかけることが出来ないでいるうちに、肉食系女子に相手をさらわれるという繰り返しでした。もちろん、自分から声をかけられなくても相手から声をかけられるように色々手立てはしたんですけど、結局自分から声をかけた方が勝ちなんですよね。ところがコロナで一変、仕事にかこつけて狙った男子とオンラインで話が出来るようになりました。他の人に見られる心配はないので、派手目な服と派手目な化粧、バーチャルデートですね。それが見事成功して、デートに誘われたんです。数回のデートを経て、ホテルにも行きました。「よっしゃー、ゲットー!」って思ってたんですけど、先日久しぶりに女子会をしたら、そのうちの1人が私が付き合い始めた彼とホテルに行ったって自慢げに話したんです。しかももう1人いるらしいんです。私以外の2人は、遊び相手の1人ということみたいで…。私は彼氏をゲットしたと思っていたんですけど、「彼が私を引っかけた」っていうことなんですよ。やっと出来た彼氏を離したくないけれど、彼が遊んでいるだけなら私も遊びって割り切っても付き合うか、それとも彼とまっすぐ話しをしてみた方がいいか迷ってます。

【A】
オスができるだけ多くのメスを手に入れようとし、メスが注意深くオスを選ぶというのは、動物一般に見られる傾向です。「進化」という視点から考えると動物個体が生きている究極の目的は、自分の遺伝子を次の世代に残すことです。オスは一度に多くのメスの卵を受精させられるだけの精子を作ることができるので、多くのメスと交配すればするほど多くの子をつくり自分の遺伝子を残すことができます。(科学でわかる男と女の心と脳 麻生一枝 参照)メスはどんなに多くのオスと交配しても、できる子の数は自分のつくる卵の数より多くはなりませんし、妊娠期間中と授乳中も子はつくれないので(排卵がないことが多い)、メスはよい遺伝子を子どもに伝えられるような優秀なオス、食べ物や隠れ場所など子どもが育っていくのに必要な資源をたくさんもったオスを注意深く選びます。

しかし、これは「進化生物学」や「動物行動学」と呼ばれる「生物学」の分野でヒトを含む色々な動物の行動に説明を与えるだけであって、「善悪の判断」を下すわけではありません。「祖先から受け継ぎ遺伝子に組み込まれているんだからやって当たり前」と考えるのはとても危険な考え方です。私たちヒトも長い歴史の中で自分の遺伝子を、より多く残すために、浮気や虐待、はては殺人まで犯して生き残ってきたわけですが、男女や人種などの生物学的な違いは、男女差別やユダヤ人虐殺などを含む人種差別を正当化するのに使われたという苦い歴史を持つのです。

あなたの「ゲット」したと思った男性は、文明社会の中でまるで原始時代に生きているかのように、本能の赴くままあなたを含む3人、もしかするともっと多くの女性と性の行為を持っています。勿論、彼は「種の保存」を目的としているわけではなく「快楽」のためにです。あなたは、「彼が私を引っかけた」「彼が遊んでいるだけなら、私も遊びって割り切っても付き合うか」「それとも彼とまっすぐ話をしてみた方がいいか」と迷ってのご相談ですが、「まっすぐ」何を話そうと思っているのでしょうか?
「私とは遊びですか?」それとも「他の2人と私は違うんですか?」と聞くんですか?

あなたが真っすぐに向きあっても、今のところ彼は「遊び」のつもりなので、無駄な努力になるかもしれません。また、あなたのその真っすぐな態度にびっくりして「遊び」ではなくなって真剣にあなたとだけ交際するようになることもないとは言えません。勇気を出してやってみてはいかがですか?結局あなたは「遊び」では嫌なのでしょうから。勿論「遊びにしてはめんどくさい相手だ」と思って切られることも覚悟してくださいね。

(文:大関洋子)

2020/11/02(月)
第195回【子親編】「義母の今後をどうする…」
【Q】
結婚して、5年で両親と同居して、25年になります。その間、2人の子どもは独立、私の両親と義父は他界して、今は私と夫、義母の3人で暮らしています。義父は軽度の認知症を患っていましたが、手がかかるほどではなく、5年前、家で亡くなりました。義母は認知症はありませんが、膝と目が悪く、やや生活が不自由です。義父の介護は私と義母の2人だったので、負担は感じなかったのですが、義母は私がすべて面倒を見なければならないので、相当負担になると感じています。義母は、私に面倒を見られるのは嫌という気持ちもあるようで、「施設に入ろうかな」と言っているし、私も施設に入ってくれればと思っているんですけど、夫が「親父を家で看取ったんだからお袋だって家でいいだろ」と言うんです。私には「施設に」と言う義母も、息子に「家で」と言われると「家で死ねたらね」と、私に言うのとは全く違うことを言うんです。

【A】
女の一生は「アンペイドワーク」と呼ばれる「賃金が支払われない仕事」に始まり、それに終わると言われています。介護を受ける側も、する側も圧倒的に女性が多いという現実があります。嫁として、妻として、娘として介護を引き受ける人の7割以上が女性だという統計は、統計の残っていないころからそうだったのでしょう。

厚生労働省「H12 介護サービス世帯調査」によれば、主な介護者は女性が72.2%。そのうち娘が母を、または嫁が夫の母を介護する場合が42.9%。娘が父を、嫁が夫の父を、妻が夫を介護する場合が29.2%。主な介護者が男性という割合は19.5%で、男性が妻や実母を介護するのがそのうちの17.3%で、男性が自分の父親を介護する割合は、わずか2.2%です。「介護問題」は「女性問題」であると言われるゆえんです。

介護者の内訳を見ると「配偶者」「子」と並んで、「子の配偶者」つまりあなたのような立場の方が約3割、すなわち嫁が介護をするということです。娘が老親を引き取った場合は、自分で世話をしますが、息子は妻に介護を丸投げしているというのが、ずっと続いている実態です。

こうした状況の中で介護を担う女性たちの負担や不満は、単に肉体的なものだけではありません。無給の労働である家族介護では、女性は経済的に自立することが出来ず、その上、女性が他人の世話をするのは当たり前という考え方が根強くあるため、苦労は理解してもらえず、感謝すらしてもらえません。妻や女性の兄弟姉妹に親の介護を押しつけておいて、遺産相続や葬儀に関わる権利だけは主張する身勝手な男性も多いのです。

夫の母の介護については、まさにこの日本社会のゆがんだ家父長制的家族観と性別役割感そのものです。その上、夫は実母には「よい息子」ぶって、「家で」と言い、妻には「親父を家で看取ったんだからお袋だって家でいいだろ」と介護を押しつけてくる。あなたは「義父の介護は義母と2人だったが義母は私がすべて面倒を見なければならない」とおっしゃっていますから、息子である夫は手伝う気もなさそうです。このままではあなたの人生は介護人生で終わってしまいます。そしてあなた自身は息子の伴侶や娘がいるにしても、もう彼らに介護を頼める時代ではありません。夫としっかり話し合って、お義母さんに施設に入ってもらってください。
(文:大関洋子)

2020/10/19(月)
第194回【親子編】「夫が娘を甘やかした!」
【Q】
結婚して8年、5歳の息子と4歳の娘がいます。コロナが落ち着いてきて、8月まで在宅ワークだった夫も通常の勤務に戻りました。私は接客業なので、ずっとほぼフルタイムの仕事をしていました。こんな時くらいはと思い、夫の在宅勤務中は保育園を休ませ、夫に子どもたちを頼みました。子どもたちも嬉しかったようで、笑顔が増えたなあと喜んでいたんです。ところが、夫が通常の勤務に戻っても、娘が夫にべったり、全く私の言うことを聞かないんです。コロナ以前は「男の子には男親の関わりが大事だ」とか言って、娘は私に任せっきりで息子とばかり遊んでいたんですが、今回は娘を必要以上に甘やかしていたらしく、ほぼ普通の生活に戻った今も、娘は夫にべったりなんです。夫がいない間、私がそんな娘にイライラして怒鳴りつけることも度々です。夫に「あなたが甘やかし過ぎたからよ」と言うと「父親が娘をかわいがって何が悪いんだ!」と開き直られてしまいました。息子はそんな私たちの様子を察してか、近くに寄ってきもしなくなってしまいました。

【A】
人間が発達の初期に、どのような環境に出会い、どのような人に出会うかで、一生が決まってしまう場合があります。人間としての心や身体の機能を身につけるためには、それを獲得する時期にその子にふさわしい人間的環境が与えられることが必要です。

「三つ子の魂百まで」という諺は、「小さいときに獲得したことは一生変わらない」という意味で使われています。この諺は、心理学的にも小さい頃の経験や学習の重要性を表しています。「経験や学習が大切」という時の「学習」は「算数や国語の勉強」という意味ではなく、行動が経験によって学ばれるプロセス全体を指したものです。私たちの行動のほとんどが生まれてから積み重ねられてきた経験、その学習によって獲得されています。

人は生まれてから多くのことを学習します。母国語が話せる・箸が使える・自転車に乗れる・パソコンの操作ができる等々、全て学習の成果です。そして学習は、友だちとのつき合い方、自分の趣味嗜好にまで及び、こうした意図的なものに限らず、覚えようとするしないに関わらず覚えてしまうこともたくさんあります。知らず知らずのうちに人や本、メディアなどの考え方に影響されてしまうこともあります。

4才の娘さん、5才の息子さんは発達段階的には「幼児後期」に当たり、家族の中で「自主性」を学ぶことが「発達課題」と言えます(エリクソン)。幼児前期は立って歩けるようになったり、「自分の体の主人公」になる時期ですが、幼児後期は「自分の心の主人公」になり始める時期です。遊びや生活のほとんどの場面で、自分なりのやり方をイメージして実行し、その行動が危険であったり、他者の迷惑になったりすること以外は許されることを学んで、自分の心に決めたことを実行する自主性が育っていきます。この時期、大人が自分の恣意のままに、可愛がりたい時だけ可愛がり、そうでない時は放っておく、という育て方をすると、心が委縮したり逆に必要以上に我を通すという子どもに育ってしまいます。この時期は父親、母親は、、息子さんにも娘さんにも平等に愛情をもって接し、「生きる喜びや楽しさの原体験」をつくる上で大切な時です。

精神科医フロイト(1856〜1939)は、女の子の初恋の相手は父親、男の子のそれは母親である(エディプス感情)と述べていますが、どちらの性の子どもも、父親、母親が平等に愛することで異性親を好きになる傾向は消えていきます。それを引きずらないためにも父親の偏った愛情は要注意です。
(文:大関洋子)

2020/09/23(水)
第193回【夫婦編】「こんな時に仕事を投げ出すの?!」
【Q】
結婚して10年、8歳の娘と6歳の息子がいます。夫は、気に入らないことがあるとすぐむくれて何でも投げ出してしまう性格ですが、結婚して子どもができれば変わると期待して結婚しました。上の子が1歳になる頃までは、仕事もきっちりしていたし、子どもの面倒もよく見てくれていたので、結婚してよかったって思っていたんです。ところが子どもが徐々に自分の思うようにならなくなると子育て放棄。2人目が生まれた時には、子育てに関わろうとしませんでした。その頃から仕事も投げやりになって、4年前には会社を辞めて、自分で会社を立ち上げました。でもうまくいくはずありません。毎月の収入は10万円ちょっと。私がフルタイムで働いて何とか生活してきました。そこへコロナ騒動です。持続化給付金の100万円はもらったものの、もらったことでかえって仕事をしなくなり、今度は「今の仕事じゃコロナを乗り切れないから新しい仕事を始める」とか言い出して、結局、全然仕事をしなくなってしまいました。私一人の収入では家計を支えられません。風俗勤めも考えてるんですけど、コロナでお客が減ってるっていうし、感染も怖いので決心がつきません。

【A】
あなたには厳しい回答になることをお許しください。まずご自分の価値観を見直し考え直してください。そして今後、自分たちのためにも、何より8歳と6歳になるお子さんのためにも、人生で一番大切なものは何で、そのためにはどう生きたらいいか、しっかり夫婦で話し合うことをお勧めします。

見直していただききたい価値観として、まずあなた自身の問題点が3つあります。

その@ 「夫は気に入らないことがあるとすぐにむくれて何でも投げ出してしまう性格」と分かっていたのに「結婚して子どもできれば変わると期待」して結婚。その期待は分からないわけではありませんが、子どもは父親の「すぐむくれて投げ出す性格」を直すために生まれてくるものではありません。妻との関わりの中で修正していく努力はどんな事をしましたか?

そのA 4年前に仕事を変えるとき、フルタイムで働いて生活を支えてきたとのこと。立派だったとは思いますが、その4年間、夫婦の間でどのように話し合われ、今後お子さんを育ててていくための将来設計はどう立てられたのでしょうか?

そのB これが最も価値観の見直しをしていただきたいところですが、「夫が全然仕事をしなくなったので風俗勤めも考えているんですけど」の点です。簡単に収入源として風俗の仕事を選択肢に入れてしまうところが、夫を安易にコロナ禍の持続給付金で働かなくなるようにしているのです。風俗に勤める方にもそれぞれ複雑な事情がある方が多く、ましてやあなたには夫と2人のお子さんがいるわけですから。もしかして夫に脅しのつもりで言えば、ビックリして夫が働きだすとでも思っての発言ではないですよね?性を贖う(あがなう)仕事は古代からあり、女性の一番歴史の古い仕事のひとつだと言われていますが、2人のお子さんにとっては軽々に考えられる職業ではないと思います。事情のあるご夫婦で三日三晩、2人で話し合って夫も妻も泣く泣く借金を返す間、風俗に勤めたけれど、子どもたちには普通の仕事だと言い続けたその苦しみを、カウンセリングで語りに来られた女性がいました。

「気に入らないことがあるとすぐむくれ」たり、仕事を慎重に考えず変えたり、働かなくなったりする夫の様子は「ピーターパン症候群」と言われる「成長することを拒んでいる大人」のようにも思われます。あなたはそれに振り回されたり、自分自身も安易な価値観に流されることなく、宝物のような2人のお子様と丈夫な身体をお持ちのようですから、質の良い人生を送る努力をしていただくことを祈ります。

(文:大関洋子)