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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2022/07/21(木)
第237回【恋愛編】「人を好きになったら相手に尽くすのが普通?」
【Q】
もう何回失敗したかなあ…。すぐに名前が挙げられるだけでも4人です。ちゃんと数えると他にも4、5人いるので、10人くらいの男に裏切られたっていうか、愛想を尽かされたっていうか…。そうなっちゃったのは、原因があるんです。高校生の時、1年くらい付き合ってた大好きな彼がいたんですけど、なんとなく彼の態度が変わってきたなって思ったら「おまえさぁ、人を好きになるってことがどういうことか分かってる?人を好きになったら相手に尽くそうって思うのが普通だろ?おまえって“××して!”ばっかりでそういうところがないんだよ」って言われちゃったんです。それで別れることになりました。それがきっかけで、女は男に尽くさなくちゃいけないのかなって思って…。それ以降は付き合った彼氏に誠心誠意尽くしているつもりなんですけど、今度は逆に「おまえってウザいよな。もう少しいい距離感でいられないのかよ」って言われてしまって長続きしないんです。私って、人を好きにはなるんだけど、好きになられたことってあるのかなあ?どういう風に付き合うのが長続きするいい関係なんでしょうか?

【A】
高校生の時の失恋の経験からあなたは大きな間違った思い込みを2つしてしまいました。
まず最初の思い違いは、好きになったら「女は男に」尽くさなくちゃいけない?!と思ったのがそもそもの間違いですね。好きになったらお互いがお互いに対して相手の喜ぶことをして上げたいと思うわけで、「女が男に」尽くさなくちゃいけないわけではありません。まずそこが第一の思い違いです。

第二の思い違いは「女は男に尽くさなくちゃ!」とこれでもかこれでもかと「あなたに尽くしてます!」と尽くすのは相手にとっては「重い!」と感じて「ウザい」と言われてしまうというところです。
要するに「尽くさなくちゃ」と思ってやる行為は、明らかに「自分も尽くされたい」という見返りを要求しているのが見え透いていて、その人のことを好きで愛しているから尽くす「無償の愛」からは遠いのです。
「愛してる」「好き」だから尽くすときの「尽くす」は相手にわからなくてもわかっても見返りは要求していません。時には自分の生命が犠牲になっても相手の生命を救うために尽くす行為が究極の「無償の愛」です。タイタニックが沈む時、自らは船に残って恋人を救命ボートに乗せた青年のように、又、子どもの上に覆いかぶさって戦火から子どもを守り、自らは命絶えた母親のように…。

「尽くす」という行為は本来自らの内面から湧き上がり、あふれる気持ちで行う「無償の行為」であるはずです。それはたいていの場合、相手には「尽くしている」ことは知られないようにひそかに行われます。それがわかると尽くされた相手にはとても「重い」ことだからです。
「いい距離感を」と言った彼の気持ちは「尽くさなくちゃ」という義務感でやっていて、「誠心誠意尽くされている」という感じがせず、何か見返りを求められているように思い、「ウザく」なってしまうのです。「好きになる」「好きになられた」ことがないのか?とおっしゃって「どういう風に付き合うのが長続きするいい関係」なのかと悩んで質問されていますが、「長続きする方法論」ではなく、まずご自身の損得のために「人を好き」になってはいないか、そして何らかの見返りを求めて「尽くすふり」をしていたのではないかなど、ご自身の内面を見つめ直してください。「もっと会いたい」「電話やメールがほしい」「自分を愛してほしい」、こう思ったら何をしたとしても「尽くす」ことにはなっていないですから。

(文:大関洋子)

2022/07/06(水)
第236回【職場編】「おだてないと機嫌が悪いおやじ」
【Q】
うちの会社には2つのタイプの「昭和おやじ」がいます。1つはこちらから一言言うと100言くらい返してくるタイプ。何か提案しても延々とああじゃこうじゃ言って、自分の考えでこっちを納得させようとするんです。一度でもそういうことがあると「もうなんにもいーわない!」ってなりますよね。どう考えても会社には害。何も言わなければ私には関係ないかなって。もう1つは、女性がおだてないと機嫌が悪いタイプ。女性社員からおだてられるのが好きで、若くてかわいい女性社員が声をかけたりすると鼻の下伸ばしちゃってデレデレしちゃうわけですよ。出社してすぐ「今日のスーツ、決まってますね」なんて言っとけば1日中ご機嫌。それって、ちょーセクハラなんだけど、「俺は女性社員に優しい」って思ってるみたいで、セクハラと思ってないみたいなんです。困るのは若くてブリッ子してる女性社員がお世辞を言っちゃうもんだから、いい気になってすぐ身体とか触るんです。「よくやった」とか言いながら肩に手を置いたり、必要もないのに握手を求めてきたり…。悪気はないみたいなんで「それってセクハラです」とも言いにくいし、元はと言えばブリッ子してる女の連中が悪いわけだから、そこを絶たなきゃって思うんですけど、どうしたらいいか…

【A】
企業で働く人達は困った上司に日頃から悩まされている方も多いようです。特にご相談の「昭和のおじさん」に多い傾向があります。
「昭和」という時代は前半の20年までは「産めよ増やせよ」「国家総動員法」「ぜいたくは敵だ!」「欲しがりません勝つまでは」と耳にタコができるくらい、叩き込まれて育ち、その勢いで第二次世界大戦に突入し、負け戦さにもかかわらず、必ず神風は吹くなどと言われ「お国のために生命を捨てる」のが名誉と教え込まれていました。300万人にも及ぶ戦死者を出して降伏した昭和20年8月15日の玉音放送を多くの国民はよく聞き取れないラジオで頭を垂れて聞いたものです。

戦後、それまでの価値観が180度転換し、教育においても「民主教育」という逆転したかの様相の中で大人たちは混乱し、その混乱した価値観の中で育てられた子ども達が、今や「昭和のおじさん」などと言われて企業で困った存在になっているわけです。
よく言われる困った昭和のおじさんタイプを4つ上げると@威圧的な態度をとるA論破しようとするB嫌みを言うC若者を見下す、と大妻女子大准教授の田中俊氏は言っています。まさにあなたの言う前者の「昭和のおやじ」は、このA自分の考えでこっちを納得させ、論破しようとするタイプですよね。後半の女性がおだてないと機嫌が悪いタイプ、共に、価値観の大逆転した父親、もしくは祖父に育てられ、戦前の「男らしさ」を引きずり、男らしいとは「男が稼いで女、子どもを養う」「男は強くて弱音を吐かない」等々の男らしさから脱却できず、なのに時代はドンドン変化していき自分は追いついていない…と不安になる。「なりたい職業はYoutuber」「飲み会拒否の定時退社」「副業」「男性の育休」等々。

携帯やパソコンもやっと慣れたかと思うと新しい機種が出て、気づいたときには置いてけぼり。会社は勿論、家に帰っても子ども達にまで「お父さん、何言ってるの!時代遅れ!」と言われる。要するに自信を失っているのです。
外面は何でもわかっている風を装って威厳を保っていたいのですが、内面はビクビクです。だから威圧的に論破しようと「ああじゃ、こうじゃ」言い募り、若い女子社員におだてられるとご機嫌。気を許してセクハラをしてしまうんです。
「昭和のおじさん」には自分を見直してもらう必要があります。思い切って「それはセクハラです」と言ってみましょう。「昭和のおじさん」が手遅れの会社のお荷物にならないうちに。

(文:大関洋子)

2022/06/20(月)
第235回【子親編】「両親の離婚危機に私達は…」
【Q】
父、68歳、母、66歳。こんな歳になって離婚危機とは…。母は年金が受け取れるようになるのを待っていたんだと思います。年金なんてしれてるのに…。考えてみると、母は以前から何度も離婚を考えていたのかなって思います。1度目は弟が就職したとき、2度目は父の退職金が入ったとき、そして今です。弟が就職したのは母が45歳の時ですから、20年も離婚を我慢してきたのかなあと思うと、両親の離婚なんて絶対嫌だと思っていたんですけど、気持ちが変わってきました。これまでと比べて、今回は本気なんだと思うのは、母の表情がなくなってしまったから。これまでは喧嘩をして怒鳴り合ったり、母が実家に帰ったりしてたんですけど、お互いに感情をむき出しにしている間は、勢いで離婚っていうことはあるかもしれないけれど、本気じゃないから騒ぐんだって思っていたんです。でも今回は違います。静かなんです。だから本気かなって。苦労を背負ってきたのは母なんですよね。自由もない、自分らしくも生きられない…。残りの人生を自分らしく生きたいと思ったんだと思います。私と弟は母をどう応援したらいいんでしょうか。

【A】
夫の言動に我慢の限界を感じながらも経済的理由や子育ての事情などで若い時には離婚を選択できなかったという女性は少なくありません。
実際にあなたも「両親の離婚なんて絶対嫌だと思っていた」わけですからお母さんはそういう子どもの気持ちを考えると離婚に踏み切れなかったのでしょう。
あなたのお母さんのように、20年以上の結婚生活を経て離婚する夫婦を「熟年離婚」と呼んでいますが、これは2005年に渡哲也さん主演のテレビドラマで取り上げられて有名になった言葉です。厚労省の発表では、2018年に離婚したカップルは207,000組、そのうちの40,395件が熟年離婚で、およそ20%占めていて、その数は年々増えています。

協議離婚の場合は、離婚届に理由を書く必要がないため、離婚原因の全国的把握は難しくなっていますが、日本では欧米のように宗教によって離婚が禁じられておらず、当事者の合意を届け出ただけで離婚が成立します。これは世界的に見ても得意な法制度であるとされています。最近、欧米の影響で離婚が増加したように思われがちですが、日本では明治以前も離婚率が高かったという資料が厚労省の「離婚に関する統計」に残っています。

離婚のほぼ90%が協議離婚なので離婚理由は書かれていませんが、調停離婚や裁判離婚(夫婦の一方が離婚に同意しない)の熟年離婚の理由は、「長年、我慢してきた思いやりを欠いた言動(浮気やモラハラ、定年後も家事を手伝わない、いたわりやねぎらいの言葉がない、自分だけの趣味に没頭など)」が多いようです。
ご両親の場合は、もしかするとお母さんが一方的に我慢をしてきて、離婚を真剣に考えているお母さんに対して、お父さんは「何を今さら」という感じの温度差があり、法定離婚になるかもしれませんね。法律上の離婚が認められるには、民法第770条に定められている「法定離婚事由」に該当する必要があり、お母さんの場合は、その5番目の「その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある時」になると思われます。

あなたは、お子さんとして弟と「どうお母さんを応援したらいいか」とおたずねですが、あなた方子どものために今まで我慢してこられたにしろ、お母さん自身が自分で決めて選んできた人生です。今回、静かに「本気で残りの人生を自分らしく生きたい」と思われた気持ちを尊重し、あなた方お二人も「静かに」お母さんの決断を見守ってあげてください。あなたがたにできることと言ったら、せいぜい協議離婚になった時の証人欄に署名することくらいでしょうか。
(文:大関洋子)

2022/06/10(金)
第234回【親子編】「息子はいいけれど、娘が…」
【Q】
我が家では夫が家事をこなします。ほぼ何でも私より器用にやるので、家事は夫の仕事みたいな…。子育てもほとんどを夫が担ってきました。特別意識をしたわけじゃないんですけど、夫より私の仕事の方が忙しかったし、何でも夫の方がうまくこなすので、それが我が家の「普通」だったんです。子どもたちも何も疑問を感じていなかったと思います。息子が1人娘が2人いて、3人とも結婚したんですけど、息子は「夫婦ってこういうもの」って思っていたらしく、手伝うというレベルですけど家事もやっているみたいで、嫁も息子を「何でもやってくれて優しいです」と言ってくれます。ところが娘2人は夫の考え方や行動が、我が家とまるで違うことに戸惑ったというか、なじまなかったというか、結婚してもすぐ別れてしまいました。長女は2度もです。娘と話をしたり、婿の様子を見ていると、「男はこうあるべき」というような意識や行動があって、乱暴なわけではないのだけれど、娘の考える夫婦像、家庭像と大きな違いがあって、ついて行けなかったみたいです。私達は、男女平等の夫婦、家庭を作ってきたつもりだったのに、2人の娘を見ていると間違っていたのかなあと考えてしまいます。

【A】
「男らしさ」「女らしさ」が「男らしい人」、「女らしい人」という言葉になると多くの場合は褒め言葉として使われるのですが、しかしそれは強迫観念のように女性にも男性にも迫ってきて、個々の人間を縛りつけ、たくさんの弊害を引き起こします。
生まれた時からその「らしさ」は運命づけられ、社会や家庭がその基準に従って赤ちゃんたちを育てます。幼稚園や保育園に行けば、いくら国がジェンダー・フリーの教育に基づく取り組みを推奨しても、文化や習慣、そして人の心の中に厳然として男女の差別が存在するようになります。ころんで膝をすりむいても「男の子は強いよね、泣かないの!」と言われ、女の子が活発にスカートをひるがえしてジャングルジムのてっぺんまで登っても誰も褒めないばかりか「いやあねぇ、スカートがめくれてるよ!おてんばねぇ」と叱られる。

1993年には中学で、1994年には高校で、家庭科の男女共修が始まったり、男女混合体育や男女混合名簿が検討されたり、女子の制服もズボンを選択できるようになったりしましたが、相変わらず小学校の先生は女性が圧倒的に多いのに、校長先生は83%が男性だったりします。医科大学の入試で女性が足切りをされていたのは記憶に新しいことです。メディアの中にあふれるジェンダーのステレオタイプは、「男らしさ、女らしさ」の規範として、人々の意識にしみ込んでいきます。ニュース報道のアナウンサーも女性は補助的な役割を果たしていることが多く、女性がメインキャスターを務めると、話題になるのはキャスターとしての力量より、「かわいい」とか「胸が大きい」とか「美脚」とか、容姿に関わることがほとんどで、テレビ局もそれを狙って起用しているのではないかと思いたくなります。

政治の世界では、女性は添え物の感じです。アンペイド・ワークという概念は「家事や育児という無償労働を位置づけるために生まれた概念」です。そればかりか、自分の両親は勿論ですが、夫の両親の介護をするのも女性の役目、というのが当たり前になっています。要介護者の73%が近親者の女性(妻、嫁、娘)に介護されているというのが現実です。もっと基本的なこいとを言えば、「女言葉」と「男言葉」は未だにハッキリと別れていて、赤の他人に「おまえ」と呼ばれたらムッとしますが、男性の恋人から「オレにはおまえだけだ」と言われると「うれしいわ、○○さん」と返して喜ぶ女性は多くいます。「おまえ」「○○さん」と呼び合う中で、対等な関係が結べるはずはありません。

あなたのお子さん、特に長女の方はあなたの夫、父親を母と対等に生きている男性のモデルとして学んだにもかかわらず、その概念が根底にない男性と結婚してしまい、別れる決意をなさったのでしょう。ぜひお二人を応援して差し上げて欲しいです。
(文:大関洋子)

2022/05/23(月)
第233回【夫婦編】「15万で足りるわけない」
【Q】
結婚して15年、中学1年生と小学5年生の息子がいます。夫とは仕事の関係で知り合い、3年間お付き合いをして結婚しました。男として「可もなく不可もなく」っていう感じだったんです。一緒にいて面白いわけでもないけれど、それがかえって安定した男に見えたっていうか…。結婚生活も面白くはないだろうけど、まあそれなりに「いい家庭」が築けるかなって。結婚前には分からなかったんですけど、結婚して分かったのは、「この人、私と家庭を築こうっていう気がないんだ」っていうことです。家事や子育てをほんのちょっとは手伝ってくれるんですけど、夫とか父親の義務みたいにやるだけで、私や子どもたちへの愛情なんて全く感じられないんです。夫婦生活のすべてがそんな感じです。夫婦って何だろうって思っちゃいます。そして、一番困るのは、夫が私に渡す生活費が月15万円しかないってこと。夫の給料がいくらなのかも知りません。「増やして」って言っても「これ以上は無理。あとはおまえが働いて何とかしろ」って言うんです。夫の様子からしてそんなにないわけないと思うんです。扶養の範囲を超えて働くなんて無理だし、塾や今後かかる教育費のことも考えると不安でしかありません。

【A】
女性が結婚相手に求める条件として「三高」(高収入・高学歴・高身長)という言葉がバブル期に流行しました。今は「三優」(私に優しい・家族に優しい・家計に優しい)という言葉に変わりつつあります。30年くらい前の調査では、世界各地37の文化圏の男女に結婚相手の経済力の重要度について尋ねた結果、日本は勿論のこと、アメリカ、オーストラリア、ザンビアなど万国共通で、女性は結婚相手の経済力を優先順位の1位に挙げています。(1993年.Buss&Schnitt)30年たった今も言葉は「三優」に変わりましたが、2021年12月1日、一般社団法人日本リレーションシップ協会調べでは女性が結婚相手に求める三条件を聞いたところ、「経済力」がダントツの1位となり、2位が価値観、3位人柄となりました。

私たち祖先の女にとって、夫に経済力があるかどうかは自分や子どもの生死に直結する大問題でした。狩猟が上手でたくさんの獲物を女や子どもに与えられる男を夫に選んだ女は、そうでない男を選んだ女より長く生き延びてよりたくさんの子どもを残せたことでしょう。
今は洞窟の外に出て危険な狩りをするわけではありませんが、あなたの夫は「家族に愛情もなく」「家事育児もほんのちょっと手伝うだけ」とのこと。「家庭を築こうともしない」というのですから、もし洞窟時代だったら、さしずめあなた達親子は生き長らえなかったかもしれませんね。夫から「お前が働いてなんとかしろ」と言われても、家事育児に明け暮れた15年。仕事のブランクがある上に、男女同一賃金、同一労働同一賃金などという法律はあっても、男と同じ仕事に就けるという現実はないのですから、あなたが「無理」というのもわかります。

しかし考えてみれば「可もなく不可もない」男性を「安心」と感じて夫に選んだのが失敗。その「安心」が「不安」に変わったわけですから、二人のお子さんのためにも、自分の選択ミスを補うためにも一念発起、勇気を出して仕事に就いてみましょう。外に出てみればあなたにもいい刺激になるし、夫も頑張るあなたを見て生活費を増やしてくれるかもしれません。
それ以前に夫の給料がいくらなのかも知らず、「増やして」と言っても「これ以上無理」と言われ、あなたは「夫の様子からそんなはずはない」と思っている(女遊びをしている、ギャンブルにはまっているとかお考えなのでしょうか?)という家計のやり方がまず間違っています。まずは夫に給料をきちんと聞いて、あなたがいくら働けばいいかを夫としっかり話し合うことから始めてください。

(文:大関洋子)

2022/05/18(水)
第232回【恋愛編】「SEXのことは譲れない?」
【Q】
優しい人だと思ったんですよねえ。デートは私の行きたいレストラン、遊びに行きたいところ…。
私が「××に行きたい」って言えば、彼の行きたいところが違っても喜んで連れて行ってくれる。それが彼の私に対する優しさだと思ったんです。1年経った今も、そこのところはあまり変わらないので、彼が優しさだと思っているのはそういうことなんだなって思います。でもこの前、ホテルに誘われた時、会社で嫌なことがあったし、体調もいまいちだったから「今日はやめよっ」って言ったんです。そしたら怒ったわけじゃないんだけど「いつも君の言う通りにしてあげてるんだかいいじゃん?!」って言ったんです。「この人そんな風に思ってたんだ?」ってびっくりしました。あまり気乗りがしなくても付き合ってあげることだってあるんですよ。食事のこととか、遊びに行くところとかでそんな風な態度を取ったことないので「SEXのことは譲れないってことなんだなあ」って思いました。男って、どんなに優しい人でも性欲のことは譲れない一線なんでしょうか。性のことって私も大事に思うけど、どちらかの欲求の問題じゃなくて、2人の問題ですよね。

【A】
66年前、1956年に公布、翌1957年に施行された法律に「売春防止法」があります。これを読んで字のごとく「売春」となっていて、「性」を売る側、主に女性だけを対象にして補導したり処罰したりする法律です。買う側の男性への処罰は明記されていません。何度も女性国会議員や一般の女性たちから見直しの必要が叫ばれてきましたが、抜本的な法改正はなく、多少の手直ししかされず、66年間も「性」を売る女性たちが処罰されてきました。今年4月やっと超党派の改正案が通り、2024年4月に施行されることになりました。

この長く続いた「性行為を行うこと」で対償を受けとることを防止・禁止する法律、売春防止法第一章第一条(目的)では「売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする」とうたい、第二条では「「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義しています。

要するに、66年間も続いた男女不平等な法律にさえ「対償を受け、又は受ける約束で行う「性行為」は、「人としての尊厳を害するもの」と規定されているのです。法として規制しているのは「不特定の相手」ではありますが、特定の相手だとしても「人としての尊厳を害するもの」というのはまったく同じです。特定の相手との関係とは、本来お金を伴わず、相手を気遣う関係であると考えれば、むしろその方が「尊厳を害する」ということになるとも言えるかもしれません。

彼が今までの「優しさ」「いつも君の言う通りにしてあげてる」ことと引き換え(対償)に「性行為」を要求したことで、あなたが「人としての尊厳を害された」と感じ、「SEXのことは譲れないってことなんだなあ」と思ったことは、とても大切なことなのです。はるか昔の狩猟採集時代、干ばつなどに見舞われてどんなに探し回っても食べられる木の実1つ、草の根1つ見つからない、そんな時にたまたま獲物を仕留めた一人の男がいて、その男とのSEXと引き換えに食料を手に入れた女性が、そうしなかった女性より生き延びた時代があったかもしれません。男がSEXと引き換えに何かの資源を提供すると、その性行為は愛のコミュニケーションではなく、限りなく売春に近い「人としての尊厳」を害するものになるのです。生きることの目的が「種の保存」だけでない現代社会における男女の関係として、あるべき姿ではありません。
売春防止法には「対償を受け、又は受ける約束」と「不特定の相手」という2つの条件が挙げられていますが、今後、もしあなたが彼と結婚して夫婦になった時、夫から渡される生活費が、「性行為」や家事育児の対償にならないことを願っています。



(文:大関洋子)

2022/05/06(金)
第231回【職場編】「男と女では汗の意味が違う」
【Q】
また夏がやってきます。
私の職場では、男性外回り、女性内勤とほぼ決まっています。ある程度は希望も出せるので、女性でも外回り、男性でも内勤ということもありますでも、会社は希望を通してくれるのに、私達社員がそうしないんです。以前、外回りの営業で男性より優秀な結果をだしていた女性の先輩がいたんです。「課長も近い」なんて言われてました。
夏になると外回りは大変で、クールビズと言っても上着は欠かせない。営業に行くのにタクシーは使えない。歩いている時はシャツだけでも、営業先でまさか汗でグショグショで下着が透けるようなシャツというわけにもいかないので、上着を羽織るんです。でも冷房で身体が冷えるまでは汗が噴き出るじゃないですか。うちの会社に戻ってきても同じなんです。自分の会社では上着は羽織りませんけど、そうすると汗で下着が透けたり、脇汗のシミが見えたり…。ノースリーブだったりするともっといろいろ見えますよね。それが男性社員の視線の餌食になるわけです。それってかなりきついんです。それが原因で、先輩も昇進を諦めて内勤に戻りました。男だって女だって汗かくのは同じじゃないですか。でも汗の意味が違うんですよ。

【A】
まったくその通りですよね。
せっかく男性より優秀な結果を出していた女性の先輩、「課長への昇進も近い」とまで言われていたのに、「彼女のかく汗」が男性社員の視線の餌食になり、それが原因で昇進も諦めて内勤に戻ったとは…

そもそもその先輩が「汗」をかいてでも外回りの仕事を一生懸命やっていたのは、彼女がその仕事が好きだし、何よりも外回りをして会社に貢献したいという気持ちがあってのことだったんですよね。農耕時代なんて、女も男も区別なく「汗水垂らして」畑を耕していたんですものね。そうやって男女ともに働かないことには生きていけない時代には、女の汗が男の視線の餌食になるようなことはなく、男女ともに「汗水垂らして」働くことは美徳でした。

ですから、汗にまつわる故事、ことわざ、慣用句も多く存在します。「人のためにひと汗かく」「汗水流す」「汗と涙(血)の結晶」「額に汗する」「玉の汗を流す」等々、苦労をいとわず一生懸命働く様や大変な苦労や努力を重ねた末に得た成果のことを指しています。「冷や汗をかく」「汗顔の至り」「手に汗を握る」にしても、男女を問わず恥ずかしさや危険な状態、緊迫して緊張したりする様子を表しています。こう考えてくると、男の汗と女の汗の意味を違って考えるのも、現代社会におけるジェンダー、明らかに性差別です。

企業の「ダイバーシティ(多様性)」の普及は1990年代から言われ始めて、未だ実現にはほど遠く、令和2年(2020年)に経済産業省は「ダイバーシティ2.0一歩先の競争戦略へ」と題して、性別や年齢、人種、障害、価値観、ライフスタイルなど、「表層的」「深層的」いずれの差別もしないでという呼びかけをしています。
服装や化粧の強制をしない、男性の化粧も可とした企業もあるかと思えば、「#KUTOO」(靴と苦痛をかけて名付けた)運動に代表される女性の靴については、未だに航空会社や百貨店など、ヒールの高さ4〜6p、着地面の幅は2〜4pと細かく規定しているところもあります。ただ、生命保険会社などでは、ヒールの高い靴とスカートでは、緊急避難時の対応ができないとして、スニーカー勤務を奨励する企業も出てきています。

「#KUTOO」運動は「表層的ダイバーシティ」への動きでわかりやすいのですが、あなたの相談のような「汗」の問題は、「深層ダイバーシティ」に関わる価値観のずれですから、なかなか改善は難しいのですが、多様な価値観を受け入れられる社会の風土作りが大切なので、あなたの考えを周囲に「#MeToo」し続けてください。
(文:大関洋子)

2022/04/20(水)
第230回【子親編】「同居してやるって言ってるのに…」
【Q】
結婚して15年、42歳になります。夫の両親とは割と近くに住んではいるんですけど、お義母さんの負担も大きいだろうと、2年前同居を前提に2世帯で暮らせるようキッチン、トイレ、浴室が2つずつある家を建てました。義父とは同居の話もしていたので、まさかとは思ったんですけど、義母に反対されてしまいました。義母は、建築の費用を自分たちに半分くらい出させようと私が企み、夫を説得して2世帯住宅を建てたと思っているらしく、夫とは口をきくのに私とはそれ以来1度も口をききません。費用のことなんて言ったことも考えたこともないんです。どちらかと言えば、夫が同居に積極的で私はむしろ反対だったんです。私の本音は、費用を全部もってくれても、長い間私が介護をしなければならなくなるかもしれない同居は嫌です。義母は周りに「息子と孫とは同居してもいいけど、嫁とはね…」と言っているそうで、私も義母に「こっちが同居してやるって言ってんだよ!」って言ってやりたいです。

【A】
まったく!
あなたの怒りはもっともです。自分の親さえろくに面倒看てやれないのに夫の親と同居して24時間勤務で看てやろうというのに何よ!
その「息子と孫とは同居してもいいけど、嫁とはね…」っていう台詞!

あきれてものも言えない…。でも言わないと腹が立つから言うけど、「息子におむつを替えてもらえば?!あなたたちとの同居に積極的だった親孝行息子のことだから、きっとあなたのおむつくらい替えて、おしりを拭いてくれるでしょうよ!」「えっ、息子にそんなことさせられないし、自分も恥ずかしくて嫌だ?!でしょ、でしょ?!そうやって結局最後は嫁の私にその仕事が回ってくるわけ。長男の嫁なんだから、やって当たり前?!そんなこといつから誰が決めたのさ?!」

家父長制になってから、私たち女は幼いころは父親の言うことをよく聞き、おしとやかで優しく、兄たちがウナギを食べていても私たちは安いサンマ。いたずらをしても兄たちは叱られないのに私たち女の子は「そんなにおてんばだといいところにお嫁に行けませんよ!」と叱られる。おとなしくしていてやっと「いいところ」へお嫁に行けたと思ったら夫が「白いものを黒」と言えば、私たちも「黒」と言わなくてはならない。その夫との間に出来た子どもは正真正銘夫との間の子どもなのに、「おれは仕事が忙しい、子育てはおまえの仕事」と今で言う「ワンオペ育児」を強いられ、たまにお風呂に入れただけで、「おれは育児を手伝ういい夫だろっ」と豪語する。「手伝うって何?あなただって子どもを作った当事者でしょ!」

日本では、家事、育児、介護、これらは当たり前に女の仕事です。そして一銭の対価も支払われない「アンペイドワーク」です。男たちが命がけで家族のために洞窟からマンモス狩りに行っていた大昔ならいざ知らず、未だに「アンペイドワークは女がやって当たり前」という感覚が残っています。そしてその中でもこの「夫の両親との同居」は、もっとも夫婦関係に影響していて、姑と同居している人の8割以上がストレスを感じると回答していて(ハルメクWEB)、離婚に発展することもあります。
お義母様は、自分がアンペイドワークで苦労してきたので、嫁がそれをしないのは腹立たしいのでしょう。あなたはお義母様と育った時代が違う上に環境や価値観まったく違う赤の他人。幸いキッチン、トイレ、浴室が2つずつあるとのこと。まず物理的距離を置いて、女同士ということで少しずつ仲良くなってください。それにはあなたの夫があなたとお義母様の間に入って関係を築くのではなく、あなたが夫とお義母様の間に入るような人間関係になるよう努力してみてください。
(文:大関洋子)

2022/03/28(月)
第229回【親子編】「スカートの方がかわいいよね」
【Q】
女子高2年生の娘がいます。娘の高校は式典の時などの正式な制服はワイシャツ、ベスト(ジャケットと同じ生地の)、ジャケット、スカートの組み合わせなんですけど、3年前から毛糸のベストやセーターも可、1年を通して式典以外は制服用のパンツも可になったんです。1年生の冬、娘はパンツで登校していました。登校の様子を見ていると、パンツは20人に1人くらいだったでしょうか。パンツの子はパンツの子で固まっている傾向もあるように思います。春になっても娘はパンツのままだったんですけど、ほとんどの子がスカートになったんです。男子はいないとはいえ、“パンツだと差別されたりしないのかなあ”と思った私は、つい「女子高生はスカートの方がかわいいよね」と言ってしまったんです。“あっ、まずい”って思ったんですけど、娘は口をきいてくれなくなり、夏のどんなに暑い日でもパンツで登校していました。ところが、秋の終わりくらいからスカートを履き出したと思ったら、今度は雪が降ってもスカートで通学してるんです。この冬はパンツの子はほとんど見かけなくはなったのですが。私が「寒くないの?」と声をかけても“ふん”という態度で聞こうともしません。娘と普通に口がきけず困っています。

【A】
「女子高生はスカートの方がかわいいよね」はご自分でも“あっ、まずい”と思ったんですよね。よくわかりましたね。「女子高生がパンツだと差別される?」というあなたの感覚の中に「女の子はスカートを履いておしとやかで可愛げにしていた方がいい」という「女性はこうあるべき」という固定概念があります。やっとお子さんの高校でも式典以外はパンツが可になり、1年生の冬からパンツで通学していたのに「それは可愛くない」というメッセージを送ってしまったんですね。

そもそもスカートの歴史をひもとけば、古代ヨーロッパでは性別を問わず男女共にスカートのような形状の衣服を着用していました。スコットランドに伝わる伝統的な衣装の「キルト」はタータンチェック柄が有名で、行事などの正装として用いられる男性用のスカートです。戦いに従事して乗馬や激しい動きが必要な男性にとってスカート状態の衣服は活動的でなく、農耕文化を持つアジア圏での労働者が着用していたパンツが欧州にも伝わり、その機能性から男性たちの支持を集め、男性の衣服として普及していったと言われています。

男子がパンツを履くようになったころは、女性が男性と同様の服装をすることが許されない風潮があり、中世以降はスカートの内側にフープを入れて大きく広げる立体的なデザインや装飾がなされ、女性が美しいスカートやドレスを身につけることは父親や夫の富や権力の象徴だったという歴史もあります。女性しかスカートを履かないのではなく、かつての女性はスカートしか履けなかったのです。
第二次世界大戦を機に、女性も活発に動けるパンツスタイルが増加していくことになりました。日本では農作業にモンペを履いていましたが、工場などでも作業のしやすさからズボン(英語のパンツに対して仏語のズボン)を履く女性が増えていきました。
女性がズボンを履く権利を求める運動は様々な男女平等の権利を求める運動と連動して進んできました。日本で女性が選挙権を獲得したのも女性がズボンを履けるようになった第二次政界大戦後のわずか80年ほど前のことです。

最近やっと、男性と同じようにかかとの低い靴が女性にも公式の場で許されつつあるのはご存じの通りです。そうは言ってもNHKニュースの天気予報コーナーをみると気象予報士の女性が動きづらいにもかかわらず、やたらと高いヒールの靴を履いているのが気になります。

Me Too運動でやっと手に入れたパンツスタイルをお子さんは意識するために着用していますよね。小学生の時から男子が先で女子があとの男女別名簿を使っている学校教育や相も変わらず時代遅れな男性・女性像を流し続けるメディアの中で、お子さんは古い既成概念の母親に抵抗を試みているのでしょう。もしかすると誰か気になる男の子でもできてスカートを履くようになったのかもしれませんが、お子さんの一人の人間としての生き方、主張を、あなたの古い感覚を押しつけるのではなく、見守ってあげてください。
(文:大関洋子)

2022/03/22(火)
第228回【夫婦編】「“私は家政婦じゃない”と思う私の心に…」
【Q】
やっと子育ても終盤を迎え、子育てから解放されて自分らしい生き方でも探そうかなあと思っています。子どもとの関係はすごく変わりました。でも変わってないことがあります。夫との関係です。男女の関係って、出逢ってから死ぬまでに3回変わる時があると思っていました。結婚する時、子育てが終わる時、夫が退職する時です。今は2番目、子育てが終わる時だと思うんです。「男は仕事、女は家庭」みたいな状況が一変すると思っていたんです。ところが夫にはそういう意識がないらしく、何も変わりません。帰ってくる時間も、帰ってきてからの態度も変わらない。帰って来るなり「風呂」「飯」「寝る」…。夫は私を家政婦くらいに思っているんでしょうか。「男と女」から「父と母」になり、もう一度「男と女」になるぞって思っていたのに、夫の意識は結婚してからずっと「雇い主と家政婦」で、もしかすると死ぬまで変わらないのかもしれないと思うようになりました。でも一番問題なのは、そういう夫ではなく「私は家政婦じゃない」と思いながら、心の中に「人生、その方が楽かも」っていう気持ちがある私なんです。

【A】
「雇い主と家政婦」という夫婦関係に異議を唱えながらも「その方が楽」と思っている自分が問題だときちんと「自分の問題点」を捉えているんですね。夫に「私はあなたの家政婦じゃない」と思ったり言ったりしながら、実は内心「それが楽」と思っている自分に向き合っていない人が多いのも現実です。

35年前に男女雇用機会均等法が成立し、社会で働くのには男も女も平等であると定められました。法律はできたものの実際は絵に描いたもちであって、女性が働いて男性と同じ待遇、同じ給料を得られる職種や職場はごくわずかです。男が外で働き、女が家で家事育児というパターンは大きく変わってはいません。そして家事育児という仕事にはあなたのいう「夫という雇い主」からの給与の支払いはなく、生活費を与えられるだけの「アンペイドワーク」(支払いのない仕事)と呼ばれています。家事育児だけでなく親の介護、しかも、自分の親は勿論、夫の親の介護まで妻に任せて当たり前という状態はまだ沢山あるのが実態です。

今年もジェンダーギャップ指数が156カ国中120番目という低い順序を示しています。これは先進国の中で最低レベルです。この指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され男女格差を測っています。男性に育児休暇が取れる制度があっても取る人はごくわずか、それも1週間とかいう短い休暇で本当にそれで子どもが育てられるわけでもありません。まあ、ないよりはいいのですが、女性は家事育児介護などに費やす時間は約8時間、それに比べて男性は約3時間というデータも出ています(子育て世代の平均・男女共同参画局)。しかも、これは女性も働いている場合の統計なので、あなたのように「主婦」として「家政婦」代わりに家事育児をなさっている場合、夫の家事育児時間は限りなく0に近く「めし、風呂、寝る」という生活になります。

2019年に韓国の女性作家が自身や姉のことをテーマに描いた「82年生まれ、キム・ジヨン」という小説は世界16カ国で翻訳、映画化もされ、大きな共感を呼びました。女性が家事育児介護の中で、心のバランスを失っていく様子が異例の大ベストセラーとなって社会現象をまき起こしています。
あなたが「その方が楽」な自分を責めず、少しずつですが男女差別のない社会づくりをすすめられたらいいですね。
(文:大関洋子)