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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2020/12/08(火)
第198回【夫婦編】「“この方が楽”と思ってしまっている私」
【Q】
結婚して5年です。子どもがいないので、私も夫も会社勤めをしています。コロナの影響で、2人ともたまに出社はしますけど、在宅ワークが中心です。コロナ前と比べると一緒にいる時間は増えたんですけど、リズムがすっかり狂ってしまって、なんだか落ち着かないんです。最初のころは一緒にいられることを単純に喜んでいたんですけど、長くなるとお互いに相手の存在がうっとうしくなってきて、夫は毎晩ペットの犬と一緒に寝るようになってしまいました。今では部屋も別々です。以前の私なら、そういう状況を寂しいと思っていたと思うんですけど、今は“この方が楽”と思ってしまっているんです。

【A】
昔々、原始時代は、男女が気ままに求婚する「共同婚」が行われていて、男が女の家に通う「妻問婚」の形態に発展していったと考えられています。古墳時代には、この「妻問婚」が行われていたようで、その後書かれた古事記や日本書紀、万葉集などにも「ツマドイ」の語が見られます。
妻問婚は、男が女の家の窓や戸の隙間から呼んだり、男の求婚歌に女が答歌するなどの方法で行われる「自由恋愛」でした。あの有名な竹取物語も何人もの貴族の男性が、かぐや姫の「婿」になろうとしてあらゆる手段を用いて「よばい」つまり「求婚」(呼ばい)を試みています(後に「よばい」は「夜這い」という風習につながっていきますが)。

しかし、この求婚(よばい)によって結婚が成立しても、夫婦は「別居」でした。子どもが生まれると、生まれた子は母のもとで育ち、その家の財産は女性が相続するという母系氏族制が奈良時代、平安時代と続きますが、鎌倉時代、武士の勢力が強くなり、「嫁取り婚」、家と家の結婚が現れ、母系家族の形が崩れていきます。それまでの長い歴史の中で、女性は生まれ育った実家で比較的自由に生活したり子育てをしたりしてきたと思われます。通ってくる男性、夫のことが嫌になれば門を閉ざし、会わないことも出来ました。もちろん、男の方も嫌になって足が遠のくこともあるわけですが、女性は経済的にも精神的にも実家に守られているので、もし男が通ってこなくなっても打撃は少なくてすみます。

さて、あなたは夫と寝室も別になり、彼はあなたの代わりにペットの犬を抱いて寝ている。はじめはそれを寂しいとも思ったけれど、今は“この方が楽”と思ってしまっている。そして、そう思う自分が「いったい夫のことを愛しているのか」、そしてその逆も心配になってご相談なさっているんですよね。
千五百年も昔の「妻問婚」の話をしましたが、戦いが常に行われ、武士、男性の力が強くなった鎌倉時代以降は「嫁取り婚」になり、女系制が崩れ、女性は夫や夫の親族の顔色をうかがって、ビクビクオドオド暮らすことが多くなりました。あなたは「妻問婚」で言えば、夫が訪れてこなくなり、妻もその方がのびのび楽に暮らせているということですよね。

コロナ禍での生活は、これまで経験したことのない生活なので、心がついて行くのにも時間がかかります。これまでは、仕事の時間は別々の生活で、眠っている時間を除けば、夫婦がお互いに相手に関わる時間はほんのわずかでした。夫婦の関係だけを見れば、仕事をしている時間も自分の時間(プライベートな時間)だったわけです。それが少なくなり息苦しさを感じる人も増えています。2人にとって最も良好な距離感はどれくらいの距離感なのか、よく話し合ってください。話し合っても納得がいかないのであれば、一緒に生活するのは難しいかもしれませんね。


(文:大関洋子)

2020/11/19(木)
第197回【恋愛編】「実際に会って肌と肌が触れ合わないと…」
【Q】
私は医療関係の仕事をしています。2年前、彼が私の勤めている病院に入院したことで知り合いました。ドラマとかではよくあるパターンですけど、実際は少ないんです。医療関係の人は、医療関係の人と付き合って結婚っていうのが多いので。患者さんとは話す機会も少ないし、すぐ退院しちゃうので、付き合うとこまでいかないんです。休みも合わないし…。私の場合も、彼はエンジニアでデートの時間を作るのが難しかったので、私が休みの時に彼の家に泊まりに行っていたんです。でもコロナ騒動で…。最初、彼は「おいでよ」って言ってたんですけど、医療現場の感染リスクが高いことがわかると、「おいでよ」のトーンがだんだん下がって、電話やラインが多くなったんです。私も職業柄絶対に感染できないし、最低限の休みしか取れなくなっちゃったんで、都合がよかった面もあるんですけど、会いたがらないっていうのは、距離が遠くなったってことですよね。電話で話しても、お互いに仕事の話ばっかり。2人の将来の夢みたいな話が出来なくなったんです。やっぱり、実際に会って肌と肌が触れ合って、相手を身近に感じられないと気持ちが離れちゃうんですかねえ?今でも彼のことは大好きだし、彼もそう思ってくれてるとは思うんですけど…

【A】
「精神0」という映画(想田和弘監督)に寄せて、映画ライターの月永理絵さんはこう書いています。「顔を寄せ合い対話すること。手を重ね合わせること。それがどれほど貴重で脆いものであるかを、私たちはついに知ってしまった」(5/1朝日新聞夕刊)と。

この映画は、精神科診療所の引退間近の老医師、山本昌知さんを撮ったドキュメンタリーで、前作の「精神」という映画(2008年)の第2弾として発表されたものです。長年にわたって精神医療に携わってきた山本医師が引退を決意し、その後の人生を認知症を患う妻とともに歩み出そうとする姿を、妻、芳子さんとの愛の形にも迫って記録した観察映画です。精神科診療所では患者、家では認知症を患う妻の声に、根気よく耳を傾ける老医師の姿から映画ライター、月永理絵さんは、人の尊さや信頼も、生きることの喜びも見つめ合い、聴き、手を当てて、そういう行為の積み重ねの中でしか生きられないと感じたのでしょう。

昔から「手当てをする」という言葉は、医者や看護師など、医療従事者の専売特許のように使われていますが、痛いところへ「手を当て」てもらうだけで痛みが軽く感じられた経験は誰でもあると思います。小さい子どもが転んで痛がって泣いている時、お母さんやおばあちゃんが、痛い場所辺り(辺りでいんです)を撫でたりしながら「痛いの痛いの飛んでけっ!」と2、3回やると、それまで大声で泣いていた子どもがすっと黙るのを見ますよね。

「コロナ」という壁があってもそれをなんとか克服して、たとえあなたが医療関係の仕事に就いている感染リスクの高い人だとしても、むしろだからこそ不安を「手当て」して、不安を少なくする工夫をしてこそ、本当の恋人、愛しているという証拠なのではないですか。確かに、2人が抱き合えば完全に濃厚接触者。どちらがどちらに感染させても大変なことです。ですから、肌と肌を触れ合って会うことが少なくなるのは仕方のないことなのですが、あなたの場合、「電話で話しても、お互いに仕事の話ばっかり」と不満げですよね。

彼のエンジニアとしての話、自分の世界と違う話には興味がわきませんか?
「2人の将来の夢みたいな話」が出来ないと嫌ですか?
今、離れていなくてはならないからこそ、電波に乗って流れてくる彼の「声」に耳を当てているだけで嬉しく「愛」を感じられませんか?
電話は直接「耳」を通して身体の内面に入るので、とても「愛」を感じやすいものです。
今の状態を受け入れられないのであれば、あなたと彼は別れた方がいいかもしれません。

(文:大関洋子)

2020/11/10(火)
第196回【職場編】「よっしゃー、ゲットー!」
【Q】
今の会社に勤めて3年、何人かの男性に興味は持っていたんですけど、自分から声をかけることが出来ないでいるうちに、肉食系女子に相手をさらわれるという繰り返しでした。もちろん、自分から声をかけられなくても相手から声をかけられるように色々手立てはしたんですけど、結局自分から声をかけた方が勝ちなんですよね。ところがコロナで一変、仕事にかこつけて狙った男子とオンラインで話が出来るようになりました。他の人に見られる心配はないので、派手目な服と派手目な化粧、バーチャルデートですね。それが見事成功して、デートに誘われたんです。数回のデートを経て、ホテルにも行きました。「よっしゃー、ゲットー!」って思ってたんですけど、先日久しぶりに女子会をしたら、そのうちの1人が私が付き合い始めた彼とホテルに行ったって自慢げに話したんです。しかももう1人いるらしいんです。私以外の2人は、遊び相手の1人ということみたいで…。私は彼氏をゲットしたと思っていたんですけど、「彼が私を引っかけた」っていうことなんですよ。やっと出来た彼氏を離したくないけれど、彼が遊んでいるだけなら私も遊びって割り切っても付き合うか、それとも彼とまっすぐ話しをしてみた方がいいか迷ってます。

【A】
オスができるだけ多くのメスを手に入れようとし、メスが注意深くオスを選ぶというのは、動物一般に見られる傾向です。「進化」という視点から考えると動物個体が生きている究極の目的は、自分の遺伝子を次の世代に残すことです。オスは一度に多くのメスの卵を受精させられるだけの精子を作ることができるので、多くのメスと交配すればするほど多くの子をつくり自分の遺伝子を残すことができます。(科学でわかる男と女の心と脳 麻生一枝 参照)メスはどんなに多くのオスと交配しても、できる子の数は自分のつくる卵の数より多くはなりませんし、妊娠期間中と授乳中も子はつくれないので(排卵がないことが多い)、メスはよい遺伝子を子どもに伝えられるような優秀なオス、食べ物や隠れ場所など子どもが育っていくのに必要な資源をたくさんもったオスを注意深く選びます。

しかし、これは「進化生物学」や「動物行動学」と呼ばれる「生物学」の分野でヒトを含む色々な動物の行動に説明を与えるだけであって、「善悪の判断」を下すわけではありません。「祖先から受け継ぎ遺伝子に組み込まれているんだからやって当たり前」と考えるのはとても危険な考え方です。私たちヒトも長い歴史の中で自分の遺伝子を、より多く残すために、浮気や虐待、はては殺人まで犯して生き残ってきたわけですが、男女や人種などの生物学的な違いは、男女差別やユダヤ人虐殺などを含む人種差別を正当化するのに使われたという苦い歴史を持つのです。

あなたの「ゲット」したと思った男性は、文明社会の中でまるで原始時代に生きているかのように、本能の赴くままあなたを含む3人、もしかするともっと多くの女性と性の行為を持っています。勿論、彼は「種の保存」を目的としているわけではなく「快楽」のためにです。あなたは、「彼が私を引っかけた」「彼が遊んでいるだけなら、私も遊びって割り切っても付き合うか」「それとも彼とまっすぐ話をしてみた方がいいか」と迷ってのご相談ですが、「まっすぐ」何を話そうと思っているのでしょうか?
「私とは遊びですか?」それとも「他の2人と私は違うんですか?」と聞くんですか?

あなたが真っすぐに向きあっても、今のところ彼は「遊び」のつもりなので、無駄な努力になるかもしれません。また、あなたのその真っすぐな態度にびっくりして「遊び」ではなくなって真剣にあなたとだけ交際するようになることもないとは言えません。勇気を出してやってみてはいかがですか?結局あなたは「遊び」では嫌なのでしょうから。勿論「遊びにしてはめんどくさい相手だ」と思って切られることも覚悟してくださいね。

(文:大関洋子)

2020/11/02(月)
第195回【子親編】「義母の今後をどうする…」
【Q】
結婚して、5年で両親と同居して、25年になります。その間、2人の子どもは独立、私の両親と義父は他界して、今は私と夫、義母の3人で暮らしています。義父は軽度の認知症を患っていましたが、手がかかるほどではなく、5年前、家で亡くなりました。義母は認知症はありませんが、膝と目が悪く、やや生活が不自由です。義父の介護は私と義母の2人だったので、負担は感じなかったのですが、義母は私がすべて面倒を見なければならないので、相当負担になると感じています。義母は、私に面倒を見られるのは嫌という気持ちもあるようで、「施設に入ろうかな」と言っているし、私も施設に入ってくれればと思っているんですけど、夫が「親父を家で看取ったんだからお袋だって家でいいだろ」と言うんです。私には「施設に」と言う義母も、息子に「家で」と言われると「家で死ねたらね」と、私に言うのとは全く違うことを言うんです。

【A】
女の一生は「アンペイドワーク」と呼ばれる「賃金が支払われない仕事」に始まり、それに終わると言われています。介護を受ける側も、する側も圧倒的に女性が多いという現実があります。嫁として、妻として、娘として介護を引き受ける人の7割以上が女性だという統計は、統計の残っていないころからそうだったのでしょう。

厚生労働省「H12 介護サービス世帯調査」によれば、主な介護者は女性が72.2%。そのうち娘が母を、または嫁が夫の母を介護する場合が42.9%。娘が父を、嫁が夫の父を、妻が夫を介護する場合が29.2%。主な介護者が男性という割合は19.5%で、男性が妻や実母を介護するのがそのうちの17.3%で、男性が自分の父親を介護する割合は、わずか2.2%です。「介護問題」は「女性問題」であると言われるゆえんです。

介護者の内訳を見ると「配偶者」「子」と並んで、「子の配偶者」つまりあなたのような立場の方が約3割、すなわち嫁が介護をするということです。娘が老親を引き取った場合は、自分で世話をしますが、息子は妻に介護を丸投げしているというのが、ずっと続いている実態です。

こうした状況の中で介護を担う女性たちの負担や不満は、単に肉体的なものだけではありません。無給の労働である家族介護では、女性は経済的に自立することが出来ず、その上、女性が他人の世話をするのは当たり前という考え方が根強くあるため、苦労は理解してもらえず、感謝すらしてもらえません。妻や女性の兄弟姉妹に親の介護を押しつけておいて、遺産相続や葬儀に関わる権利だけは主張する身勝手な男性も多いのです。

夫の母の介護については、まさにこの日本社会のゆがんだ家父長制的家族観と性別役割感そのものです。その上、夫は実母には「よい息子」ぶって、「家で」と言い、妻には「親父を家で看取ったんだからお袋だって家でいいだろ」と介護を押しつけてくる。あなたは「義父の介護は義母と2人だったが義母は私がすべて面倒を見なければならない」とおっしゃっていますから、息子である夫は手伝う気もなさそうです。このままではあなたの人生は介護人生で終わってしまいます。そしてあなた自身は息子の伴侶や娘がいるにしても、もう彼らに介護を頼める時代ではありません。夫としっかり話し合って、お義母さんに施設に入ってもらってください。
(文:大関洋子)

2020/10/19(月)
第194回【親子編】「夫が娘を甘やかした!」
【Q】
結婚して8年、5歳の息子と4歳の娘がいます。コロナが落ち着いてきて、8月まで在宅ワークだった夫も通常の勤務に戻りました。私は接客業なので、ずっとほぼフルタイムの仕事をしていました。こんな時くらいはと思い、夫の在宅勤務中は保育園を休ませ、夫に子どもたちを頼みました。子どもたちも嬉しかったようで、笑顔が増えたなあと喜んでいたんです。ところが、夫が通常の勤務に戻っても、娘が夫にべったり、全く私の言うことを聞かないんです。コロナ以前は「男の子には男親の関わりが大事だ」とか言って、娘は私に任せっきりで息子とばかり遊んでいたんですが、今回は娘を必要以上に甘やかしていたらしく、ほぼ普通の生活に戻った今も、娘は夫にべったりなんです。夫がいない間、私がそんな娘にイライラして怒鳴りつけることも度々です。夫に「あなたが甘やかし過ぎたからよ」と言うと「父親が娘をかわいがって何が悪いんだ!」と開き直られてしまいました。息子はそんな私たちの様子を察してか、近くに寄ってきもしなくなってしまいました。

【A】
人間が発達の初期に、どのような環境に出会い、どのような人に出会うかで、一生が決まってしまう場合があります。人間としての心や身体の機能を身につけるためには、それを獲得する時期にその子にふさわしい人間的環境が与えられることが必要です。

「三つ子の魂百まで」という諺は、「小さいときに獲得したことは一生変わらない」という意味で使われています。この諺は、心理学的にも小さい頃の経験や学習の重要性を表しています。「経験や学習が大切」という時の「学習」は「算数や国語の勉強」という意味ではなく、行動が経験によって学ばれるプロセス全体を指したものです。私たちの行動のほとんどが生まれてから積み重ねられてきた経験、その学習によって獲得されています。

人は生まれてから多くのことを学習します。母国語が話せる・箸が使える・自転車に乗れる・パソコンの操作ができる等々、全て学習の成果です。そして学習は、友だちとのつき合い方、自分の趣味嗜好にまで及び、こうした意図的なものに限らず、覚えようとするしないに関わらず覚えてしまうこともたくさんあります。知らず知らずのうちに人や本、メディアなどの考え方に影響されてしまうこともあります。

4才の娘さん、5才の息子さんは発達段階的には「幼児後期」に当たり、家族の中で「自主性」を学ぶことが「発達課題」と言えます(エリクソン)。幼児前期は立って歩けるようになったり、「自分の体の主人公」になる時期ですが、幼児後期は「自分の心の主人公」になり始める時期です。遊びや生活のほとんどの場面で、自分なりのやり方をイメージして実行し、その行動が危険であったり、他者の迷惑になったりすること以外は許されることを学んで、自分の心に決めたことを実行する自主性が育っていきます。この時期、大人が自分の恣意のままに、可愛がりたい時だけ可愛がり、そうでない時は放っておく、という育て方をすると、心が委縮したり逆に必要以上に我を通すという子どもに育ってしまいます。この時期は父親、母親は、、息子さんにも娘さんにも平等に愛情をもって接し、「生きる喜びや楽しさの原体験」をつくる上で大切な時です。

精神科医フロイト(1856〜1939)は、女の子の初恋の相手は父親、男の子のそれは母親である(エディプス感情)と述べていますが、どちらの性の子どもも、父親、母親が平等に愛することで異性親を好きになる傾向は消えていきます。それを引きずらないためにも父親の偏った愛情は要注意です。
(文:大関洋子)

2020/09/23(水)
第193回【夫婦編】「こんな時に仕事を投げ出すの?!」
【Q】
結婚して10年、8歳の娘と6歳の息子がいます。夫は、気に入らないことがあるとすぐむくれて何でも投げ出してしまう性格ですが、結婚して子どもができれば変わると期待して結婚しました。上の子が1歳になる頃までは、仕事もきっちりしていたし、子どもの面倒もよく見てくれていたので、結婚してよかったって思っていたんです。ところが子どもが徐々に自分の思うようにならなくなると子育て放棄。2人目が生まれた時には、子育てに関わろうとしませんでした。その頃から仕事も投げやりになって、4年前には会社を辞めて、自分で会社を立ち上げました。でもうまくいくはずありません。毎月の収入は10万円ちょっと。私がフルタイムで働いて何とか生活してきました。そこへコロナ騒動です。持続化給付金の100万円はもらったものの、もらったことでかえって仕事をしなくなり、今度は「今の仕事じゃコロナを乗り切れないから新しい仕事を始める」とか言い出して、結局、全然仕事をしなくなってしまいました。私一人の収入では家計を支えられません。風俗勤めも考えてるんですけど、コロナでお客が減ってるっていうし、感染も怖いので決心がつきません。

【A】
あなたには厳しい回答になることをお許しください。まずご自分の価値観を見直し考え直してください。そして今後、自分たちのためにも、何より8歳と6歳になるお子さんのためにも、人生で一番大切なものは何で、そのためにはどう生きたらいいか、しっかり夫婦で話し合うことをお勧めします。

見直していただききたい価値観として、まずあなた自身の問題点が3つあります。

その@ 「夫は気に入らないことがあるとすぐにむくれて何でも投げ出してしまう性格」と分かっていたのに「結婚して子どもできれば変わると期待」して結婚。その期待は分からないわけではありませんが、子どもは父親の「すぐむくれて投げ出す性格」を直すために生まれてくるものではありません。妻との関わりの中で修正していく努力はどんな事をしましたか?

そのA 4年前に仕事を変えるとき、フルタイムで働いて生活を支えてきたとのこと。立派だったとは思いますが、その4年間、夫婦の間でどのように話し合われ、今後お子さんを育ててていくための将来設計はどう立てられたのでしょうか?

そのB これが最も価値観の見直しをしていただきたいところですが、「夫が全然仕事をしなくなったので風俗勤めも考えているんですけど」の点です。簡単に収入源として風俗の仕事を選択肢に入れてしまうところが、夫を安易にコロナ禍の持続給付金で働かなくなるようにしているのです。風俗に勤める方にもそれぞれ複雑な事情がある方が多く、ましてやあなたには夫と2人のお子さんがいるわけですから。もしかして夫に脅しのつもりで言えば、ビックリして夫が働きだすとでも思っての発言ではないですよね?性を贖う(あがなう)仕事は古代からあり、女性の一番歴史の古い仕事のひとつだと言われていますが、2人のお子さんにとっては軽々に考えられる職業ではないと思います。事情のあるご夫婦で三日三晩、2人で話し合って夫も妻も泣く泣く借金を返す間、風俗に勤めたけれど、子どもたちには普通の仕事だと言い続けたその苦しみを、カウンセリングで語りに来られた女性がいました。

「気に入らないことがあるとすぐむくれ」たり、仕事を慎重に考えず変えたり、働かなくなったりする夫の様子は「ピーターパン症候群」と言われる「成長することを拒んでいる大人」のようにも思われます。あなたはそれに振り回されたり、自分自身も安易な価値観に流されることなく、宝物のような2人のお子様と丈夫な身体をお持ちのようですから、質の良い人生を送る努力をしていただくことを祈ります。

(文:大関洋子)

2020/09/04(金)
第192回【恋愛編】「臨月に結婚式なんて…」
【Q】
彼とは付き合って3年です。年明けに彼のご両親には「結婚させてください」とお願いしました。2人の問題ですから「お願い」なんてこともないんでしょうけど、私はバツイチで30歳。彼は2歳年下で初婚。私に子どもはいないんですけど「私でいいのかなあ」っていう気持ちがあるんです。それでも彼のご両親はとても喜んでくれて、6月に式を挙げることになっていたんです。ところがコロナで11月に延期になって…。私は2度目だし、派手な式はやりたくなかったんですけど、彼は一人っ子なのでご両親がどうしても派手にやりたいみたいなんです。ご両親のお気持ちも分かるので、式をやることにはしたんですけど、妊娠しちゃって。予定日は12月半ば。6月だったら私の気持ち以外問題なかったのに、臨月になってしまって。しかも彼は年下で初婚、私は30歳でバツイチ…。若い人たちの間では「でき婚」を「授かり婚」とか言い換えて歓迎するような風潮もあるみたいですけど、彼の親戚、私の親戚には年配の人も少なくないので、どう思われるか…。このままコロナが収束しなければ式を挙げなくてすむのにって思ったりしてるんです。

【A】
あなたにズバリお聞きしますが、お相手の彼はこの問題、「臨月の妻に派手な結婚式を挙げさせること」について何とおっしゃっているんですか?そもそも彼としっかり相談なさっていますか?あなたの気持ち、「派手な式は嫌だ」「臨月の式は困る」と。まさか、それでも彼は「両親の望みを叶えさせてやりたいから君には心身の負担をかけるけれど、臨月の派手な結婚式をやってくれ」と言ってるんですか?

もしそれなら、「コロナが収束しなければ式を挙げなくてもすむのに」などと、コロナと必死に闘っている人達に失礼極まりない言葉を投げかける前に、式を一緒に挙げる彼に「それでも私はやりたくない!」とハッキリ言ってください。

この短い相談の中に「私は30歳のバツイチ、彼は2歳年下の初婚」という言葉が2回も出てくるんですよ。自分でそれに気づいていますか?バツイチがそんなに悪い事ですか?!初婚がそんなに大切なことですか?!そして2歳年上がそんなに恥ずべき事なんですか?!

もし彼があなたの意に反してでもご両親を喜ばせるために派手な式を挙げたいと言い張るなら、この結婚はやめた方がいい。ただ、もう既にあなたのお腹には新しい生命が息づいている。それなら、あなたの価値観をこの際しっかり見直して、彼とお子さんと3人で人生をスタートして欲しい。まずはもう一度、彼に自分の気持ちをしっかり伝えること、その時、自分が2度目の結婚や彼より2歳年上ということを卑下しすぎないこと。

確かにあなたが心配するようにそれを問題視する人もいるでしょうが、古い日本の文化には「2歳年上の女房は金のわらじで探しでして歩け」とか「嫁は2度目が一番」という言いならわしもあるのです。あなたのその人生の歴史を否定することは、そういうあなたを伴侶として選択した彼を否定することになるのです。彼が選んだのはその経験を経たあなたその人だったのですから。そのことはこれからの2人の人生の中でとても大切な基本です。あなたの価値観では一生「バツイチ年上」という罪悪感が付いてまわり、「私でよかった?」と何かにつけて考えてしまうに違いありません。あなたのその価値観を修正し、彼としっかり話し合ってから、派手な式を臨月に挙げるか挙げないかを決め直してください。彼があなたの複雑な気持ちを理解してくれてあなたの心身に負担のかからない、そしてご両親にも喜んでもらえるように考え直してくれる人であることを祈ります。
(文:大関洋子)

2020/08/20(木)
第191回【職場編】「相手を知る手段がなくて…」
【Q】
今の会社に勤めて3年になります。勤め始めの頃は、バリバリ働いている女性の先輩に憧れて、私もあんな風になりたいって思ったんです。「30過ぎまではプライベートより仕事」みたいな…。でも、1年経った頃から、私には先輩みたいになる能力がないってことに気づいちゃったんですよ。それで、結婚狙いに切り替えました。去年の夏頃から3人くらいに狙いを定めて、年明けからやっと一緒に食事に行ける相手を1人作ったんですけど、2回食事に行ったところでコロナ騒動になっちゃって…。出社してもソーシャルディスタンスを取らなきゃならないし、マスクをしてるので表情も見えないし…。もちろん、オンラインで話したり、LINEとかでもつながっているけど、もし私より親しくしている女性がいて、直接会ったりしてたら私にはチャンスはないですよね。普通の時なら、相手の様子がもっと分かると思うんですけど、相手を知る手段がなくて、悪いことばっかり考えちゃうんです。

【A】あなたには、大きな考え違いがあります。「勤め始めの頃はバリバリ働いている女性の先輩に憧れて、私もあんな風になりたい」と思ったのに、1年経った頃に「私には先輩みたいな能力がないと気づいちゃって」、そこで人生の目的というか仕事や会社へ行く目的を「結婚狙いに切り替え」たんですよね。しかも「3人に狙いを定めて」って恋愛や結婚の相手は射的じゃないんですから、変な価値観です。

とにかく、人生で働く目的が射的の的を射るかのように、結婚相手を探しにいくという矮小化した目的に1年で切り替えてしまうという考え方が間違っています。自分には先輩のように能力がないと気づいたなら、それに近づくように努力はしないんですか?先輩のどこか1つでも見習って、真似でもいいからしてみたらどうですか?

これこれこういう努力をしてみたけれど、自分にはどうにも真似さえできない、どうしたらいいでしょう、というご相談や悩みは感じられず、簡単に結婚相手探しに切り替えてしまう、こういう考え方が「半年たってやっと食事に2回行ったらコロナになり、出社してもソーシャルディスタンス、マスクをしていて表情が見えないから相手の様子が分からない、相手を知る手段がない」などという悩みにつながるのです。

オンラインで話したりLINEでもつながっているのならコミュニケーションは充分。その中で相手の心を理解できないあなたは、本当には彼のことを大切に思っていないんじゃないですか?あっ、そうでしたよね。大切に思ってるわけはないですね、結婚相手としての狙った「的」3つの内の1つ、失礼、1人なだけなんですものね。

さあ、人を人生のパートナーとして選択する観点を我が胸にもう一度確かめてみましょう。今は「3優」(「私に優しい」「家族に優しい」「家計に優しい」)の男性が結婚相手として理想なんだそうですが、「はあ?ふざけるな」って感じです。恋愛や結婚のプロセスの中で2人で「お互いに優しさ」を築きあげていくものです。
あなたには厳しい解答になりましたが、あなたがもう一度初心に立ち帰って、一心不乱に憧れの先輩の仕事ぶりを見習って努力してみてください。あなたのその仕事ぶりに自然に惹かれる男性から食事やお茶に誘われるかもしれませんよ。ただただ会社に行く目的が結婚相手を射止めるためだけの女性は魅力がないと思い知ってください。
(文:大関洋子)

2020/08/04(火)
第190回【子親編】「何とか孫を来させたい」
【Q】
8月になり孫たちの通う小学校もやっと夏休みになりました。夏休みは毎年恒例の2泊3日の家族旅行があります。私にとっても孫に会える数少ない機会です。子どもが3人いるので、子どもの家族も含め全行程全員が揃って一緒に過ごすのは難しいのですが、何とか都合をつけて、1泊だけでも全員が顔をそろえられる時間が作れるよう努力しているんです。貸別荘なので、息子なんて3時間以上車を飛ばして夜11時くらいに到着、朝8時前に出発なんてことになっても無理して来てくれます。母親の私としては嬉しい限りです。ところが今年は、次男の家族が参加しないことになりそうなんです。表向きは「じいちゃん、ばあちゃんに新型コロナウイルスを移さないように」と言っていますが、これは嫁の口実。嫁は私たちに会いたくないんです。日頃から感じていることなので、絶対間違いありません。嫁は来なくてもいいんですけど、孫には来てもらいたいんです。ちょっとそんな話をしたら、嫁と喧嘩になりそうになりました。なんとか孫を来させたいのですが…

【A】
今朝(8/4)の朝日新聞には、「お盆帰省 政府説明ちぐはぐ」という大きな見出しで、西村担当相が「高齢者のいる実家などへの帰省に「慎重に」との考えを示す一方「家族旅行は問題ない」との認識を示しつつ、「おじいちゃん、おばあちゃんと過ごすとなると、また事情が変わってくる」と重症化リスクの高い高齢者への懸念を改めて強調しています。コロナ禍のお盆の帰省と官房長官自らが主導した政府の観光支援策「GO TOトラベル」事業との整合性が問われかねないという内容の記事です。

政府の説明さえ右へ左へと揺れている今、それでも「毎年恒例の2泊3日の家族旅行は決行したい。そして嫁が反対しているのなら嫁は来なくていい。孫だけくればいいがどうしたらいいだろう」との相談です。今回のご相談は、あたかもコロナ禍と関わっているかのようになっていますが、本質は全く関係ありません。
そもそも「嫁は高齢の私たちを心配して来ないと言っているが、それは言いわけ」「本当は元々私たちと一緒の旅行は嫌だったのだ」と言っていますが、あなた自ら「嫁は来なくてもいい。孫が来ればいい」と本音を言っています。「嫁は来なくてもいい」の裏側に、「嫁は来ない方がいい」という気持ちが透けて見えます。

今回のコロナ禍での家族旅行に次男一家が来る来ないは問題の本質ではなく、本質は普段からのあなたの考え方、次男のパートナー、嫁との関係のあり方です。ご自分でも「これは嫁の表向きの口実」と感じています。こんな関係で、それでも「孫だけでも」という話をして「嫁と喧嘩になりそう」になっている。当たり前です!
「日頃から嫁は私たちに会いたくない」と感じていて、しかもその嫁の気持ちは「絶対間違いありません」と断言しているなら、コロナがどうの、恒例の家族旅行がどうのと言っている場合ではありません。この際、「なぜ嫁が私たちに会いたくなくなったのか。それはいつ頃からなのか」考えてみてください。
そして本当は「あなたが嫁と会いたくない」のですから、「なぜ会いたくないのか。それはいつ頃からなのか」、自分に問いかけてみてください。
「嫁は息子を奪った憎いやつ」「孫を手に入れるための借り腹」みたいな感覚を無意識に持っていたとすれば、息子さんにとっても生涯の不幸です。ちょうどいい機会です。しっかりご自身の潜在意識と向き合って、次男ご一家といい関係を築き直してください。
(文:大関洋子)

2020/07/16(木)
第189回【親子編】「28歳で引きこもっている息子」
【Q】
28歳の息子と23歳の娘がいます。息子は、中学2年生の時、同じ組の男の子にいじめられたのがきっかけで学校に行けなくなりました。息子が不登校になってしばらくすると娘も小学校を休みがちになり3ヶ月くらい行ったり行かなかったりが続きましたが、その後登校できるようになり、何とか大学を卒業して今はOLをしています。息子は、そのまま今も家から出られません。私が食事に誘うと近所のファミレスには行くので、最初は2週間に1回くらい、しばらくしてそれが週1回になり、3日に1回になり、今は土日も含め毎日一緒に食事に行くようにしています。家にいると部屋でずっとパソコンをいじっているだけで会話もありませんが、ファミレスではけっこうしゃべるし、少しでも外に連れ出すことで私もホッとするし、もしかしたら引きこもり解消のきっかけになるのではないかと続けています。でも間もなく30歳。子どもがいてもおかしくない年齢なので、アルバイトでもいいから、とにかくまず外に出てほしいのですが…。

【A】
息子さんがいじめにあい、不登校になった中学2年生という年齢は、発達心理学上では人生の中で児童期から青年期への移行期で、子どもから大人、成人へと成長していく過渡期です。この時期は、自分自身の変化も周囲の環境の変化も大きく、翻弄されがちな時で、疾風怒濤の時代と呼ばれています。青年期は思春期とも言われ、生理的成熟(生殖可能な身体を持つこと)を迎えることで始まり、身長、体重などの発達も著しく、男子は精通や声変わりが現れ、体つきも男性らしくなってきます。身体的変化は周囲の人の見方を変え、行動範囲を広げ、自由度が増していきます。

こうした身体的変化や社会的変化と共に「自分が独自の存在であること」に気づき、自己の内面に目が向けられる大切な時です。その中で孤独感や劣等感に悩まされる心理的変化も急激に起こり、この時期は「第二の誕生」でもあります。自分を取り巻く環境と自分自身の変化を調整しながら適応することが求められ、この適応に多くのエネルギーを必要とします。(山下富美代著「発達心理学」より)

さて、あなたはこの大海の嵐に翻弄される小舟のような青年期(12、3歳〜25、6歳くらい)に、親が小舟の舵を取ってしまっています。娘さんは不登校の時期が思春期でなかったことと「女の子」であったことから、お母さんとしての対応が息子さんに対するそれと違っています。お母さんは、はじめは息子を外へ連れ出そうと、たまにファミレスへ連れて行きましたが、今では毎日とのこと。父親であり夫である男性の話が何も出てきませんが、たぶんあなたは夫との関係が夫婦としての機能を果たしていないと思われます。

不登校の当初は母と息子としての外出が、今では息子を夫の代用、あるいは恋人代わりにしています。精神分析論の創始者、フロイト(1856〜1939)は、4、5歳の子どもが異性親を好きになる傾向、心の癖をあげ、エディプスコンプレックスと名付けました。特にその名称の元であるギリシャ神話で父とは知らず戦いで父を殺し、母と結婚したエディプス王子のように、男の子は母を慕うと言われています。

80-50問題という80歳の親が50歳の子どもを養う事態を避けるためにも、息子さん自身が「Who am I?」「Where am I going?」を明確にする自我同一性の確立をするために、息子さんから精神的、身体的距離を置くことをお勧めします。

(文:大関洋子)