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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2024/07/26(金)
第285回【子親編】「女の運転する車になんて乗れるかぁ!」
【Q】
5年前、義母が70歳になったのを機に夫の両親と同居しました。車は私と夫用、両親用の2台あって、4人とも運転免許を持っていますがおもに私と義父が運転しています。義父は今年80歳で、去年かなりひどい事故を起こしましたが、軽症ですみました。夫と旅行に出かけるときは必ず私が運転するくらい運転好きなので、義父に免許の返納を勧めてみたんです。「お義父さん、出かけるときは私が運転しますから、免許を返納したらどうですか」と言いました。私と2人の話の時は、「そうだなあ、そうしてくれるなら、タイミングを見て返納するか」みたいな感じで、まんざらでもない様子だったんです。ところが、その会話にお義母さんが加わって「私も運転しますよ」と言ったとたん、「ふざけるなぁ、女の運転する車になんて乗るかぁ!」と、私の話もどこかに行ってしまいました。

義父の運転は明らかに危険になってきているので少しでも早く返納させたいんですけど、お義母さんが入ったことで失敗してしまった説得をどのように進めればいいでしょうか。

【A】
お義父さんがおっしゃった「ふざけるなぁ、女の運転する車になんて乗るかぁ!」の言葉の中の「女」は「女性一般」を指しているのではありません。お義母さんに対しての「女の運転する車」、「おまえの運転する車になんか乗れるかぁ!」という意味です。もっと言えば、「俺はおまえという女を“人生”という俺の車に乗せてやって、事故1つ起こさず、おまえの体にも心にもけがをさせずに運転してきてやっただろ!今さら“人生”と車の運転をおまえに任せられるか!」という気持ちの表現です。お義父さんは自分でもよく理解できないままこの言葉を吐いてしまいました。

心理学的には、こういう言い方を「裏面交流」と言います。本当に言いたいことは別にあり、思わず腹立ち紛れに放つ言葉の裏に本音が隠されているときの人と人との交流を言います。母親が子どもに向かって「何してるの!?」と言ったりするのがよくある例で、子どもは真っ直ぐ受け取って「ご飯食べようとしてるよ」と答えたりします。ですが、母親はそんなことを聞いているわけではないので、「そんなこと聞いてるわけじゃありません!」ともっと声を荒立てます。子どもは困って、小さな声で「“何してるの”って聞いたから」とつぶやくと、母親はさらに大きな声で「屁理屈言ってるんじゃありません!さっさと食べて、さっさと学校へ行きなさい!」となるわけです。母親が本当に言いたかったのは、「何してるの」ではなく「早く学校に行きなさい」だったわけです。

さて、お義父さんの怒りは、お義母さんの「私も運転しますよ」という言葉に対する「裏面交流」でした。ですので、ご心配なく。しばらく日を置いて、もう一度あなたから「お義父さんが必要なときにはおっしゃってくだされば、いつでも運転手としてお伴します」と言ってみてください。あなたの言葉にお義父さんの気持ちも和むはずです。

社会的にはジェンダーギャップの風潮も残っていて、「運転」という作業は、脳科学の研究で、女性は男性より空間認識能力が低いから向いていないとか、そのせいで車線変更や高速道路の合流が下手とか、車庫入れが苦手とか言う人もいます。運転している男性が下手な運転に出くわして運転席をのぞき「やっぱり女だ!」と言ったりすることもあるのですが、思い込みが多いことは皆さんもご存じのことと思います。万一当たっていたとしても、性による能力差というより、長年の女性差別により機会を奪われてきた女性の不慣れが原因ですので、女性のドライバーが増えることで、「女は運転が下手」というのは徐々に減ってくるはずです。

お義父さんはそういった社会の風潮はあったと思われますが、本当に言いたかったのは、「女の運転する車」ということではなく、長年の夫婦生活の中でお義母さんに言いたかったことを車の運転ということに置き換えて言ったと考えてください。

おそらくお義父さん自身も返納を考えてはいるのだろうと思います。まず、お義父さんが返納しやすい環境、車を利用しなくても困らない状況を作る努力をして、そうした後に「あなたが」お義父さんに話すことでお義父さんも返納する気になってくれると思いますよ。
(文:大関洋子)

2024/07/19(金)
第284回【親子編】「男の子らしく強い子に育ってほしい」
【Q】
小学3年生の娘と小学2年生の息子がいます。
先日、家族4人で公園に遊びに行きました。夫と子どもたち2人で鬼ごっこをしていたとき、子ども2人がぶつかって、2人とも転んでしまい、泣き出しました。娘の方は特にけがもなかったんですけど、息子の方は細かな石で、膝を少しすりむいてしまいました。昔なら「つばでも塗っとけ!」レベルです。近くに水道があったので、一応洗ってやったのですが、なかなか泣き止みません。息子の世話をしていて娘は放っておいたので娘も大げさに泣き続けていました。夫が息子に近づいて「男だろっ!泣くな!」とちょっと強い調子で言ったんです。夫がそう言ってくれたので、泣き止むかと思ったら、むしろ泣き声が大きくなり、5分くらいな泣き続け、「お姉ちゃんの方が大きいのになんで僕は泣いちゃいけなくてお姉ちゃんはいいんだよぉ」とさらに大きな声で泣き出しました。息子はしょっちゅう泣くんです。男の子ですから、男の子らしくもっと強い子に育ってほしいんですけど、どのように育てたら男の子らしく育つのでしょうか。

【A】
あなたの家庭では今日も「女の子は女の子らしく」「男の子は男の子らしく」育ってほしいと思って子育てをしているのでしょうね。この「らしさ」の押しつけは、その人、その子のやりたいことを妨げたり将来の可能性を奪ったりすることになるとして、そんな鎖を外していこうという考え方が広がっています。

「ジェンダーフリー」という言葉で注目されるようになって来たのは1970年代に入ってからです。未だに学校教育でもジェンダーへの偏見が多く見られますが、男女の性差を強調する学習ではなく、その前に「自分らしく生きること」を学ぶことが大切だと思います。社会的な性差にとらわれず、「自分らしく」生きることをお子さんたちに伝えてください。

2023年9月に博報堂が15歳から69歳の1万人を対象に行った全国調査では、「らしさ」で「嫌な思いをした」という人が4割、「子どもには女らしさや男らしさを押しつけたくない」「自分の子どもに“女だから”“男だから”となるべく言わないようにしている」と答えた人が7割弱おり、次の世代に「らしさ」を押しつけない意識があることがわかりました。

あなたの考えている「男の子らしさ」は、「強くて野心的、勇敢、頼りになる、タフ、エネルギッシュetc.」そして「女の子らしさ」は「人に優しい、子ども好き、身ぎれい、周囲に気遣いができる、気が利く、話し方が丁寧、所作が繊細で綺麗etc.」ですよね。

この「らしさ」の中で多くの人が「自分らしさ」を押さえつけられ奪われて、苦しんできました。「泣く男 古典に見る「男泣き」の系譜」(寺田英視著)は、日本の古い神話の中では、男の神様である須佐之男命が大泣きする場面もあり、その後も木曽義仲、楠木正成、豊臣秀吉など泣く場面がちゃんと書かれていて、男も泣くという文学史書になっています。日本の古典を紐解くと、英雄豪傑ほど派手に泣いているのがわかります。

近代になり、「泣く」という感情を素直に出すことの大切さが封建主義的な社会の土台の中で封じられ、男の子は「泣かずに国のために命も捨てられる」、女の子は「そういう男性を優しく支える」という「らしさ」に固定されてきたようです。本当はもっと大きく「その子らしく」羽ばたいていけるはずなのですけれど…。男の子が泣いても女の子が泣いても、「一人の人間」としてその子の生まれ持った「らしさ」を伸ばしてあげてくださいね。そして、あなたも「女らしく」「妻らしく」「母らしく」から「あなたらしく」生きていけたらいいですね。
(文:大関洋子)

2024/06/28(金)
第283回【夫婦編】「夫は“えせジェンダーフリー論者”?」
【Q】
結婚して3年、子どもはいません。夫は会社の先輩で、価値観、特にジェンダーについての価値観が近いと思って結婚しました。結婚後は、私が転職して、今は別々な職場です。夫は日ごろからジェンダーについての持論を語ったり、職場でもセクハラやパワハラに抵抗して、女性の味方というスタンスです。

今は、私が夫より1時間くらい早く帰宅するので、毎日私が夕飯の支度をします。
ほぼ毎日私に電話をかけてきて「今日はカレーね」とか「今日は肉じゃがね」とか、食べたいものを私に伝えるんです。以前は、夫の食べたいものを作ってあげようという気持ちもあったのですが、毎日のことなので最近はちょっと面倒に感じます。いきなり「××」って言われても、買い物からしなくちゃならないこともあって、「何で私に任せてくれないの!」というのが本音です。
夫と話をするとよく話題になるのが「おーい お茶」です。「あれ、ひどいよね」となるのですが、「今日はカレーね」「今日は肉じゃがね」というのだって同じですよね。夫にそう話したら「えっ、なんで?僕の食べたいものを食べさせたいって思わないの?僕が作るときは君の食べたいものを作ってあげたいと思って作ってるよ」って言いました。
「こいつ、えせジェンダーフリー論者か!?」まったく私の気持ちを分かろうとしません。

【A】
6月12日、世界経済フォーラム(WEF)は、世界の男女格差の状況をまとめた2024年版「ジェンダーギャップ報告書」を発表しました。日本は調査対象となった146カ国中118位で、昨年の125位から若干改善はしたものの、主要7カ国(G7)では最下位です。教育、健康、政治、経済の4分野で男女の平等の度合いを分析したもので、男女が完全に平等な状態を100とした場合の達成率で比較するものです。世界全体の達成率は68.5で、トップは15年連続アイスランドで達成率は93.5、日本は66.3でした。ちなみに韓国は69.6で94位、中国は68.4で106位です。2006年に報告書の発表が始まって以降、日本の順位は概ね下落傾向です。毎年、この発表の前後には「被災・復興にジェンダーの視点を(介護、炊き出し女性に偏る負担)」、「東大に女性がなぜ少ない?(学生2割、教授1割)」「女子の進学差別(ケア要員、地元にとどめたがる親)」などなど、ジェンダーギャップの記事が多く掲載されますが、改善にはつながっていません。

そんな中であなたの夫の「今日はカレーね」「今日は肉じゃがね」は、まさに「おーいお茶」そのものです。

少し古い話になりますが、経営コンサルタントの海部美和さんが日経ビジネスオンライン(2014年7月30日付)に寄せた「シリコンバレーに戻ってきた日本企業たち」の記事の中で、伊藤園についても現地での営業努力の様子を紹介し、さらに「余談」として「あの『おーいお茶』という男尊女卑的な響きのある商品名は何とかならないのか、と思うのだが…」と述べたところ、ネット上では「言いがかりも甚だしい」「被害妄想すぎる」「そもそも『おーい!』って女の人でも普通に使うだろ」「いつも差別のことで頭がいっぱいなんだね」など大きな反響がありました。

海部さんの余談に対し伊藤園は、「“おーいお茶”は店頭でお客様に呼びかけているような親しみが込められ、発売以来、皆様にご愛顧いただいております」とコメントしています。しかし、1970年、新国劇の島田正吾さんを起用して“おーいお茶”と呼びかけるCMを放送したときには、伊藤園のコメントはどうあれ、“旦那が奥さんに「お茶を持ってこい!」と言いつけている”と受け取られる内容だったことは確かで、ネット上では「我が家では夫が私にお茶を持ってくるよう言うときは“伊藤園!”とだけ言います」といったコメントもあるくらいでした。

今もし、海部さんと同じことを言う人が出てきたとすると、ひょっとすると大きな問題として取り上げられ、伊藤園も謝罪に追い込まれるかもしれませんね。それくらい社会が敏感になりました。少なくとも「『おーい!』って女の人でも普通に使うだろ」などという主張は通りません。今では、男性には女性に対する命令語があっても、女性には男性に対する命令語はなく、「お願い」するニュアンスの言葉しかないというのが常識だからです。女性が「おーいお茶」と言おうとすると「すみません、お茶を持ってきてくださる?」あるいは「持ってきてください」となるのが一般的で、和田アキ子さんくらいのキャラでもない限り、相当乱暴に言ったとしても「おーい」ではなく「ねえお茶」くらいになりますよね。

あなたの夫の「カレーね」「肉じゃがね」というのも明らかな命令ではないにしても、あなたからすると命令と受け取れるのでしょうから、あなたの言う通り「えせジェンダーフリー論者」ということでしょう。ジェンダーについての持論を語る方のようなので、あなたの気持ちを丁寧に話してみてください。気持ちは通じるかもしれません。
(文:大関洋子)

2024/06/17(月)
第282回【恋愛編】「58歳の結婚は何のための結婚?」
【Q】
婚活サイトで知り合った男性とお付き合いしています。
昔と違い婚活サイトに登録する人も高齢者が多くびっくりしました。そう言う私も58歳ですから、高齢者ということなんでしょうけど。5年前に離婚をしたんですけれど、2人の息子も独立したし、残りの人生、自分のために生きてみようかなと思って、再婚後も夫に強く縛られることのない生活を夢見て婚活サイトに登録したんです。もっとも、一人では経済的に不安ということもありますが。彼は66歳で、35年の結婚生活の後、一昨年離婚したらしいんですけど、一人は寂しくて登録したそうです。粗野で乱暴なところのない紳士で、優しいし、クラシック音楽のコンサートに行ったり、映画を観に行ったりすることが趣味で、私と同じだったのでお付き合いを始めました。
年齢も年齢ですし、早く結婚しようということになってはいるんですけど、最近、お互いに愛情があるわけではなく、彼が私に求めているのは家政婦としての役割とか、介護士の役割とかだっていうことが分かってきたし、逆に、私が彼に求めているのは生活の保障、要するに彼のお金ということが何となく分かってきてしまったんです。これまでそういう自分の気持ちにフタをして付き合ってきたんだなあと思います。
でもやっぱり結婚はしたいし、これからどういう風に彼との関係を進めていけばいいのか、先が見えなくなってしまいました。

【A】
76歳で89歳の男性と結婚した映画監督でもあり作家の松井久子さんは、「この年齢での結婚は新たな家族を作るためのものではないと実感しています」と言います。結婚のお相手は、同じく映画監督でもあり思想史家の子安宣邦さん。映画「折り梅」「ユキエ」や小説「疼くひと」(松井さん)、映画「近代の超克」「可能性としての東アジア」(子安さん)など、作品が多数公開、出版されています。

二人は市民講座の講師と生徒として出会い、10ヶ月の交際を経て、2022年結婚届を出しました。それぞれ、前の結婚の時に儲けた子どもたちにも背中を押され、事実婚という選択もあったけれど「コロナで入院しても、結婚していないとお見舞いにも行けないわよ」という子安さんのお子さんの言葉もあり、結婚届を出したそうです。

「もうこりごり」と思っていた結婚を「まさか70を過ぎて再婚するなんて思ってもいませんでした」とも言っています。「自立した一人の人として愛し合う」という以前とは考えられない現在の再婚生活2年を経て、「この先の人生を二人で歩いて行きたい。闘病や介護の日々が訪れても寄り添い抜くと決めています」と松井久子さんは再婚から2年の覚悟を締めくくっています(婦人公論7月号)。

さて、それぞれに「愛情があるわけではなく」再婚の目的が「家政婦、介護士としての役割」であったり、「生活の保障」「彼のお金」であることが分かってきた今、あなたには松井久子さんの「寄り添い抜く決意」もなく、彼の方にも子安さんの言う「生き直し」の「覚悟」もないようですね。子安さんは、結婚届を出すまでに、2人には「生き方の大転換」があった。初めて対等に話せる人、単に老後の話し相手ではなく、出会いを通じ「互いに幸せになろう」というメッセージが伝わってきたと取材で語っています。

もちろん、高齢者の再婚は「松井さん、子安さんが見本」と決めつける気持ちはありません。この2人と比較するとあなた方は年齢もずいぶん若いですし、今までの社会的な活動も違います。まずあなたに必要なのは、これまで「フタをして付き合ってきた」自分の気持ちを彼に話すことではないですか?それまで夫に強く縛られていたので、残りの人生を自分のために生きてみたいと思ったこと、経済的不安もあること等々を正直に。彼も寂しくて婚活サイトに登録したとのことですから、その寂しさや不安の中にある老後の介護のことも話してもらってください。彼の性格や趣味が同じところなど気に入っているとのことですが、「愛情を築く順序」が逆になっているように思います。「付き合い方のやり直し」が必要かもしれませんね。
(文:大関洋子)

2024/05/28(火)
第281回【職場編】「なんで夏はセクハラ解禁?」
【Q】
夏は嫌いなんです。
何でかって言うと、色々あるんですけど、まず体調。最近の外の暑さは半端じゃないですよね。満員の電車なんて絶対乗りたくないけど乗らないわけにいかない。暑いし、男の人のニオイで吐きそうになります。電車から降りても息ができないくらいの空気感に、頭がクラクラするくらいの日照りでしょ。会社に着くと今度はエアコンガンガンで、足から冷えてきて腰は痛くなるし、肩は凝るし…。うちの会社は外回りの人が多いのと内勤でも暑がる男性が多いので、室温が低めなんです。
まあ、ここまでは、自分の努力で何とかなる部分はあるんですけど、一番嫌なのは男性の態度です。制服はないので、どうしても夏は薄着になりますよね。チャラい男たちはあからさまに服装のこと何か言ってくるし、無口でオタク系みたいなやつは目線が怖い。それにすぐ飲みに誘うんですよ。「今日も暑いねえ。ビール美味しそうじゃない?!」とか「もう少し涼しくなるまでどこかで飲んでいこうよ」とか…。飲みに誘うのはセクハラだっていうのに、なんで夏はセクハラ解禁なんですか?いつも「セクハラ、セクハラ」って騒いでる女の中にもそれに乗っかっちゃうやつがいるんです。

【A】
2023年7月は、気象庁が統計を取り始めた1898年からの125年間で最も暑い7月となりました。8月以降も高温傾向は続き、福島県の伊達市や群馬県の桐生市などでは40℃超えの酷暑日が記録されました。年間の猛暑日の日数は、これまでで最多の46日となり、各地で暑さの記録が更新されました。こうした観測史上最悪の酷暑日が続くのは、今年も確実とみられています。長期的な地球温暖化の影響、エルニーニョ現象など熱帯の海水温の変動、偏西風の蛇行等により高温傾向が予測されている現状では、あなたの悩みもつきないことでしょう。

前半のお悩みは、「自分の努力で何とかなる部分はある」とおっしゃっているので、工夫して頑張っていただきたいと思います。あなたと同じように社内が寒すぎると感じている女性は少なくないと思うので、ほんの少しでも室温を高めにして欲しいと社内で話し合うことも必要かもしれません。

問題は後半のことですよね。

この酷暑の中、少しでも暑さを凌ごうとして薄着になるのは当たり前のこと、最近では夏場のクールビズが浸透して、男性でもノーネクタイやTシャツ可のところもあるくらいです。服装が身軽になることだけでなく、夏は花火大会、夏祭り、バーベキューなどのイベントが多いことも男女共に開放的な気分になりやすく、お盆休みや夏期休暇もあることから、街中にも活気を感じることが多くなります。この夏の雰囲気は、人々を積極的な行動に駆り立てる要素になるので、ついその気持ちのままに、夏以外の季節なら社内で「セクハラ」に当たるような行為(飲み会に誘う、服装について批評する)などもしてしまうのです。そして、女性の側も雰囲気につられ、「セクハラ」とも感じず誘いに乗ってしまうのでしょう。むしろ、「誘われないことは寂しい」くらいの気持ちになっているのかもしれません。確かにタートルネックにロングのボトムという服装より腕や足が露出している服装は、ちまたに溢れている性的欲求に触れるような広告とも重なり、それを異性の魅力と感じてしまう人も少なくありません。

昨今は、「セクハラ」という言葉が一人歩きして、職場で異性に声をかけづらい雰囲気があり、社内恋愛、社内結婚が極端に減っています。「セクハラ解禁」ということでなく、異性をリスペクトした声のかけ方、接し方を心がけ、お付き合いのいいきっかけになるといいですね。あなたがもし、「誘われることが嫌」ということであれば、「それってセクハラ!」といきなり相手を非難するのではなく、相手をリスペクトした上で、あなたの気持ちをきっちり伝えましょう。真っ直ぐに話すことで「セクハラ」はなくなるはずです。
(文:大関 洋子)

2024/05/23(木)
第280回【子親編】「義母が“卒婚する”と言い出して…」
【Q】
75歳の義父と72歳の義母と同居しています。
義母がひと月ほど前から「私、卒婚する」と言いだしたんです。「卒婚て何ですか?」って聞いたら、「今までお父さんとやってきた結婚生活から卒業して私らしく生きるってことよ」って言うんです。ずっとお義父さんの妻として生きてきて、自分らしく生きられなかったという部分は共感できるので「そうですよ、私も賛成です」って言ったんです。
そこまではよかったんですけど、ここのところウロウロ出歩いていると思ったら、不動産屋さんを回って一人暮らしのできる賃貸マンションを探してるって言うんです。「えーっ!家を出るっていうことですか?」と訊くと「そうですよ。お父さんと一緒にいたら自由に生きられないでしょ」と。離婚はしないけれど、別居はするということらしいんです。家を出るのは何とか踏みとどまらせようと「お義母さんの年齢だとなかなか一人で借りられるところはないと思いますよ」と言ったんですけど、「借りられないなら、どこか小さい家でもあなたたちの名義で買ってよ。お金は私が出すから」と聞く耳を持ちません。

【A】
72歳のお義母さんの「卒婚」、いいですねぇ。ぜひ、応援してあげてください。「卒婚」という言葉は、2004年に教育ジャーナリストの杉山由美子さんが発行した「卒婚のススメ」という本の中で、初めて使った言葉です。杉山さんは、自由に生きる6組の夫婦への取材を元に、これからの結婚の形を考えました。その中で、1つの選択として登場したのが「卒婚」という夫婦の形態です。婚姻関係はそのままで、これまでの夫婦生活を一旦解消し、ゆるやかなパートナーシップを結びながら、それぞれが新しい形で自由に自分の人生を楽しむというスタイルです。

厚生労働省の人口動態統計によると、2018年の総離婚件数は20万8333組でした。離婚総数は、2002年をピークに減少していますが、同居期間が20〜25年の夫婦の離婚件数はほぼ横ばいで、1万7125組となっています。パートナーに対する不満を抱えながらも、子育てを終えるまでは我慢し、子どもが巣立ったら離婚に踏み切るという夫婦が一定数いると思われます。

こうした流れを受けて杉山さんは、2020年に「卒婚 −これからの結婚のカタチ」(出版芸術社)を出しました。プロローグの中で「二者択一の、離婚か継続かというのではなく、あいまいで、少しいい加減で、互いを束縛しない関係、私もそうだが、これまで築いてきたものをすべて崩壊させてしまうのにはためらいがある。子育て後の夫婦はもっと自由であっていい」と述べています。彼女も、別居してそれまでの夫との泥沼の生活から抜け出し、自分たちなりの後半生の充実を実現させたと語っています。「後半生の結婚をソフトに変えていって、自分たちの身の丈に合ったライフスタイル」にするための一つの型とも言っています。

お義母さんはまさにこの提案をそっくり実行に移そうとしています。あなたは「別居はする」と言っているお義母さんを何とか踏みとどまらせようとしているのですね。お義母さんはこれまでの人生で「お義父さんと一緒にいたら自由に生きられない」と痛感したのでしょう。女性が自分の両親や夫の両親の介護や看取りをし、夫の最後までもみなければよい嫁、良い妻と言われない風潮はそろそろやめにして、あなたもお義母さんの気持ちを大事にしてあげたらいかがですか。

精神科医の和田秀樹さんも2020年に「つかず離れず婚」(池田書店)という本を出しました。お義母さんのことをきっかけに、あなた自身も結婚について考えるいい機会にしてください。

ただし、これはジェンダーギャップの元、苦しい結婚生活を送ってきた女性を中心に考えた場合のことです。「卒婚」などせず、死ぬまで仲のいい夫婦関係でいられたら、もちろんその方がいいですよね。
(文:大関洋子)

2024/04/24(水)
第279回【親子編】「希望する進学校に入学したものの・・・」
【Q】
息子が高校に入学して、2週間経ちました。父親が卒業した公立の男子高に入学できました。父親は自分の出身校に入れたいという気持ちを強く持っていて、息子もそのつもりになっていたので、小学4年生から週3回塾に通わせていました。サッカーをやりたがっていたのですが、多くの時間を勉強に割かなければならず、かわいそうと思うこともありましたが、本人もよく分かっていて、頑張っていたんです。
そんな風にして入学した高校だったんですが、たった2週間で覇気がなくなってしまったのが分かります。「こんなんで3年間通い続けられるのかなあ」ととても不安です。夫にも話したところ「俺が話してみる」と2時間くらい息子と話をしてくれました。「燃え尽き症候群かも?」と思ったりもしているのですが、少し違うようにも思います。本人もやる気が出ないという認識はあるらしいのですが、理由はよく分からないみたいで、父親に「雰囲気が…」とぼそっと言ったとのことです。せっかく頑張って入学した学校なので、楽しく通ってほしいのですが、どう対応したらいいでしょうか。

【A】
息子さんが折角、希望した公立進学校に入学できたのに「たった2週間で覇気がなくなってしまったのが分かり」「3年間通い続けられるかなあ」ととても不安になってのご相談ですね。母親であるあなたの不安を聞いた父親が息子さんと2時間程話してくれたとのこと。その話し合いの中でひとつ大きなヒントになる気持ちを息子さんが父親に「ぼそっと」言っています。「雰囲気が…」という言葉です。「本人もやる気が出ないという認識はあるらしいのですが、理由はよく分からないみたい」ということですが、父親に呟いたこの「雰囲気」が彼のやる気を削いでいるということです。

「燃え尽き症候群かも?」と思ったりもしたけれど、あなたもこれは少し違うように思うと言っています。確かにこの「バーンアウト症候群」とも呼ばれる「燃え尽き症候群」に似ている部分もあります。これは希望の高校に入学するために必死にやりたいことも我慢し、睡眠時間を削って毎日何時間も受験勉強をし、見事希望の高校に合格。高校生活がスタートしたものの、ピンと張っていた緊張の糸が切れてしまい、一気にやる気が出なくなってしまう、そのような状態を言います。経過は似ていますが息子さんの「雰囲気が…」という言葉からは「公立の男子進学校」の様子に戸惑っていることが伺えます。

文部科学省の「学校基本調査」では全国の国公立や私立高校4824校のうち男子生徒だけというのは100校で、全体の2%ほどしかありません。2002年には192校あったので、この20年でおよそ半分に減りました。「男女共同参画のために共学化が必要であるとの認識はすでに社会共通の認識に成熟している」とし、弁護士らで組織される埼玉県の苦情処理委員会が、宮城県や千葉県など他県の男女別学の廃止・共学化の推進状況にも触れて、県教育局との面談を実施しています。しかしまだ埼玉県の県立高校137校のうち男女別学が12校あり、全体の8.8%を占めています。小学校・中学校と共学で学んできた息子さんにとっては男子だけが教室にいるという雰囲気は何とも違和感があることでしょう。

別学の男子高では女性管理職0(ゼロ)(女子高は管理職25人のうち女性8人、32%)、男子高にだけ『理数』分野の学科が設置され、女子高にのみ『家政』『外国語』の分野の学科が設置されていることなども問題になっています。歴史や伝統を重んじる風潮がはばんでいる共学化の流れを何とか進めようと埼玉県教育局も検討しているところです。1994年、高校での家庭科の男女必修化が実施された際、埼玉県でもすべての公立高校を共学とする方針が示されましたが、同窓会、別学高出身者の県職員等の強い反対にあい、立ち消えになってしまいました。

息子さんがこの雰囲気に違和感を抱いたというのはとても正しい感覚です。現在の社会情勢や埼玉県の状況なども息子さんに話し、お父さんの時代のように「異性がいると勉強に身が入らない」とか「男だけの方が青春も謳歌できる!」などというなんの根拠もない意識を変えなければならない時代になっていることを話してあげてください。
(文:大関洋子)

2024/04/03(水)
第278回【夫婦編】「卒婚を考えてはみたものの…」
【Q】結婚して28年、2人の子どもが独立したのを機に「卒婚」を考えることにしました。結婚前に描いていた結婚のイメージは、子どものころテレビドラマでみた幸せな家庭のイメージだったんです。仲のいい夫婦が2人で協力しながら幸せな家庭を築いていく、家庭の中にこそ幸せがあるイメージ。パートで働いてはいましたけれど、基本的には専業主婦なので、夫が外で私がうち。私が仕事で大変な夫を労えば、夫は家事労働で休みのない私に優しく接してくれる、子どもたちも、立派に育ててくれてありがとうと親に感謝する…、のはずだったのに、実際は全然違ってました。夫は帰宅すればまったく何もせずに「風呂」「メシ」と言うだけ。口を開けば「誰に食わせてもらってるんだ!」。子どもたちはちっとも言うことを聞かず、思春期になると帰りは夜中、家での会話も無し。「こんなはずじゃなかった」と思いながら、私1人ただただ忍耐の日々。5年くらい前から、「卒婚」を考えるようになりました。少なくとも親の介護が始まるまでは自由に生きようと思ったものの、自由に生きたいという気持ちと「卒婚=自分の生き方の否定」という気持ちが絡み合って、本当はどうしたいのか分からなくなってしまっています。

【A】長く夫婦として生活を共にしてきたカップルの多くが、パートナーへの不満を抱え、離婚か結婚継続かを迷っていると言われています。特に家父長制さながらの夫への妻の不満。そこで注目されてきたのが「卒婚」という夫婦のあり方です。婚姻関係はそのままで、それまでの夫婦の形を変えて結婚の第2ステージをもっと自由でハッピーに生きるための新しい道、ライフスタイルが「卒婚」です。

2004年、教育ジャーナリストの杉山由美子氏が様々なやり方で自分たちなりの後半生の充実を実現しようと試みる6組の夫婦の取材記録を「卒婚のススメ」というタイトルで出版したときの造語です。そこで命名した「卒婚」という言葉は、その後有名人のコメントやテレビ番組などでも話題となり、改題して「卒婚 −これからの結婚のカタチ」として2020年に出版されています。

あなたも5年くらい前から「卒婚」を考えるようになったとのことですが、それは今までの「自分の生き方の否定になる」という気持ちが絡み合って、どうしていいのか分からなくなったとのご相談ですよね?
まず、あなたの「今までの人生、生き方」について、「こんなはずじゃなかった」と思いながら、「私1人ただただ忍耐の日々」とおっしゃっています。確かに、結婚前に描いていたイメージと「実際は全然違った」28年の結婚生活。それにただただ耐えたあなたも大切なあなたでした。その体験があって今のあなたがあるのですから、自分の生き方の全否定と考えず、「これからの人生のリスタート」としての「卒婚」を勇気を持って考えてみてはいかがでしょうか?

今までの結婚生活とは違うルールを夫婦で取り決めるわけですから、それをするためのエネルギーと選択や決断が必要ですし、デメリットもあることを覚悟しなければなりません。でも、今までの「ただただ忍耐の28年」をもう一度繰り返すのはやめましょうよ。離婚と決定的に違うのは「法的な婚姻関係」はそのまま継続するので、経済的な面では夫婦の共有財産を維持しながら、同じ家で生活することもできます。もちろん、別居という方法もありですが。

一番大切なことは28年間、忍耐してきたことを夫と相談して、すべてではないにしてもほぼやめる選択をする。相手を認め、お互いに自由になることで、身体的・精神的に心地よい夫婦関係を再構築するという話し合いに挑む覚悟をすることです。

まずは、「風呂」「メシ」「誰に食わせてもらってるんだ!」はやめてもらう提案をしましょう!何とか頑張って、ここを乗り越えてください。
(文:大関洋子)

2024/03/26(火)
第277回【恋愛編】「はじめは宝くじだけだったのに…」
【Q】彼とは付き合い始めて2年になります。はじめは週1か2で、食事やレジャー施設が出かけていたんですけど、半年くらい経ったころからお互いの家で過ごすことが多くなりました。テレビで宝くじのCMが何度も流れて、「買ってみよう」ということになり、冗談半分で買ったんです。最初は10枚、次は20枚、あっという間に100枚になりました。50枚買った時に1万円当たったことがキッカケになり、宝くじだけでなく、totoやBIGも買うようになったんです。彼は、サッカーが好きなので試合を見てるだけよりスリルもあって楽しさが増すみたいです。5千円とか1万円とか、上限を決めてやれれば遊びで済むんですけど、「損した分を取り返す」とか「オレの予想は絶対」みたいなことを言って、20万円くらい買っちゃうこともあるんです。コンビニとかスマホで買えちゃうのものめり込む要因になってるみたいです。彼は「競馬、競輪、競艇はギャンブルだけど、宝くじとかスポーツくじはギャンブルじゃない。政府だって後押ししてるだろ」と言います。くじだって立派なギャンブルですよね。お金がなくて出かけることが少なくなったのに、これじゃあ、あちこち出かけていた時の方がよほどお金がかかりませんでした。

【A】宝くじは身近な街作りにも収益金が使われていたり、発売元の全国都道府県と20の指定都市へ納められた収益金は少子高齢化対策、防災対策、公園整備、教育や社会施設の建設改修などに使われています。ですから私たちは至る所で「この××は宝くじの収益金から××」といった文字を無意識に自分の中に取り込んでいます。

テレビのCMでも多く流れていますし、スマホを開くと「夢が、はじまる」「キャリーオーバー発生中!」など、簡単に大金が手に入るというイメージで、射幸心を煽る広告を頻繁に目にすることになります。国や地方自治体が「公共の福祉に役立っている」「働かず大金が手に入る」というイメージを国民に強く植え付けているため、「くじ」がギャンブルであるという認識は薄められています。 ギャンブルとは、「結果が偶然に左右されるゲームや競技等に対して金銭をかける行為」のことをいうので、競馬、競輪、競艇はもちろん、スポーツくじや宝くじもギャンブルの1つです。競馬、競輪、競艇は、様々なデータを処理することで、ギャンブル性を薄めることもできますが、「くじ」にはそういった要素がないため、むしろギャンブル性が高いと言えるかもしれません。

2022年3月に国会でカジノを合法化しました。賭博は違法ではあるものの、一定の規制のもと、ホテルやショッピングセンターを併設したカジノリゾート開発への道が開かれました。

さて、スポーツくじや宝くじ、公営競技(競馬、競輪、競艇)、パチンコの類は、法律で認められているので賭博罪の対象とはなりませんが、特にスポーツくじや宝くじは少額からできること、スマホを使ってゲーム感覚でできることなど若年層でも手がけやすく、依存に陥っている若者が増えていることが問題になってきています。 あなたのおっしゃる通り「上限を決めてやれば遊び」の範囲と考えられますが、自分の気持ちをコントロールできなくなり、頻度や金額がどんどん増えても止めよとしない彼は、「ギャンブル依存」状態と言えますね。

完全に依存症と判断されるような場合は、自分の力で抜け出すことは難しいので、専門家に相談するのが最善です。もし、ギャンブルを断つという決心をしても、結局断つことができず、何度も繰り返してしまうような場合は、迷わず専門家を訪ねるよう周囲が促しましょう。

あなたと彼の関係ですが、まず彼と話をしてみてください。話をしてもやめられない場合は、あなたも気持ちを切り替えて、別れることをお勧めします。

参考までに、去年のジャンボ宝くじの当選確率のデータを示しておくと、1等7億円は22本で、全体の2千万分の1、0.00000005%。3等100万円は880本で、50万分の1、0.000002%です。

(文:大関洋子)

2024/03/14(木)
第276回【職場編】「家庭より仕事を取った女性は浮いてしまう」
【Q】8年前に就職して、5年前に結婚、3歳の息子がいます。出産後も仕事は続けてきました。子どもは最低2人と思っているので、現在妊活中です。ここ数年で会社の出産育児に対する考え方が大きく変わり、産休、育休は取りやすくなったし、夫が育休を取ることもできるようになったので、2人目の決心がつきました。保育園にも入れる見通しなので安心して出産できます。問題は、その後のことなんです。私は積んできたキャリアを元にもっとキャリアアップしたいというか、一生仕事をしていたいと思っているんです。もちろん夫も賛成で、「僕より君の方が優秀なくらいなんだから、しっかり社会に貢献すればいいと思う」と言ってくれています。社内でも女性を管理職に登用し始め、私にも管理職の道が開けていると思えるようになったんです。ところが、同僚の女性たちの中でそんな話をすると一気に場がしらけてしまって、話題を変えられてしまいます。私だけが浮いていると感じます。女性社員の多くは未だに「女は家庭」と考えているみたいで、露骨に「私達の負担が増えるってことも考えてほしいよね」と言う人もいるくらいです。男性社員にはそんな意識はなく、「優秀なんだからどんどん管理職を目指した方がいいよ」と言ってくれる人がほとんどです。女性が働くことに対して、女性にブレーキをかけられてしまうなんて…。女の人たちとも仲良くやっていきたいし、どのように対応すればいいか困っています。

【A】少子高齢化と労働人口の低下が叫ばれる中、女性の社会進出は重要な課題の1つとなっています。そこで注目されているのが、女性を管理職に登用する必要性です。指導的地位に就く女性の割合は、アメリカの42.7%、イギリスの34.2%と比べ、日本は11.1%と低い割合に留まっています。(ILO調査)日本では、家事・育児・介護は女性の仕事という根強い意識があり、育児や介護を理由に離職する女性も珍しくないため、男性中心の雇用状況を改善できていないのが現状です。

役員や管理職の女性の割合が少ないと企業経営に女性目線の意見が反映されず、女性が働きやすい労働環境が作りにくいという悪循環になってしまいます。ロールモデルになる女性管理職が不在の現状では、女性従業員の意欲やキャリア志向も高まりません。女性を重要な労働人口にしたい国としても、この悪循環を断ち切ろうと、1985年の男女雇用機会均等法をはじめとして、1999年には男女共同参画社会基本法、2016年には「女性活躍推進法」を成立施行して、「就労状況、条件の男女差を解消し男性の暮らし方や意識改革も進めて、女性が活躍できる社会にするため」の法整備を進めました。

今年は、働き方改革関連法によって、物流、運送、建設、医療などの分野の労働環境が大きな影響を受け、多くの課題が発生すると思われます。女性の労働力が必要とされ、女性が働きやすい労働環境を確保するためにも女性を管理職に登用することが急務なのですが、あなたが感じているように管理職になりたいと思っても、会社との問題だけでなく、時に女性社員の中で浮いてしまうという問題などが起こったりもします。
私たち女性は、長い間「家事、育児、介護は私たちの仕事」と思い込み、自分の子ども、両親、夫の世話はもちろん、夫の両親の介護まで背負い、よい母、よい妻、よい嫁としてやってきた人が多いのです。

前述のように、国は女性の社会進出を促そうと様々な法整備はしてきているものの、一方で労働時間を制限した方が結果的に優遇される「130万円の壁」(夫の扶養の範囲内で働かないと損をする)は残されたままです。

さて、あなたは意識改革の先頭に立っています。あなたからすると「当たり前のことをしているだけなのに受け入れられない」という思いがあるかもしれませんが、あなたが正しく、「女性は家庭」という女性が間違っていると考えるのではなく、様々な事情で自分とは違う考えを持っている人がいるということをまず受け入れ、自分の考えを強調することなく、男性社会の中で共に苦しみながら戦っている女性という意識を持ってみてください。「女性は家庭」と考えている人たちも女性としての生きにくさは感じているはず。あなたが自分たちを認めてくれているということが分かれば、必ず応援に転じてくれるはずです。

(文:大関洋子)