この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。 主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。 ■大関洋子プロフィール■ (浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー) 1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。 著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。 |
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2024/12/05(木) |
第293回【夫婦編】「彼のこと、何も分かっていなかった…」 |
【Q】
夫とは1年前にマッチングアプリで知り合いました。就職して5年、男性の多い職場で、すぐにお付き合いする男性ができると思っていたんですけど、男性はセクハラと言われるのを気にして声をかけてくれず、マッチングアプリに頼らざるを得なかったんです。会社で知り合い、充分相手のことを知った上で結婚したかったんですけど、知り合って半年で結婚しました。 ずいぶんデートもしたし、毎日メールやオンライン通話をしていたので、彼のことは分かっているつもりでしたけど、何も分かってなかったんです。結婚するまでは、優しくて、何でも私のいいようにしてくれていたんですけど、結婚して1ヶ月もすると「こうしてほしい、ああしてほしい」と言い出して、結局「この人は、ただで性処理をしてくれる家政婦がほしかっただけなんだ」と分かりました。 まだ子どもはいませんが、子どもを産めば、私が仕事を辞めて家事育児に専念することになるのは見え見えです。本当は離婚したいんですけど、親しい友人以外マッチングアプリで知り合ったなんて話してないし、周囲のことが気になってなかなか離婚を言い出せません。 【A】 知り合って半年で結婚、そして結婚して半年ということですね。結婚に後悔して離婚をしたいけれど、言い出せないでいるというご相談です。 その後悔は、マッチングアプリに頼らざるを得なくて、「相手のことを十分知らず」に結婚したが、この人は「ただで性処理をしてくれる家政婦がほしかっただけ」と分かったからということです。それほどまでに自分のことを利用しようとしている相手だと分かったのは、結婚後1ヶ月で「こうしてほしい、ああしてほしい」と「あなたの気持ちは無視」して、要求、束縛をし始めたということのようですが、それが事実で変えようともしない相手だということなら、周囲を気にしている場合ではないので、すぐ離婚に踏み切ってください。あなたはただの性処理人でもなければ、家政婦でもありませんから。 確かにマッチングアプリで知り合ったり、半年という短い交際期間で結婚したりは、親や知人から「軽率」と言われるかもしれません。セクハラに対する対応が厳しくなり、マッチングアプリに頼って結婚を考える人が20代、30代では2000万人を超え、約10人に1人は、実際に結婚しています。(2024年版マッチングアプリおすすめ5選より)マッチングアプリも、出会いの1つの方法と考えれば、決して悪いとは言えません。昔、仲人さんが釣り合いそうな男女にお見合いをさせる型の結婚も、間に入るのが人かインターネットかの違いはあっても、方向性に大きな違いはありません。 あえて言えば、結婚の本質、その人のことを本気で愛し、相手もそう思って、お互いに一生支え合っていきたいという思いがあるかないか、それだけのことです。自分自身で、相手も自分と同じ人生観を持っているかをしっかり確かめるべきだったのに、半年という期間で確かめきれなかったということでしょう。 芸能人の間で「ビビッときた」という「ビビビ婚」が流行りましたが、離婚も早かった気がします。仕事ぶりをお互いが見て充分相手の人生観、価値観を知ってからの結婚が望ましいですが、知り合うきっかけのマッチングアプリだけが悪かったのかというと、あなた自身の態度、結婚に至るまでのプロセスにも問題があったのです。あなた自身の価値観、恋愛観、結婚観を含めて考え直してみましょう。歴史的に言えば江戸時代は再婚の夫婦の方が多かったようですし、明治になって道徳や法律で女性をしばるようになりましたが、現在では3組に1組は離婚をしている国です。もう少し自分の人生を自由に考えてみてください。 |
(文:大関洋子) |
2024/11/26(火) |
第292回【恋愛編】「結婚を意識できない私」 |
【Q】
大学3年生の時に知り合った元彼とは2年間お付き合いしました。半年くらい一緒に暮らしましたけど、結婚を意識することはなく、「恋愛ごっこ」という感じでした。言い方悪いですけど、「男がいないと寂しい」というか「遊ぶ相手がいないのは惨め」というか…。あちこち遊びに行ったり、セックスしたりしても関係が深まらないんです。私も彼を好きだし、彼も私を好きみたいなんですけど、結婚を意識できる相手が見つかるまでのつなぎみたいな感じだったんです。2年くらいで、そんな関係に疲れちゃって、ちょっとずつ会う機会が減って結局別れました。 それから3年、就職した会社で知り合った男性と付き合ってるんですけど、元彼の時と同じで結婚を意識できないんです。彼は結婚も意識しているみたいなんですけど、私は全然その気になれなくて、一緒に遊んだりセックスしたり、「恋愛ごっこ」を続けていたいんです。でも彼にそんなこと言えないし、これからどんな風にお付き合いをしていけばいいか分かりません。 【A】 20代半ばになったあなた。2回目の恋愛も「ごっこ」ということですよね。一般的には「結婚を意識」しての恋愛へ発展してもいいころです。でも、「全然その気になれない」「“恋愛ごっこ”を続けていたい」あなた。20代半ばになったら結婚を意識しない「恋愛」はダメと言っているのではなく、私の立場からすると、何かあなた自身の中に問題を持っているのかなということです。 まず、あなたの心の中に「結婚したくない」「結婚する資格がない」という潜在意識があるのかな、ということ。「結婚なんて最悪。両親を見れば分かる」「あれほどまでに仲の悪い両親に育てられた私には結婚する資格なんてない」と思っているためにゲーム感覚の「恋愛ごっこ」から進めず、いつでも解消できる関係でいるのかな?そして、本当に彼が好きというよりも、恋愛をしている自分が好き、相手の人生に責任を持たなくてもいい「ごっこ」の方がいいというわけです。 また、子どものころ、機能不全の家庭で育ち、可愛がってもらえなかったことから、自分の心や身体の安全な基地がないという思いが強く「結婚」を避けたり、逆に「結婚」する相手に過度の安全な基地を求め過ぎて、「ごっこ」より先へ進めない、そんなことが考えられます。特に、父親が母親に暴力を振るったり、アルコール依存やギャンブル依存の機能不全家庭で育ってしまうと、「結婚」には期待が持てず、あなたのような“恋愛ごっこ”を繰り返すこともあります。「結婚」とは、「今も好き」ですが「将来も一緒に過ごしたい」という気持ちがあり、お互いが相手のことを大切に思い自分のことのように相手を大切にすることが喜びという前提ですが、「恋愛ごっこ」では、自分に足りないことを満たすのが目的で、今が楽しいということを第一に考えるので、相手の幸せや将来については考えが及ばず、相手を自分の欲求のために利用するような、自分にとって都合のいい形になってしまいます。 もっと深刻な幼少期の「性的虐待」などの例では、「復讐」の気持ちが「ごっこ」の形となって現れることもありますが、あなたの場合はそこまでではないようです。あなたの生育歴と向き合い、機能不全の家庭で心身の安全な基地がなかったのではないか、両親の不仲で、必死で両親の仲を取り持つような少女期を過ごしていなかったか等々、向き合いづらい過去ですが、カウンセリングを受けてみることをお勧めします。 |
(文:大関洋子) |
2024/11/21(木) |
第291回【職場編】「男性からのセクハラなんて当たり前」 |
【Q】
3年前、40歳になるのを機にホームヘルパーの資格を取って、取得後すぐにパートで仕事に就きました。 初めの1年は会社の配慮で、ほとんど手のかからない女性のお宅のみ伺っていました。2年目はやや手のかかる女性、3年目になって、そろそろベテランということで、男性のお宅へも伺うようになったんです。人によっては腹が立つこともありますけれど、女性の場合は世代に関係なく気持ちのわかる部分もあって、まあ何とかなるんですけど男性だとそうはいかない部分もあります。 通常の身の回りの世話や話し相手にはなれるんですけど、慣れてくると敬語だった言葉遣いもどんどん馴れ馴れしくなっていって、まるで男友達や夫のような口のきき方になる人もいます。体が近くに寄ると何気に体に触れられるのはしょっちゅうで、痴漢のように触られるわけではないので、強く拒絶するわけにもいかず、そのことを会社にも相談したんですけど、「あんまりひどいようなら別の人に行ってもらうようにするから」とは言うのですが、「交代できる人がいないからもう少し辛抱してね」と言うばかりで、一向に替えてもらえません。 会社は、男性のセクハラなんて当たり前、それを何とかするのもヘルパーの仕事というのが本音みたいなんです。 【A】 「日本介護クラフトユニオン」が今年4月に公表した調査結果によると、介護職の73.5%が、高齢者やその家族からハラスメントを受けた経験があると回答し、その中で一番多いのは暴言や暴力で44.7%、その次に多かったのがあなたの悩んでいるセクハラで28.8%となっています。2006年の介護労働実態調査ではセクハラ被害にあったと答えた人は、7.3%となっているので、18年で約4倍に増えているということです。 利用者さんは要介護の高齢者や身体的弱者の人だからということで、「多少のセクハラに耐えられないようなら初めから介護職なんかに就くんじゃない!」という介護職への偏見がエスカレートしたのがこの数字です。 2015年から厚生労働省は高齢者の在宅介護を推進し、在宅ケアニーズは高まっているのに、介護職員の不足が問題となっています。 その背景には、あなたのように訪問時に不快な体験や怖い体験をしても事業所がしっかりした対策を取ってくれず、やむなく退職するという人がいるということもあります。介護業界全体では「セクハラを受けて悩んでいる職員をしっかり保護していこう!」「サービスを供するスタッフが幸せであること」などのスタンスを明確に取って、被害にあった職員に対して「自分が我慢するしかない」ということではなく、「こちらが全力でサービスを提供し、それに対して対価をいただく対等な信頼関係」と考えて毅然とした対応を行うようにしている事業所も増えてきています。 セクハラ被害では、ひどい卑猥な言動に深く傷つき、せっかく純真な気持ちでこの仕事を選んだのに、一生消えない傷を負っている人も少なくありません。 栄養指導に訪れた管理栄養士が「トイレに行きたい、手を貸してくれ」と言われ、パジャマだけでなくパンツも下してほしいと言われ、仕方なくパンツを下した途端、頭を押さえつけられ性器を顔に押し付けられたと訴える例まで起こっています。(公益財団法人介護労働安定センター、介護労働実態調査)その他、排泄介護の時やベッドから起こそうとした時、胸や性器のあたりを触られ、ヘルパーが怒ると男性が「怒られると興奮する」と言った、利用所の家族の男性から、話があるからと別室に連れていかれ、押し倒されて乱暴されそうになったなど、調査では驚くよな実態が報告されています。男性の性欲は抑えられないといったジェンダーバイアスが存在し、対策が難しい中、男性利用者には男性介護者、あるいは2人1組での介護など、セクハラ防止に対処している事業所も増えています。 社会全体の介護職への認識を改めることは何より重要です。あなたも勇気を出して、もう一度、同僚、先輩、上司に訴えてください。 |
(文:大関洋子) |
2024/11/05(火) |
第290回【子親編】「同居の両親の面倒をもっとしっかり見ろと…」 |
【Q】
結婚して15年、2年前に夫の両親と同居しました。半年ほど前、両親に対する関わり方について夫と議論になり怒鳴り合いになってしまいました。 夫の両親は2人とも70代前半。同居しなくても十分やっていける健康状態なので、私としては元気なうちは出しゃばり過ぎず面倒を見過ぎずの距離感でやっていこうと思っていたのに、夫はもっと面倒を見ろというんです。中学生の息子が2人いるし、私としては「両親よりは息子たち」ということもあります。 まだ納得はいっていないし、夫には腹が立っていますけど、そこまでなら夫婦喧嘩ですんでいたんですが、夫が話したのかたまたま義母が気づいたのか、義母まで私の関わり方が悪いって言い出したんです。しかも私に直接言わずに夫に激しい口調で詰め寄るようなことまであるんです。「気が利かない」「意地悪」「性格悪い」から始まって、「心の病」「発達障害」とまで言われるようになり、「カウンセリングを受けてこい」とまで言われ困っています。 【A】 おやおや、とんだ災難ですね。「カウンセリングを受けてこい」とまで言われて、カウンセラーの私にご相談下さったというわけですが、あなたは「心の病」でも「発達障害」でもありません。 相談の内容は義理の「両親の面倒の見方」ということになっていますが、本質はその事ではありませんよ。あなたは70代前半でまだ「同居しなくもやっていける健康状態」の義父母を「元気なうちは出しゃばりすぎず面倒見すぎずの距離感」でやっていこうとしてきました。中学生の息子さんが2人いてはその義父母よりはお子さんの面倒を見る方が先、というのはもっともなこと。もしカウンセラーの私の所に相談においでになるなら、主訴は「義父母の面倒の見方」についてでもなければ、あなたの「心の病」や「発達障害」ではなく「夫との価値観、人生観のズレ」あるいは「夫と夫の母親との距離」ということでしょうか。あなたに対する悪口「気が利かない」「意地悪」「性格悪い」という義母の言葉も直接あなたにぶつけられたのではなく「夫に激しい口調で詰めよった」とおっしゃっています。「もっと面倒見ろ!」と言っている「夫に腹が立った」が「ここまでなら夫婦ゲンカ」ですんでいたと思って「義母のあまりの言葉」に唖然としていますが、この状況には2つの可能性が考えられますね。 1つは、夫が無意識に思っていることを「義母の言葉として夫が」言わせている、もう1つは自分の手元から息子を奪った嫁に対するいじめ、嫌味です。あなたのおっしゃる通り、お義母さんが何も口出ししないうちはただの夫婦喧嘩ですが、お義母さんの発する言葉を考えると、夫婦喧嘩の域は超えているように思います。 まずあなたがやらなければいけないのは、夫婦関係の修復です。両親を除いた4人の家族関係について、夫と話をしましょう。そこがしっかりしないと両親を巻き込んでめちゃくちゃな家族関係になってしまいます。子どもたちの将来、子どもたちが独立した後の夫婦関係、両親と同居する前の家族関係を取り戻す努力をしてください。次にお義母さんとの関係だけでなく、お義父さんとの関係もしっかり築きましょう。ご相談の中にはお義父さんのお話が全く出てきませんよね。お義父さんを巻き込むことがとても大事ですよ。ただし、お義父さんとの関係はあなたとお義父さんという関係ではなく、夫を除いたあなたとお義父さん、お義母さん(言い方は悪いですがセットで)という関係を築きましょう。あなたとお義父さんだけの関係を築いてしまうと、お義母さんは息子を取られた上に夫も取られたと感じてしまうはず。 少し時間がかかるかもしれませんが、まず4人家族の関係を取り戻す、そのうえで夫を除いたあなたと両親の関係を築く努力をしてみてください。 |
(文:大関洋子) |
2024/09/25(水) |
第289回【親子編】「娘が生徒会長になりたいと…」 |
【Q】
高校1年の息子と中学2年の娘がいます。息子は中学で生徒会長をしていました。成績もそれなり、スポーツもそれなりという子で、特に目立つような子ではなかったのですが、立候補して会長になったんです。なぜ会長になろうと思ったのか本人に聞いてみたんですけど、どうもこれと言った人がいない中、周りから囃し立てられ、なんとなくその気になったということのようでした。兄を見ていた娘は、自分も会長になりたいと言い出して、10月の生徒会長選挙に立候補すると言うんです。 私は娘の背中を押してやりたいんですけど、男の子で立候補する子がいるらしいこともあり、息子と夫が反対なんです。夫は「成績がトップなわけじゃない、特に人気者のわけじゃない、男の子でやりたい子がいるのにおまえが立候補することないだろ。副会長も立候補できるんだから、副会長に立候補する方がいんじゃないの?人を支えるのは好きだろ」と言います。息子も「会長は向いてないよ」と夫に同調します。私は折角やる気になっている娘の気持ちを大事にしてやりたいんです。 【A】 あなたが「折角やる気になっている娘の気持ちを大事にしてやりたい」と言っている、その「あなたの気持ち」を私は大いに大事にしたいと思います。 教育現場で暗黙のうちに伝えられるジェンダー、男女差別の固定概念はまだまだ「隠れたカリキュラム」として子どもたちの心に浸透しています。あなたの家で、お父さんと息子さんが主張する男子が生徒会長で女子は副会長という感覚、これは委員会なら男子が委員長で女子は副委員長、男子が応援団長で女子はチアリーダー等々をはじめとして、担任の先生は「女の先生」が多い(特に小学校では)のに、校長先生は男の人が多いという隠れたカリキュラムの中で知らず知らず学ばされています。公立学校の女性教員の割合は、小学校62.5%、中学校44.2%、高校34.0%、特別支援学校61.1%に対し、校長に占める女性の割合は、小学校21.8%、中学校7.5%、高校7.7%、特別支援学校23.9%(令和2年度 文部科学省「学校基本統計」)というのが現状です。子どもたちの呼名に使われる名簿や集会、遠足などでの並び方も多くが男女混合名簿を取り入れているとはいえ、地域によっては大きく遅れている地域もあり(東京23区、首都圏6県の政令市、中核都市の多くが100%の実施状況に比し、川口市は小学校7.7%、中学校14.8% 2022年3月20日東京新聞)、これらも「隠れた男女差別カリキュラム」です。 1999年に制定された男女共同参画社会基本法を受けて、各都道府県で男女共同参画に関する条例が制定され、これに基づき公立学校の多くで男女混合名簿の導入や男女別学から男女共学への推進がされてきましたが、埼玉県は大きく立ち後れています。こうした教育の結果が政治の世界に反映され、各党の党首はもちろん、女性の総理大臣はおろか、地方議員の数もごく少数で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中118位と大変低い順位に留まっています。さらに身近な家事育児や親(夫の親を含めて)や家族の介護なども女性のものという概念が一般的です。また「メディア」の中ではステレオタイプの男らしさ、女らしさが日夜流し続けられ、人々の意識の中に染み込んでいっています。時に人権侵害にもつながるような男らしさ、女らしさの規範を人々の脳裏に刻み込むメッセージともなっています。 さて、娘さんのことですが、生徒会長選挙に男子生徒が立候補した場合、担任の先生や生徒会担当の先生からも「副会長でもいいよな」などと彼女の気持ちをくじくような話をされるかもしれません。まず家庭内での母であるあなたが夫と息子さんにこのステレオタイプの女性像、男性像を説き、娘さんの気持ちを支えてください。家庭の中から「男が主、女が副」という意識を払拭しましょう。様々な面で娘さんが自信を持てるようにすることも大切です。 お父さんと息子さんの反応は、もしかするとあなたと夫、あなたと息子という関係の中から生じているものなのかもしれません。あなた自身の家族の中での立ち位置や言動も見直してみてください。 |
(文:大関洋子) |
2024/09/19(木) |
第288回【夫婦編】「夫の浮気癖は治る?」 |
【Q】
結婚して26年、25歳と22歳の息子がいましたが、下の息子が今年大学を卒業して就職し、夫と2人の生活になりました。夫との結婚生活は苦しいことばかりの26年間でした。上の子の妊娠中に浮気、それが3年も続いて、やっと落ち着いたと思ったら、下の子の小学校入学で忙しくしているときにまた浮気。そして3回目は、上の子が高校受験、下の子が中学受験の時でした。私がはっきり浮気を確認したのがその3回なんですが、時期を考えるとすべて私の気持ちが夫ではなく息子の方に向いていた時なので、いつも自分が注目されていないとダメな人なんだなあと思います。その度に、「次はないから」と夫に告げては来たのですが、子どもたちのことも有り、離婚はぜずここまで何とかやってきたんですけど、どうやらまた浮気をしているみたいなんです。「浮気は夫の癖」で、今後も続くでしょうから離婚したいんですけど、経済的なこともありなかなか離婚に踏み切れません。夫の浮気癖が治ることはあるんでしょうか? 【A】 26年間、苦しいことばかりの結婚生活、大変でしたね。確認した浮気が3回、今回が4回目ということですよね。しかも、どの浮気も妊娠中、入学式のころ、高校・中学受験のころと、妻であるあなたがお子さんのために尽力している大切な時期でした。そして、今回は息子さんが2人とも大学を卒業して就職、やっとご夫婦2人の生活になった今です。 「夫の浮気癖は治るか?」というご相談ですが、ご自分では「今後も続くでしょうから離婚したいけれど経済的なこともあり離婚に踏み切れない」と言っています。それから考えると、26年もの間、夫の繰り返し続く浮気、不倫の中で苦しんできたのに、まだ「夫の浮気癖が治れば」「この先の人生をこの夫と暮らしていきたい」という潜在意識(無意識の中での考え)が透けて見えます。 10世紀初頭に編纂された「古今和歌集」には、既婚の男性が妻以外の女性の元へ通ったり、妻の元に別の男性がやってきたりする短歌が掲載されています。つまりそのころは、既婚男性のみならず女性も夫以外の異性と婚外交際を行っていた社会だったので、不倫という概念はありませんでした。 明治時代に入ると、一夫一婦制が法律として制定されます。1880年に制定された「姦通罪」により「既婚女性の浮気は罪」とみなされ、1947年、日本国憲法が発布されるまで続きますが、一方男性側の浮気は長い間容認されていました。 こうした歴史の中で、あなたのように26年間も夫の浮気に苦しみながら離婚できなかった女性がたくさん生まれてしまいます。現代では、結婚生活には、それぞれの相手に誠実な愛が根底にあり、浮気は許しがたい行為であるという社会的規範、通念が広がっています。ですから、「経済的」な今後の不安を「慰謝料」として請求し、離婚に踏み切るという選択もあるわけです。けれども、今までそれをしなかったあなたの中には「共依存」の状況が潜んでいるように思います。夫の浮気は時間と根気で治すことは可能ですが、そんな場合も常に離婚の決意を持ち続けることは必要です。 夫の浮気を「性依存」として、性衝動をコントロールできない状態にあると考えてみてください。幼少期のネグレクトや虐待、親の不倫などの「逆境体験」が原因にある場合がほとんどです。あなたのように、夫の浮気をただただ我慢して夫の問題をあなたの問題として肩代わりしてしまうと、夫が自分の依存に気づけず、あなたまでもが共依存として苦しんでしまいます。 長い男女の性の歴史を知ったり、夫の子ども時代に体験したネガティブな事象を見直してもらうカウンセリングを受け、あなた一人が我慢することをやめてみることで、回復への道があると思います。 それでもダメなときはこの際、できるだけ高額な慰謝料をもらって「離婚」してください。 |
(文:大関洋子) |
2024/08/28(水) |
第287回【恋愛編】「いつもホテルに行くと終わっちゃう」 |
【Q】
先月、彼と別れました。というか、ひと月くらい前から連絡が来なくなってしまったんです。そういうことがこれで3回目です。 最初は大学2年生の時。サークルで知り合った彼がいたんですけど、グループで飲みに行ったり遊びに行ったりしているうちに親しくなり、半年くらい経ったころ、彼から付き合ってほしいと言われて付き合い始めました。ひと月くらいして自然な成り行きでホテルに行きました。多少緊張したけれど、いい感じだったと思うんです。「今日はありがとう」みたいなLINEのやり取りもしました。ところがそれを最後にLINEの内容も会ったときの態度も、急変して、付き合い始める前に逆戻りしたんです。たまにお茶くらいはしてもホテルに行くことはなく、フェードアウトしました。 次の彼も同じようで、知り合って半年くらいでホテルに行ったんですけど、2回で終わり。2回目は、私の誘いに彼がいやいや付き合ってくれたって感じでした。 そして今回。彼ともホテルに行ったのは2回。私の身体とかセックスのやり方とかに問題があるんでしょうか?女友達と温泉とかに行っても、身体は綺麗な方だと思うし、セックスのやり方もうまくはないかもしれないけれど、下手ではないと思うんです。 【A】 「生」ということだけを考えれば、なくても生きていける恋愛とセックスですが、人生の質とは大きく関わっており、人は「恋愛とセックス」にとらわれます。 まず、人が恋に落ちると脳と身体には複雑な化学反応が引き起こされます。心臓が高鳴り、鼓動が速く強くなり、呼吸が短く感情が高ぶります。すべての神経中枢とコミュニケートする大脳皮質や大脳辺縁系など脳の複数の部位で様々なことが起こります。そしてその時、性的欲求も下半身でなく脳の中で起きています。性欲は精神神経系生物学的なメカニズムによるものですが、相手に「惹かれる」条件は心理的な面です。 文化的なことや内的イメージ(昔から刻み込まれてきた要素が呼応して)が2人の人間の間にフラッシュして神経ホルモンを活性化させます。「惹かれる」という現象では、オキシトシン(愛情ホルモン)が相手のポジティブな面を強化し、ネガティブな印象を消すことで関係を可能にします。恋をすると脳内ホルモンとも呼ばれるているドーパミンが中枢神経から分泌され、それが脳内で優位になり、相手の欠点が見えにくくなりますが、この状態は数ヶ月と続かないのです。 また、カップルの間で湧いた性欲も必ずしも同じ意味とは限りません。感情、ホルモン、幻想、文化的・教育的な要素や社会的・宗教的な禁忌事項などが性欲を誘発したり妨害したりする要因ともなります。男性は、身体の外に性器が出ているので、感情と官能的な接触やイメージを性欲と結びつけることが容易ですが、女性は脳と性の関係がそれほどわかりやすくはありません。 あなたが彼と「いつもホテルに行くと終わっちゃう」と悩んでいるのも、こうした性のメカニズムの中で起こっていることなのです。脳は欲望と快楽のホルモンに慣れ、恍惚と情熱のドーパミンが優位でなくなったとき、恋(セックスが中心の)が終わっていきます。本来の「愛」は情熱的な恋愛状態が弱まり、それぞれが自分を相手によく見せようとする必要がなくなり、相手の良さと欠点を受け入れるとき、いわば意識的に構築されるものなのですが、理想から現実の段階になり、一生続く愛の関係のための強固な基盤を築くその大切な時期にあなたの恋は壊れています。 「私の身体とかセックスのやり方に問題があるのでしょうか?身体は綺麗な方だと思う」とか「セックスのやり方もうまくはないかもしれないけれど、下手ではないと思う」と自己分析をしていますが、「ホテルに行くと終わっちゃう」原因はそこにあるのではないのです。セックス、ましてやその後の彼との関係は技術だけでは成り立ちませんよね。彼の性への欲求がいったん収まった後、それまで生きてきた環境、教育、性体験など、それぞれが生きてきた歴史の中で感情的な失望、人としての温もりの落差が生じるためだと思います。もし、セックスのやり方や身体を綺麗さを重視して相手選びをしているような彼なら、そんな男はお断り。付き合うのをやめましょう。セックスのやり方や自分の身体を綺麗な方だと考えるより、人としての魅力を考えてみてはどうでしょう。 |
(文:大関洋子) |
2024/08/22(木) |
第286回【職場編】「声をかけられない私は魅力がない?」 |
【Q】
「28歳、婚活中!」っていう襷を掛けて社内を歩いているつもりなんですけど、誰も声をかけてくれないんです。「デートに誘って、食事に誘って、せめてお茶だけでもいいから…」って思うんですけど…。私から声をかける勇気はないし、私から声をかけられそうな男ってオタクばっかり。 先日、声をかけてほしいと思っている男性と2人で出張したんです。そんな機会めったにないので、私はウキウキしていたんですけど、彼の方は私に全然興味がないみたいで、口はきいてくれるんですけど、仕事の話ばかりで。私って女の魅力がないんでしょうか? 友達の話では、セクハラで問題になるのが嫌なので、男性社員は興味がある女性がいても、社内の女性には声をかけないって言うんです。確かに、普通に口をきけるのは既婚で、いい夫、いいお父さんしてるって感じの人だけなんです。グループで飲みに行く機会も減ってるし、どうやって男性探しをしたらいいんでしょうか。 【A】 確かにお友達の言う通り1985年に男女雇用機会均等法が成立し、その11条は職場におけるセクハラについて事業主(会社)に防止措置を講じることを義務づけていて、細かくセクハラの定義を定めています。 セクハラには「対価型」と「環境型」の2つがあり、「対価型」は職場で性的な事柄について公然と発言していたことに抗議した人(労働者)を降格したり、上司が社員(労働者)に性的な関係を要求して拒否されたため、その社員に不利益な配置転換をしたなどがそれです。 「環境型」は、職場で上司が社員の腰、胸などに度々触ったため社員が苦痛に感じて就業意欲が低下する、同僚が業務に使用するパソコンでアダルトサイトを度々見ていることを苦痛に感じ業務に専念できないなどです。具体例としてはヌードのカレンダーを職場に掲示したため、「セクハラ」として事業主が指導を受けた事例や結婚や出産について本人が話したくないにもかかわらず質問をしたなどもありました。こうしたセクハラの定義がよく理解しにくく、とにかく職場の女性には仕事以外のことは話しかけない方がいいという風潮が広がったのも確かです。 ただ、「28歳、婚活中!」という襷を掛けて社内を歩いているあなた、それでも声をかけられないのは「セクハラ問題」とは別の理由があるようですよね。「私に魅力がない?」と言っていますが、私の「何に魅力がない?」からだと思っていますか?容姿?スタイルや服装?それとも性格? そう、性格が悪い人は魅力がありませんよね。人に優しくない、自分が得をしようと考えている、それも魅力のないことの1つではあります。「28歳、婚活中!」などと年齢が20代であることをこれ見よがしに襷に書いたり(もちろん、たとえ話ですが)、ましてやその後に「婚活中!」とうたっていては、とても魅力のある人柄とは思えませんよ。 さらに「どうやって男性探しをしたらいいんでしょうか」と結んでいます。どうもあなたは、会社のために努力しよう、社会貢献がしたい、自分らしさを活かして仕事をしたいなど、男性探し以外のことは意識にないようです。 人の魅力は人生をどう生きようとしているか、人生における価値観を何に置くかなど、生き方そのものが魅力につながっているわけです。20代はすぐ30代になり、40代になります。若さや容姿が魅力と考えるのではなく、まずどう生きるかということを考えてみてください。 |
(文:大関洋子) |
2024/07/26(金) |
第285回【子親編】「女の運転する車になんて乗れるかぁ!」 |
【Q】
5年前、義母が70歳になったのを機に夫の両親と同居しました。車は私と夫用、両親用の2台あって、4人とも運転免許を持っていますがおもに私と義父が運転しています。義父は今年80歳で、去年かなりひどい事故を起こしましたが、軽症ですみました。夫と旅行に出かけるときは必ず私が運転するくらい運転好きなので、義父に免許の返納を勧めてみたんです。「お義父さん、出かけるときは私が運転しますから、免許を返納したらどうですか」と言いました。私と2人の話の時は、「そうだなあ、そうしてくれるなら、タイミングを見て返納するか」みたいな感じで、まんざらでもない様子だったんです。ところが、その会話にお義母さんが加わって「私も運転しますよ」と言ったとたん、「ふざけるなぁ、女の運転する車になんて乗るかぁ!」と、私の話もどこかに行ってしまいました。 義父の運転は明らかに危険になってきているので少しでも早く返納させたいんですけど、お義母さんが入ったことで失敗してしまった説得をどのように進めればいいでしょうか。 【A】 お義父さんがおっしゃった「ふざけるなぁ、女の運転する車になんて乗るかぁ!」の言葉の中の「女」は「女性一般」を指しているのではありません。お義母さんに対しての「女の運転する車」、「おまえの運転する車になんか乗れるかぁ!」という意味です。もっと言えば、「俺はおまえという女を“人生”という俺の車に乗せてやって、事故1つ起こさず、おまえの体にも心にもけがをさせずに運転してきてやっただろ!今さら“人生”と車の運転をおまえに任せられるか!」という気持ちの表現です。お義父さんは自分でもよく理解できないままこの言葉を吐いてしまいました。 心理学的には、こういう言い方を「裏面交流」と言います。本当に言いたいことは別にあり、思わず腹立ち紛れに放つ言葉の裏に本音が隠されているときの人と人との交流を言います。母親が子どもに向かって「何してるの!?」と言ったりするのがよくある例で、子どもは真っ直ぐ受け取って「ご飯食べようとしてるよ」と答えたりします。ですが、母親はそんなことを聞いているわけではないので、「そんなこと聞いてるわけじゃありません!」ともっと声を荒立てます。子どもは困って、小さな声で「“何してるの”って聞いたから」とつぶやくと、母親はさらに大きな声で「屁理屈言ってるんじゃありません!さっさと食べて、さっさと学校へ行きなさい!」となるわけです。母親が本当に言いたかったのは、「何してるの」ではなく「早く学校に行きなさい」だったわけです。 さて、お義父さんの怒りは、お義母さんの「私も運転しますよ」という言葉に対する「裏面交流」でした。ですので、ご心配なく。しばらく日を置いて、もう一度あなたから「お義父さんが必要なときにはおっしゃってくだされば、いつでも運転手としてお伴します」と言ってみてください。あなたの言葉にお義父さんの気持ちも和むはずです。 社会的にはジェンダーギャップの風潮も残っていて、「運転」という作業は、脳科学の研究で、女性は男性より空間認識能力が低いから向いていないとか、そのせいで車線変更や高速道路の合流が下手とか、車庫入れが苦手とか言う人もいます。運転している男性が下手な運転に出くわして運転席をのぞき「やっぱり女だ!」と言ったりすることもあるのですが、思い込みが多いことは皆さんもご存じのことと思います。万一当たっていたとしても、性による能力差というより、長年の女性差別により機会を奪われてきた女性の不慣れが原因ですので、女性のドライバーが増えることで、「女は運転が下手」というのは徐々に減ってくるはずです。 お義父さんはそういった社会の風潮はあったと思われますが、本当に言いたかったのは、「女の運転する車」ということではなく、長年の夫婦生活の中でお義母さんに言いたかったことを車の運転ということに置き換えて言ったと考えてください。 おそらくお義父さん自身も返納を考えてはいるのだろうと思います。まず、お義父さんが返納しやすい環境、車を利用しなくても困らない状況を作る努力をして、そうした後に「あなたが」お義父さんに話すことでお義父さんも返納する気になってくれると思いますよ。 |
(文:大関洋子) |
2024/07/19(金) |
第284回【親子編】「男の子らしく強い子に育ってほしい」 |
【Q】
小学3年生の娘と小学2年生の息子がいます。 先日、家族4人で公園に遊びに行きました。夫と子どもたち2人で鬼ごっこをしていたとき、子ども2人がぶつかって、2人とも転んでしまい、泣き出しました。娘の方は特にけがもなかったんですけど、息子の方は細かな石で、膝を少しすりむいてしまいました。昔なら「つばでも塗っとけ!」レベルです。近くに水道があったので、一応洗ってやったのですが、なかなか泣き止みません。息子の世話をしていて娘は放っておいたので娘も大げさに泣き続けていました。夫が息子に近づいて「男だろっ!泣くな!」とちょっと強い調子で言ったんです。夫がそう言ってくれたので、泣き止むかと思ったら、むしろ泣き声が大きくなり、5分くらいな泣き続け、「お姉ちゃんの方が大きいのになんで僕は泣いちゃいけなくてお姉ちゃんはいいんだよぉ」とさらに大きな声で泣き出しました。息子はしょっちゅう泣くんです。男の子ですから、男の子らしくもっと強い子に育ってほしいんですけど、どのように育てたら男の子らしく育つのでしょうか。 【A】 あなたの家庭では今日も「女の子は女の子らしく」「男の子は男の子らしく」育ってほしいと思って子育てをしているのでしょうね。この「らしさ」の押しつけは、その人、その子のやりたいことを妨げたり将来の可能性を奪ったりすることになるとして、そんな鎖を外していこうという考え方が広がっています。 「ジェンダーフリー」という言葉で注目されるようになって来たのは1970年代に入ってからです。未だに学校教育でもジェンダーへの偏見が多く見られますが、男女の性差を強調する学習ではなく、その前に「自分らしく生きること」を学ぶことが大切だと思います。社会的な性差にとらわれず、「自分らしく」生きることをお子さんたちに伝えてください。 2023年9月に博報堂が15歳から69歳の1万人を対象に行った全国調査では、「らしさ」で「嫌な思いをした」という人が4割、「子どもには女らしさや男らしさを押しつけたくない」「自分の子どもに“女だから”“男だから”となるべく言わないようにしている」と答えた人が7割弱おり、次の世代に「らしさ」を押しつけない意識があることがわかりました。 あなたの考えている「男の子らしさ」は、「強くて野心的、勇敢、頼りになる、タフ、エネルギッシュetc.」そして「女の子らしさ」は「人に優しい、子ども好き、身ぎれい、周囲に気遣いができる、気が利く、話し方が丁寧、所作が繊細で綺麗etc.」ですよね。 この「らしさ」の中で多くの人が「自分らしさ」を押さえつけられ奪われて、苦しんできました。「泣く男 古典に見る「男泣き」の系譜」(寺田英視著)は、日本の古い神話の中では、男の神様である須佐之男命が大泣きする場面もあり、その後も木曽義仲、楠木正成、豊臣秀吉など泣く場面がちゃんと書かれていて、男も泣くという文学史書になっています。日本の古典を紐解くと、英雄豪傑ほど派手に泣いているのがわかります。 近代になり、「泣く」という感情を素直に出すことの大切さが封建主義的な社会の土台の中で封じられ、男の子は「泣かずに国のために命も捨てられる」、女の子は「そういう男性を優しく支える」という「らしさ」に固定されてきたようです。本当はもっと大きく「その子らしく」羽ばたいていけるはずなのですけれど…。男の子が泣いても女の子が泣いても、「一人の人間」としてその子の生まれ持った「らしさ」を伸ばしてあげてくださいね。そして、あなたも「女らしく」「妻らしく」「母らしく」から「あなたらしく」生きていけたらいいですね。 |
(文:大関洋子) |