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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2021/12/23(木)
第223回【夫婦編】「“まだか”とせかす夫」
【Q】
毎年友達夫婦と居酒屋みたいなところで忘年会をしてました。去年は中止にしたんですけど、今年はお酒中心じゃなくフルコースのディナーでやることになって3組6人で集まることになりました。夫と外で食事をするのも久しぶりだし、6人で集まるのは一昨年以来だから、女3人で綺麗にしていこうねっていうことになりました。早めに出かける準備をしていたら、目の前で化粧をしているのが目障りだったのか、夫が「まだ早いだろ」ってうっとうしそうに言うので、しばらく支度を中断して30分くらいして再開したんですけど、今度は夫の支度がすんじゃって「まだか」ってせかすんです。食事会ですからマスクも外すし、外した後のことも考えてメークしなきゃだし…。「1時間くらいは大丈夫でしょ?」って言っても何度も「まだか」ってせかされて、20分くらいしたところで「もう出るぞ!」って大声で怒鳴られました。「まだ早いだろ」って言ったのは夫だし、さすがに私も切れちゃって怒鳴り合いになったんです。結局夫が先に出て、私も急いで出たんですけど、30分近く遅れる始末。楽しみにしていた食事会だったのに、みんなに迷惑はかけちゃうし、最悪の食事会になってしまいました。

【A】
よく「女の化粧は長い」と言われますが、「女」としてくくられると少し違う気がします。女性でもほとんど化粧をせず、夫のひげそりの時間より早く支度が終わってしまう人もいます。相手に失礼のないように精一杯の化粧をして出かける。そうすることで自分も気分が高揚して楽しくなる。それが化粧の効用でしょうか。

そもそも化粧は女のするものというのが常識(最近、化粧をする男性も増えました)ですが、日本では3世紀後半の古墳から赤い顔料で顔や身体に化粧を施した男性の埴輪が出土したり、武士が戦いに挑む時、鎧の下の顔に化粧をしている記述が見られたり、歌舞伎では男性も濃い化粧をします。世界では旧石器時代から獣の脂を塗って顔料を呪術の意味にしたり、先住民の中には男女ともタブーゾーンを化粧で色分けして示している人たちもいます(デズモンド・モリス「人間の行動学」)。

というように「化粧の起源や歴史」を綴ってみましたが、あなたの不満は、夫から「化粧」のタイミングやそれにかかる時間について「まだ早いだろう」と「うっとうしがられ」たかと思うと「まだか?」と「せかされ」、最後には「もう出るぞ!」と大声で怒鳴って先に出ていってしまった夫の一連の言動ですよね。あなたの夫は生活の全てでまさに今回の化粧に関わるタイミングや時間をあなたの立場で考えず、すべてを自分本位に考える人ですよね。

自分がこうあってほしいというタイミングと時間をはずされるとイライラして「早い!」と言ってみたり、「遅い!」と怒鳴ってみたり。今まであなたが何とか合わせてきた結婚生活だったんですよね。極論を申し上げれば、この際別れた方がいいと思います。ジェンダーギャップの激しい日本の社会では、離婚は簡単ではないかもしれませんが。

あなたがお仕事に就いていて、自分の収入だけで充分生活できるなら、きっぱり夫の自分本位で、勝手な言動を慎んでもらうよう話してみてはどうですか?もし収入のない主婦ならば何か仕事を見つけて少しでも自立できる立場になりながらということにならざるを得ないかもしれませんね。お子さんがいらっしゃるとしたらもっと離婚はしづらいでしょうが、このままでは男女どちらのお子さんの教育も最低のものとなってしまいます。お子さんたちに「男は自分勝手に振る舞い、女はそれに従わねばならない」という見本を示しているわけですから、なんとか改めてもらうようにしてください。
(文:大関洋子)

2021/12/02(木)
第222回【恋愛編】「やってやってるアピールの彼」
【Q】
彼と旅行に行ったんです。久しぶりで、それなりに楽しい旅行にはなったんですけど、宿での食事とかサービスエリアでの食事とか、いろんなカップルを見てるうちに、他の男性の態度と彼の態度がすごく違う気がして気になったんです。どの男性を見ても振る舞いが自然なんですけど、彼は不自然。「やってやる」みたいな恩着せがましい態度に感じるんです。気になり出すとすべてそう感じちゃって。例えば、フードコートで食事をしようとした時なんて、他のカップルは、ブザーが鳴るとスッと男の人が立って窓口まで取りに行くのに彼は必ず私に「俺が行こうか?」って聞くんです。水を取りに行く時もそう。「水飲む?」って聞くんです。水なんて飲んでも飲まなくても持ってくればいいじゃないですか。レストランで水を持ってくる時「飲みますか?飲みませんか?」なんて聞かないですよね。彼は私に「やってやってるアピール」をしたくて何かしてくれるんだなって思うんです。他の男性を見れば見るほどがっかりします。今の彼の優しさはただの振りで、結婚したら激変するタイプなんじゃないかって、今回の旅行で不安になりました。

【A】
彼の行動によく気がつきましたね。一昔二昔前は、女性が水や料理を取りに行くのが当たり前、そうすることが「気がつく女性」「気配りのできる女性」という感覚が、男性はもちろん女性の中にもありました。しかし、女性が社会進出するにつれて、そういった習慣や文化は少しずつですが変化して、男性が家事育児をするのは「おしゃれ」「かっこいい」「優しい」と肯定的に受け止められるようになりました。

総務省の「社会生活基本調査」(H28)では、6歳未満の子どもを持つ夫婦の男性の家事育児関連時間は、2011年は2006年より7分増加、2016年はさらに16分増加し、68分になっています。ただ、その年の妻の家事育児関連時間は414分で男性の約6倍なのです。女性の家事の中には夫の母の介護なども含まれていて、まだまだ日本では結婚して子どもができたり、親が高齢になったりすると、それらの家事育児は女性の仕事となっています。先ほどの総務職の調査は6歳未満の子どもがいて、夫婦共働きの時の統計です。
あなたが「やってやってるアピール」をしている彼に結婚後の不安を感じるのは当然ですね。女性の社会進出が提唱されて久しい中ですが、アンペイドワーク、無償労働と呼ばれる家事育児は主に女性の役割という構図はなかなか変わらないようです。

ジェンダーギャップ指数が114位と低いことから見ても国際的に比較すると男女の家事育児に関わる時間の差が先進諸外国では女性2に対して男性1程度の割合なのに日本は5〜6倍になっています。ただし男性の味方をするならば、男性の有償労働時間が女性に比べて長く、2020年の日本男性の1日あたりの有償労働時間が452分(7時間32分)とOECD(経済開発機構)の国際平均317分(5時間17分)を大きく上回り、最も長時間なのです。日本の女性もOECD平均を1時間近く上回る272分(4時間32分)という長さですから、日本の男性も女性も国際平均から見ると働き過ぎ、特に男性は働き過ぎもあって、女性をいたわる習慣や文化が根付きづらいのかもしれません。もちろん収入の男女差の影響もあります。

あなたも、自然な振る舞いで水や料理を持ってきてくれる男性を探し直すのもよし、日本の男性の男尊女卑的な習慣や文化を彼とともに考え直して、彼が内面から自然にあなたを支えてくれるように2人の関係を再構築するもよし。それができたら小さな社会改革になるかもしれません。
健闘を祈ります。
(文:大関洋子)

2021/11/19(金)
第221回【職場編】「元のように付き合いたい」
【Q】
やっとコロナも落ち着いてきて、会社もコロナ前に戻りつつあります。在宅勤務が多くて我慢することが多かった彼との関係も、恋愛モード全開で、いざ再開、という気持ちになっているんですが、彼の方が慎重なのか、私に興味がなくなっちゃのか、なかなか気持ちが前に向かないみたいで、以前のような関係が取り戻せないんです。あまりにも態度が素っ気ないので、先日「私のこと嫌いになった?誰か好きな人でもできたの?」ってまっすぐ聞いたんです。彼は、「そんなことないよ。何で?」って言うんです。「なら、いいけど」って答えたんですけど、本当はちっとも良くないんです。そんな状態の時に、逆にイケイケのやつがいて、しつこく私をデートに誘うんですよ。彼のこと好きだから、また元のように付き合いたいんですけど、ちょっと言い方悪いですけど、身体がうずくっていうか、イライラしちゃう時もあって、イケイケのやつと1回くらい付き合ってやってもいいかなって思ってるんです。

【A】
コロナ禍で彼とのデートも我慢してきて、やっと落ち着いて、いざ再開!と見込んだあなたと沈んだ気持ちから抜けきれない彼とのタイミングがずれてしまったんですね。そしてあなたは彼のタイミングを合わせようとはせず、あなたをしつこく誘うイケイケのやつと、一回くらい付き合ってやってもいいかなと思っている。

進化論的な「種の保存」の法則から言えば、コロナ禍の慎重な行動から気持ちが爆発して、しつこくあなたをデートに誘う「ヒト」の方が、沈んだままの彼よりたくさんの子孫を残せそうですよね。しかし、しかしですよ、「種の保存」を何よりも優先しなければならなかった洞窟生活の時代ならいざ知らず、今は「ヒト」として相手のペースや気持ちを理解し合い、長い一生を支え合って生きていくのが質の高い恋愛、結婚なのではないですか?

身体がうずくとかイライラするのは、あなたがあなたの感情にだけ焦点を当て、それにこだわっているからです。ちょっとそこから離れてみてください。ご自身の心を一度、真っ白にしてみてください。心を真っ白にするってとても難しいと思うかもしれませんが、秋の青空、真っ青にすんだ青空にぽっかり白い雲が浮いていると思う。そしてその白い雲を「身体がうずく私」と「イライラする私」に見立て、雲を箱に入れて心の中の戸棚にしまう。そんな光景をイメージしてください。空は雲のない青い秋の空になりましたよね。それだけであなたの心から「うずく私」と「イライラする私」はほとんどいなくなってているはずです。

まだ戸棚に入れた箱がバタバタするようなら、そのバタバタする箱を目の前に持ってきて、少し箱の蓋を開けて、「どうしたの?なぜそんなにバタバタするの?」と心の中で「うずく私」「イライラする私」に聞いてみるんです。その箱は「だって私、コロナ明けだもの。恋愛モード全開なのに、彼はそうじゃないんだもん」って答える私がいますよね。あなたがもし彼を本当に愛しているなら、どう答えますか?「そうなのね。彼はまだ、なかなか気持ちが前を向かないんだから、少し待ってあげたら?」と言うことはできませんか?

もしそう言えないのなら、彼とは別れることも考えた方がいいかもしれません。元のように彼と付き合いたいのなら、しっかり考えてください。
自分の心をまっさらにして心に改めて焦点を当てるこの方法をカウンセリングでは「フォーカシング」と言っています。

(文:大関洋子)

2021/11/08(月)
第220回【子親編】「母の作ったものしか食べない義父」
【Q】
夫とは結婚して30年になります。夫には姉と弟が一人ずついますが、紆余曲折を経て、義母の希望もあり、私たち夫婦が今年の初めから両親と同居することになりました。夫と義母とは仲がいいので、それなりにうまくはやっているのですが、問題は義父で、義母の作ったものしか食べないんです。もしかすると少し認知症が始まっていてわがままになっているのかなあなんて思ったりもするんですけど、全くそんな風には見えないので、夫も含め周りには言えないし、困っています。何度か義姉にも来てもらって、食事の支度を手伝ってもらったりもしたんですが、やはり義父は義母が作ったもの以外は気に入らないらしく、箸をつけません。今はまだ義父の分くらいは義母が作れますけれど、今後、義母が作れなくなった時に、どうやって義父に食事をさせるかとても心配です。

【A】
よくあるお話ですね。お義父さんは長年、おかあさんの味に慣れ親しんでいるので、それが一番身体にも心にも合っています。そして今、お義母さんはお義父さんの分と自分の分を作ることを嫌がっている様子ではありませんよね。あなたは「今後、義母が作れなくなった時に、義父にどうやって食事をさせるかとても心配です」と言っていますが、とりあえず今はお義母さんにお願いして、今まで通りお義父さんの分も作っていただいたらいいでしょう。

むしろ、同居し始めた長男の妻、いわゆる嫁が急に台所を全部取り仕切って家族全員の食事を作ってしまったとしたら、きっとお義母さんの出番がなくなって気力を失い、お義母さんまで認知症的な症状が出ないとも限りません。お義父さんがお義母さんの食事しか召し上がらないことを活用して、あなたからお義母さんに「お義父さんの分はなんとか作ってほしい」とお願いしてください。そして、お義母さんの味付け、材料の選び方、野菜の切り方、煮方焼き方…をあなたがお義母さんから教わってください。
人に大切なことは、一生その人の出番があることです。自分が誰かの役に立っているという意識が人には必要です。それがなくなった時、その人の人生は終わってしまうのです。

あなたは「紆余曲折を経て、義母の希望もあり」夫の両親と同居された。「夫と義母とは仲がいいので、それなりにうまくはやっている」とのことですが、根本のところに思い込みがあります。それは、お義父さんの食事作りを自分がしてお義母さんの負担を減らすことがお義母さん孝行、いい嫁だと思っているところです。お義母さんと仲のいい夫からも自分に感謝してもらいたい思いも感じられてしまいます。

あなたに一つ問いたいことがあります。さだまさしさんの「関白宣言」の中に、

 お前の親と俺の親と どちらも同じだ大切にしろ
 姑小姑かしこくこなせ たやすいはずだ愛すればいい

というフレーズがあります。

「紆余曲折」、心のどこかに「なんで私が…」というわだかまりはありませんか?お義父さんはそれを感じているかもしれません。「愛すればいい」、とてもうまい表現だと思います。

さて、「お義父さんの出番」は、今のところ「お義母さんの食事しか食べない」ということなんです。そしてあなたの出番は「お義母さんからお義父さんの食事について教わる」ことです。その様子を見たお義父さんは、きっと徐々に自分の妻と息子の妻が協力して作った食事をいつからともなく美味しく召し上がるようになると思います。
夫の両親との同居を了承されたあなたに敬意を表しながら、食事のことだけでなく、それぞれの出番を日常の中で、人生終わるまで落ち続けられることを願います。
(文:大関洋子)

2021/10/26(火)
第219回【親子編】「気遣いできない嫁」
【Q】
息子が1人いるんですけど、結婚して車で3時間くらいの嫁の実家の近くに住んでいます。息子夫婦には子どもが2人いて、嫁の実家が近いので、出産の前後は向こうのお母さんに何かと面倒を見てもらっていました。下の子どもが生まれたのは一昨年の秋。半年もしないうちに新型コロナの感染拡大で、息子たちがうちに来ることができなくなり、私と夫が息子たちの家にいくこともできなくなりました。息子たち家族に会ったのは、去年のお正月が最後です。この状況ですから、しかたのないことですけど、私が腹が立っているのは、嫁が無神経にLINEに向こうのご両親と遊ぶ孫たちの様子を送ってくることです。おそらく嫁は、私と夫にも孫の様子を知らせようとそれだけのことなのかもしれません。でも私はあまりいい気がしません。そりゃあ向こうのご両親に孫たちがかわいがられているのはいいことですけど、私も夫も会いたいのに会えないわけだし…。私が嫁の立場なら向こうのご両親の写っていない孫だけの写真を送ります。そんな程度の気遣いができない嫁だとこれからの付き合い方に不安を感じます。

【A】
よくある話ですねぇ。孫はどちらの祖父母にとっても4分の1ずつの遺伝子を継いでいてくれる子孫で、進化論的には直系の血縁者として大事です。ほとんどの動物は孫が生まれるまで親が生存することがないので、孫を大切にする行動が進化に影響することはありません。

ところがヒトは自分の繁殖時期(受精、出産、子育て)の終了よりもはるかに長い生理的寿命を持ちます。だから祖父母が孫の子育てを応援することで孫の生存率が高まるのではないかという説があります。進化論から言えば、孫の両親、二組の祖父母四人が孫の子育てに参加することが生存率を高める有効な手段となり、ヒトの寿命が長くなったり進化に影響をもっているとも言われています。

なので、あなたの嫁の両親がよく孫を可愛がり、その証明のような写真を嫁が送ってくるのは「進化論的にヒトの寿命を長くしている効果がある」といくら言われても、あなたは納得できませんよね。「自分が嫁の立場なら向こうのご両親の写っていない孫だけの写真を送ります」とあなたは言い、「そんな程度の気遣いができない嫁だとこれからの付き合い方に不安を感じる」とまでおっしゃっています。

あなたが考える「気遣い」とは、「実際のところは私(嫁)の両親もこんなに、あなたたち(ご相談者とその夫)の孫でもある私たちの子どもを可愛がっています」ということであっても、それは隠しておくべきだと言うんですよね。それは自分達も会って可愛がりたいのに自分達はコロナで行けない、それなのに、そっちは近いからと言っていつも会っていて!という嫉妬以外の何ものでもありませんね。

かつて私の両親が向こうのご両親に「いつも孫を可愛がっていただいてありがとうございます」とお礼を言ったら、向こうのご両親から「いえいえ、あの子は私たちの孫でもありますから」とにこやかに言われてしまい、「あっ、そうだよなあ」と思わず失礼を詫びたと言っていました。発達心理学から言っても小さな子ども達が親だけでなく、祖父母に大切にされ、慈しんで育てられることは、後の人格形成に限りない可能性を育むことになります。知覚的にも身体的にも、たくさんの人に抱かれ、話しかけられた子どもが発達段階を順調にクリアし、他者とのコミュニケーション能力も高いことは幼児心理学の示す通りです。

どうか可愛いお孫さんのためにも、嫉妬の感情ではなく、嫁のご両親に感謝できるご自分になってくださることを願います。
(文:大関洋子)

2021/10/11(月)
第218回【夫婦編】「夫婦別姓問題で溝が…」
【Q】
夫婦別姓問題って政治の世界で長い間話題に上っているみたいですけど、全然進みませんよね。国会で議論が進んで民法改正なんてことになれば、だんだん世の中もそれに慣れていくんでしょうけど、政治がけりをつけられないんだから、国民だっていろんな人がいてひとつの方向には進みませんね。誰がどう思ってようと他人ならかまわないんですけど、うちは夫と私で意見が真逆なんです。私が別姓支持派、夫が反対派。こういう問題ってやり合いになるとどんどんヒートアップしちゃって、収まらなくなっちゃうんです。私は、別姓を名乗ることで、女性が一人の人格として認められて、絶対差別が減るって思ってるんですけど、夫は「別姓になったら家族としての一体感がなくなる」っていうんです。私が思うに、夫は女性が差別されてることなんてまた気にしてなくて、今まで通り男の自由に家庭も社会も動けばいいと思ってるんでよ。今だって夫に言いたいことはいっぱいあるけど、この溝が埋められないとこれから溝がどんどん深くなっていずれ離婚なんてことになっちゃうんじゃないかって不安です。

【A】
一般の人々が「姓」を名乗るようになったのは明治時代に入ってからです。それまでは姓を名乗っているのは貴族とか武士とか身分の高い人だけでした。庶民は自分が耕作している土地の所有者から恩賞として氏名(うじな)を貰ったり、地区の共同体意識を高めるために自分たちで土地になじむ名称(村田とか岡山とか川上とか)を名乗ったりはしていました。明治に入って1876年の太政官指令で、まず導入されたのが「夫婦別姓」で、「妻は実家の姓を用いる」と定められました。その後1898年に施行された民法では「夫婦は家を同じくすることにより、同じ氏を称する」とされたことに始まり、100年以上続いています。

結婚するには夫婦のどちらかの姓(名字)を選び、一方はそれまでの姓を捨てなければならないということは日本では当たり前の仕組みですが、現在の世界の先進国では実は日本だけの特異な法律です。だから日本人と外国人の婚姻では別姓を認めているのですが、日本人同士の婚姻には認めていないのです。日本では96%の女性が結婚して夫の姓を名乗っています(厚労省2016年)。

結婚しても仕事を続ける女性が増え、姓を変えることによる不便、不利益、夫の「家」に「嫁に入る」という従属的な差別感などから、姓を変えなくても結婚できる「夫婦別姓」も選べるようにしようという議論が社会的に活発になっています。「選択的夫婦別姓制度」と呼んでいます。「夫婦別姓を認めない」民法の規定について最高裁が「合憲」としてからすでに3年も経ちます。その間、あなたのような方たちから「別姓」を求める裁判が相次いでいます。地方自治体の議会を通じて声を上げる活動も神奈川県をはじめ請願書が47都道府県議会から提出されています。あなたの夫君が言う「別姓は家族の一体感がなくなる」という意見は、「別姓」になっている世界の国々でも、反対する人たちから出されていた意見です。他にも「親子で名前が違うと子どもがかわいそう」とか「結婚制度が弱体化する」とか、反対の意見もあります。

夫君の「別姓になったら家族としての一体感がなくなる」という意見はまさにあなたの思う通りで「女性が差別されていることは気にしないで、今まで通り男の自由に家庭も社会も動けばいい」という考えが夫君に無意識にあるのでしょう。「結婚制度」そのものについて考えてみてほしいです。
「事実婚」は別姓ですが、家族の絆が弱いでしょうか?むしろ夫婦2人が熟考してその型をとって堅く結ばれているかもしれません。超党派で「別姓」を支持する議員も多くなっています。このまま「離婚」へ行く前に女性差別の根本を夫と話し合うことをおすすめします。
(文:大関洋子)

2021/09/27(月)
第217回【恋愛編】「すぐに実家の話になる」

【Q】1年前から社内恋愛中です。コロナ禍前から知っているので「付き合ってくれない?」って言われた時、躊躇なくOKしたんです。付き合い始めて3ヶ月くらいしたころ、「実家に行ってくれない?」って言われました。感染者数が増えていた時だったんで「今は無理じゃない?」と言って断ったんです。その後も感染者数がちょっとでも減るとすぐ「実家」の話が出ます。それって、結婚を前提ってことですよね。付き合って3ヶ月くらいでそんなの変じゃないですか。私、25歳だし、付き合って3ヶ月くらいじゃ結婚なんて考えないですよ。以前付き合っていた彼にも、3ヶ月くらいで「実家に」って言われました。お互いに遊びって割り切って付き合ってる男性はそんなこと言わないんですけど、真面目そうな男性ってみんなそうなるんです。「実家の話」が出るまでは、いい感じって思っていても「実家の話」が出た途端、すーって気持ちが冷めちゃうっていうか…。すぐに「実家の話」になる人って、お母さんとの距離が近そうですよね。私の方から「そろそろ実家に」って言うまで実家の話をしない人がいいかなって思うんですけどどうですか?

【A】あなたのご心配はもっともで、「すぐ“実家の話”になる人って、お母さんとの近そうですよね」とおっしゃっているのは正解です。付き合い始めて3ヶ月くらいで「実家に行ってくれない?」ということは、これもあなたがおっしゃっている通り「結婚を前提ってこと」です。だから「実家に行ってくれない?」という彼の言葉はプロポーズとまでとは言わないまでも、「実家」に「こんな素敵な女性と出会えてお付き合いしてます」と自慢したいってことでしょう。さすがに「お母さ〜ん、この人と付き合っても大丈夫か見て〜」という意味ではないと思います。もしそうだとしたら、即お別れした方がいいでしょう。

自慢の女性を母親をはじめ家族に紹介して、「もしかしたら結婚するかも…。そしたら皆とも家族になるからよろしくね」という非言語の意味が充分感じられますよね。まあ3ヶ月が長いか短いか、会った途端にビビッとくる出会いや1回のお見合いで結婚を決める人たちがいると思えば、1回別れて5年後に再開して結婚したという人たちも何人も知っています。じっくり品定めしているうちに嫌になって別れたり、違う人が好きになったりもしますし、恋とは気づかず、どうもこの人とぶつかることが多いなあと思っていると、ある時「あれっ?これってもしかして…」と気づいたりもします。要するに人を好きになるのに時間や形はないってことです。

それより問題はあなた、あなた自身の考え方にありませんか?1番問題なのは、あなたがお互いに遊びって割り切って付き合ってる男性はそんなこと言わないんですけど、真面目そうな男性ってみんなそうなるんです」と言っていること。「25歳だし」とも言っていますが、男性との出会いをすべて結婚に結びつけないとダメというわけではありませんが、あなたの「出会い観、恋愛観、結婚観」にとても違和感を感じます。人を「本当に愛する」時に、年齢も境遇も何も関係ないと思いますよ。

「遊びって割り切って付き合う男性って」と言っていますが、あなたも「遊びって割り切って付き合う女性」なんですよね。「遊び」と「結婚」って割り切れるものだと考えているあなた。人との出会いやコミュニケーションの深さや暖かさ、真の喜び、感動は、一つ一つ真面目に取り組んでこそ、味わえるものだと思います。この際、素敵な恋愛小説や映画などにたくさん触れてみてください。
(文:大関洋子)

2021/09/21(火)
第216回【職場編】「職場で彼氏ができない」
【Q】
コロナ禍はいつ終わるんですかねえ…。ワクチン接種が進んでも、感染対策はこれまで通りって話だし、日本人は欧米人みたいにワクチン打ったらノーマスクみたいなことにはならないと思うんですよ。家庭内とか女友達とかと食事をする時なんかはマスクは外しますけど、職場でマスクを外すのはトイレでメークを直す時くらい。自分のデスクでマスクを外すなんて絶対できないし、会話だってなるべくメールでって指示が出てるので、社内は“シーン”です。コロナ前からお付き合いしてた人達はいんですけど、これからお付き合いしたいって思っても、「誘えない」「誘われない」で、できないんです。なんとか2人で会話ができたとしても、マスクをしてるから表情もわからない、複数で飲みに行ったり遊びに行ったりもできないから、深く知り合えなくてどういう人かもよくわからない。万一、感染リスクの高い遊び方をしている人だったらって思うと、近づくことすら怖いんです。こんな状態がこれからも続くと思うと何年も先まで彼氏ができないんじゃないかと思えて不安になります。

【A】
新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は、9月15日の衆院厚生労働委員会での尾辻かな子議員への答弁で、新型コロナの感染について「一生懸命ワクチンを接種してもゼロにすることはできない。ウイルスとの戦いは続く」と指摘し、その期間については「正確には神のみぞ知ることだが、2、3年プラスαかかると思う」と述べています。また、長妻昭議員に第6波の可能性について問われ、「ワクチンで逆に安心感が出てきて、感染対策を緩めると、結果的に感染拡大する」と指摘、「緩むことが、冬の感染拡大の一番のリスク」と答えました。

あなたが冒頭、「コロナ禍はいつ終わるんですかねえ…」と嘆いていますが、それについては専門家でさえ「正確には神のみぞ知ること」と言っているわけです。とすると、新型コロナが季節性インフルエンザのような扱いになることがあるとしても、少なくとも数年は待たなければならないということでしょう。
そこであなたにお尋ねしたいのですが、今、本当に彼氏がほしいのですか?あなたはコロナでマスクをしていて表情がわからない、社内はメールで“シーン”としている、飲みにも行けない、だから深く知り合えない、感染リスクの高い遊び方をしている人だったら怖い、などなど、「誘えない」「誘われない」理由を述べています。私にはコロナ禍で抑圧されたストレスから新しい恋人探しに向かっている気がします。

コロナ禍前にお付き合いしていた人はいなかったんですか?コロナ禍でその人の考え方、大げさに言ったら人生そのものも変わった可能性もあるので、もう一度関係を見直してみるというのもひとつ。どうしても新しい出会いをということなら、目を見て相手の気持ちを理解する努力をしてみるというのもひとつ。
昔から「目は口ほどにものを言う」と言うように、人の目は時に言葉よりも感情を表現することがあります。人間に近いゴリラやチンパンジーですが、どちらも目に白目がないということをご存じですか?人間にははっきりと白目がありますよね。

人は太古の昔から一族で食事をしました。その時「相手の目がどこを見ているのか、自分の食物を狙って攻撃的に食物を見ているか、それとも友好的に私の目を見ているのかわかるように、白目を大きくさせた」と京都大学前総長の山際寿一先生は話されています。今回のコロナ禍について「人間はいつもこうした変化の中で新しいコミュニケーションのあり方を身につけて変化してきた。今回もそれができるはずだ」とおっしゃっています。言語よりも非言語の方が気持ちを表現していることはよくあること。あなたも新しいコミュニケーション手段を身につけてみてはどうですか?

ただ、私はコロナ禍において、それほど彼氏が必要ですか?とあなたに問いたい。まだまだ先の長いあなたの人生にとって、彼氏を作ることだけが大切なことではないはずです。今、あなたが様々な制約の中で精一杯生きること、それが最も大切なことではないですか?その結果として、精一杯生きているあなたにふさわしい彼氏が必ずやできることでしょう。コロナ禍は、永遠に続くわけではないと思いますよ。
(文:大関洋子)

2021/09/10(金)
第215【子親編】「子どものことだけがプレッシャー」
【Q】
結婚して2年です。夫の実家には、結婚前から何度か伺わせてもらい、とても良くしてもらっています。初めてお会いする時はすごく緊張したんですけど、すぐ打ち解けられて、最近ではお邪魔するのが楽しみになりました。ただ、1つだけ気が重くなることがあります。子どものことです。夫には弟がいて、2人のお嬢さんがいます。義父母は2人の孫をすごくかわいがっています。なので、妊娠するまで大きなプレッシャーを感じていました。妊娠がわかった時、妊娠のプレッシャーからは解放されたんですけど、今度は性別です。先日の検診で、女の子だということがわかり、両親に報告したんです。お義母さんから「ヤッターッ!」ってLINEが返ってきました。素直に取れば、「女の子で喜んでくれてる」ってことになるんでしょうけど、私には私に気を遣ってくださっているお義母さんの気持ちがわかります。私も夫もどちらでもいいと思っていたんですけど、夫は「俺、娘の結婚式で涙が止まらなくなりそう」と顔をくしゃくしゃにして言っています。夫は女の子が良かったのかな?それぞれの反応を素直に受け取ればいいんでしょうけど、素直に受け取れない私がいます。子どものことがこんなにもプレッシャーになるとは思いませんでした。

【A】
夫にも愛され、夫の両親にも良くしてもらい2年。何の不満もなさそうなあなたの結婚生活ですが、なんと「子どものこと」でずっとプレッシャーを感じていたんですね。義父母は決して「早く孫が見たい」などと言う人ではないようですが…。

あなたは、義弟夫婦に2人の女の子がいて、その孫を義父母が「すごくかわいがっている」だけで、妊娠するまでは「早く妊娠して孫を見せなきゃ!」と思い、プレッシャーだった。そして2年目、やっと妊娠できて、そのプレッシャーから解放されたと思ったのもつかの間、赤ちゃんが「女の子」とわかった時の義母や夫の反応に悩んでしまっているんですね。義母の「ヤッターッ!」は「私に気を遣っている?」と思い、夫の「娘の結婚式で涙が止まらなくなりそう」というくしゃくしゃの顔を見ては「夫は女の子が良かった?」と葛藤しているあなた。そしてついに「それぞれの反応を素直に受け取れない私」と悩んでしまっています。

確かに、妊娠・出産に関わる身体機能は女性特有のものですから、それに関する問題は、ある種「神話」のような根深さを持っていて、「私の責任?!」と私たち女性の心に迫ってきます。しかし、考えてみればおかしな話で、「妊娠」も女性だけで出来ることではなく、その後の赤ちゃんの性別も女性が決めることは出来ません。要するに、2年間、そして今もプレッシャーを感じている「妊娠」も「赤ちゃんの性別」も、「あなたのせい」ではないんです。

とは言っても、あなたの「プレッシャーは収まらない」と言いたいですよね。結局のところ、あなた自身の「自己肯定感」のなさが大きな原因なのです。おそらく、幼少期から頑張って生きてきたあなたは、父母から「OK!」「それでよし!」となかなかほめてもらえず、「もっと!」「もっとできるでしょ!」と期待されて育った。だから今、周りの人のほめ言葉を受け入れづらくなっています。「アダルトチルドレン」と言われている傾向があるのかもしれません。

今、あなたの周りにいる人たちは、ありのままをあなたを受け入れてくれる人たちのようですから、素直に周りのほめ言葉を受け入れられるよう力を抜いてみてください。
(文:大関洋子)

2021/09/07(火)
第214回【親子編】「男の子だったら…」
【Q】
コロナの感染拡大で、医療現場が逼迫しているというニュースが毎日流れています。防護服に身を固めて治療に当たっている医師や看護師の皆さんには、私たちは感謝しかありません。政府や地方自治体の力で少しでも給料を上げてあげてほしい、そんな気持ちでニュースを見ています。今年の春、孫が大学の看護科に入学したことも影響しているのかもしれません。孫は人と関わることが好きなので、看護師とか保育士とかになりたかったみたいなんですけど、経済的自立のことを考えて看護師の道を選んだみたいです。シングルの母親が保育士で、2人の子どもを育てているんですけど、祖父母に頼らないと生活できない状況なので看護師を選んだのかなあとも思います。これまであまり勉強してこなかった孫が、やっと本気で勉強する気になったみたいなので応援してやりたいんですけど、正直言って、こんな状況でなぜ看護師?という気持ちがないわけではありません。こんな時だからこそ、応援してやらなきゃダメなのはよくわかっているんですけど…。男の子だったらもっと広く進路を考えられただろうにって思うんです。

【A】
ご相談者のあなたは、お祖母様でしょうか?まったくおっしゃる通りなのですが、だからこそ、父親のいないお孫さんのために精一杯長生きして応援し、あなたの生きている間にこのジェンダーギャップを世界からなくしていただきたいです。

昨年から続くコロナ禍で女性が失業したり、女性の家事育児の負担が大幅に増えたりしています。「リスペクトイーチアザー」社の代表で、「未来子育て全国ネットワーク」の代表でもある天野妙さんは、「現場で感じるジェンダーギャップは“気絶級”」とインタビューに答えて言っています。

近年、男性の家事育児に抵抗がなくなりつつあるとはいえ、まだ男性の家事育児は「手伝う」という言葉に表されるように、「当事者」という感覚がありません。男性はあくまで「手伝う人」なんです。内閣府の調査でも、男性が1日の家事に使う時間は家事17分、育児49分、買い物16分、看護介護に至ってはわずか1分となっています。元々、歴史的にも介護や看護は「女の仕事!」と決まっているかのように夫の両親の介護看護、時には夫の両親の兄弟姉妹の介護や看取りまでやってきました。

アフガニスタンに駐留してきた米軍の最後の部隊が8月30日深夜に首都カブールから撤退したというニュースが流れました。女性の権利を認めないと言われるタリバンも、正当な国家であることを世界に認めさせようと、今回は「人権への配慮」をアピールしてはいますが、国営テレビではすでに多くの女性キャスターたちがやめさせられた、外出にはブルカ(肌を隠すための布)で全身を覆わなければならなくなるのではないかと、ブルカを作る布が5倍ほどに値上がりしても売り切れているなどと報道されています。世界中にジェンダーギャップに苦しめられている女性がたくさんいるのが現実なのです。

さて、お孫さんですが、この状況下で看護科に入学されたとのこと、経済的自立のことを考え看護師を目指したということであれば、ジェンダーギャップを何とか乗り越えようという感覚をお持ちなのでしょう。

あなたはどうでしょう?「こんな状況でなぜ看護師?」というお気持ちがおありのようですが、コロナ禍で医療現場が疲弊していること、感染リスクが高いことなど、お孫さんのことを心配なさってのことと思います。「男の子だったらもっと広く進路を考えられた」ともおっしゃっているので、ジェンダーギャップについての問題意識もお持ちのこととは思いますが、心の奥に「そんなに大変な仕事に就かなくても結婚して主婦になればパートでいいんだから」というお気持ちがおありではないですか?お孫さんが持っている使命感、ジェンダーギャップに対する抵抗など、よく理解してあげてしっかり応援してあげてください。

(文:大関洋子)