この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。 主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。 ■大関洋子プロフィール■ (浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー) 1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。 著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。 |
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2023/03/22(水) |
第253回【夫婦編】「夫の不倫の定義に呆れ…」 |
【Q】
結婚して10年。8歳の息子と6歳の娘がいます。子どもが生まれるまでは、2人で食事や旅行に出かけたり仲良くしていました。子どもが生まれてからも、子育てや家事を積極的に手伝ってくれて「この人と結婚して良かった」、そう思っていたんです。ところが2、3年前から、帰宅が遅くなったり、帰ってきても、すぐに部屋に籠もってしまったりするようになったんです。。 先日、夫が子どもたちとお風呂に入っている時、夫のスマホにメッセージが入ったのに気づいたので、ちょっと覗いてみたら女性からの怪しいメッセージでした。夫を問い詰めると「マッチングアプリで知り合った女性」と言うんです。「不倫してるの!?」と私が感情的に怒鳴ると、夫は「不倫なんてしてないよ。マッチングアプリなんて遊び」と開き直った答えをするんです。さらに「不倫て“不貞行為をすること”だろ。“不貞行為”っていうのは“配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと”って定義なんだから、マッチングアプリをやっているだけじゃ不倫じゃない」って言うんです。その時、初めて夫の本性が分かりました。夫と不倫か不倫じゃないか法律論で争うつもりはありません。夫婦って信頼し合って、家庭を築いていくものですよね。こんな夫とこれからの人生をやっていくことはできないと思いましたが子どものことを考えると離婚もできません。 【A】 まったくあなたの言う通りで、こんないい加減な法律論を振りかざして「マッチングアプリなんて遊び」という夫は、あなたのためにもお子さんのためにも、別れなさいとお答えしたいところです。ですが、こうしてご相談をしてこられるのは、たぶん経済的な問題が重くのしかかってすぐには別れる決断はできかねてのことでしょうね。 あなたが「夫婦って信頼し合って家庭を築いていくもの」と言っているように、「信頼」のなくなった夫と「これからの人生をやっていくことはできない」のですが、「子どものことを考えると」と言っているのには、先ほど言った経済的負担があることと、もう1つ、まだ8歳と6歳という幼さを考えると、父親が必要ということも考えてのことかと思います。 離婚も選択肢の1つとしながら、少しでも「信頼」を取り戻せるかを考えてみましょう。あなたが幼い子どもたちの父親として必要かなと考える元になっているのは、2、3年前までの夫の様子、「この人と結婚してよかった」と思うくらい、子育てや家事を積極的に手伝ってくれていたということですよね。子どもたちも「パパのことは好き」なのでしょう。 そこを考えると、この2〜3年の「マッチングアプリは遊び」という価値観の理由を探ってみる必要があります。 その理由(当然、夫として2人の子どもの父親として間違った価値観を持った理由)の1つは、今、スマホを開くと「30代〜50代の中高年世代からの評判が良い!」「恋活にリーズナブル」「素敵な女性が登録している!」等々の文字と胸の大きな女性の写真などが踊るように出てきたり、「スワイプすると新しい人とつながりができます」ともあって、とても簡単に異性と交流できるようになっていることです。 まるで昔、中学生くらいが雑誌で「文通しませんか?」という欄に胸をときめかせたようにゲーム感覚でスワイプして「遊べる」のです。 そしてそんな中学生みたいな「遊び」にハマる理由の1つは「依存」です。「依存する理由」は様々ですが、あなたの夫は、仕事でストレスの多い職位に昇進したとか、家庭で10年頑張ってきたけれど妻から自分が思うほど感謝の言葉をかけてもらえない(家事育児なんて共同でやって当たり前なので情けない話ですが)、生育歴の中で母から承認されないことで自己肯定感が低い、等々で、たくさんの女性から「いいね」と言われたい、話をして癒やされたい…。 その辺りを夫と向き合い話し合ってみてください。もし反省の心が湧かないようなら離婚を考えざるを得ないかもしれませんね。 |
(文:大関洋子) |
2023/03/13(月) |
第252回【恋愛編】「メン地下から抜けられない」 |
【Q】
大学のサークルで知り合った彼と2年間付き合いました。私は別れたくなかったんですけど、彼の方に別な彼女が出来てしまって別れました。二股かけられてたんだと思います。すごくショックで立ち直れなくなっていたんです。そんな私を見て、友達が「メン地下」のライブに誘ってくれました。その時は雰囲気に飲まれてただびっくりして帰ってきたんですけど、1人気に入った男の子がいて、もう一度行ったらすっかりハマってしまいました。アイドルが手の届く距離で歌ったり踊ったりするのは興奮するし、ライブのあとのチェキ会でツーショット写真も撮れる。何千人、何万人なんていうライブとメン地下ライブは全然違って、チェキ会では肩を抱いてくれたりハグしてくれたり、指チュウもしてくれます。でも1枚写真を撮る度にお金がかかるので、これまでに数百万円使ったと思います。これは「ごっこ」なんだって分かってるし、このまま続けていたら経済的にも破綻するのも分かっるんですけど、彼氏との別れは辛かったので、恋愛で辛い思いをするのは嫌って思うと、抜けられなくなってしまいました。 【A】 「メン地下にハマってこのままでは…」というご相談です。「メン地下」に巨額のお金を使い込んでしまう10代もいて社会問題になっています。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、「メン地下」とは「メンズ地下アイドル」の略です。繁華街でビラ配りやSNS等での営業勧誘、ライブ入場料は無料というところもあります。 こうしたライブやイベントを主な活動の場としていて、メディアへの露出は少なく、歌や踊りを売りにせず、「チェキ撮影」で2人の動画を撮ったり、「指チュウ」という指を唇の間に立ててのキスをしたりすることで稼いでいます。ピン動画(30秒程度)で30pt(1pt=1000円)、2人動画(やはり30秒程度)で50pt、300pt使うと便せん1枚程の手紙、500ptで「指チュウ」とか1時間デート、1000pt以上でカラオケや3時間デートなどといういうところが多いようです。1ptが1000円なので、3時間のデートには100万円かかるということです。 こうした支払いのお金を援助交際やパパ活、家のお金を持ち出すなどして捻出していることも少なくないこと、そばに寄ってくる10代の少女にわいせつな行為をするメンバーもいることなど社会問題になっているのです。 こういう過剰な「推し活」で自分を見失い、1人のアイドルに「リアコ」(リアルな恋)をしてしまう人もいます。 甘い言葉をかけてくれるのも、あなたの肩をぎゅっと抱きしめて「チェキ」してくれるのも、すべてお金のため。それが分かっていても、破れた恋、裏切られた悔しさ悲しさを忘れるための刺激ほしさに、これは本当の恋ではないと知りつつ「リアコ」してしまっているあなた。それに気づいて使った金額の多さと引き換えにしたのは「虚しさ」でしたね。この相談をきっかけに、この危険な「リアコもどき」から抜け出しましょう。 ptを買うために会社が終わったあと、居酒屋やキャバクラなどでアルバイトをしたり、パパ活をしようと考える前に目を覚ましてください。そして恋に破れた苦しさ、二股かけられた悔しさ悲しさ虚しさ、1人になった寂しさ、つらさなど、すべてのネガティブな形容詞を否定するのではなく、抱え込んでいる自分と一緒にいてあげてください。一晩でも二晩でも眠れない夜を明かしてください。 その時、あなたの手も足も傷ついたあなたの心も、あなたと「共にある」「傷ついている私も私」と気づいて大切に抱きしめてあげてください。その時間こそあなたをより美しく優しく成長させてくれますから。 |
(文:大関洋子) |
2023/02/21(火) |
第251回【職場編】「私って付き合うに値しない女?」 |
【Q】
就職して6年です。学生時代には彼氏がいて「この人と結婚するのかなあ?」って思った時もあったんですけど、学生の時から付き合って結婚て、難しいんですよね。学生って遊んでるだけだから、本当の彼がどういう人なのか意外と知らない。卒業するまで付き合っていたんですけど、人生観みたいなものが違うことに気づいて別れました。就職してすぐに職場の男性と付き合ったんですけど、1度ホテルに行ったら、そのあとLINEしても既読にならなくなっちゃって…。職場で顔を合わせても付き合ってるっていう態度じゃないし…。1度ホテルに行って終わりってすごく嫌です。「私の何が嫌だったんだろう?やり方?匂い?遊ばれた?」とか色々考えちゃって、私って付き合うに値しない女なんだって思うようになりました。職場の同僚に、やたら彼氏自慢をする人がいて、なかなか予約の取れないレストランに行ったとか、高級リゾートホテルに行ったとか、いつも“綺麗だよ”って褒めてくれるとか、言うんです。そんな話を聞く度に「やっぱり私はダメな女なんだ」って、どこかへ消えちゃいたい気持ちになります。 【A】 あなたは「学生時代に彼がいて卒業するまで付き合っていた」のですが「人生観みたいなものが違うことに気づいて別れた」んですね。あなたは恋愛から結婚へ進み、人生の伴侶として暮らしていくのには「人生観」が一致していることが大切だと思ったんですよね。そのあなたの考えには大賛成です。一度切りの人生をどう生きるかの根本のところがズレていてはうまくいくはずはありませんから。 例えて言えば、夫婦や家族の時間や愛情を優先するか、経済、お金を優先するかで働き方も暮らし方も大きく変わってきますよね。ところでその人生観、価値観の点であなたにはいくつも偏見がありませんか?あなたは「学生って遊んでるだけだから、本当の彼がどういう人なのか意外と知らない」と言っています。発達心理学者のエリクソン(1902〜1994)は人には「モラトリアム期間」がどうしても必要だと言っています。元々モラトリアムとは借金の返済を猶予する期間という法令用語ですが、エリクソンは心理社会的モラトリアムという青年期特有の発達課題(人間が健全で幸福な発達を遂げるために達成しておかなければならない課題)があると言っています。 それは丁度、大学生または卒業して社会に出ていく頃には終わっていて「学生が社会に出て一人前の大人になるための準備期間」とされています。それまでには真剣に「Who am I?」(私ってどんな人?)「Where am I going?」(どこへ行こうとしてるの?)のような問いかけを自らに課して悩むのです。そして何とか自我同一性(アイデンティティ)を確立して社会に出ていくわけです。そういう自分とは何か?どこへ向かおうとしているのか?という自己発見、自己確立の大切な期間を、見かけ上かもしれませんがあなたは「学生って遊んでるだけ」という偏見を持っています。 この時期に人は自分の思っている自分(理想自我)と現実の自分(現実自我)を自分の中で一致させてアイデンティティを確立させているはずです。もしかするとあなたはこの発達課題を学習してこなかったのかもしれませんね。学生時代の彼はモラトリアム期間を卒業してアイデンティティを確立したのに、あなたはその期間を「遊んでるだけ」ととらえていたために人生観がずれて別れた。職場で付き合った人とは「一度ホテルに行ったらLINEも既読にならない」と言って「自分のSEXのやり方?匂い?遊ばれた?」と言い、同僚を羨ましがって「ダメな女、消えたい」と悩んでいます。どうか「Who am I?私って?」ともう一度アイデンティティ(自我同一性)の確立を試してみてください。 |
(文:大関洋子) |
2023/02/14(火) |
第250回【子親編】「夫が突然義母との同居を言い出して…」 |
【Q】
義父が10年前に他界して、義母は85歳で実家でなんとか一人暮らしをしています。さすがにいつ何があってもおかしくない年齢なので、そろそろどこか施設をと思っているのですが、先日実家を訪れたとき、夫が唐突に「お母さん、そろそろ私達がここに来るか、お母さんがうちに来るかしない?」と言い出したんです。今まで“どこか施設を”と話していたので、私としては寝耳に水。まさかその場で「施設を探すんじゃないの?」とも言えないので、うちに戻ってから夫の真意を確かめたんです。夫は「この前、ケアマネに相談したら“お母様は性格的に集団生活にはなじめないかもしれませんね”って言われただろ。集団生活ができないなら、オレたちが実家に入るか、おふくろをうちに来させるかしかないだろ」と言うのです。「お義母さんの性格なんて前から分かってるでしょ。それでも何とか施設を探すって言ってたじゃない。誰がお義母さんの面倒を見ることになると思ってるのよ!」と大げんかになってしまいました。集団生活になじめない人と同居するなんて考えられません。息子ってやっぱり母親が大事なんでしょうか。 【A】 あなたのご相談は、お義母様との同居の問題、そして「息子ってやっぱり母親が大事なんでしょうか」という夫とお義母様との関係の問題ということになっています。厳しいことを申し上げるようですが、あなたが悩んで相談すべきことは「そこ」ではないんじゃないですか?!あなたは私から「そうですね。夫さんはやっぱりマザコン息子なんですね」みたいな答えが来ることを期待していらっしゃったのかもしれません。 が、本来あなたが悩んで相談すべきことは、この夫の様子にびっくりして「寝耳に水」と思ったそこが問題ですよね。端的に言えば「夫婦の間でこんな大事なことが共通認識されていなかった」ということです。 要するに普段から夫婦のコミュニケーションが出来ていなかった。その上、お話の中にはお義母さんはどうしたがっているのかという話が全然出ていません。あえて夫さんの言葉の中に「ケアマネ」に相談したら集団生活にはなじめないかもと言われた話が出てくるだけ。それもお義母さんが施設で集団生活を望んでいるとしてもケアマネから見ると「無理かもしれませんね」というまた聞き的な話です。 ご夫婦2人でお義母さんの気持ちをお聞きになったことは無い感じですよね。そしてその前に、もし自分たちと同居することになれば、どちらの場所で同居するにしても夫さんは当然のように妻であるあなたに「義」母の介護をして貰うと決めてかかっています。 今、これが社会的問題になっていて女性は自分の両親、夫の両親、そして最後は夫を老々介護する昔ながらの風習文化をやめよう、そうでないと女性の社会進出など夢の又夢、という世論が増えています。そのため、色々な型の高齢者施設が企画建設運営されています。あなたが当然それらのどれかお義母さんに合う施設を探してそこで暮らしてもらおうと思っていたことは、間違っていたことでもなければ、自分勝手なわがままでもありません。 間違っていたことはただひとつ。夫とのコミュニケーション不足です。そしてその中でお義母さんの最後をご本人がどう過ごしたいと思っていらっしゃるか、これもお義母さんとのコミュニケーションを時間をかけて取って差し上げてお義母さんのご希望を、その通りできるかどうかは別としても、お聞きしてくだささい。 要するにあなたの悩み、相談の根本は「夫婦のコミュニケーションの不足」、そしてそれに伴い義母とも同じことが起きている結果だと思います。 |
(文:大関洋子) |
2023/01/27(金) |
第249回【親子編】「息子が選んだランドセルの色はアクア」 |
【Q】
息子が小学校に入学します。入学前の一大イベントと言えばランドセルや学習机選びです。ランドセルは夫の両親、学習机は私の両親が御祝いに買ってくれることになりました。学習机は、こちらで買ったあと私の両親がその分の御祝いを現金でくれることになったのですが、ランドセルは夫の両親が直接手渡したいらしく、インターネットで欲しいランドセルを選んで、両親が購入してうちに持ってくることになったんです。ここで困ったのが、息子の選んだ色がアクア、明るい水色だったこと。息子は小さいころから水色が好きで、絵を描くときもよく水色を使うので、好きな色を選んだだけのことなんですが、男の子の色と言えば黒が普通で、せいぜい紺とか深緑ですよね。アクアなんて、男の子が背負っているのを見たことがありません。私と夫でも躊躇する色を夫の両親にお願いするのはすごく大変だし、学校でいじめにあうことも心配です。どうやって子どもを説得すればいいでしょうか。 【A】 ランドセルの歴史は江戸時代に幕府が洋式軍隊制度を導入する時、持ち物を収納するためにオランダからもたらされたバックパックを利用したのがランドセルの発祥とされています。ネーミングもオランダ語の「ransel」(ランセル)がなまって「ランドセル」になったとされています。色は黒が主流でしたが、牛革でムラなく仕上げるには黒でなくてはダメで、その後も赤しか出せなかったようです。軍人の背のうとして使っていたランドセルは、動きの激しい小学生にはぴったりでしたし、両手が空く、転倒時にはクッション代わりにもなる、という危険防止のためにも都合のいいものでしたが、牛革で手仕上げをする黒と赤のランドセルは庶民には高級品でした。 ランドセルが小学生の荷物を入れるバッグとして定着しているのは日本だけの文化です。時代が経つにつれ、牛革だけでなく安価で軽い合成皮革のものが増え、庶民の間でも一般的になり、最近では色も多様になってきました。2001年にイオンが業界初の24カラーのランドセルを作り発表しました。価格も大幅に下がり、3〜10万円くらいまでと多様化しました。24カラーが発表されてから、様々な色、様々な装飾を施したランドセルを背負う小学生の姿が見られるようになりましたが、今回のご相談のように「男の子の人気色」「女の子の人気色」と業者が規定して販売している現状があります。ジェンダーフリーが叫ばれ、性や個性の多様化の時代を迎えようとしている現在、性と色を結びつけた製品の販売はやめてもらいたいものです。 私事になりますが、一番下の息子が幼稚園に入園したとき、椅子に敷く座布団の販売がありました。集金袋に記載された赤と青の文字のどちらかに丸をつけて申し込むのですが、息子は「赤がいい」と言うので赤に丸をつけて申し込んだところ、その日のうちに幼稚園から「赤に丸がついていますけれど青の間違いですよね。直しておきました」と電話がありました。「いえいえ、本人が赤がいいと言っていますので赤に戻してください」と答えて赤の座布団を買ったんです。そのころテレビで流行っていた戦隊もののリーダーがレッドホークという赤だったからなんです。赤は、情熱、燃える炎の色で、強さの象徴の色でもあります。Jリーグでも、浦和レッズ、鹿島アントラーズ、名古屋グランパスなど赤を基調にしたユニフォームのチームがあり、埼玉スタジアムが真っ赤に染まる浦和レッズ戦は圧巻です。若い男性の中には、赤を好む人もいて、赤いシャツ、赤いセーター、赤いズボンなど特別なことではありません。むしろ赤を好んで着る女性の方が少なく感じます。ですから、性と色を結びつけて考えているのは主に幼児教育や小学校などでしかありません。 さて、お子さんの「アクア」のランドセルについてです。なかなか微妙な色ですね。「息子は小さいころから水色が好きで、絵を描くときもよく水色を使うので、好きな色を選んだだけ」とおっしゃっている一方、「私と夫でも躊躇する色」とおっしゃっているので、実は反対しているのはおじいちゃん、おばあちゃんではなく、「私と夫」ですよね。ですから、「夫の両親にお願いするのはすごく大変」と考える前に、あなたと夫でよく話し合ってください。そして息子さんとも話し合ってください。一番大切なのは、お子さんの気持ちをしっかり受け止め、向き合うこと、説得ではなくお子さんの納得です。確かにいじめにあうことも考えられるでしょう。社会の流れに問題があるとしても、それを子ども1人の背中に背負わせては、とても背負いきれるものではありませんから、息子さんの意志を通すということになれば、「私と夫」がしっかり支えることが必要です。小学校と話をすることも必要になるかもしれません。その覚悟をしてから「夫の両親」に話をしてください。決して「私と夫」の意見をお子さんに押しつけ、むりやり「男の子の人気色」にさせるのではなく、お子さんの気持ちを大切にお子さんが納得のいく結論にしてあげましょう。 |
(文:大関洋子) |
2023/01/10(火) |
第248回【夫婦編】「帰省したときの夫の態度が…」 |
【Q】
毎年、年末を迎えると憂鬱になります。お正月に夫の実家に帰省するのがストレスなんです。夫の両親は悪い人ではないんですよ。すごく良くしてもらっているとは思っているし…。なので、変な言い方ですけど、私と子どもだけで行くならいいかなって。何がストレスかっていうと、夫の態度です。夫の両親に対する態度がうちでの普段の夫と極端に違って、ただのマザコン、ファザコンに見えて気持ち悪いし、私に対してはすごく高圧的になるんです。結婚して間もないころは、そういう態度を取るのも「私はあなたたちの子ども、育ててくれてありがとう。大人になってこんなにしっかりしたんだよ」って両親を安心させるためのポーズなのかなって思っていたんです。ところが、いつになってもそんな風だし、最近ではあれが夫の本性だって思うようになりました。そう思うと一気に愛情が冷めるっていうか、この先夫についていっていいか不安になります。 【A】 私が感心したのは、「変な言い方ですけど、私と子どもだけで行くならいいかなって」とあなたがおっしゃっているということです。これはちっとも「変な言い方」「変な考え方」ではなく、夫のご両親とあなたとの関係は「とても良い」ということですよね。夫抜きでも夫のご両親に会いに行ける、いや、むしろ夫抜きの方がいい、ということは、あなたと夫の関係も修復可能だと思います。なぜならあなたが「気持ち悪くて一気に愛情が冷めた、不安になった」という「マザコン」「ファザコン」の夫の態度は、夫の両親の対応が変われば修正できますし、夫の両親を信頼しているあなた、ご両親からも「すごく良くしてもらっている」あなたなら、夫の両親に息子との関係性を変えてもらうよう頼んで受入れてもらえるはずだからです。 次に「マザコン」(マザーコンプレックス)の起源についてですが、これは100年程前の精神科医フロイトが言いはじめた「エディプス・コンプレックス」という言葉が元になっています。ギリシャ神話の中の物語で国王の息子として生まれたオディプスは神託により「父を殺して母と結ばれるであろう」と言われ、国王である父の命令で隣国へ捨てられます。そこの王子として青年になり旅へ出ますが、その途中、実父とは知らずに父と闘うはめになり殺してしまします。そして実母とは知らず女王の国を苦しめていたスィフィンクスを退治し国を救った英雄として実母・王妃と結婚します。実父を殺し実母と結ばれた事実を知ったオディプス王子は自分の目を刺し、盲目の旅人としてどこへともなく放浪して行くという神話です。ファザコンという心理学用語はなく、マザコンに対応したものと思われます。あなたの夫は両親に甘えていますので、マザコンというよりピーターパン症候群に近いと思われます。フロイトの言う「エディプス・コンプレックス」は「それぞれ男の子は母親、女の子は父親(異性親)に、強く愛着を感じる」という学説です。 あなたの夫は、おとなにはなりたくなくて永久に子どものままでいられる「ネバーランド」に皆を連れて行こうとしているピーターパンなのだと思います。どちらにしてもあなたの夫は異性親の母親に甘え(エディプス)ウエンディやティンカーベルの妖精に頼るピーターパンのように「年齢的には大人だけれど精神的に大人になれてない男性」なんです。だから母親に甘えて、あなた、ティンカーベルにも魔法で自分の好きなようにしてもうおうと高圧的になるのです。 どうか夫のご両親としっかり組んで夫を修正してください。 |
(文:大関洋子) |
2022/12/27(火) |
第247回【恋愛編】「女を武器に使った恋愛はダメ?」 |
【Q】
彼との出会いは居酒屋でした。女友達3人で入った居酒屋に彼は男友達3人で来ていたんです。彼を見た瞬間「いい男じゃん!」って思いました。友達2人も同じだったみたいで、向こうから誘われるように、3人でそれとなく流し目を送って誘われることに成功しました。それから6人で飲みに行くようになったんですけど、私も友達も狙っているのは彼です。何とか彼の気を引こうと2人より短めのスカート、胸を強調させるようなトップスを着て会うようにしたんです。しばらくすると彼が私を意識し始めたのが分かりました。そして私が見ごと彼をゲット。それから2年です。仲はいい方だと思います。ところが最近、結婚を意識するようになったら、「本当に彼でいいの?」って思うんです。私は彼のどこが好きなんだかよく分からないし、おそらく彼も私のどこが好きなんだか分からないんだろうと思います。出会ったときに男としての彼にひかれ、彼には女としての私にひかれるようにアプローチして…。でも今考えると、「男」とか「女」とかいうものに惹かれるんじゃダメで、長い人生を考えたとき、「人としての彼」、「人としての私」に惹かれないとダメなんじゃないかと思うようになりました。男性と付き合うときに「女」を武器に使って付き合いだした男性とはどこかで破綻しちゃいますよね。 【A】 「居酒屋」で狙った彼を「女を武器」に見事ゲット。「あるある」のシナリオで、もしこのまま結婚したら、その結果も「あるあるの破綻?」。あなたはよくぞそれに気づきました。あなたは、ご相談になる前にちゃんと正しい答えが出ています。『「男」とか「女」とかいうものに惹かれるんじゃダメ」「人としての彼」「人としての私」に惹かれないとダメじゃないか』って。 まったくその通りです。あなたの場合、「女の武器」も身体勝負の直球で、ライバルより「短いスカートを履く」「胸を強調させるようなトップスを着る」など、まるで人間以外の動物が繁殖期にやるような雄を誘うやり方のようです。もう少しひねった「女の武器」には@都合が悪くなったり、困ったことに直面するとグズグズ泣いてみせる「女の涙」作戦、A手作りの料理とかクッキー、ケーキなどを持っていく「胃袋をつかめ」作戦、Bさりげなく腕や肩などに触る「ボディタッチ」作戦、C何かと彼に頼ってみたり、猫なで声を出したりする「甘え上手」作戦など、様々ありますが、ともすると「あざといやつ」と思われ、距離を置かれてしまうこともあります。それに比べ、あなたのとった「足や胸を見せる性欲作戦」は単刀直入。彼は「雄としてそれに引っかかった」とあなたは思っているようですが、それでも2年も仲のいい交際が続いているとのこと。居酒屋で出会って、彼は最初、あなたの「チラリズム」に一生懸命さを感じて恋が実ったのかもしれませんが、もし本当にあなたの「女の武器」にだけ惹かれたのなら、2年は続かないでしょう。「人としての彼」「人としての私」ってなんだろうと考え始めた今から、「人としての魅力」を作ってください。もしかすると彼にも同じ気持ちが芽生え始めているかもしれません。 発達心理学で、青年期の発達段階に欠かせないものに「モラトリアム期間」があります。元は「猶予期間」という法的用語ですが、「ヒト」が「人」になるためには、社会人となり、責任ある立場になるまでに「自分とは何か?」「どこへ行こうとしているのか?」をしっかり考える期間が必要だと言われています。この恋愛をきっかけに、遅れてやってきた「モラトリアム期間」だと捉え、自他共に成長されることを願っています。 |
(文:大関洋子) |
2022/12/19(月) |
第246回【職場編】「コンペはスカートな」 |
【Q】
私の会社は、時々ゴルフコンペを開きます。そういう時は、多少ゴルフのできる女子社員とまだ無名な女子プロゴルファーを動員します。私は多少できるので、コンペの時は必ず参加させられるんです。ゴルフは嫌いじゃないので参加させられるのはいいんですけど、服装は「スカートな」って言われるのと、部長が私の家まで迎えに来るのがすごく嫌なんです。もちろん自宅の住所は知られているのは仕方ないんですけど、直接ドアのところまで来られてピンポン押されるのはちょっと。「どこかまで行きますよ」って言っても、「手間じゃないから」の一点張りで聞く耳を持ちません。スカートのことも「もう足を出す年齢でもないし、冷えるのでパンツじゃダメですか?」って聞くと「そうだよな」と言いながら「そのために2万円手当出してるんだから頼むよ。営業の一部だから」と言われてしまいます。もちろん勤務にはしてくれているんですけど、会社が手当を出してるとは思えないので、部長がポケットマネーで出しているんだと思います。 【A】 部長のポケットマネーの2万円、部長が家のドアまで来てピンポンを押す。あなたも「勤務にはしてくれているけど、会社が手当を出してるとは思えない」と言っている通り、スカートで来てもらいたいのは部長ですよね。これは明らかに「セクハラ」です。 ゴルフウエアのスカートは、ミニスカートやフレアスカートには基本的にインナーが一体化していたり、下に短パンを履いていたり、いわゆる「見せパン」を履いていたりするので、部長が期待する「チラリズム」とは一線を画してはいます。それでも部長はティーアップの時やグリーン上でパッティングラインを読むときにアングルによってはスカートの奥まで見えそうでドキドキしているのでしょう。 NHKの女子プロゴルフのテレビ中継を観ていたら、パッティングラインを読む選手に対するアングルが、ほとんどすべてスカートの奥まで見えそうなアングルになっていたことがあって、驚いたことがありました。民放のテレビ中継では、そんなアングル見たことがありません。カメラマンの故意としか思えない頻度だったので、問題にならなかったのが不思議なくらいです。NHKという公共放送でそんなことがあるのですから、「スカートな」との要求は、部長にとって特別なことではないのかもしれません。 1565年ごろ、スコットランドのメアリー女王がシートン城の近くでゴルフに興じていたころは、まるで夜会にでも行くようなパフスリーブ(ちょうちん袖)にロングドレス、頭には鶏のトサカのような帽子を被っていました(女性服飾史による)。スカートの裾が短くなったのは、第一次世界大戦後、女性の社会的地位が叫ばれ、機能性を優先するようになってからです。女性ゴルファーのファッションも紆余曲折ありながら、動きやすいように軽快になっていきますが、ゴルフファッションの原則は不特定多数の集まるゴルフ場で周囲の人に不快感を与えないこと。ファッションは時代と共に変質していきますが、どんな時代のファッションもこの原則に則っていることは変わりません。 2017年、全米女子プロゴルフ協会は「スカート、スコート、ショーツは、立っているときも屈んだときも、いついかなるときも、ボトムエリアを隠し得るに十分な長さでなくてはいけない」と決め、競技重視へと動き出しています。男性の視線を集めるウエアよりも試合で競い合う方に情熱を傾けろと言っているわけです。 日本では宮里藍さん(ヘソ出しファッションで有名)が登場したころから女子プロゴルフ人気はうなぎ登りで、最近では男子ツアーのTV中継がない日に女子のTV中継だけがあるということもあるくらいです。日本の女子プロゴルフ界は現時点でアメリカとは逆のルックス重視、ファッション重視の方向に進んでいるように見えます。ギャラリーやTV視聴者の興味もルックスやファッションに影響されていることも確かでしょう。たまにレギュラーツアーにも出場する息子の友人の女子プロゴルファーはコンペに引っ張りだこだそうです。コンペに呼ばれるのは、女子であることが重要な要素になっているという現実があります。 とは言え、それは自分自身を売り物にしたプロの世界のこと。ゴルフの実力はもちろん、時にはルックスやファッションを売り物にしてでも有名になることが必要なのは当然です。あなたは、ゴルフのプロではなく一般企業の社員です。コンペに参加するとしても、ゴルフの実力やルックス、ファッションなどで賃金を得ているわけではないので、参加を強いられている他の女子社員と一緒に「性的」なことを売り物にしようとするのはやめてもらうよう部長や上司に勇気を出して話してください。理解してもらえない場合には、コンペの参加自体を断りましょう。 |
(文:大関洋子) |
2022/11/24(木) |
第245回【子親編】「ジェンダーフリーで育てたいのに…」 |
【Q】
結婚して10年、8歳の息子と6歳の娘がいます。結婚するときから夫の両親との同居が既定路線だったので、義父が70歳になったのを機に同居しました。私も夫もフルタイムで働いているので、私達が帰宅するまでは義母が子どもたちを見てくれています。もちろん両親には感謝しているんですけれど、困ることも少なくないんです。特にジェンダーの問題。義母も女が働くことには反対じゃないんです。でも「男らしさ」「女らしさ」は大事と思っているみたいで、8歳の息子に「男の子は泣かないの!」とか「しっかり勉強していい大学、いい会社に入るのよ」とやっちゃうし、6歳の娘には「女の子なんだからそんなに乱暴なことはしないの!」「いいお嫁さんになるのよ」とやるんです。現代社会で信じられないような言葉なんですけど、義母はそう教えるのがいい子育てと思ってるわけですよ。義母と過ごす時間が長いので、影響は避けられないし、義母のおかげで私も仕事ができていることもあるので、強く言えなくて、どうしたらいいかとても困っています。 【A】 「正しさ」が時代によって変わるのは過去の時代の「正しさ」を「間違っていた」と考えた人がいたからです。今、あなたは義母に子どもたちを見てもらえているので、夫婦共フルタイムで働けています。困ったことに義母は、昔ながらの「男らしさ」「女らしさ」を大事に思っていて、まったくステレオタイプの「らしさ」を孫に教えています。「男の子は泣かないの!」「女の子なんだから乱暴なことはしないの!」という義母の言葉は、この手の人がよく使うフレーズです。 そして、もっと困ったことには実は私たちの心というか身体にこの「らしさ」が染み込んでいて、「私はそんなことは言わない」と思っている人でも、女の赤ちゃんにはフリフリのついたピンクのもの、男の赤ちゃんにはフリフリのついていない青系のものを選びますよね。「私はジェンダーフリー!」と思っている人でさえ、せいぜい頑張って「白」か「黄色」止まり。色もピンクは「可愛い」、青は「りりしい、知的」という思い込みがあったりします。自分ではそれはジェンダーだとわかっていても、周りを気にして合わせている人もいるかもしれませんが。 子どもたちに与える絵本もこうした思い込みから「白雪姫」や「シンデレラ」「人魚姫」などなどは女の子に、男の子には「ピノキオ」や「機動戦士ガンダム」。そしてそれらは益々、女の子には「女の子らしさ」男の子には「男の子らしさ」を植え付けて、幼い心に「将来こうあるべき」「こうあらねばならない」という思いをふくらませてしまいます。これは、幼児教育の分野で顕著ですが、小中高と進んでも、この「らしさ」は無言で教え続けられます。男らしさと女らしさは「差別」ではなくて「区別」だという人がいますが、それは進化の過程で洞くつ生活をしていたころの話です。 さて義母に「男の子は〜」「女の子は〜」と言うのはやめてほしいと強く言うのは難しいとのことですから、まずあなたたち夫婦がその「らしさ」から自由になっている同居生活を義父母に示してください。「あなたの両親ではなく夫の両親との同居が既定路線」だったことが、まさにジェンダーギャップの表れだと思いますが、状況からしてそれを変えることは不可能だと思いますので、あなた方夫婦の関係を少しずつご両親に見せることから始めましょう。もちろんあなた方夫婦の関係がジェンダーフリーであり、夫婦関係に満足していることが大前提ですが…。 |
(文:大関洋子) |
2022/11/14(月) |
第244回【親子編】「嫁へのプレゼントはエプロン」 |
【Q】
我が家は、家事も子育ても夫婦平等にこなします。ほぼ完全にジェンダーフリーと言えると思います。子どもたちも成人して、息子2人が家庭を持ったのですが、先日息子たち家族と旅行に行く機会があったんです。それぞれ子どもがいて、夫婦でよくやっているなあと感じているので、嫁に感謝の気持ちを伝えるつもりで、お土産という程度のプレゼントを用意したんです。夫には話さず私が用意したんですけど、選んだのは「エプロン」でした。宿について2人の嫁に「いつもありがとうね」と言いながらプレゼントを渡すと夫が「えっ!エプロンなの?」と言いました。私もハッとして「あっ、やっちゃった!」と思いました。自分ではジェンダーフリーのつもりでいるのに、無意識に染みついているものが時々出てしまうことがあります。もし相手が婿だったらエプロンはなかったと思います。こういう感覚が子どもにジェンダーを植え付けていくんだよなぁと反省しました。どうしたら私に染みついたジェンダーの感覚が抜けるんでしょうか… 【A】 11月7日の朝日新聞に「共働き妻の“ワンオペ”いつまで?」という見出しで「家事育児夫との差4時間38分、15年変らぬ負担」という記事が出ていました。「ワンオペ育児」の言葉を社会に広めた明治大学の藤田結子教授らがまとめた調査で、6才未満の子を持つ共働き夫婦の一日の家事・育児関連時間は、妻は6時間33分、夫は1時間55分という結果が出ています。 妻のワンオペ育児の背景には夫の「長時間労働」が指摘されてきましたが、今回の調査では早めに帰ってくる夫が何人もいましたが、妻がいくら言っても育児や家事をやらない夫がいるというのです。なぜでしょうか?ここであなたの相談の心や体に染みついたかのような「男らしさ」「女らしさ」が出てくるのです。調査の対象になった男性達は、出世や昇進にとりつかれておらず、仕事がそんなにしたいわけではないのに、妻が育児や家事をする間、夫がスマホゲームをしている家も少なくなかったそうです。育児や家事をまめにやる女性が「女らしい」というジェンダー分業的な「支配の志向」だと藤田教授は言っています。そして、ここがまたとても厳しいところですが、女性の方も「女らしさ」の規範を心の深いところで、そのように捉えているということです。まるであなたの様に…。 高所得の女性は、家事代行サービスを人知れず使ったり、ミールキットを買ったりしてしのいでいますが、それ以外の女性たちは、近所に実母などがいなければ、他者にケアされていないのです。今、私も近所に「実母」などがいなければと書いてしまいました。「実父」でもいいし、夫の父や母でもいいのに、なぜ社会的に家事育児はもちろん介護まで(夫の両親の介護も含めて)も女性の仕事と決まったように言われているのか…。そしてそれができる女性が「女らしい」とたたえられるのか…。15年経っても調査での情勢の負担は変わっていません。 おそらく、あなたが教育を受けた保育園や幼稚園、小学校では、保育士さんや先生は女性なのに園長先生や校長先生は男性が多かったり、出席簿の順番は男の子から始まっていたりしていたことでしょう。高校で家庭科共修が始まったのもまだ二十数年前のことです。やっと始まったばかりのジェンダーギャップの解消も2021年の世界経済フォーラムの公表では、1位はアイスランド、日本はずっと下の120位でした。 さて、あなたの問題点は何でしょう。そう、自分はジェンダーフリーのつもりなのに「嫁」に「エプロン」を渡して「女らしさ」をそこに求めていたんです。無意識にすり込まれた「男らしさ」「女らしさ」は、あなたの中にも存在するんですね。それに気づいたあなたは立派です。そして、「えっ!えぷろんなの?」と言ってあなたに気づかせてくれた夫を持ったことに感謝しながら次の世代を育ててください。 |
(文:大関洋子) |