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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2022/03/28(月)
第229回【親子編】「スカートの方がかわいいよね」
【Q】
女子高2年生の娘がいます。娘の高校は式典の時などの正式な制服はワイシャツ、ベスト(ジャケットと同じ生地の)、ジャケット、スカートの組み合わせなんですけど、3年前から毛糸のベストやセーターも可、1年を通して式典以外は制服用のパンツも可になったんです。1年生の冬、娘はパンツで登校していました。登校の様子を見ていると、パンツは20人に1人くらいだったでしょうか。パンツの子はパンツの子で固まっている傾向もあるように思います。春になっても娘はパンツのままだったんですけど、ほとんどの子がスカートになったんです。男子はいないとはいえ、“パンツだと差別されたりしないのかなあ”と思った私は、つい「女子高生はスカートの方がかわいいよね」と言ってしまったんです。“あっ、まずい”って思ったんですけど、娘は口をきいてくれなくなり、夏のどんなに暑い日でもパンツで登校していました。ところが、秋の終わりくらいからスカートを履き出したと思ったら、今度は雪が降ってもスカートで通学してるんです。この冬はパンツの子はほとんど見かけなくはなったのですが。私が「寒くないの?」と声をかけても“ふん”という態度で聞こうともしません。娘と普通に口がきけず困っています。

【A】
「女子高生はスカートの方がかわいいよね」はご自分でも“あっ、まずい”と思ったんですよね。よくわかりましたね。「女子高生がパンツだと差別される?」というあなたの感覚の中に「女の子はスカートを履いておしとやかで可愛げにしていた方がいい」という「女性はこうあるべき」という固定概念があります。やっとお子さんの高校でも式典以外はパンツが可になり、1年生の冬からパンツで通学していたのに「それは可愛くない」というメッセージを送ってしまったんですね。

そもそもスカートの歴史をひもとけば、古代ヨーロッパでは性別を問わず男女共にスカートのような形状の衣服を着用していました。スコットランドに伝わる伝統的な衣装の「キルト」はタータンチェック柄が有名で、行事などの正装として用いられる男性用のスカートです。戦いに従事して乗馬や激しい動きが必要な男性にとってスカート状態の衣服は活動的でなく、農耕文化を持つアジア圏での労働者が着用していたパンツが欧州にも伝わり、その機能性から男性たちの支持を集め、男性の衣服として普及していったと言われています。

男子がパンツを履くようになったころは、女性が男性と同様の服装をすることが許されない風潮があり、中世以降はスカートの内側にフープを入れて大きく広げる立体的なデザインや装飾がなされ、女性が美しいスカートやドレスを身につけることは父親や夫の富や権力の象徴だったという歴史もあります。女性しかスカートを履かないのではなく、かつての女性はスカートしか履けなかったのです。
第二次世界大戦を機に、女性も活発に動けるパンツスタイルが増加していくことになりました。日本では農作業にモンペを履いていましたが、工場などでも作業のしやすさからズボン(英語のパンツに対して仏語のズボン)を履く女性が増えていきました。
女性がズボンを履く権利を求める運動は様々な男女平等の権利を求める運動と連動して進んできました。日本で女性が選挙権を獲得したのも女性がズボンを履けるようになった第二次政界大戦後のわずか80年ほど前のことです。

最近やっと、男性と同じようにかかとの低い靴が女性にも公式の場で許されつつあるのはご存じの通りです。そうは言ってもNHKニュースの天気予報コーナーをみると気象予報士の女性が動きづらいにもかかわらず、やたらと高いヒールの靴を履いているのが気になります。

Me Too運動でやっと手に入れたパンツスタイルをお子さんは意識するために着用していますよね。小学生の時から男子が先で女子があとの男女別名簿を使っている学校教育や相も変わらず時代遅れな男性・女性像を流し続けるメディアの中で、お子さんは古い既成概念の母親に抵抗を試みているのでしょう。もしかすると誰か気になる男の子でもできてスカートを履くようになったのかもしれませんが、お子さんの一人の人間としての生き方、主張を、あなたの古い感覚を押しつけるのではなく、見守ってあげてください。
(文:大関洋子)

2022/03/22(火)
第228回【夫婦編】「“私は家政婦じゃない”と思う私の心に…」
【Q】
やっと子育ても終盤を迎え、子育てから解放されて自分らしい生き方でも探そうかなあと思っています。子どもとの関係はすごく変わりました。でも変わってないことがあります。夫との関係です。男女の関係って、出逢ってから死ぬまでに3回変わる時があると思っていました。結婚する時、子育てが終わる時、夫が退職する時です。今は2番目、子育てが終わる時だと思うんです。「男は仕事、女は家庭」みたいな状況が一変すると思っていたんです。ところが夫にはそういう意識がないらしく、何も変わりません。帰ってくる時間も、帰ってきてからの態度も変わらない。帰って来るなり「風呂」「飯」「寝る」…。夫は私を家政婦くらいに思っているんでしょうか。「男と女」から「父と母」になり、もう一度「男と女」になるぞって思っていたのに、夫の意識は結婚してからずっと「雇い主と家政婦」で、もしかすると死ぬまで変わらないのかもしれないと思うようになりました。でも一番問題なのは、そういう夫ではなく「私は家政婦じゃない」と思いながら、心の中に「人生、その方が楽かも」っていう気持ちがある私なんです。

【A】
「雇い主と家政婦」という夫婦関係に異議を唱えながらも「その方が楽」と思っている自分が問題だときちんと「自分の問題点」を捉えているんですね。夫に「私はあなたの家政婦じゃない」と思ったり言ったりしながら、実は内心「それが楽」と思っている自分に向き合っていない人が多いのも現実です。

35年前に男女雇用機会均等法が成立し、社会で働くのには男も女も平等であると定められました。法律はできたものの実際は絵に描いたもちであって、女性が働いて男性と同じ待遇、同じ給料を得られる職種や職場はごくわずかです。男が外で働き、女が家で家事育児というパターンは大きく変わってはいません。そして家事育児という仕事にはあなたのいう「夫という雇い主」からの給与の支払いはなく、生活費を与えられるだけの「アンペイドワーク」(支払いのない仕事)と呼ばれています。家事育児だけでなく親の介護、しかも、自分の親は勿論、夫の親の介護まで妻に任せて当たり前という状態はまだ沢山あるのが実態です。

今年もジェンダーギャップ指数が156カ国中120番目という低い順序を示しています。これは先進国の中で最低レベルです。この指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成され男女格差を測っています。男性に育児休暇が取れる制度があっても取る人はごくわずか、それも1週間とかいう短い休暇で本当にそれで子どもが育てられるわけでもありません。まあ、ないよりはいいのですが、女性は家事育児介護などに費やす時間は約8時間、それに比べて男性は約3時間というデータも出ています(子育て世代の平均・男女共同参画局)。しかも、これは女性も働いている場合の統計なので、あなたのように「主婦」として「家政婦」代わりに家事育児をなさっている場合、夫の家事育児時間は限りなく0に近く「めし、風呂、寝る」という生活になります。

2019年に韓国の女性作家が自身や姉のことをテーマに描いた「82年生まれ、キム・ジヨン」という小説は世界16カ国で翻訳、映画化もされ、大きな共感を呼びました。女性が家事育児介護の中で、心のバランスを失っていく様子が異例の大ベストセラーとなって社会現象をまき起こしています。
あなたが「その方が楽」な自分を責めず、少しずつですが男女差別のない社会づくりをすすめられたらいいですね。
(文:大関洋子)

2022/03/04(金)
第227回【恋愛編】「俺を長時間待たせただろ!」
【Q】
彼とは付き合って半年です。夏に友達と河原でバーベキューをしたんですけど、その時友達の彼氏が連れてきたのが今の彼です。彼が来ることを聞いていなかったので、ちょっと戸惑いました。バーベキューって器用か不器用かとか人柄とかわかりますよね。彼は器用で気の利く優しい人と思ったので気に入ったんですけど、彼が私をどう思ったかはよくわかりません。でも付き合うことになって「初めて会った時、かわいい子だなって思ったんだよ」って言ってくれたので…。私は半年間いい関係が続いていたと思っていたんです。でも先日ファミレスに食事に行った時、なかなか注文が決められない私に向かって彼が「ウザいんだよ。この前洋服買いに行った時も俺を長時間待たせただろ!」って言われてしまいました。私は、相手が決められずに待っている時間も2人の楽しい時間の一部と思っていたのでものすごくショックでした。ファミレスでの注文のことだけなら“よほどお腹が空いていたのかな?”ですんだと思うんですけど、服を選んでいる時のことまで言われると…。これからそんなことにまで気を遣わなきゃならないの?って思うと不安しかありません。

【A】
人が「待てる時間」は人それぞれです。その人の性格だったり、その時の事情だったり、待つ人と待たれる人の関係性だったりで違います。人によっては恋人や夫が返ってくるのを待って一生を過ごす人もいると思えば、あなたの彼のように5分か長くても10分くらいの注文が決められないあなたに怒ってしまう人もいます。そしてあなたは楽しんで待っていてくれたと思っていた洋服選びの時間も「俺を長時間待たせただろ!」と言われてしまったんですよね。

残念ですが明らかに彼はあなたのことをもう好きではありませんよね。もし本当に愛していれば、二人で一緒にいられれば、たとえどこで何をしていても楽しいはずです。洋服を選んでいるあなた、メニューを決めるのに迷っているあなた、そんなあなたをそばで見ていたり待っていたりするだけで幸せを感じるもの。「初めて会った時かわいい子だなって思った」とのことですが、その気持ちは半年もたたないうちに消滅してしまった、あるいは「かわいい子」の意味が最初から矮小化したもだったのですね。
だからといってあなたは「自分は初めかわいいだけの子だったんだ」と落ち込まなくて大丈夫です。多分、彼は洋服を買った後、ファミレスで食事をした後、あなたと性行為をしたかったのかもしれませんし、洋服を買うあなたと洋服を選ぶお手伝いをすることやゆっくり決めたメニューを美味しそうに食べることを楽しむのではなくて、それらは「仕事」のように「早く済ませて」やること=性行為をしたいと考えていたのかもしれません。

進化論的に言えば男性はなるべく多くの回数、多くの女性と性の関係を持てば自分の遺伝子のコピーをたくさん残せるわけですが、それは昔々もはるか昔、私たち人類が類人猿からヒト科ヒトとして二足直立歩行をしはじめたころのこと。今はそれでは人間の本能の部分だけであなたと付き合っていたことになります。
私たちヒトは長い進化の中でお互いの違いを認め合い支え合い、関わり合って生きてきました。人間の本質の3つの基本は「ひとり一人違うこと=多様性」「関わり合って生きること=関係性」そして、それらがあって「選びながら生きること=創造性」なのです。

あなたも、バーベキューで「彼は器用で気の利く優しい人」と思ったとのことですが、もしかするとあなたの選択の基準=器用は、原始人に当てはまるのかもしれませんね。これから相手を選ぶ時、単純に器用不器用で選ぶのはやめた方がいいですね。もっといろいろな価値観があるはずですよね。
(文:大関洋子)

2022/02/14(月)
第226回【職場編】「職場の彼と付き合いたいのに…」
【Q】
半年ほど前出会い系のアプリに登録したら、彼氏?ができました。ネットでの出会いって公言しにくいんですけど、付き合ってみたら彼はとっても優しいし、大きな欠点も感じていません。ただ、もともと私には職場に気になっている5歳年上の男性がいて、たぶんですけど彼も少し私のことが気になっていると思います。でも職場って難しいんですよ。仕事上でしか彼のことを知らないし、彼もおそらく私のことをよく知らない。だから、仕事のことで指示をされたり、注意をされたりすることばかりで、彼の優しさに触れることができないんです。私は彼が声をかけてくれるのを待ってたんですけど、一応上司っていう立場だから部下の女子社員に声をかけるとセクハラになるって指導を受けてるみたいで絶対声はかけてはくれないし、私から上司に声をかけるなんてもっとできないし…。どうしたら付き合えるようになるんでしょう?それで仕方なく出会い系アプリを使ったんです。そしたら、職場の彼には感じられない優しさを感じちゃって。でも、本当は職場の彼と付き合いたいんじゃないかっていう自分もいて、どうしたらいいかわからなくなっちゃってるんです。

【A】
あなたの悩みを整理すると3つになります。あなたには職場に「この人」と思い好意を寄せている男性がいる、そしてその人も少しだけれど自分を気にかけている様子がある、しかし5歳年上の上司なのでセクハラになることを恐れるためもあってか彼から声をかけてはこない、声をかけるのは指示するときと注意するときだけ。だから彼の優しさに触れることはできない。こんな情況は『全ての恋愛ドラマの始まり』なのにあなたはそれに気づいていない。それがまず第一の問題。

2つ目はそのため具体的に優しい声をかけてくれる男性を出会い系アプリで探して付き合ってしまい、その優しさを「本物の優しさ」と「勘違い」している。

そして3つ目は、あなたもちゃんと気づいている「セクハラ」問題。男女雇用機会均等法(1972年施行)によって「職場において従業員の意に反する性的な言動が行われること」を全て厳格に禁止しています。これには対価型と環境型などがあって対価型は昇給、昇格させる代わりに性的な行為を求めるとか性的な行為の要求に応えてくれなかったため希望していない部署に異動させるとかがこれに当たります。環境型はアダルト系のポスターを貼ったり、飲み会でお酌を求めたり料理を皿に取り分けたりすることやカラオケでデュエットを強制すること、休憩中に性的な内容の会話をすることも含まれ、そのことで訴えられたケースもあります(平成27年2月)。

厚生労働省の資料では事案ごとに「労働者の意に反するか」「就業環境を害されるかどうか」を個別に判断する必要があるとしています。「事業主の皆さん 職場のセクシャルハラスメント対策はあなたの義務です!!」という大見出しで厚労省のホームページで事業主に警告文を出しています(平成27年)。これほど事業主に義務が課せられ反すると当然罰則があるわけですから、どれ程厳しく社員教育がされているか、特に男性上司が女子社員に対しては厳しい対応が求められています。確かに職場での恋愛のキッカケが難しくはなりましたが、この法律前の野放しのセクシャルハラスメントの時代を体験している者としては必要な法律だと思います。

さて、あなたの知恵と工夫でこの男性上司とお茶なり食事なりする方法を考えてみてください。簡単に、それこそ性の遊びを求めて優しくしてくる男性と交際するより、職場で真剣に働く上司の男性との恋を実らせる工夫と努力をする方がそれこそ真の恋の醍醐味です。さあ素敵な恋愛ドラマの幕開けですよ!!
(文:大関洋子)

2022/01/31(月)
第225回【子親編】「父と母の関係がこんなにも悪いとは…」
【Q】
父が新型コロナウイルスに感染して入院しました。子どもたちも独立して、今は父と母、私と夫の4人暮らしなんですけど、食事もなるべく時間をずらしたり、離れた場所で取るようにしていたおかげか、父以外はPCR検査陰性で、父がどこで感染したのかわかりません。出歩く習慣もない人なんですけど、以前は公民館の市民講座に通って、そこで知り合った人たちとお茶してきたりもしてたので、もしかするとそのころの人たちとまだお付き合いがあるのかもしれません。母は、女性も混ざっているせいかそのころの人たちとのお付き合いを快く思っていなかったみたいで、父に対して「自業自得」という態度で、入院していることに対しても心配しているというより「せいせいした」と感じているようにしか見えません。父が感染したことで父と母の関係がすごく悪かったんだっていうことがわかったんですけど、病院に様子を見にも行けず心配なんですけど、退院してきたあと、父と母にどう接したらいいか困っています。

【A】
あなたは「父が退院してきたあと、父と母にどう接したらいいか困って」ご質問をされているんですよね?
結論から言うと、「ご両親お二人のことはお二人に任せてください」ということです。
大人であるお父様とお母様が長年かかって夫婦関係を築いてきた結果、こういう関係が出来上がっているのですから、それをどう再構築なさるかはあなたが「困る」問題ではありません。にもかかわらず、あなたが「“困って”問題視していること」、そのことが「問題」です。そして、何か「問題」だと感じることがあなたに起こってきた時、それはその「問題」があなた自身に何かを訴え、考えさせようとして「問題」として出てくるのです。

今回、あなたに何か言いたくて出てきてくれた「問題くん」をまとめてみましょう。何か問題が出てきた時こそ、あなたが考え、自分が変われる時なので、「問題」を大切に扱っていただくために「問題」に「くん」をつけることにします。これはブリーフセラピーと呼ばれるものの1つのやり方です。
今回のあなたに出てきてくれた「問題くん」は、「父と母の関係がこんなにも悪かったんだ」ということですよね。この「問題くん」はあなたに何を言いたくて出てきたのか?

@あなたはこんな仲の悪い父と母に育てられてきたんです。それじゃ家庭が安心基地としての役割を果たしていなかったですよね。だから今まで生きてきていつも心配ばかりしてきたんですね。子どもは外で何か失敗しても家に帰れば「よしよし」と話を聞いてくれる父や母、暖かい家庭があって、また外へ飛び出していけるものです。それがあなたにはなかったんですね。それでもよくここまで頑張ってきましたよ。
Aもしかして私と夫もどちらかがコロナなどで入院したら、父と母のように「せいせいした」という関係になっていたらどうしよう。「私の知らない夫」がいたらどうしよう。

等々、心配になっていますよね。あなたは自分の父と母の関係にあなた自身の夫婦像を見ているのです。
さあ、お父さんが退院してきたあとのことはお二人に任せて、あなたはこれまでと同じように接してください。そしてせっかく、今回のことであなたに何か言いたくて出てきてくれた「問題くん」の声なき声をしっかり聞いて、自分の生育歴からくる「心配症」、そして「私の知らない夫」さんをもう一度理解するように努力してみてはいかがでしょうか。
(文:大関洋子)

2022/01/14(金)
第224回【親子編】「幼児番組って…」
【Q】
幼稚園に通う6歳の娘と4歳の息子がいます。朝夕に子ども向けのテレビを観せています。私が子どものころから続いている番組もあって、幼児教育にはいいかなっていう気持ちと懐かしさから観せてるんですけど、ジェンダーが問題になっているのに、幼児向けの番組はそれとは正反対のことをやっているように感じて、このまま子どもに観せ続けていいのかなあと迷ってしまうことがあります。つまらないことですけど、うちの場合、父親(おとうさん)が一緒に観ることの方が多いのに「おかあさんといっしょ」だし、この前昔の映像が流れてきた時は「やるきまんまんマンとウーマン」の映像に驚いたんです。男の子と女の子が三輪車で遊んでいる映像に「はずかしかいじんをぶっとばし」、大きな魔王に立ち向かう女の子の映像に「こわがりまおうには ウインクこうせん」と歌がかぶって、女の子がウインクしてハートを飛ばしてやっつけたんです。こんなことやってたんだなあと思いながら「今の時代にこんな映像流していいの?」とすごく疑問に感じました。確か紅白歌合戦は「紅白」色を薄めて「カラフル」がテーマだったような…。大人の番組をジェンダーフリーに近づけても、もっとも影響のある子どもの番組がこれじゃダメですよね。

【A】
「ジェンダーが問題になっているのに、もっとも影響のある子ども向けの番組がこれじゃあダメ」というあなたのご意見に全面的に賛成です。むしろもっと腹を立てているかもしれません。おっしゃる通り「おかあさんといっしょ」というタイトルといい、「はずかしかいじん」や「ウインクこうせん」に至っては呆れかえるばかりです。

社会はやっとジェンダーフリー、ジェンダーからの解放、「社会的につくりだされた男女の違いから起こる不平等」から自由になることの大切さに気づき、強迫観念のように迫ってくる「男らしさ」「女らしさ」が、いかに個々の人間を縛りつけ、多くの弊害を引き起こしてきたかの反省に立って前を向いているところなのです。それなのにマスコミがこの状態では日本のジェンダーギャップ指数が他国に遅れているのは仕方ありません。

世界経済フォーラムの2021年発表の順位は総合順位(経済・政治・教育・健康)は156カ国中120位でした。先進国の中で最低レベル、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果となっています。1位2位3位のアイスランド・フィンランド・ノルウェーにしても長い男尊女卑の歴史の中から、それがいかに人間としての幸せを損なうものかに気づいて改革してきた結果なのです。日本でもジェンダー・フリーの理念に基づいて子どもたちの教育に関わる教材やカリキュラムの見直しが行われ、家庭科の男女共修や制服の見直し、男女混合名簿などが整備されつつあります。が、教育現場ではまだまだ暗黙のうちに伝えられるジェンダーの固定観念があふれています。

小学校の先生は女性が65%を超えるにもかかわらず、校長先生や副校長、教頭先生は80%が男性だったり、高校の教育現場は校長先生は95%が男性です。性別に関わらず誰もが等しく教育を受ける権利は憲法で保証されているにも関わらず、男女の大学進学率や専攻分野の格差はまだまだ大きいのが実態です。それは「子ども達本人の考え」というより私たち大人の中に男の子は大学以上の学歴を67%の親が望み、女の子は44%の親しか大学進学を望んでいないという統計からも分かります。

医科大学で女子学生を入試で差別していた事件はまだ最近のことです。政府も1986年の男女雇用機会均等法から30年経ってやっと女性活躍推進法が2015年に成立しました。女性にとって生きづらい社会は当然、男性にとっても生きづらい社会です。私たち自身の中にまだ残る隠れた男女差別の意識に気づくこと、そしてあなたのような考えを持ち、マスコミにも意見を言ってくださることをお願いします。
(文:大関洋子)

2021/12/23(木)
第223回【夫婦編】「“まだか”とせかす夫」
【Q】
毎年友達夫婦と居酒屋みたいなところで忘年会をしてました。去年は中止にしたんですけど、今年はお酒中心じゃなくフルコースのディナーでやることになって3組6人で集まることになりました。夫と外で食事をするのも久しぶりだし、6人で集まるのは一昨年以来だから、女3人で綺麗にしていこうねっていうことになりました。早めに出かける準備をしていたら、目の前で化粧をしているのが目障りだったのか、夫が「まだ早いだろ」ってうっとうしそうに言うので、しばらく支度を中断して30分くらいして再開したんですけど、今度は夫の支度がすんじゃって「まだか」ってせかすんです。食事会ですからマスクも外すし、外した後のことも考えてメークしなきゃだし…。「1時間くらいは大丈夫でしょ?」って言っても何度も「まだか」ってせかされて、20分くらいしたところで「もう出るぞ!」って大声で怒鳴られました。「まだ早いだろ」って言ったのは夫だし、さすがに私も切れちゃって怒鳴り合いになったんです。結局夫が先に出て、私も急いで出たんですけど、30分近く遅れる始末。楽しみにしていた食事会だったのに、みんなに迷惑はかけちゃうし、最悪の食事会になってしまいました。

【A】
よく「女の化粧は長い」と言われますが、「女」としてくくられると少し違う気がします。女性でもほとんど化粧をせず、夫のひげそりの時間より早く支度が終わってしまう人もいます。相手に失礼のないように精一杯の化粧をして出かける。そうすることで自分も気分が高揚して楽しくなる。それが化粧の効用でしょうか。

そもそも化粧は女のするものというのが常識(最近、化粧をする男性も増えました)ですが、日本では3世紀後半の古墳から赤い顔料で顔や身体に化粧を施した男性の埴輪が出土したり、武士が戦いに挑む時、鎧の下の顔に化粧をしている記述が見られたり、歌舞伎では男性も濃い化粧をします。世界では旧石器時代から獣の脂を塗って顔料を呪術の意味にしたり、先住民の中には男女ともタブーゾーンを化粧で色分けして示している人たちもいます(デズモンド・モリス「人間の行動学」)。

というように「化粧の起源や歴史」を綴ってみましたが、あなたの不満は、夫から「化粧」のタイミングやそれにかかる時間について「まだ早いだろう」と「うっとうしがられ」たかと思うと「まだか?」と「せかされ」、最後には「もう出るぞ!」と大声で怒鳴って先に出ていってしまった夫の一連の言動ですよね。あなたの夫は生活の全てでまさに今回の化粧に関わるタイミングや時間をあなたの立場で考えず、すべてを自分本位に考える人ですよね。

自分がこうあってほしいというタイミングと時間をはずされるとイライラして「早い!」と言ってみたり、「遅い!」と怒鳴ってみたり。今まであなたが何とか合わせてきた結婚生活だったんですよね。極論を申し上げれば、この際別れた方がいいと思います。ジェンダーギャップの激しい日本の社会では、離婚は簡単ではないかもしれませんが。

あなたがお仕事に就いていて、自分の収入だけで充分生活できるなら、きっぱり夫の自分本位で、勝手な言動を慎んでもらうよう話してみてはどうですか?もし収入のない主婦ならば何か仕事を見つけて少しでも自立できる立場になりながらということにならざるを得ないかもしれませんね。お子さんがいらっしゃるとしたらもっと離婚はしづらいでしょうが、このままでは男女どちらのお子さんの教育も最低のものとなってしまいます。お子さんたちに「男は自分勝手に振る舞い、女はそれに従わねばならない」という見本を示しているわけですから、なんとか改めてもらうようにしてください。
(文:大関洋子)

2021/12/02(木)
第222回【恋愛編】「やってやってるアピールの彼」
【Q】
彼と旅行に行ったんです。久しぶりで、それなりに楽しい旅行にはなったんですけど、宿での食事とかサービスエリアでの食事とか、いろんなカップルを見てるうちに、他の男性の態度と彼の態度がすごく違う気がして気になったんです。どの男性を見ても振る舞いが自然なんですけど、彼は不自然。「やってやる」みたいな恩着せがましい態度に感じるんです。気になり出すとすべてそう感じちゃって。例えば、フードコートで食事をしようとした時なんて、他のカップルは、ブザーが鳴るとスッと男の人が立って窓口まで取りに行くのに彼は必ず私に「俺が行こうか?」って聞くんです。水を取りに行く時もそう。「水飲む?」って聞くんです。水なんて飲んでも飲まなくても持ってくればいいじゃないですか。レストランで水を持ってくる時「飲みますか?飲みませんか?」なんて聞かないですよね。彼は私に「やってやってるアピール」をしたくて何かしてくれるんだなって思うんです。他の男性を見れば見るほどがっかりします。今の彼の優しさはただの振りで、結婚したら激変するタイプなんじゃないかって、今回の旅行で不安になりました。

【A】
彼の行動によく気がつきましたね。一昔二昔前は、女性が水や料理を取りに行くのが当たり前、そうすることが「気がつく女性」「気配りのできる女性」という感覚が、男性はもちろん女性の中にもありました。しかし、女性が社会進出するにつれて、そういった習慣や文化は少しずつですが変化して、男性が家事育児をするのは「おしゃれ」「かっこいい」「優しい」と肯定的に受け止められるようになりました。

総務省の「社会生活基本調査」(H28)では、6歳未満の子どもを持つ夫婦の男性の家事育児関連時間は、2011年は2006年より7分増加、2016年はさらに16分増加し、68分になっています。ただ、その年の妻の家事育児関連時間は414分で男性の約6倍なのです。女性の家事の中には夫の母の介護なども含まれていて、まだまだ日本では結婚して子どもができたり、親が高齢になったりすると、それらの家事育児は女性の仕事となっています。先ほどの総務職の調査は6歳未満の子どもがいて、夫婦共働きの時の統計です。
あなたが「やってやってるアピール」をしている彼に結婚後の不安を感じるのは当然ですね。女性の社会進出が提唱されて久しい中ですが、アンペイドワーク、無償労働と呼ばれる家事育児は主に女性の役割という構図はなかなか変わらないようです。

ジェンダーギャップ指数が114位と低いことから見ても国際的に比較すると男女の家事育児に関わる時間の差が先進諸外国では女性2に対して男性1程度の割合なのに日本は5〜6倍になっています。ただし男性の味方をするならば、男性の有償労働時間が女性に比べて長く、2020年の日本男性の1日あたりの有償労働時間が452分(7時間32分)とOECD(経済開発機構)の国際平均317分(5時間17分)を大きく上回り、最も長時間なのです。日本の女性もOECD平均を1時間近く上回る272分(4時間32分)という長さですから、日本の男性も女性も国際平均から見ると働き過ぎ、特に男性は働き過ぎもあって、女性をいたわる習慣や文化が根付きづらいのかもしれません。もちろん収入の男女差の影響もあります。

あなたも、自然な振る舞いで水や料理を持ってきてくれる男性を探し直すのもよし、日本の男性の男尊女卑的な習慣や文化を彼とともに考え直して、彼が内面から自然にあなたを支えてくれるように2人の関係を再構築するもよし。それができたら小さな社会改革になるかもしれません。
健闘を祈ります。
(文:大関洋子)

2021/11/19(金)
第221回【職場編】「元のように付き合いたい」
【Q】
やっとコロナも落ち着いてきて、会社もコロナ前に戻りつつあります。在宅勤務が多くて我慢することが多かった彼との関係も、恋愛モード全開で、いざ再開、という気持ちになっているんですが、彼の方が慎重なのか、私に興味がなくなっちゃのか、なかなか気持ちが前に向かないみたいで、以前のような関係が取り戻せないんです。あまりにも態度が素っ気ないので、先日「私のこと嫌いになった?誰か好きな人でもできたの?」ってまっすぐ聞いたんです。彼は、「そんなことないよ。何で?」って言うんです。「なら、いいけど」って答えたんですけど、本当はちっとも良くないんです。そんな状態の時に、逆にイケイケのやつがいて、しつこく私をデートに誘うんですよ。彼のこと好きだから、また元のように付き合いたいんですけど、ちょっと言い方悪いですけど、身体がうずくっていうか、イライラしちゃう時もあって、イケイケのやつと1回くらい付き合ってやってもいいかなって思ってるんです。

【A】
コロナ禍で彼とのデートも我慢してきて、やっと落ち着いて、いざ再開!と見込んだあなたと沈んだ気持ちから抜けきれない彼とのタイミングがずれてしまったんですね。そしてあなたは彼のタイミングを合わせようとはせず、あなたをしつこく誘うイケイケのやつと、一回くらい付き合ってやってもいいかなと思っている。

進化論的な「種の保存」の法則から言えば、コロナ禍の慎重な行動から気持ちが爆発して、しつこくあなたをデートに誘う「ヒト」の方が、沈んだままの彼よりたくさんの子孫を残せそうですよね。しかし、しかしですよ、「種の保存」を何よりも優先しなければならなかった洞窟生活の時代ならいざ知らず、今は「ヒト」として相手のペースや気持ちを理解し合い、長い一生を支え合って生きていくのが質の高い恋愛、結婚なのではないですか?

身体がうずくとかイライラするのは、あなたがあなたの感情にだけ焦点を当て、それにこだわっているからです。ちょっとそこから離れてみてください。ご自身の心を一度、真っ白にしてみてください。心を真っ白にするってとても難しいと思うかもしれませんが、秋の青空、真っ青にすんだ青空にぽっかり白い雲が浮いていると思う。そしてその白い雲を「身体がうずく私」と「イライラする私」に見立て、雲を箱に入れて心の中の戸棚にしまう。そんな光景をイメージしてください。空は雲のない青い秋の空になりましたよね。それだけであなたの心から「うずく私」と「イライラする私」はほとんどいなくなってているはずです。

まだ戸棚に入れた箱がバタバタするようなら、そのバタバタする箱を目の前に持ってきて、少し箱の蓋を開けて、「どうしたの?なぜそんなにバタバタするの?」と心の中で「うずく私」「イライラする私」に聞いてみるんです。その箱は「だって私、コロナ明けだもの。恋愛モード全開なのに、彼はそうじゃないんだもん」って答える私がいますよね。あなたがもし彼を本当に愛しているなら、どう答えますか?「そうなのね。彼はまだ、なかなか気持ちが前を向かないんだから、少し待ってあげたら?」と言うことはできませんか?

もしそう言えないのなら、彼とは別れることも考えた方がいいかもしれません。元のように彼と付き合いたいのなら、しっかり考えてください。
自分の心をまっさらにして心に改めて焦点を当てるこの方法をカウンセリングでは「フォーカシング」と言っています。

(文:大関洋子)

2021/11/08(月)
第220回【子親編】「母の作ったものしか食べない義父」
【Q】
夫とは結婚して30年になります。夫には姉と弟が一人ずついますが、紆余曲折を経て、義母の希望もあり、私たち夫婦が今年の初めから両親と同居することになりました。夫と義母とは仲がいいので、それなりにうまくはやっているのですが、問題は義父で、義母の作ったものしか食べないんです。もしかすると少し認知症が始まっていてわがままになっているのかなあなんて思ったりもするんですけど、全くそんな風には見えないので、夫も含め周りには言えないし、困っています。何度か義姉にも来てもらって、食事の支度を手伝ってもらったりもしたんですが、やはり義父は義母が作ったもの以外は気に入らないらしく、箸をつけません。今はまだ義父の分くらいは義母が作れますけれど、今後、義母が作れなくなった時に、どうやって義父に食事をさせるかとても心配です。

【A】
よくあるお話ですね。お義父さんは長年、おかあさんの味に慣れ親しんでいるので、それが一番身体にも心にも合っています。そして今、お義母さんはお義父さんの分と自分の分を作ることを嫌がっている様子ではありませんよね。あなたは「今後、義母が作れなくなった時に、義父にどうやって食事をさせるかとても心配です」と言っていますが、とりあえず今はお義母さんにお願いして、今まで通りお義父さんの分も作っていただいたらいいでしょう。

むしろ、同居し始めた長男の妻、いわゆる嫁が急に台所を全部取り仕切って家族全員の食事を作ってしまったとしたら、きっとお義母さんの出番がなくなって気力を失い、お義母さんまで認知症的な症状が出ないとも限りません。お義父さんがお義母さんの食事しか召し上がらないことを活用して、あなたからお義母さんに「お義父さんの分はなんとか作ってほしい」とお願いしてください。そして、お義母さんの味付け、材料の選び方、野菜の切り方、煮方焼き方…をあなたがお義母さんから教わってください。
人に大切なことは、一生その人の出番があることです。自分が誰かの役に立っているという意識が人には必要です。それがなくなった時、その人の人生は終わってしまうのです。

あなたは「紆余曲折を経て、義母の希望もあり」夫の両親と同居された。「夫と義母とは仲がいいので、それなりにうまくはやっている」とのことですが、根本のところに思い込みがあります。それは、お義父さんの食事作りを自分がしてお義母さんの負担を減らすことがお義母さん孝行、いい嫁だと思っているところです。お義母さんと仲のいい夫からも自分に感謝してもらいたい思いも感じられてしまいます。

あなたに一つ問いたいことがあります。さだまさしさんの「関白宣言」の中に、

 お前の親と俺の親と どちらも同じだ大切にしろ
 姑小姑かしこくこなせ たやすいはずだ愛すればいい

というフレーズがあります。

「紆余曲折」、心のどこかに「なんで私が…」というわだかまりはありませんか?お義父さんはそれを感じているかもしれません。「愛すればいい」、とてもうまい表現だと思います。

さて、「お義父さんの出番」は、今のところ「お義母さんの食事しか食べない」ということなんです。そしてあなたの出番は「お義母さんからお義父さんの食事について教わる」ことです。その様子を見たお義父さんは、きっと徐々に自分の妻と息子の妻が協力して作った食事をいつからともなく美味しく召し上がるようになると思います。
夫の両親との同居を了承されたあなたに敬意を表しながら、食事のことだけでなく、それぞれの出番を日常の中で、人生終わるまで落ち続けられることを願います。
(文:大関洋子)