この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。 主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。 ■大関洋子プロフィール■ (浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー) 1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。 著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。 |
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2012/06/14(木) |
第3回 【夫婦編】「いい夫の条件て何?」 |
【Q】
結婚して3年。まだ子どもはいません。夫は、他人から見るととてもいい夫なんです。優しいし、親切だし、気も利くし。そういう点では、私から見てもいい夫かな・・・。どこかレストランに行けば、入り口のドアは必ず開けてくれる、まず私にメニューを開いて渡してくれる・・・。彼にはそれが普通みたいなんです。紳士っていうか・・・。友達の旦那なんて、居酒屋行って、さっさと自分の飲み物頼んで、自分のが来たら先に飲み出しちゃったりするようなタイプが多いから、たぶん私の夫はいい人なんですよね。でも、家にいてもあまり会話はないし、いつも何か仕事のことをしてるんです。でも、何か頼めば文句も言わずにやってくれるから、私のために頑張ってくれてるんだなって思おうとするんですけど、「この人、なんで私と一緒にいるんだろう? 私じゃなくてもいんじゃない?」って・・・。いい人だって思うから、文句も言えないし、喧嘩もできない。友達に愚痴っても「何言ってんのよ!あなたの旦那はいい人だからいいじゃん」で終わり。最近、彼と一緒にいること自体が苦しくなってきちゃって…。 【A】 「えっ? この相談て、私が書いて投稿した?」って一瞬思っちゃいました。私の夫も、周りから見ると「とてもいい夫」で、私の両親にもとてもよくしてくれたので、私が夫の愚痴でも母に言おうものなら、 「何言ってんの! あなたがわがままなだけじゃないの! 少しはあなたも妻らしく我慢しなさい!」 と叱られ、友達に言おうものなら、 「あらっ、ごちそうさま! それって、のろけ? もしよかったら、うちの夫と取り替えてあげてもいいわよ」 と笑われ、本気で私の胸の内の辛さなど聞いてくれる人はいませんでした。 その上あなたは、あなた自身が「いい夫かな・・・」と思ってしまうんですよね。だって、よその夫は妻のことは二の次、三の次なのに、あなたの夫はあなたのためにドアを開け、メニューを開き、頼めば何でもしてくれるんですものね。こういう夫は、子どもができるとまめで子育ても上手い。子どもはあなたよりパパを好きになること請け合いです。 とはいえ、あなたは苦しい。 結局、「いい夫」か「悪い夫」かは、親や友達や社会が決めるのではなく、あなた自身が決めることなのです。あなたの夫を世界中の人が“いい人”と言っても、あなた自身が「一緒にいることが苦しい」って思っているとしたら、それはやっぱり苦しいんです。 いい夫の条件なんて、時代や国、もっと言えばそれぞれの人によって、まったく違います。私の母たちの時代は、夫にたくさん愛人がいれば「浮気は男の甲斐性」などと周りに言われ、「あんた、お金のたくさんあるいい男捕まえたじゃない。浮気なんて我慢しなさいよ」と諭された。時代が下って今は、あなたの夫のように、優しくて仕事熱心な男がいい男の条件になる。そういえば、ちょっと前までは「三高」とか言って、「高収入」「高学歴」「高身長」な男性がもてはやされましたね。 おわかりですか? そう、彼がどうかということよりも、あなた自身がどう思うか、どう感じるかの問題なんです。いくら夫があなたのことを愛していると思っていたり、愛していると言ってくれたり、当の本人の“あなた”が、「愛されてるなあ」と思えなければ、愛されていることにはならない。人がなんと言おうと「この人、私じゃなくてもいんじゃない?」と感じるなら、その感覚を大事にしてください。 いくら、「私のために頑張ってくれている」と思おうとしても、いつも家に仕事を持ち込んで「僕には話しかけないで!」みたいなオーラを背中から発していると感じるようだったら、あなたの夫は「いい夫のふり」をしているだけかもしれません。ただ、このふりも3年間続いているようなので、もしかしたら、あなたの心の内側の苦しさに気づかず、「これだけしてあげているんだから大丈夫」と思い込んでいるという可能性もあります。いずれにしても、この「一緒にいること自体が苦しい」というあなたの気持ちを率直に夫に話して、二人の意識や価値観のずれについて話し合い、修正してみてください。たとえ喧嘩になったとしてもです。別れるという選択肢もありますけれど、その後でもいいんじゃないですか。 さて最後に、読者の皆さん、お友達にこういう悩みの人がいたら、「のろけ?」と思わず、話をよく聞いてあげてください。夫が“いい人”と思われているということは、妻は逆に“悪い人”、“わがままな女”と思われがち。誰にも分かってもらえない胸の内、とっても苦しいはずですから。 |
(文:大関洋子) |
2012/05/31(木) |
第2回 【恋人編】「妹が私の恋敵?」 |
【Q】
彼とは付き合い始めて3年になります。会社の同僚で、最初はグループで飲みに行ったりしていましたが、半年くらい経ったころ彼から誘われ、お付き合いを始めました。プロポーズはまだだけど結婚は既定路線です。ところが、先日彼の家を訪ねると、洗面所に青とピンクの歯ブラシが並んで置いてあったんです。ショックでした。その時は何も言わず、数日後「この前洗面所に歯ブラシが2本あったけど…」と言ってみました。そしたら「妹だよ」とあっけらかんと言うんです。その時思い出したんです。去年の秋皆で飲みに行こうって相談してた時、「今日は妹の誕生日で、一緒に食事することになってるから」って彼がみんなと飲みに行かなかったことがあったって。彼に妹を紹介されて、一緒に食事に行った時も、3人で歩いていると、急に彼の妹が私と彼の間に入って、彼の腕に捉まったりしたんです。その時は仲のいい兄妹でうらやましいと思ったんですけど、考えてみると、それって変ですよね。結婚を真剣に考えているだけに、そんな彼の態度が不安です。 【A】 不安ですよねぇ。大いに不安になっていいと思いますよ。「彼に別の女性がいた」というのと違って、「妹のピンクの歯ブラシが並んで置いてある」とは・・・。まだ「浮気発覚!」の方が対処が楽だったかもしれませんね。彼は妹をまるで恋人か妻のように扱っていますよね。 このように兄妹・姉弟を恋人のように思う感情を、シスターコンプレックス(シスコン)、ブラザーコンプレックス(ブラコン)などと呼んでいる人もいます。元はドイツで活躍したユダヤ人の精神科医フロイト(1856−1939)が100年ほど前に唱えたコンプレックス理論から派生しています。フロイトは、4、5歳の子どもが異性親を好きになる傾向を発見し、それをギリシャ神話になぞらえて『エディプス感情』と名付けました。そして、その感情がいつまでも続くようであると、それは『エディプスコンプレックス』という「心のくせ」、「心の偏り」となり、その感情をきちんと意識しないと状況に流されがちになると考えたのです。 あなたの彼の場合は、「母と息子」ではなく、「兄と妹」という変形版というところでしょうか。実際、ヨーロッパでは、紀元前950年程昔の古代エジプト人「オシリス王」の妹「イシス」が、妹でもあり妻でもあったと記されています。日本でも古事記や万葉集には、「吾妹子」(わぎもこ)の記述が度々登場し、大昔は兄と妹の恋愛や結婚は珍しいものでもなかったことを教えてくれます。 人口が少なく異性の出会いも少なかった昔は、種(しゅ)の保存のためには手近な兄や妹、姉や弟で間に合わせよう(あまりいい表現ではありませんが)としたり、幼少期から一緒に暮らしていて安心安全ということもあったりしたのでしょう。しかし、時代が経つと血族結婚は遺伝子の組み合わせに問題が多いらしいことがわかり、三親等内の婚姻を禁止するようになりました。 このように古い歴史を紐解くと、あなたのライバルは手強い相手のようです。とは言っても、あなたの友人知人で逆に「お兄ちゃんなんて全く好みと違う!」とか「妹の顔も見たくない!」という兄妹もいますよね。それは、自分の子孫をより多く残すためには、遺伝的に自分とは遠い(お互いの欠点を補い合うような)遺伝子の結合を求めようとする本能に近いものが働いているからと考えられます。現代の世では特殊な例を除いて、母と息子、兄と妹などの関係は、それぞれに適切なパートナーができることによって自然に消滅していきます。 さて、あなたの彼の場合、あなたと付き合って3年で、まだこの様子だとかなり根の深い感情が残っているように思います。そろそろあなたの気持ちをはっきり話してみてはいかがでしょうか? 不安・不審な気持ちを残しての結婚は、お勧めできません。この際、いい子になろうとせず、不快なものは不快とおっしゃる勇気を持ちましょう。そこから何かが開けるはずです。結婚はあなたの気持ちを彼がどう受け止めるかを見てからでも遅くはないですよね。 |
(文:大関洋子) |
2012/05/17(木) |
第1回 【職場編】「これってセクハラ? それとも当然のお付き合い?」 |
【Q】
大学を卒業して、今の会社に就職して3年です。私の部署は、私を含め女性が3人、男性が8人で、入社以来お世話になった上司が、今春異動になり、新しい上司の下で働くようになりました。以前の上司とは、食事に行ったり、飲みに行ったりしましたが、常に4〜5人のグループでした。ところが、今度の上司は、二人で行きたがります。他の人たちとの関わり方を見ていても、男性同士二人で出かけたりもしているようなので、そういうやり方の人なのかなあとも思うのですが、なんだか服装が軽装になったとたんに誘われ出したような気がして、とても嫌な気分です。「私って意識しすぎ?」なんて思うこともあり、そう考えると、上司の対応以上に自分が嫌になったりもします。上司は36歳、既婚者で、お子さんが二人。社内では将来を有望視されている人です。 【A】 これをお読みになった読者の皆さんの中で「男性上司」の立場におられる方は、「なんだよそれ?! たまにはおごってやって、他の人がいたら言えないような愚痴や悩みも聞いてやろうとしてるのに“セクハラ”?! 冗談じゃないよ!」とお思いになったでしょうか? あるいは、「“服装が軽装になったとたん、誘われ出した?” 何言ってんだよ、こいつ! その二の腕で? そのペシャンコな胸で? ハッ?!」みたいに思いました? それとも、「図星!」って感じましたか? いずれにしても、これは「アウト!」です。 時間外や休日に「女性の部下」を飲食やカラオケ、ボーリングなど、とにかく二人きりで誘った場合、相手の女性が「セクハラ」(セクシュアル・ハラスメント)と感じれば、「セクハラ」になってしまいますから要注意! もちろん、誘われた女性の側が、その行為を喜んで受け入れているように見えても、実は「嫌なのに耐えている」なんてことだってありますからね。 「“いやよ、いやよ”も“好き”のうち」 なんて言葉がありましたけれど、今、男性上司が考えなければいけないのは、むしろ、 「“いいわ、いいわ”も“いや”のうち」 とでもいったところでしょうか。 さて、ご相談のあなた、新しい上司は「男性同士でも二人で」出かけたりしているから「これが彼のやり方?」と思ってあげようと無理をしていますよね?! 異性のあなた(これが欧米なら同性でもというところでしょう)が「二人で行きたがる」と感じるような誘い方は言語道断。一昔、二昔前ならいざ知らず、今の世の中、ご自分の心に素直に従って、「No thank you!」とおっしゃっていいのです。 ましてや、「軽装になったとたん」と感じるのであれば、それもそのあなたの「感じ」を大事にしてください。いつまでも、母や祖母たちの時代のように「女であることで自分の感情(行きたくない)や自分の感覚(薄着になったとたん)」を押し殺したり、見て見ぬふりをするのはやめましょう。あなたは上司のことを「既婚。お子さん二人。将来有望(視)」とおっしゃって、その方に「下心があるはずがない」とか、「好意を無視しては失礼」とか考えていますね? 外国映画に出てくるキャリアウーマンのように、かっこいい台詞は吐けなくても、とりあえず「ありがとうございます。また、皆さんとご一緒にでも、お誘いくだされば伺わせていただきます」とかなんとか、やんわりと断ってみてはどうでしょうか。 日本の文化の中では、男性上司が女性の部下を誘ったら、受けて当然という意識が長い間ありました。自分の心に従って「嫌」ということは「女らしくない」とか「かわいくない女」という評価を受けてきました。そして、挙げ句の果ては、会社をやめざるを得なくなったり、うつ病を発症したりしてきたのです。もう、そういうことはやめましょう。 そして、最後に男性の方々へ! 「“はいはい”と黙ってついてきたのに、なんで俺が“セクハラ”って訴えられなきゃなんないの?!」とショックを受ける前に、ご用心、ご用心! まずしっかり、女性を対等な一人の人間として扱うトレーニングをなさってくださいね! ※セクハラ 職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること(改正男女雇用機会均等法)。セクハラの構成要件としては、「相手の意に反する性的な言動がある」「職場の労働条件について不利益を受けるか、就業環境が害される」こと。 |
(文:大関洋子) |