【マイタウンさいたま】ログイン 【マイタウンさいたま】店舗登録
■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

全285件中  新しい記事から  11〜 20件
先頭へ / 前へ / 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / ...12 / 次へ / 最終へ  

2024/02/22(木)
第275回【子親編】「義父の時と義母の時で夫の態度が違う」
【Q】結婚して40年、夫の両親と同居していましたが、5年前に85歳で義夫が他界して、今は88歳の義母と3人で暮らしています。義父は、80歳を過ぎたころから認知症の症状が出て、高齢の義母には義父の介護は無理なので、私が義父の介護をしていました。フルタイムではありませんが、私も仕事をしていたので、夫は「母のこともあるし父を施設に入れれば、みんな楽になるんじゃない?」と義父を施設に入所させることを提案してくれました。結局入所させる前に義夫が他界して義母が残ったんです。義父の時は義母も元気ではいたので、義母の力も借りながら自宅で義父の介護ができたんですけれど、今は、義母にも認知症の症状が出始めていて、義母1人とはいえ私だけではかなりきつくなっているんです。義父の時に言ってくれたように「施設に入れよう」と夫が言ってくれれば、義母も反対しないと思うんですけどが、義母のことになると、夫は「自宅で看取る」の一点張りで聞く耳を持ちません。介護をしているのは私なのに…。先日「自宅で看取りたいなら、あなたも仕事を辞めて介護を手伝ってよ」と言ったら大げんかになり、それから口もきいていません。

【A】義父の時は夫が自分の方から「父を施設に入れれば、みんな楽になるんじゃない?」と提案してくれたのに義母のことになると「自宅で看取る」の一点張り。「実際に介護しているのは私なのに…」ということで困ってのご相談です。義母を「自宅で看取りたいなら、あなたも仕事を辞めて介護を手伝ってよ」と言ったもののそこで大げんか。今も口をきいていない…。

義母の介護は同居している息子の妻、つまりあなた、昔流に言えば嫁がしなければならないのかというと、法的に義務はありません。民法877条1項で「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」と定められており、介護の義務を負うのは血族関係にある者ということになるので、姻族であるあなたに義務はありません。とは言え、あなたにとって法律が重要なわけではないので、大変悩んでいらっしゃいます。

あなたの悩みのおおもとは、介護、看護(育児もですが)などは当然、女性の仕事という社会に根強く残る男女不平等の家父長制意識、夫が「妻(嫁)」であるあなたに実母の介護を丸投げしてきていることです。義父の時は早々に夫が父親の施設入所を提案しているのに、母親は「自宅で」と言っている夫の態度にあなたは納得できないのですよね。

これは精神分析医であるフロイト(1856〜1939)が提唱した「エディプスコンプレックス」に原因があると思われます。4〜5歳の子どもが異性親を好きになる傾向を、ギリシャ神話のエディプス王子がそうとは知らずに父親と戦って父親を殺し、母親を妃にした物語から名付けたもので、フロイトはその傾向は大人になるに従って消失していくとしたのですが、大人になっても続くことを、近年では「マザコン」と呼んでいます。

あなたの夫は母親に愛情を抱いていた幼少期の感情が潜在的に続いていて、ライバルとしての存在である父親の施設への入所は、ライバルを遠ざける意味で決断が早かったのでしょう。しかし、母親に対しては「施設に入れたらかわいそう」とか「自分が帰宅した時に母がいないのは寂しい」とかいった思いが強くあり、「母は自宅で」となったと思われます。そして「自宅で」あって決して「自分で」ではないというところが「妻(嫁)のおまえが看るのが当たり前」という家父長制さながらの意識ですね。

この問題は、センシティブな問題を含んでいるので、喧嘩をしながらも時間をかけて話し合い、お互い理解し合うしかありませんが、女性が自分の生き方を見直しつつある昨今では、結果的にお互い歩み寄れず、離婚になるケースもす少なくないので、そういった覚悟も必要です。
(文:大関洋子)

2024/02/06(火)
第274回【親子編】「娘の言葉遣いが・・・」

【Q】
高校1年の息子と中学2年の娘がいます。
息子は小さいころから優しい子で、男の子ですから自分のことを「オレ」と言ったり、妹に「××しろよ」と指示や命令することはありましたけれど、妹の面倒はよく見てくれるし、怒鳴ったり暴力を振るったりということもありませんでした。
ところが妹の方は、物心ついたころから乱暴で、兄に食ってかかったり殴りかかったりすることもよくあり、兄に「おめえ」とか「てめえ」とか言うので、強い調子で怒ったら何年かは収まっていたんですけれど、小学4年生くらいのころから、自分のことを「オレ」とか「自分」とか言うし、兄や私に「××しろよ」とまるで、男の子みたいな口の利き方をするようになって、今もそれがずっと続いています。思春期を迎えれば、少しは女の子らしくなるかと思ったのですが、いつになったら女の子らしくなってくれるのでしょうか。

【A】
日ごろ何気なく使っている言葉をあなたのように男の子と女の子というジェンダー格差の視点から見つめ直すことはとても大切なことです。男の子みたいな口の利き方が続いている娘さんが、「女の子らしく」しゃべってほしいと悩んでいらっしゃます。男の子、息子さんは「オレ」と言ったり、妹に「××しろよ」と命令することはあったけれど“優しい子”で、女の子、娘さんの方は「自分」と言ったり、兄や私に「××しろよ」という乱暴な子だと困っています。これは、日本だけでなく世界中の問題で、ようやく「女ことば」と「男ことば」の成り立ちや、その違いとそれによる制約などの研究が始まったところです。

あなたが娘さんに「女らしい」言葉遣いをしてもらいたいと言っている「女ことば」の特徴に、分かりやすいものが2つあります。まず「女ことば」には「悪態をつく言葉」や「相手を罵倒するような言葉」がありません。悪態をついたり、相手を罵倒するような言葉を叫ぶことは、不満や怒りを発散する力があるとイギリスの科学者、エマ・バーンは実験の結果として発表しています。「人間が氷水に手を入れていられる時間を何もしていない時と罵倒語を発している時とを比べると罵倒語を発している時の方が1.5倍くらい長くなる」と。悪態や罵倒語を叫ぶことで気が紛れるからでしょう。

「くそっ、この野郎!」「こん畜生」「ふざけんな!」「馬鹿野郎!」「めんどくせぇなあ、もう」「すっとぼけんな、カス!」等々。この中の言葉を人前で口に出す女性はほとんどいませんよね。

昔、「かわいい女は天国へ行くが、生意気な女は地獄へ行く」と言われましたが、1994年、ドイツでミリオンセラーになったウーテ・エーアハルトの本の中では「生意気な女はどこへでも行ける」となっています。こんなことでも世界の大きな流れが分かります。

もう1つの特徴は、「命令形がない」ことです。女性が痴漢に遭った時、多くは「やめて」と叫びます。「やめて」は、「お願いの言葉」で、相手を従わせる強さを持たない言葉です。もし、男性だったら多くは「やめろ!」となりますよね。

あなたの娘さんが「男ことば」を使う深層心理には、「男女差別」に対する違和感があるのでしょう。最近では女の子が使う言葉に、男、女に関わらない「中立語」が増えてきています。少しずつではありますが、「男ことば」もタブーではなくなってきました。あなたもそろそろ意識を変えて、「男ことば」「女ことば」、「男らしさ」「女らしさ」について、お子さんとゆっくり話す機会を持ってみてはいかがでしょう。
(文:大関洋子)

2024/01/31(水)
第273回【夫婦編】「会社での地位の差が…」
【Q】結婚して15年、夫は40代半ばになり、会社でのポスト争いも厳しくなってきているようで、帰宅時間が遅かったり、早く帰ってきた時でも疲れがひどいようで、不機嫌な日が多くなりました。同期や後輩でも有名大学卒の人たちはそれなりのポストについているようなのですが、夫は課長職にとどまったまま、差をつけられているみたいなんです。私もIT関連の会社に勤務していて、社内に男女差はなく昨年部長になりました。夫は六大学より若干偏差値の低い大学卒で、私は国立大のそれなりのところなんですけど、夫は私が部長になってから私の給料の方が少しいいこともあってか「おまえは一流大卒だからな」と皮肉っぽく言うことが多くなりました。会社の規模も違うし、仕事の内容も違うので、管理職のなりやすさなんて全然違うし、そもそも会社でのポストが上なら偉いわけでもなく、社内の地位で夫婦や家族が幸せになるわけでもありません。夫は、結婚前から私との学歴の差がコンプレックスになっていたようで、学歴のことで冗談を言ったりしていたんですけど、最近の夫は、怒鳴ったり、物に当たったりすることもあり、このまま一緒に生活を続けられるか不安を感じています。

【A】「急増する“夫より学歴が高い妻”」、そして「その幸福度が低い“深刻な事情”」というタイトルでプレジデントオンラインが佐藤一磨拓殖大学教授の研究を発表したことがあります。(2021年9月)OECD諸国のほとんどの国において、女性の大学卒業率が男性より高く、その結果「妻の方が夫よりも学歴の高い夫婦」が増加しているという調査です。この変化はこれまでには見られなかった傾向で、夫婦のあり方の歴史的転換点に差しかかっていて、日本でもじわりと増えていると指摘しています。

そして、その夫婦の「幸福度が低い深刻な事情」として、「妻の収入が夫の収入より高いこと」と「妻の1日の家事・育児時間の負担割合が7割を超えており、妻の負担が重いこと」を挙げています。あなた方はどちらも大学卒ではありますが、卒業した大学に格差があり、あなたの方が上ということで夫が荒れているとのこと。この世界的傾向の一端を表していると考えられます。

あなたは、収入のこともありますが、直接的には大学格差による昇進の差が問題とお考えのようです。結婚前から大学格差のことが夫のコンプレックスになっていたことを考えると、妻のあなたにはない男女間の「性別役割分業意識」、古い言い方をすれば「家父長制」の名残があなたの夫には根強く残っているということでしょうか。

女性が男性に求める結婚相手の3条件が3高(高学歴・高収入・高身長)であった時代そのままの生育歴の男性ですね。世の中はどんどん変わっていて3高から3優(家族に優しい・家計に優しい・私に優しい)となり、今では3C(comfortable(十分な給料)・communicative(価値観が一緒)・cooperative(協調性))とか、3平(平均的収入・平均的容姿・平穏な性格)とか言われるようになりました。

男女雇用機会均等法(1972年)から男女共同参画社会基本法(1999年)など、日本でも女性が活躍できるよう政治、経済、社会的・文化的利益と責任を男女が均等に担う社会を目指すことを規定した法律もできました。

現実にはまだまだあなたの夫のように考える男性が多い社会ですが、この世界的な動きを止めることのないご夫婦になっていただきたいものです。そのためには、あなたが結婚相手に選んだ男性の長所や好きになったあなたの気持ちを繰り返し夫に伝えたり、学歴や大学格差を気にすることのない時代になりつつあることを話してみてください。もし、そういう話を理解できない夫であるならば、離婚も考えざるを得ないかもしれませんね。
(文:大関洋子)

2024/01/23(火)
第272回【恋愛編】「彼の妹さんとの関係が…」
【Q】彼は32歳、私は29歳で、付き合い始めて2年になります。30歳までに結婚なんて、特に意識しているわけではないですが、お互い結婚を意識するようになり、彼が私の実家に来てくれました。私の両親は、彼をとても気に入ってくれて、結婚という話を出さないうちに「式はいつ?」と前のめりです。両親は30歳ということを意識していたのかもしれません。その後、私が彼の実家に行ったんですけど、彼のご両親もとても温かく迎えてくれて、結婚の話こそ出ませんでしたが、彼には後日「結婚するんだろ?」と聞いたらしいので、結婚後もご両親とはうまくやれそうと思っています。将来的には彼の両親と同居を考えているので、私としては「面接合格」みたいな感じで、ホッとしました。問題なのは、30歳の彼の妹さんなんです。独身で実家に住んでいるんですが、私が行った時には私の顔を見た途端、ドアを乱暴に閉めて自分の部屋に籠もったまま一度も顔を見せませんでした。明るい女性と聞いていたので戸惑いました。彼は「たまたまだよ」と言うのですが、その後何度かお邪魔しても1度も妹さんと会っていないんです。今すぐに同居というわけではありませんが、うまくやれるかとても心配です。

【A】「ブラコン」、ブラザーコンプレックスという言葉を聞いたことがありますか?
心理学用語として正式に認められた用語ではないのですが、「兄もしくは弟に対する恋愛的感情」や「兄や弟を自分のものにしたい独占欲のある姉妹」という捉え方をしています。精神科医の岡田尊司氏(1960〜)によると「ブラザーコンプレックスの女性は、兄に恋人ができたり、兄が結婚したりすると抑うつになったり不安定になったりすることが有り、兄のパートナーに対して嫉妬の感情を抱いたり、自分が得られなかった兄の愛を獲得した存在として兄の恋人を理想化したりする」と言っています。(回避性愛着障害・きょうだいコンプレックス)

ブラザーコンプレックスの女性にとって兄や弟は(性的な)憧れとも重なって、理想化されたものとなり、自分の人生に親以上の影響力がある場合があります。原因としては、両親の問題や社会不安などがあると言われていますが、精神科医フロイトが出生後の幼児期にほぼ誰もが持つと唱えた異性親への愛(男の子は母へ初めての異性としての愛を抱く=エディプスコンプレックス、女の子は父親に抱く=ファザーコンプレックス)の対象が、彼の妹の場合、父親ではなく兄に向いたものと思われます。父親が母親を愛していることに気づくと、父に向く異性親への愛が兄弟に向くと言われています。

ゲームやアニメ、ライトノベルなどで、ブラザーコンプレックスが扱われることも多いのですが、その場合は兄弟の方が姉妹を理想の恋人化しているものが多く、それに比べるとあなたの彼は妹にそういった感情を持っていない様子です。

両家のご両親も、お二人のことを応援してくださっているので、このままそっと時間をおいてみてはいかがでしょう。無理に距離を縮めようとせず、少しずつ「あなたのお兄さんを大切に思っています。お兄さんのこと、教えてください…」のような感じで。

万葉集の中にも謀反の罪で処刑が迫っている弟、大津皇子(おおつのみこ)が姉(恋人)の大伯皇女(おおくのひめみこ)に会うために飛鳥から伊勢まで夜を徹してやってくる時の想いの短歌が残っています。(「わが背子を大和に遣るとさ夜深けて 暁(あかとき)露にわが立ち濡れし」「二人行けど行き過ぎ難き秋山を いかにか君が独り越ゆらむ」)昔は、兄弟姉妹の恋愛感情はよくあったようで、最近の調査でも、自分を「ブラコンだと思う」と答えた女性の割合は、兄弟のいる女性の2割に上っています。

2つ違いの兄妹で、生まれてからずっと同じ家庭で育っているのですから、「兄のことは私が一番よく知っている」とか「父母の話や思い出を語れるのは私たちだけ」等という思いが押し寄せて、大人げのない態度をしている時期だと思います。しばらくして、彼の妹があなたと彼の関係を受け入れざるを得ないものとして自身の中で消化できれば、「大好きな兄を大切に思って、幸せにしてくれる人」として、あなたのことも大切な存在になるはずです。
(文:大関洋子)

2023/12/21(木)
第271回【職場編】「セクハラを訴えたのはお金のため?」
【Q】うちの会社は男性25人で、女性5人の中小企業です。仕事は男性中心に回っていて、強制じゃないですけど、歓送迎会、忘年会、新年会も出ないわけにはいかない雰囲気があります。飲み会はいつも、男性の下ネタで女性がいじられます。今年の新年会の帰りに調子に乗った課長がお気に入り?の女子社員のお尻や胸を触わってホテルに誘ったんです。周りにいた男性も「おまえ課長のこと好きなんだろ?!」とか「ホテル行っちゃえよ」とか言ったんです。結局、彼女はすごい形相で課長をにらみ、逃げるように帰ってしまいました。私も経験があるんですけど、酔っ払いなんだから大げさにしないで何となく笑ってごまかすとか、できますよね。次の日にでも「誘ってもらってちょっと嬉しかったけど、課長とはないかな」くらいに言えば終わりです。なのに、彼女は課長をセクハラで訴えたんです。みんな見ていたんで結局課長が50万円払って和解しました。彼女は、有給休暇を全部使って退社しました。残った私達は気分が悪いですよね。私達も同じようなことあったし、その度に何とか切り抜けてうまくやってるのにそういう女性社員がいると気まずくなっちゃって、会社全体がギクシャクします。課長も気の毒に何か処分があったみたいです。「彼女は絶対お金目当て。ちょうどやめたかったからセクハラを利用したんだ」と女性社員同士で話しています。これから、社内でどう振る舞えばいいんでしょう。

【A】セクハラをしてはいけないという理解は広がりつつあるものの、性に関する言動の受け止め方には個人差があるので、あなたのように訴えた女性を「彼女は絶対お金目当て」という人もまだいるんですね。そして「有給休暇を全部使って退社した」彼女に対して「残った私達は気分が悪い」「私達も同じようなことがあった。その度に何とか切り抜けてうまくやってる」と言い、その上加害者である課長を「気の毒に何か何か処分があったみたい」とかばっています。

せっかくこうやって相談してきてくれているあなたに厳しいアドバイスをすることをお許しください。

女性社員同士で「ちょうどやめたかったからセクハラを利用したんだ」とまで言っていると聞くと、女性の働く現場ではまだこんなひどいセクハラが行われている上、女性同士がそのセクハラに耐えて「うまく」やっていかなければならないのかと暗澹たる思いです。

「社内でどう振る舞えばいいんでしょう」と言うあなたにお願いです。今回、課長をセクハラで訴えた女性は「当然するべきことをした」という認識を持ってください。残った4人の女性社員で、まず「セクハラ」の研修をして、上司(会社)に対し、男性社員に「セクハラ行為は働く人の尊厳を不当に傷つける社会的に許されない行為であり、働く人が能力を十分発揮することの妨げになること、それは会社にとっても職場秩序の乱れや業務への支障につながり、社会的評価に悪影響を与える」という教育をしてほしい旨、申し入れてください。

厚生労働省は、事業主(社長等)に向け「セクシュアルハラスメント対策は、あなたの義務ですよ!!」「我が社に限ってセクシュアルハラスメントなんか…と思っていませんか?」等の文書を出し、大企業では2021年、中小企業でも2022年4月1日、パワハラ防止対策が事業主に義務づけられ、施行、適用開始され、適切な防止策を行わないと法令違反となり、事業主は厚生労働大臣から助言、指導、勧告を受けたり、社名を公表される場合があることだけでなく、民事上の責任として被害者から損害賠償請求を受けることもあります。

とはいえ、あなたたちのように「セクハラ」の被害を「うまくやって切り抜けている」と考えている人たちに「そういうことがあったら勇気を出して訴えてください」と急にいうのは無理でしょうから、まずは女性社員、次に男性社員、上司と研修をするよう会社に働きかけ、意識改革に努めてください。

※この原稿を書き上げ、最後の編集をしようとしている時に、日本の石油元売り最大手、世界でも第6位の規模を持つエネオスHDの斉藤猛社長が、副社長、常務の経営3者が出席した懇親会の場で「酒に酔って女性に抱きつく不適切行為があった」として解任されたというニュースが流れました。エネオスHDは、昨年、「高級クラブのホステス女性への不適切な行為があった」ということで杉森会長(当時)が辞任したばかりで、2年連続経営トップがセクハラ行為により代わるという事態になっています。「セクハラ」という概念がまだまだ社会に認められていない象徴的な事件ですね。とても残念です。
(文:大関洋子)

2023/12/19(火)
第270回【子親編】「義父がヘルパーにセクハラ?」
【Q】
82歳の義父と80歳の義母が我が家から車で20分ほどのところで2人暮らしをしています。一時同居も考えましたが夫と私というよりは、両親が同居を望まず、将来の施設入居も見据えて今の状況になっています。
先日、ヘルパーさんをお願いしている会社の方から連絡あり、義父が義母の見ていないところでヘルパーさんの身体を頻繁に触るので、ヘルパーさんが行きたがらなくて困っていると言われました。義母に直接は話しづらいらしく私に連絡があったのですが、私から義母に話したところ義母は「お父さんはスキンシップくらいのことと思って触っているのに、ヘルパーがうまく処理できずに大げさに会社に伝えたんだと思う」と言うんです。義母は義父が悪いのではなく、ヘルパーの能力がないと言いたいようなんです。実際そういうこともあるかもしれませんけど、ヘルパーは今の方で4人目で、今後もそういうことが続くようだと来てくれる人もいなくなるだろうし、私が間に入って誰にどう言えばいいのか対処に困っています。

【A】
義父母のことで、その2人の息子の妻であるあなたが、ヘルパーの会社からのクレームで困っているんですよね。おそらくヘルパーの会社としてはあなたではなく、義父の息子であるあなたの夫に連絡をしてきたのではないですか?あなたのお話から、女性であるあなたが両親の介護を担わされている構図が浮かび上がってきます。

本来、会社が義父、本人に注意すべきところですが、義父の気持ち、その後のヘルパーとの関係等を考え、義父に直接ではなくあなたの夫(結局対応はあなたになったわけですが)に連絡してきたのでしょう。ヘルパーの会社からすると、あなたが一番話しやすいと考えたのかもしれません。ただ、あなたには相当負担なことであり、また解決の難しい問題でもあります。直接義父には話しづらいですし、あなたが義母に話せば、義母との関係を壊しかねませんよね。義父母は認知症、もしくはそれに近い状況という様子ではないようなので、夫から父親にきちんと話してもらってください。

ヘルパーさんが4人目ということなので、義父のセクハラは事実であり、以前から今に至るまでセクハラが行われていたと思われます。訪問介護のホームヘルパーさんが、施設で働く介護職員と決定的に違うのは、サービスを利用する人の家に「1人で」行き、排泄や入浴などの身体介護、調理や清掃などの生活援助を行う点です。ヘルパーさんは女性が多く男性の利用者からセクハラを受けるケースが以前から問題になっています。「義母の見ていないところで」とのことですから、義父は「してはいけないことをしている」という認識は充分あります。義母に伝えて、彼女の言い訳(夫をかばおうとするのか、判断力が劣っているのかどちらにしても)を聞いている場合ではありません。義父が高齢であっても、これは訪問介護者に対するセクハラの加害者ということです。
社会のヘルパーに対する偏見、「何でもやるお手伝いさん」「女性なら誰でもできる家事の延長」という思い込みがホームヘルパーのなり手を少なくしています。人手を確保できなければ、「自宅でそれまでと同様の生活したいをしたい」と望む高齢者を支えることはできなくなります。サービスの提供ができなくなって一番困るのは利用者本人です。

ヘルパーの会社がヘルパーを守るために必死になるのは当然ですが、介護される側、またその周辺の人たちが「介護に携わる人に敬意を持って接する」ことが大切です。今回のケースでは、すぐに夫に報告し、夫(息子)から義父に「これが続くようなら訪問介護は無理」としっかり伝えてもらいましょう。義母も義父の様子から逃げいているようなので、一緒に話してもらうことが必要です。もし、義父が認知症が原因でセクハラを行っているようならお医者様との連携も必要ですね。
(文:大関洋子)

2023/11/27(月)
第269回【親子編】「うちの子の学校にも盗撮先生?」
【Q】中学2年の娘がいます。先日、隣の中学校の男性教師が女子生徒を盗撮したということで処分されたという話が保護者の間に広がりました。ニュースでよく報道されるので、いずれは身近なところでも起こるだろうという覚悟はできていたんですけど、実際にそういう話を聞くとショックです。
娘にも聞いてみたところ、生徒の中でもそういう話をしてるというのですが、びっくりすることに女子生徒の間では、「うちの学校にもいるよね、そういうやつって話してるよ。でも私はそういう被害に遭ってないし、みんなが言ってる先生は私は好きだから」と言います。何とか名前を聞き出そうとしたんですけど、「もし違ってたら先生に悪いじゃん。だから言わない」とそれ以上何も言いません。「うちの学校にもいる」って言っている子に何先生か聞いてみるとか、娘の話を元に学校に話しに行くとか、ママ友と話をして情報素収集するとか、どう対応していいのか迷っています。

【A】ご心配はもっともですが、あなたの考えている対応はどれもやめてください。
「うちの学校にもいる」と言っている子に「何先生か聞いてみる」、「娘の話を元に学校に話しに行く」、「ママ友と話をして情報収収集する」のすべてです。

なぜこれらの行動を母親であるあなたが起こしてはダメなのか…。実はココが子育ての一番大事な勘所なのです。話が「盗撮先生」のはなしでなくても同じなので、これはしっかり憶えておいてください。この3つの行動は、せっかく母親であるあなたを信頼して話してくれた中学2年生のお子さんを裏切ることになるからです。

「うちの学校にもいるよね、話してるよ。でも私はそういう被害に遭ってないし、みんなが言ってる先生は私は好きだから」と自分の状態と意見をしっかり伝えています。その上、「もし違ってたら先生に悪いじゃん。だから言わない」と彼女の固い意志も述べています。にもかかわらず、お子さんの意見、意志を無視する対応が「娘の話を元に学校に話しに行く」です。これはどう考えても根本の部分で「娘の話が元」にはなっていません。お子さんの強い意志は、「みんなが言ってる先生は私は好き」「もし違ってたら先生に悪い」です。噂を元にして話を広げ、その結果、無実の人が命を絶ったり、一生を台無しにされるというえん罪などを起こしてはならないという立派な態度です。それを母親であるあなたが裏切ることになります。

「ママ友と話をして情報素収集する」はもっとひどいやり方です。お子さんが正直に語ってくれた話を信じず、親同士の間に噂を広め、不信感を煽ることになります。あなたとお子さんとの間にはこれまで培ってきた信頼関係があり、お子さんは本音で実際に起こっているままを話してくれているのですから、あなたが迷っている3つの行動のうちのどれか1つでも起こそうものなら、信頼関係は一気に崩れ、お子さんは今後一切口を開かず、すべて隠すという行動を取ることになるでしょう。もしそのような状況になった場合、実際に事件が起きたとしてもあなたは何も知ることはできません。それだけででなく、お子さんは苦しい気持ちを1人で抱え込むことになり、お子さんにとっても最悪の結果を招きかねません。

中学2年生、13、4歳の女生徒はたくさんの発達課題を抱えて成長していきます。その中の大きな課題の1つが「両親や他の大人からの情緒的独立を成し遂げ、社会的責任を伴う行動を望んで成し遂げようとする」(1953年、ハヴィガーストの発達課題)ということです。お子さんが学校で感じた不信感や違和感をすぐ話してくれる今の親子関係を大事にして、しばらく行動は起こさず「何かあったらまた話してほしい」旨を伝えて、様子を見てください。あなたの取るべき行動は、こういうことが起こる前からPTA等で役員を引き受けて、時々学校に行くなどという形での行動です。これまでの関係を崩すことのないよう適度な距離を保ちつつ、丁寧な対応に努めてください。
(文:大関洋子)

2023/11/24(金)
第268回【夫婦編】「家に帰りたくない自分がいる」
【Q】3年間交際して、4年前に結婚しました。妻の前にも数人の女性とお付き合いしましたけれど、妻ほどピタッとくる女性はいなくて、妻との出会いは運命的な出会いだったんだ、そんな風に思っていました。結婚前はほんのちょっとでも長く一緒にいたい、そんな気持ちが強くて、仕事中も妻のことが気になって仕事が手につかなくなることもありました。妻との間に子どもができて、「家族」ってなったらどんなに幸せだろうって夢見ていたんです。結婚して2年目に子どもができました。女の子です。もうじき3歳になります。夢見ていた幸せそのものなんです。仕事が終わるととにかく急いで家に帰る、そんな日が続いたんです。
ところが最近、早く家に帰りたいという気持ちと帰りたくないという気持ちが心の中で葛藤しているんです。最近では、真っ直ぐ家に帰る日よりもどこかに寄って1杯やっていく日の方が多くなりました。妻のことを愛していることに揺らぎはないし、子どものことも「目の中へ入れても痛くない」というほど可愛くて、なぜ帰りたくないという気持ちが自分の中に存在しているのか分かりません。

【A】11月22日は「いい夫婦の日」。こう名付けたのは、1988年に公益財団法人余暇開発センター(現・公益財団法人生産性本部)です。“夫婦で余暇を楽しむライフスタイル”を提唱し制定したことが始まりです。11月22日の語呂合わせですが、果たしてこの日が夫婦の絆を確認する機会になるのでしょうか。

夫婦の満足度に関する調査では、海外の論文では、「結婚直後に高かった満足度が徐々に下がり、年を経ると再び上がる「U字型推移」の仮説が注目されたが、後の研究で米国などでは否定されたらしい」(11月22日朝日新聞)とあり、続けて日本での全国調査分析では、夫婦の満足度は年を経るに従って下がる一方、子どもが巣立っても歳を重ねても好転しない。「何もしなければ徐々に悪化していくのが自然の摂理」と書かれています。

リクルートブライダル総研の調査では、夫と妻でも差があり、夫全体で70.2%、妻全体で66.7%と夫のほうが3.5ポイント高く、40代を境にこの差は広がり、60代では夫75.7%、妻66.9%と、その差は8.8ポイントに広がります。この数字が高いと感じるか低いと感じるかは、人それぞれと思いますが、日本のジェンダーギャップは大きく、男性の役割、女性の役割を決めつける人が多い中での数字であること、結婚しないという選択をする人、特に女性が増えていることも考慮しないと、社会全体の結婚、夫婦に対するイメージはつかめないと言えるでしょう。

さてあなたは、結婚4年目とのこと。昔「3年目の浮気」という歌がありました。結婚3年前後は新婚時代の熱愛が冷め、相手の嫌なところが目についたり、結婚生活にマンネリを感じたり、夫婦の関係性が変わり始める時期でもあります。もうじき3歳になる女の子も生まれ、「目の中に入れても痛くない」ほど可愛い。なのになぜか最近、真っ直ぐ家に帰らない日が続く。早く帰りたい気持ちと帰りたくない気持ちが自分の中で葛藤している…。

夫のあなたがこういう葛藤に揺れている時、妻はどんな状態で、どんな気持ちでいるか考えたことはありますか?「妻のことを愛していることに揺らぎはない」と言っていますが本当でしょうか?妻は2年目に妊娠、出産。以来3年近く初めての育児で「母」としての責任や授乳、それに続く離乳食、仕事を持っていれば育児休暇から仕事へ復帰する時期でもあります。

関係がギクシャクしている夫婦からよく聞こえてくるのは、「男と女から、パパ、ママになってしまった」という声です。この時期は、男性であるあなたと女性である妻が「父」「母」へと変化しなければ子どもは育てられません。「目の中に入れても痛くない」とだけ言っているあなたは立ち位置が違います。ここが「幸せな家族」を夢見ていたあなたの踏ん張りどころです。たまには子どもをどこかに預けて、「男と女」に戻ってみるのもいいかもしれませんね。

「何もしなければ徐々に悪化」していくという指摘の後に、「それでも、打つ手はある」と続けて、「会話、情緒的サポート、夫の家事」が増えれば、夫婦とも満足度は上昇したと西野理子著「夫婦の関係はどう変わっていくか」を朝日新聞の天声人語は紹介していました。

あなたに今必要なのは、あなたも家族の一員であり、家事も育児も妻だけの仕事ではなく、あなたの仕事でもあるという意識を持つことです。そうした意識をしっかり持てれば、妻との関係もより良いものになり、また「早く帰りたい」と思えるようになると思いますよ。
(文:大関洋子)

2023/11/02(木)
第267回【恋愛編】「デート代は私持ち」
【Q】彼とは8ヶ月ほど前に合コンで知り合いました。会社の同僚が5対5のセッティングをしてくれたんですけど、男性はそれなりに高学歴で名の知れた会社の人ばかりだったので、安心でした。その中の1人と何度か食事をした後、付き合うようになったんです。最初のころ、デート代はすべて彼持ちでした。学生時代に付き合っていた彼とはいつも割り勘だったので、社会人でそれなりの会社にいる人は違うなって思っていたんです。3ヶ月ほどした時、彼がスマホ決済しようとしたらエラーになっちゃって、彼が「申し訳ないけど出しといてくれない?」って言うんです。「他の決済方法ないの?」って思ったんですけど、その時は私が出したんです。そこからだんだんおかしくなって、3回に1回くらい私が出すようになり、3回に2回が私になり…。彼が「今日はオレが出すよ」っていう時もあるんですけど、そういう時は決まって金額が少ない時なんです。もちろんお金のために付き合っているわけじゃないですけど、そんなに贅沢なデートをしているわけでもなし、給料もそんなに少ないわけないし…。誰か他に女でもいる?と疑いたくなることもあります。将来に不安も感じるし、別れようかなって思う時もありますけど、お金のことを除けばすごくいい人なんで迷っています。

【A】残念ではありますが、すぐ別れた方がよさそうですね。「お金のことを除けばすごくいい人」とあなたは言っていますが、今回のご相談のような「お金のこと」は除けません。「一事が万事」ということわざを知っていますか?物事の一面から他の面や全体を知るということです。お金の問題はとてもデリケートな問題で、ある意味で「一事」ではなく「万事」という要素もありますよね。

付き合いはじめのころ、デート代はすべて彼持ち。3ヶ月経ったころにスマホ決済がエラー。それをきっかけにしてあなたが出す回数と金額が徐々に増えていきました。「オレが出す」時は金額の少ない時。もう、この時点ではっきりしていますよね。まだ気づかないようでしたら、いい加減目を覚ましてください。彼が年下で学生で自分は社会人、デート代は「あなたが社会人になるまで私が持つ」という約束でもしているならともかく、明らかに彼はあなたにたかっています。「ゆすり、たかり」の類だと思ってください。

気がつくとデート代を出すのはいつも自分ばかりになっている、それを隠すかのように金額が少ない時は「オレが出す」と言う。彼を「ひも」のような存在として繋いでおきたいなら別ですが、「いい人」だからこのままお付き合いして結婚ということにでもなったら、おそらくあなたは1人で苦労を背負い込むことになるでしょう。結婚は現実的なことですから、「いい人」だけではやっていけません。「ゆすり、たかり」のような根性の人が「いい人」ですか?よく考えてみましょう。

お金がないならないなりにデートコースを工夫する、気候のいい時なら公園でお弁当を食べるなど、2人で楽しむ方法はいくらでもあります。「高学歴でそれなりの会社の人」とのことですから、きちんとした収入はあるはずです。他に女でも?と不信感を持ってしまうあなたの感覚は正しいかもしれません。

ただ、あなたは「デート代」を持つ男性が「いい男性」と考えていませんか?男女の賃金格差が存在する中で、そう考えるのも無理はないのですが、どちらが持つかは性で決まるものではありません。そのことも充分考えた上で、どんな男女関係がいい関係なのか考えてみてください。
(文:大関洋子)

2023/10/20(金)
第266回【職場編】「部下の女性にはめられた?」
【Q】就職して8年、今年課長に昇進しました。男性は私も含めて6名、女性が3名です。やりがいも感じられる人数でもあり、なかなかまとめるのが難しい人数でもあります。同期で課長は私だけなので、高校、大学とサッカーをやってきたことが評価されての昇進かなと思います。入社したてのころから明るく振る舞い、何でも積極的にこなしてきて、課長になってからも部下には明るく接しながら、時に課長として厳しく指導するというやり方をしてきました。なんな中で難しいなと思っていた入社2年目の女子社員2人のうちの1人から、もう1人の女子社員が彼氏のことで悩んでいて、仕事も手につかず、私の負担が重くなっているので相談に乗ってあげてほしいと言われたんです。悩んでいるという女子社員に「彼氏のことで悩んでるんだって?」と真っ直ぐに聞いてみたら、「はい」と言うので社内では話しづらいだろうと社外で3回ほど話を聞きました。1ヶ月ほどして、部長に呼ばれ「女子社員にセクハラしてるそうじゃないか。複数の女子社員から訴えがあった」と言われました。女子社員の相談に乗ったこと以外、思い当たることがないし、それだって頼まれたわけで、他の誰にも話していないので2人以外知らないはずなんです。真相ははっきりしませんが、私は部下の女子社員から嫌われていてはめられた?そう思ったら、出社するのが辛くなりました。

【A】あなたは今年課長に昇進し、やりがいを感じながら積極的に仕事をこなし、明るく、時に厳しく指導してきたところ「セクハラ」と複数の女子社員から訴えがあったと部長に言われたんですね。自分では思い当たらず、部下の女子社員から嫌われてはめられた?と思い、出社が辛くなったというご相談。

残念ですがお察しの通りのように思います。同期のトップで課長職になり「厳しさ」が部下から受け入れられなかったと思うことはありませんか?「彼氏のことで悩んでいるんだって?」と「真っ直ぐに聞いた」と言っていますが、これもアウト。社外で3回その女子社員と二人きりで会うのも「妄想型」と思われたり、課長から誘われて断りづらかったと言われれば「対価型」セクハラとされても仕方ありません。以下の「セクハラ」についての説明をしますが、まったく思い当たることがなければ、「はめられた」可能性は大きいかもしれません。

「職場におけるセクハラ」は男女雇用機会均等法によって次のように定義されています。
・職場において従業員の意に反する性的な言動が行われること
・性的な言動を拒否したり抵抗したりすることによって解雇や降格、減給などの不利益を受けること
・性的な言動によって職場の環境が悪くなり、従業員の能力の発揮に重大な悪影響が生じること

そして、「対価型」「環境型」「制裁型」「妄想型」の4つに分類されています。「対価型」は昇給・昇格させる代わりに性的な行為を求めたり、その反対に要求に応えないと降格させたりする、「環境型」は職場にヌードやアダルト系のポスターなどを貼ったり飲み会でのお酌や料理の取り分け、カラオケのデュエットを強要する、「制裁型」は「女性はサポート役に徹すべき」と発言したり、女性上司や同僚の発言を無視する、「妄想型」は相手が笑顔で挨拶をしたり、出張に同行したりするだけで「自分のことが好きかも」と両思いだと思い込み、毎日のようにメッセージを送ったり休日を一緒に過ごそうとしつこく誘ったりする、等々です。

人事院の令和2年の「セクシャルハラスメントの防止等の運用について」の改正では、細かい規定ややってはいけない発言の事例も出ています。「男の子、女の子」「僕、坊や、お嫁さん」「おじさん、おばさん」などと人格を認めないような呼び方ももちろんアウトです。

ここまで手の込んだ嫌がらせをする女子社員もひどいですが、そのくらいにしないと張り切り新課長をおとなしくさせられないと女子社員に思わせたあなたの部下に対する管理術を反省してみてください。人事院の規則は厳しいと思われるかもしれませんが、今までいかにセクハラが野放しにされていたか考えて、普段の人間関係で信頼されるよう努力が必要ですね。
(文:大関洋子)