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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2021/05/10(月)
第207回【恋愛編】「メールやオンラインだと気持ちが伝わらない」
【Q】
2年前、電車の中で気分が悪くなって真っ青な顔をして立っていた私に座っていた彼が、「どうぞ」って声をかけて立ち上がってくれたのがきっかけで付き合い始めました。優しい人だなあって思ったんですよ。でもコロナ禍で会う機会が減って、2年も経ってるのに彼のことが分かってるような分かってないような…。お互い親と同居なので会う機会を減らして、メールとオンラインでの会話が中心なんです。でも、直接会うのとは違って、相手の気持ちを取り違えてムカついたり、言い回しがきつくなって相手を怒らせちゃったりするんです。「メール人格」みたいなのってありますよね。なんかぶっきらぼうな表現っていうか、相手を意識しない表現っていうか…。オンラインも、なんか言いっぱなしになるっていうか…。たまには会ってはいますけど、会った時もそれまでのメールやオンラインでギクシャクした関係が修復できなくて、いい関係を作りたいって思うのに、いつも最後は喧嘩になっちゃうんです。


【A】
私たちカウンセラーが個別面接を行う時の基本技法として言語的技法と非言語的技法があります。カウンセリングとは、言語的、非言語的コミュニケーションを通して、行動の変容を試みる人間関係である、と定義づけられています。あなたと彼の関係は、カウンセラーとクライアントという立場ではありませんが、人とのよい関係を築く上で、この2つの基本技法を外すわけにはいきません。

言語的技法は「相手の身になって話を聴く」という「受容」という技法が中心になりますが、これにも非言語的技法、例えば「うなずき」や「優しい眼差し」などが伴わないと、相手は自分が適切に受容されたとは思えません。かすかな「うなずき」や「優しい眼差し」で受け止められたと感じると、相手は自己表現が促され、カタルシス(浄化作用)が行われます。

言語的技法に「繰り返し」という技法もあります。これは、相手の話を聴いて、その内容をそのまま繰り返す、相手の話を一区切り聴いたところで「そうなんですね。××と思っているんですね」と要点を整理して繰り返す、話の中で相手が伝えたいと思っていることを受け止めて、その発言の中で重要と思われる言葉を取り上げ、それを提示するなどがあり、その結果、相手は自分が受け止められたと感じて、より深い「信頼関係」が築かれます。

相手の言動に対し、批判も判断も助言もしないので、その安心感が信頼関係を深めていきます。この時も、この言葉による繰り返しに非言語の息づかいや顔の細やかな表情はもちろんのこと、手や足、体幹の動きによる非言語動作が伴わないと、相手はただ「オウム返し」されているだけで「確実に受け止められた」という実感が伝わりません。

あなたと彼がメールやオンラインで会話をしている時、実はこの非言語表現が伴っていないのです。メールはもちろん、声の質や高低、リズムや速度も皆無ですし、オンラインで顔は見えていても、目の表情や手足の動き、最も本音が出る下肢の動きや体幹(背筋や肩、背中の様子など)がまったくといっていいほど分かっていません。そこであなたが困っているように一方的に押しつけてしまったり、きつい言い方だけが伝わったりしてしまい、関係がギクシャクしてしまいます。会えない日々を上手に使うには、彼の背中や下肢が、何を語っているかメールの声はどんな声なのかイメージを膨らませて受け止める努力をしてください。

経験がおありかと思いますが、メールの場合は特に紋切り調になったり、自分勝手な表現になったりしがちです。それをあなたは「メール人格」とおっしゃっているのだと思いますが、おっしゃる通り、メールにはそういう危険が潜んでいます。例えば腹が立った時に「ムカついた」とだけ打ってしまうと、別れたいくらい腹が立ったのか、「もーっ、まったくぅ!ムカついたぁ」というような甘えたり、親近感を含んだりした表現なのか分かりませんよね。皆さんよく使っているかとは思いますが、そんな時は誤解を与えないように絵文字やスタンプ等を上手に使って自分の気持ちを伝えるようにしてください。
(文:大関洋子)

2021/04/20(火)
第206回【職場編】「いろいろな男と飲み歩ってるからね」
【Q】
社内で誰が最初の感染者になるかって、ずっとささやかれていたんです。そして、とうとうその日がやってきちゃったんです。みんな、絶対自分が最初の感染者になりたくないって思ってたと思います。こういう状況ですから、誰がどこで感染したって不思議はないんですけど、同じ罹るにしても、自分が移す側になるのと移される側になるのでは大違いだし、「どこでうつったの?」って、ひそひそやられるのは分かっているから。もしそれが人に言えないような場所や人だったら最悪ですよ。感染したのは、私から遠くの席の女性なんですけど、感染源はわかってないのに、案の定「いろんな男と飲み歩ってるからね」とあっという間に広がっちゃいました。しかも、男性社員2人も陽性ってことになったものだから大変です。「やっぱりねえ」とまるで3人が三角関係みたいな話になって…。感染した彼女とは、トイレ、給湯室、休憩室なんかは一緒に使ってたわけだから、私も感染してるかも。感染も怖いですけど、社内のこの雰囲気に耐えられるか不安で、出社したくありません。

【A】
「男性社員2人も陽性ってことになっている」のにもかかわらず、女性だけが「いろんな男と飲み歩ってるからね」と「あっという間に広がっちゃいました」「「やっぱりねえ」とまるで3人が三角関係みたいな話になって」いて、あなたは「コロナ感染より社内のこの雰囲気に耐えられるか不安で、出社したくない」と言ってのご相談です。

その他、「“どこでうつったの?”って、ひそひそやられるのは分かってる」とか、要点になっている言葉を取り出しただけで、あなたの会社の古くて陰湿な体質が伝わってきます。そもそも「社内で誰が最初の感染者になるかって、ずっとささやかれていた」と冒頭にあるのだっておかしいでしょ?

今、こんな状況で、どこで誰が感染してもおかしくないし、保健所ですら感染経路を追えない状況になってるんですよ。どんなウイルスなのかだいぶ解明され、マスクをして三密を避けること、十分な喚起を行うこと等、徹底するよう繰り返し政府や多くの首長からメッセージが出されています。とは言え、「まん延防止等重点措置」を出し、飲食店に夜8時までの営業時間の短縮要請されましたが、十分とは言えない支援金に深夜まで営業を続けている店があったり、長引く自粛生活に耐えきれず繁華街の人出が増加したりしています。

日々の感染者数も減るどころか、むしろ増加傾向で、爆発的な感染者増が心配される中、3度目の緊急事態宣言も視野に入ってきてしまいました。ワクチン接種も思うように進まず、摂取率は他国に大きく後れを取っており、国民はおろか、摂取をになう医療従事者にさえ行き渡っていないのが現状です。小池都知事は、スーパーでの買い物は3日に1度、企業はリモートワークを中心にし、都外の方は都内に来ないでくださいと訴える始末。医療従事者の方は「医療崩壊は始まっている。コロナ以外の入院患者は受け入れられなくなりつつある。救える命も救えない」と悲痛な表情で訴え続けています。

世界中が未曾有のウイルス感染に襲われ、一致団結して当たらなければならない時に、「いろいろな男と飲み歩ってるから」などと言っている場合ではありません。あなたも「濃厚感染=男女の深い関係」と勘違いしていませんか?換気が不十分な狭い室内に一緒にいるだけで濃厚接触です。決して身体と身体が触れ合うことではないのです。
はっきり申し上げて、会社の雰囲気が古くて陰湿なだけではなく、あなた自身の感覚が古くて陰湿なんです。まずご自身の意識改革をしてください。そして、もし会社の中に同じような意識の人がいたら、「あなただって、いつ、どこで感染するか分からない。感染してしまった人を励ましましょう!」と伝えでください。

(文:大関洋子)

2021/04/05(月)
第205回【子親編】「コロナ禍で異性との接触を断つ、断たない?」
【Q】
コロナは、高齢者ほど影響を受けてますよね。若い人たちとか意識の低い人たちとかは、自粛が辛くなれば、外食だって遊びにだって行ってますけど、高齢者はそうはいきませんもんね。困っているのは、義母が他界して義父だけになってしまっているっていうこと。もちろん、感染はそれなりに怖がっていて、緊急事態宣言が出ている間はカラオケとかスナックとかにも行ってなかったんですけど、宣言が解除になった途端、昼はカラオケ、夜はスナックみたいになってしまって。「感染してるやつとは一緒じゃないから大丈夫」って言うんですよ。「自分に限って」って気持ちみたいです。どの人が感染してるかなんて分からないから自粛しなきゃいけないのに…。お目当ては女の人なんですよ。お店のママとかそこで働く女性とか。強く叱って、そういうところに出入りしないように言おうかとも思うんですけど、今の義父を見ていると、そういう女性との時間があるからボケないでいるのかなぁ、と。異性との接触の機会って断たない方がいいんですかねえ?

【A】
突然ですが、「照ノ富士、妻と望んだ再起」という見出しで3月29日(月)の朝日新聞社会面に、満面の笑顔で賜杯を手にしている照ノ富士関の写真が載っていました。記事には「2019年3月、4場所全休した照ノ富士が、土俵に戻った。番付は序二段48枚目。午前中、まばらな客の前で相撲を取った。月給取りの「関取」でなくなり、身の回りの世話をする付け人もいなくなった。支度部屋では番付上位が陣取る場所から離れ、192pの照ノ富士は入口近くの隅っこに座った」とあり、続く記事には痛めた膝をテーピングで固めてはいても、時折「痛い」という声が漏れること、糖尿病や肝炎にも悩まされ、伊勢ヶ浜親方には何度も「辞めたい」と伝えたこと、これを何とか持ちこたえたのは18年に結婚した同郷の「妻の存在」が大きかった、とあります。結婚はしたものの、式は「元の位置(大関)に戻る」と自身に言い聞かせて、節目となる今場所(春場所)直前に挙げたそうです。

平幕以下から再び大関に返り咲いたのは、44年前に西前頭六枚目から復帰した魁傑しかいません。今場所、大関昇進の目安「直近三場所を三役で計33勝」の目安を上回る36勝をあげ、優勝を果たしました。この劇的な大関復帰の陰には「妻」と誓った再起の思いがあったのです。格別、相撲ファンでない私も照ノ富士関の「史上最大のカムバック」には何が関わっていたのだろうと興味を持ちました。

あなたは、もうお察しと思いますが、人生にはどうしても誰か「共にいてくれる人」、伴走者、特に異性が必要なんですよね。義母が義父にとっていい伴走者だったかはわかりませんが、妻亡き後、お義父様は寂しかったでしょうね。

「クオリーティ・オブ・ライフ」(QOL)という言葉があります。一人ひとりの人生の質や社会的に見た「生活の質」のことを指し、どれだけ人間らしい生活、自分らしい生活を送り、幸福を見いだしているかということを尺度として捉える概念です。QOLの「幸福」とは、生きがい、心身の健康、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション、レジャーなど様々な観点から計られます。

お義父様には、感染リスクが大きいこと、感染した場合、命に関わること等を話した上で、どうしてもということならば、家族とは食事と居住空間を分ける、共有部分のトイレ、浴室など消毒するなど徹底することを宣言してください。もちろん、できる限り自粛してくださることが一番ではありますが。

(文:大関洋子)

2021/03/15(月)
第204回【親子編】「コロナ禍で息子との距離が…」

【Q】
高校2年の息子と中学3年の娘がいます。コロナ禍で生活が一変しました。息子も娘もコロナ禍前は部活動に夢中で、朝早く出て、真っ暗になってから帰ってくるという生活でした。帰宅すると疲れ切っているのでお風呂に入って食事をすると勉強もせず寝てしまうという繰り返しだったので、私と子どもたちとの距離はけっこう遠かったんです。ところが昨年、緊急事態宣言で学校がしばらく休みになり、宣言は明けても部活動はほとんどできず、2人が家にいる時間が長くなりました。子どもたちが家にいるとつい私も子どもたちをかまってしまうというか、何かしてやらなくちゃっていう気持ちになってしまうというか…。学校は最近正常に戻りつつあるんですけれど、子どもたちと私の距離は縮まったままです。私の接し方が悪いのは分かっているんですけど、一緒にいる時間が長いとつい何かしちゃうというか…。特に息子との距離は近くなってしまって、一緒に買い物に行くこともしばしばです。高校生の息子と買い物をしている自分がよくないことは分かっているんですけど、息子といると私も楽しいというか…

【A】
100年ほど前、オーストリアの精神科医ジークムント・フロイトは「精神分析学」を創始しました。そこでフロイトは「我=自分」の重心は「意識」よりむしろ「無意識」にあると主張し、「我=自分=意識」だとする考え方に大きな変化を与えました。現在、「無意識」の重要性を否定する人はいません。

人間は太古の昔から無意識の存在を何となく知ってはいましたが、それを理論的に深く探求したのはフロイトが初めてでした。フロイトは私たちの人間観を根本から変えたのです。人間について考えようとするとき避けては通れない道の1つであるとも言われています。

そのフロイト理論の一つに「心のくせ」という「コンプレックス理論」があります。よく使われる劣等感とは違い、「心のくせ、偏り」のことです。その心のくせの中に「エディプスコンプレックス」があります。これはギリシャ神話のエディプス王子の悲劇から名付けられたものです。この物語はエディプス王子の父が「この子は父を殺して母と結ばれるであろう」という神託を受け、生まれたばかりのエディプスを山に捨てるのですが、後々、神託の通りになり母は首を吊って死に、エディプスは自分の目を刺し放浪の旅に出るという悲劇です。

フロイトはこの神話の中にすべての人が抱いている普遍的願望があると考えました。幼い男の子は父親を亡き者にして母親と結ばれたい、反対に幼い女の子は母親を亡き者にして父親と結ばれたいと無意識の願望を抱いているというものです。こうした無意識の願望は成長するに従って、発達段階の中で他の異性への関心となって健全に解消されていきます。

思春期を含む青年期のもっとも大きな課題は「アイデンティティの確立」、即ち、自分は「どのような人間」で「何がしたいのか」という自分への問いと向き合うことです。この課題を一つひとつの体験から乗り越えて行くことで、「自分の生きる意味」「自分の存在価値」を確立して大人に成長するのです。
あなたのお子さんはこの大切な時期にあります。この時期は性ホルモンの分泌が盛んになり、異性への恋愛感情を持ち、初恋や失恋を経験する時期です。たとえ傷ついても、失恋がアイデンティティの確立を求めるきっかけとなり、成熟した大人になる健全な発達過程には大切な体験です。この時期にお子さんを「マザコン」と言われる青年にしてしまわないよう、買い物やお出かけに夫の代わりとして息子さんを手軽に連れ出さないようにしてください。

(文:大関洋子)

2021/03/08(月)
第203回【夫婦編】「コロナのせいでセックスレス?」
【Q】
今回の緊急事態宣言はあまり緊張感が感じられず、夫の仕事も夜の飲み会がなくなったことを除けば、ほぼコロナ前と変わらない勤務になっています。家族の生活も、たまには外食をしたり、子どもたちと買い物に行ったり、7割くらいは元の生活に戻っているように思います。そんな中で1つだけまったく元に戻っていないのが夫との夜の生活です。以前からそれほど多い方じゃなかったんですけど、去年の緊急事態宣言の時に感染リスクを減らすために寝室を別にしたんですけど、それが今でも続いていて去年の3月からセックスレスなんです。夫は「オレは日々感染リスクにさらされながら仕事をしてるから部屋は一緒じゃない方がいい」っていうんです。でもおかしいじゃないですか。家の中ではマスクをしていないし、食事は一緒で同じお皿の食べ物を突っつくことだってある。会話だって普通にしてるんです。コロナを口実に使っているだけで、ほんとは私との関係が冷め切ってるってことですよね。

【A】
「日本性科学会」という医師やカウンセラーを中心とした学会があります。「セクシュアリティは人間にとっての性のあらゆる面を包括する概念で、セクシュアル・ヘルス(性の健康)はこれに関する身体的、心理的社会的に幸福な状態をいいます。日本の性科学会は臨床的な研究や診療を通じて性の健康の推進をはかる専門家の団体です」という学会としての設立趣旨が掲げられ、1979年に「日本セックス・カウンセラー・セラピスト協会」として発足したものです。
この学会が「セックスレス」の定義としてあげているのは次の文面です。今から27年も前に出されたもので、その頃とは環境も人の心身も変わってはいますが、そこにはこのように定義されたいます。

「特別な事情がないにも関わらず(病気や怪我で機能的にセックスができない、遠距離恋愛や単身赴任で物理的にできないなどを除く)カップルの合意した性交あるいはセクシュアルコンタクト(キスやペッティング、裸でのベッドインなどを言う)が1ヶ月以上ないことを指します」。(括弧内は後に付けたもので定義には入っていません)挿入を伴うセックスがなくてもセクシュアルコンタクトに類するものがあればセックスレスとは言わないわけです。
セックスレスと感じたり考えたりする期間は、世界の国々でまったく異なり(性交回数が多いとされているギリシャ人の年平均164回に比べ、日本人の平均は48回という調査もあるので)、セックスレスの定義はそれぞれの人がそう感じた時がセックスレスと考えるべきでしょう。

特に日本人はセックス以外にもいろいろ細やかな愛情表現を持っている世界でも稀な民族ですから、1ヶ月セックスがないからセックスレス、愛情がなくなったと決めつけることもないと思いますが、さすがにあなたのように1年以上も寝室も別、挿入を伴うセックスはおろか、それ以外のセクシュアルコンタクトもないとすると、その原因を考えて対処する必要がありますね。性の不一致は離婚の正当な理由として法律でも認められていますので。

もしかして、次のようなことはありませんか?
「妻が“家族”になってしまった」「パパ、ママと呼び合っている」「性行為は男性がリードして女性に喜びを与えるものとあなた(ご相談者)が考えている」「夫が仕事で疲れている」「子どもがいてタイミングがつかめない」「夫がEDになっているのに言い出せない」「以前に妻に拒否されたことがある」等々。
恥ずかしがらずに夫婦でよく話し合うことが重要です。

(文:大関洋子)

2021/02/17(水)
第202回【恋愛編】「何が女性蔑視か分かってない!」
【Q】
五輪組織委員会の森会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」っていう発言にはびっくりしました。案の定辞任になっちゃって。辞任表明の時には「女性を蔑視しているつもりはない」みたいなこと言ってましたけど、何が蔑視なのか分かってないんだなって思いました。彼ともその話で盛り上がって、その流れで結婚の話になったんですけど、その時彼から飛び出した言葉がなんと「俺も家事手伝うよ。育児だってやれると思う。必ず幸せにするから」。「はあ?」ってなりました。それって「私が家事の中心で彼が補助」みたいな言い方ですよね。だいたい、彼に幸せにしてもらおうなんて全然思ってないし…。家事もやらない「お〜い、お茶」男よりはましかもしれないけど、何が女性蔑視か分かってない1人なんだなって。要するに家庭の中心は男、家事は女って考え方で男女平等じゃないんですよ。結婚も考えてはいるんですけど、ちょっと迷っちゃいます。

【A】
全世界の女性が共感したという小説「82年生まれ、キム・ジヨン」をお読みになりましたか?
現代女性が抱える重圧や絶望を社会問題を織り交ぜながら鮮明に描いています。2016年に韓国で刊行されるとすぐ女性達の共感を呼び130万部を突破し、日本、イギリス、フランス、スペイン、イタリアを含む16カ国で翻訳されています。日本でも発売2日目に重版が決定し映画化もしました。結婚出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨン。社会から切り離されていく孤立感、自分の存在意義を見出せない苦悩に読者や映画を見た観客は自分たちを重ね合わせたと言います。

私が一番印象に残ったのは夫がジヨンに「僕たち子どもを持とうよ」と言う箇所です。ジヨンは夫があまりにも軽々しく言うので「あなたはまるでデパートへノルウェー産のシャケを買いに行くように言うけれど…」と言い、夫は「僕だって手伝うよ、家事も育児も」と答える。彼女は「私たちが子どもを持つことであなたは何か失うものがある?」と尋ねます。そして「私はほとんど全てのものを失うのよ。今まで築いてきたキャリアも人間関係も。そしてこれからの未来も時間も。自分の健康さえ失うかもしれないのよ。あなたは何も失う物はないでしょ」と言うと夫は「僕だって失うさ。仕事の後、仲間と飲んでくる時間や人間関係。その代わりに赤ん坊を寝かしつけたりフロに入れたり、手伝うよ」みたいなことを云うんですよね。

これは私の記憶なので脚色があるかもしれませんが『手伝う』という言葉があなたと同じように気になって、読んだ後2年経った今も心の中にわだかまっています。あなたも彼の「手伝う」を「彼は家事・育児の補助」とちゃんと正しく受け止めていますよね。家事や育児の中心は女性。男は女を幸せにすると言うのに女は決して「私はあなたを幸せにしてあげる」とは言わないのに…。

森元会長の女性蔑視は底が深く「みなさんはわきまえていらっしゃる」という言葉からは自分にとって都合のいい女性かどうか選別できるという特権意識がうかがえます。あなたが迷っていらっしゃるというのは、とても素晴らしい感覚です。私の研究所へいらっしゃる方の中には「中学生の兄と一緒の部屋だった時、今考えれば性虐待をされていて母に泣いて訴えても『女の子でしょ、我慢しなさい、お母さんも我慢したんだから』」と言われた方もいます。
会合では笑いが起きたとのこと、「差別意識を支える組織や社会構造を変える必要があります。まず、あなたの気持ちを彼に伝え、話し合ってみてください。

(文:大関洋子)

2021/01/29(金)
第201回【職場編】「“外で会ってよ!”と誘われて」
【Q】
3年前離婚して、男性相手の接客業をしながら、シングルで6歳と4歳の子どもを育てています。これまで生活費に困ることなく何とかやってきたんですけど、緊急事態宣言で客足が減って、以前の4分の1くらいの収入になってしまいました。このままお店に出ていても、以前と同じような収入に戻るか分からないので、お店をやめてスーパーや飲食店でのパートに変わろうかとも思うんです。でもパートの収入だけでは生活出来ないんです。状況を話したわけじゃないんですけど、お店の様子から状況を察したのか、何度か指名してくれていた男性に「外で会ってよ!」と誘われました。今まで仕事とプライベートはきっちり分けてきたので、そういう誘いがあってもすべて断ってきました。でも、それで生活出来るのなら、ありかなって思うようになりました。ただ、これまで自分が越えずに来た一線を越えてしまうと、これまでの自分が壊れてしまいそうでとても不安です。

【A】
売買春の人類的起源はあまりハッキリはしていないのですが、その一番古い例のひとつは、紀元前の古代オリエントにおける寺院売春です。それには、見知らぬ男たちに身を任せる女性が宗教的にあがめられた神聖売春と、奴隷が売春による収入を神殿に収める2種類の形があったとされています。しかしこれが現代の産業化され、同時に非合法化された売買春と同じ行為とは言えないという見方もあります。

日本での売買春が成立したのは10世紀の初め頃、「遊女」や「白拍子」という歌舞音曲の奉仕をして、支配層の裕福な人々から報酬を得ることから始まりました。近世になると江戸吉原に遊女達が集められ文化サロンとしての華麗な文化が花開いた一方、農村の貧しい女性たちがわずかな金銭を親に渡すだけで売買され、過酷な労働条件の中で性病をはじめとする病気になっても、ろくな手当もされず多くの女性たちが命を落としたり、絶望して自ら命を絶つ遊女も多かったそうです。

近現代でも、第二次世界大戦後、米兵相手の売春を整備するために組織された「赤線」の設置は1956年に売春防止法で一応の流れに終止符を打ったことになっていますが、1990年以降、売買春をめぐる議論は、成人女性の自己決定に基づく売春を犯罪視する根拠ではないとする意見も台頭し、それをセックスワークとして非処罰にすべきだという声も出てきました。しかし売春防止法は売る女性のみ罰し、買う男性をとがめないという極めて不合理なもので「性道徳の二重基準」と女性を「性欲処理の対象」とする明らかなジェンダー・バイヤスがあります。

コロナ禍の中で幼いお子さんを2人育てる困難さはお察しいたします。これまで性を売買して生活の糧を得ることに一線を画していたとは言え、あなたの人格が守られていたとは言えないのではないですか?今回、特定の男性と外で会うことで収入を得ることになると増々、仕事とプライベートの区別をつけづらくなり、「自分が壊れてしまいそう」とおっしゃっています。当然、あなたのような女性に行政、国がしっかりとした支援をすべきですが、企業や自粛要請のかかった飲食店の経営者には支援金が出されるのに、風俗営業店や従業員、中でも性処理を直接の仕事としている方にはまったく支援がありません。とても理不尽なことですが、このことをきっかけに、行政の窓口や支援団体(Grow As People)も開設されていますので、そういったところに相談し、スーパーや飲食店のパートに仕事を切り替え、頑張ってくださることを願っています。
(図解雑学「ジェンダー」海老原暁子他参照)

(文:大関洋子)

2021/01/14(木)
第200回【子親編】「父が母に手を挙げた」
【Q】
2度目の緊急事態宣言が出され、私たち夫婦も時差通勤や在宅ワークが増えました。子どもたちは学校があるので、夫と2人で過ごす時間を楽しめるかなあと思ったんですけど、お互い相手の一挙手一投足が気になって、イライラ、ブリブリ。コロナ離婚なんていう言葉が出来るくらい離婚の危機に直面している夫婦も多いようで、私たちも例外じゃありません。とはいえ、私たちは感染対策をきっちりして外に出られないわけじゃないので、たまには息抜きも出来るんですけど、深刻なの両親です。80歳を過ぎている両親は外出が難しい。2人で生活しているので、テレビでも観て家で過ごすように言ってるんですけど、最近の番組って若者をターゲットにした番組ばかりで父と母が楽しめるような番組なんて相撲くらいしかありません。先日、母から電話があり来てくれって言うから行ってみると、顔に痣があるんです。父に殴られたって言うんですよ。父は母に手を挙げるような人じゃなかったので驚きました。どこか気持ちのやり場をと思うんですが、この状況でどうしたらいいのか困っています。

【A】
まずはじめに気になったのは、実家のお父様は今までお母様に「手を挙げるような人じゃなかったので驚きました」とあなたがおっしゃっていることです。新型コロナの感染拡大防止のために緊急事態宣言が出され、80歳を過ぎたご両親が外出もままならず、テレビでも観るしかない毎日で、お父様がイライラしてお母様の顔に痣ができるほど暴力を振るった、と心配してのご相談です。

このコロナ禍の緊急事態宣言によって日常生活が大きく変わったのは確かですが、環境の変化がキッカケで、もしかしたら「認知症」の症状を発症したのかもしれません。認知症の原因や治療法は未だ解明されていませんが、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れ、物事を理解する力や判断する力がなくなって、社会生活や日常生活に支障が出てくるようになる症状です。年齢とともに、物覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりします。こうした「物忘れ」は脳の老化によるものです。

認知症は「老化による物忘れ」とは違い、放っておくとだんだん進行して「忘れたことの自覚がなく」「体験したことを丸ごと忘れる」ようになります。お父様のように今までお母様や子ども達に暴力を振った事がない穏やかな人柄だった人が、感情のコントロールが効かず急に理不尽に暴力的になったり、「もの盗られ妄想」に陥って、自分の財布や大事な物を盗られたと言ってお母様を責めたり、ひどくなると徘徊をしたりするようになります。アルツハイマー型にしてもレピー小体型認知症にしても「誰もがなり得る病気」ですが、治る認知症もありますし、早期発見、早期治療で進行をかなり遅らせることもできます。2018年の調査では65歳以上の約7人に1人は認知症(厚労省研究班)と報告されています。

受診もお父様が嫌がるのであれば、はじめから神経内科や物忘れ外来ではなく、かかりつけのお医者様に相談するのがいいでしょう。医師の診断にはふだん本人の様子を知っている家族の話が役立ちますので、お母様とあなたが付き添って、「最初の異変(お母様に暴力を振るった)はいつ頃か?」「物忘れはないか?」「この半年の間の様子」「他の病気や服用中のお薬」等を整理してメモしておくといいでしょう。
診断の結果、「認知症でない」ということであれば、ご両親の言い分をよく聴いて、お父様に「暴力はいかなる理由があってもダメ」と話してください。

(文:大関洋子)

2020/12/24(木)
第199回【親子編】「娘の帰宅時間が…」
【Q】
高校2年生と中学2年生の娘がいます。上の娘には同じ学校に通うボーイフレンドがいて、たまにうちに連れてきたりもしていました。とても真面目で優しい少年なので、私も夫も認めていて、夕飯を一緒に食べたりもしていたんです。コロナ禍で学校もいろいろ制約を受けているし、当然のことですけれど、うちに連れてくれば私も夫も強い調子で怒るので、連れてこなくはなったんです。ところが、外で遊びだして、かなり遅い時間まで帰宅しなくなってしまいました。今の状況が分からないような2人ではないと思うので、先日娘にはよく話をしたんですが、その後も帰宅は遅いままです。そんな姉の様子を見て、下の娘もどんどん帰宅時間が遅くなってしまっています。

【A】
人は思春期に入ると初恋を経験します。この時期は性ホルモンの分泌が盛んになり、身体的な変化や性衝動がアイデンティティの確立を脅かすことも珍しくありません。アイデンティティという言葉は、日本語では「自我同一性」「自己同一性」と訳され、20世紀にエリク・エリクソンという心理学者が作り上げた概念と言われています。
「自分は誰であるか? Who am I?」「どこへ行こうとしているのか? Where am I going?」とか、「自分が存在していることの認識や価値」「自分らしさや個性」「自分がどういう性格でどんな人間なのか」等々に迷い、考え悩むのが、あなたのお子さんたち、中学2年くらいから大学くらいの年齢です。

エリクソンは、「人の発達には、それぞれの年代に「発達課題」と呼ばれる、乗り越えることで人が精神的に発達し、幸福な人生を歩むことが出来る課題がある」と8つのステージに分け課題を指摘しています。
このような急激な心身の発達の中で経験する恋愛は、多くの場合、思うように実らず終わりがちです。お互いにはまだアイデンティティを確立していないため、相手からよく思われたいと強く思ったり、自分に対する評価が気になって関係が長続きしないことが多いのです。

しかし、こうした恋愛と失恋がアイデンティティの確立を促すことになり、心身共に成熟した大人へ成長するきっかけとなります。たとえ傷ついても、健全な発達過程には大切な経験となり、自他の欠点も認め合い、精神的に支え合える誠実な人間関係を築けるようになっていきます。
ただ、上のお子さんのように家で会っているということになると、現在のコロナ禍で大きなリスクを背負うことになり、万一感染でもすると2人のお子さんにはほとんど症状がなくても、親であるあなた方夫婦、同居の親族に高齢の方や持病のある方があれば命の危険があることになります。
やみくもに家で会うことを叱っても、思春期の子どもたちにとっては、かえってそれが刺激となりお互いを求め合うようになってしまうこともあります。少年は真面目で優しい子だとのこと。お子さんと2人に丁寧に今の逼迫した医療状況や感染の拡大について、出来ればお父さんも含めて話し合い、会う回数と時間を減らして自宅で会うルール作りをする。下のお子さんにもその様子をきちんと見せるようにしてはどうでしょうか?

(文:大関洋子)

2020/12/08(火)
第198回【夫婦編】「“この方が楽”と思ってしまっている私」
【Q】
結婚して5年です。子どもがいないので、私も夫も会社勤めをしています。コロナの影響で、2人ともたまに出社はしますけど、在宅ワークが中心です。コロナ前と比べると一緒にいる時間は増えたんですけど、リズムがすっかり狂ってしまって、なんだか落ち着かないんです。最初のころは一緒にいられることを単純に喜んでいたんですけど、長くなるとお互いに相手の存在がうっとうしくなってきて、夫は毎晩ペットの犬と一緒に寝るようになってしまいました。今では部屋も別々です。以前の私なら、そういう状況を寂しいと思っていたと思うんですけど、今は“この方が楽”と思ってしまっているんです。

【A】
昔々、原始時代は、男女が気ままに求婚する「共同婚」が行われていて、男が女の家に通う「妻問婚」の形態に発展していったと考えられています。古墳時代には、この「妻問婚」が行われていたようで、その後書かれた古事記や日本書紀、万葉集などにも「ツマドイ」の語が見られます。
妻問婚は、男が女の家の窓や戸の隙間から呼んだり、男の求婚歌に女が答歌するなどの方法で行われる「自由恋愛」でした。あの有名な竹取物語も何人もの貴族の男性が、かぐや姫の「婿」になろうとしてあらゆる手段を用いて「よばい」つまり「求婚」(呼ばい)を試みています(後に「よばい」は「夜這い」という風習につながっていきますが)。

しかし、この求婚(よばい)によって結婚が成立しても、夫婦は「別居」でした。子どもが生まれると、生まれた子は母のもとで育ち、その家の財産は女性が相続するという母系氏族制が奈良時代、平安時代と続きますが、鎌倉時代、武士の勢力が強くなり、「嫁取り婚」、家と家の結婚が現れ、母系家族の形が崩れていきます。それまでの長い歴史の中で、女性は生まれ育った実家で比較的自由に生活したり子育てをしたりしてきたと思われます。通ってくる男性、夫のことが嫌になれば門を閉ざし、会わないことも出来ました。もちろん、男の方も嫌になって足が遠のくこともあるわけですが、女性は経済的にも精神的にも実家に守られているので、もし男が通ってこなくなっても打撃は少なくてすみます。

さて、あなたは夫と寝室も別になり、彼はあなたの代わりにペットの犬を抱いて寝ている。はじめはそれを寂しいとも思ったけれど、今は“この方が楽”と思ってしまっている。そして、そう思う自分が「いったい夫のことを愛しているのか」、そしてその逆も心配になってご相談なさっているんですよね。
千五百年も昔の「妻問婚」の話をしましたが、戦いが常に行われ、武士、男性の力が強くなった鎌倉時代以降は「嫁取り婚」になり、女系制が崩れ、女性は夫や夫の親族の顔色をうかがって、ビクビクオドオド暮らすことが多くなりました。あなたは「妻問婚」で言えば、夫が訪れてこなくなり、妻もその方がのびのび楽に暮らせているということですよね。

コロナ禍での生活は、これまで経験したことのない生活なので、心がついて行くのにも時間がかかります。これまでは、仕事の時間は別々の生活で、眠っている時間を除けば、夫婦がお互いに相手に関わる時間はほんのわずかでした。夫婦の関係だけを見れば、仕事をしている時間も自分の時間(プライベートな時間)だったわけです。それが少なくなり息苦しさを感じる人も増えています。2人にとって最も良好な距離感はどれくらいの距離感なのか、よく話し合ってください。話し合っても納得がいかないのであれば、一緒に生活するのは難しいかもしれませんね。


(文:大関洋子)