この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。 主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。 ■大関洋子プロフィール■ (浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー) 1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。 著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。 |
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2017/12/26(火) |
第132回【恋愛編】「彼から堕ろしてと言われ…」 |
【Q】
彼は同級生で大学3年生の時に付き合い始め、今年で5年です。大学4年生の時に1度妊娠したんです。その時は、まだ学生だし、私も大学を中退したり、休学したりするのは嫌だったので、二人で相談して中絶しました。初めての妊娠でしたけど、私にも迷いはありませんでした。それから4年、先日妊娠したことが分かりました。彼とは結婚を考えているので、私は今回は産みたいと思っていたのですが、彼は「でき婚」は周りからだらしのないカップルみたいに思われるから今回も堕ろして、結婚してからもう一度作ろうって言うんです。まさかそんなこと言われると思ってもいなかったので、今回の妊娠は嬉しかったし、これで結婚のきっかけができたという気持ちもありましたから、なおさら彼の言葉には失望しました。私としては彼との結婚は止めようという方向に傾いているんですが、結婚しないとしても子どもは堕ろしたくないんです。でも、シングルで育てる自信もないし、もし子連れということになると次の恋愛、結婚も難しくなるし…。とても困っています。 【A】 とても困っていらっしゃるでしょうね。お察しします。結論から申し上げると、こんなことを言う男とは即刻別れた方がいいでしょう。2人の間で授かった新たな命をこんなにも軽々しく堕ろすよう勧める男性は,人を愛したり共に人生の苦楽を乗り越えていくに値する相手とは思えません。人間の尊厳を傷つける人と言っても過言ではありません。 堕ろして欲しい理由が「でき婚」は周りからだらしのないカップルみたいに思われるから、というのもとんでもないことです。人から何と思われるかで1つの命を絶ってしまい、なかったことにして結婚してからもう一度作ろうという無責任な考え方こそ、何てだらしない生き方なんでしょう!そういう人生観の持ち主だったことが5年たって、2度の妊娠を経て分かったわけですから、これ以上、彼と一緒にいてもろくな結婚生活にはならないことでしょう。 私は「彼との結婚を止めようという方向に傾いている」というあなたの考えに賛成です。ただし、今、新たな命があなた様の体内で芽吹き、日々、育っている。その事を考えると、とにかく、命がけ、本当にひとつの命がかかっているのですから命がけで彼と話をしてみてください。「今回はどうしても産みたい、堕ろしたくない、結婚しないとしても子どもは産みたい」という強い気持ちを何度も何度も話してみてください。シングルで育てる自信はないけれどそれでもそうしたいくらいに産みたいという決意と覚悟を訴えてください。恋人同士の2人にとってはとても悲しい話し合いですが彼の根本的な人生観、価値観を変えてもらって2人でこの命を育み成長を見守っていくのがベスト(いや、もうこんな人あきれて物も言いたくないという気持ちではありましょうが、彼がこの説得で人生観を変えてくれればの話です)ですよね。あなたの命がけの説得で奇跡が起こる可能性にかけて早速やってみてください。 その結果が妊娠12週を過ぎても出ないとその後中絶する場合、母性保護法などで決められている初期中絶の期間が過ぎ、中絶は中期中絶として死産届や火葬が必要になったりします。シングルで育てると次の恋愛、結婚も難しくなると不安を募らせているその気持ち、そして2人の間の命をどうしても産みたい覚悟を訴えてみてくだささい。まあ偽善的ではありますが、彼の言い分を少し入れて、大至急籍を入れ「ハネムーンベビー」という、やりたくはないですが少し妥協案も出してみますか…。それでも彼が納得しないのであれば、命や人の尊厳を軽くしか考えないひどい男だったと諦めて、次に一人でこの子を育てる方策を考えてみましょう。覚悟ができれば助けてくれる人は現れるものです。もちろん、新しいパートナーも…。 |
(文:大関洋子) |
2017/12/18(月) |
第131回【職場編】「上司にいきなりキスされて…」 |
【Q】
ちょっと前になりますけど、職場場の上司にエレベーターの中でいきなりハグされそうになったんです。すっと身をかわして、その時はハグされなくてすんだんですけど、つい先日、私だけ会議室に呼ばれて会議室に行くとドアを閉めた途端キスされたんです。あまりに突然だったので、よけきれなくて頬にキスされました。社内の相談室に相談に行こうと思っているんですけど、その2回のことを除けば、他のどんな上司や先輩よりいい人だし、迷っています。それに原因を作ったのは私かなあ…と。上司の誕生日にみんなでプレゼントをしたんです。その時私だけ乗り遅れちゃったんで、一人でネクタイをプレゼントしました。おしゃれな人なのでちょっと派手目なやつだったんですけど、翌日してきてくれて、けっこうみんなに褒められてるのに、私からもらったって言わないんですよ。たぶん私の気持ちを勘違いしちゃって、私からモーションかけているように思ってるんだと思います。 【A】 これは、2つの観点から考えられますね。 1つは、社内のセクシュアルハラスメント(セクハラ)という観点、もう1つはあなたに対する強制わいせつ罪という観点です。セクハラという観点から言えば、明らかにセクハラですから、すぐに会社の相談窓口へ話しべきと考えます。たとえあなたがどんな理由で一人だけ別にネクタイを贈ったとしてもです。 セクハラ対策は、セクハラの有無に関係なく、事業主の義務として厚生労働省は定義づけています。その第2条で「セクシュアルハラスメントとは、職場における性的な言動に対する他の従業員の対応により、当該従業員の労働条件に関して不利益を与えること」としています。セクハラは受け流しているだけでは状況は改善されませんので、不快と感じる性的な言動を受けたときは、我慢したり無視したりするのではなく、はっきりと拒絶の意思を相手に示してください。厚生労働省の定義は少々堅苦しく書かれていますが、簡単に言えば「性的なことに関する嫌がらせ」を指します。例えば、男性上司が女性の部下に「最近太ったんじゃない?」と言うこともセクハラになりますし、職場のカレンダーやポスターがセミヌードの女性(または男性)で、それを見て不快と感じればセクハラに当たります。「髪、切ったんだね」というような身体的なことに対する声がけも不快だと感じれば該当します。加害者にはまったくそのつもりがなくても、被害者が嫌だと感じればセクハラになります。 もう1つの観点は、強制わいせつ罪という観点です。 刑法176条は、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつ行為をした者も、同様とする。」と強制わいせつ罪を規定しています。条文を読む限りでは、「暴行又は脅迫」なんて受けていないとお考えになるかもしれませんが、「無理やりキスをする」のは、強制わいせつという判例があります。自由を奪うような行為全体を暴行と考えるので、無理やり抱きついて身体を触ったり、キスをしたりする行為も強制わいせつ罪が成立するということです。ただし、実際に罪に問えるかというとどう立証するか問題があるので、密室での行為ということになると、怪我を負っていたり、防犯カメラに録画されていたりしない限りハードルは高いと言えます。 あなたの場合、2度とこのような行為を受けないためには、まず社内の相談室に相談しましょう。男女雇用機会均等法は事業主に対し「対策を講ずる義務」を規定しています。会社の相談室を利用しづらい場合は、都道府県労働局の相談窓口も利用できます。 |
(文:大関洋子) |
2017/11/06(月) |
第130回【子親編】「姑と同居したら…」 |
【Q】
昨年義父が他界したことをきっかけに、義母と同居しました。義母は、私の妻として、嫁としてのやり方がよほど気に入らないらしく、いちいち口出しをします。「洗濯物は乾燥機で乾かすんじゃダメよ。消毒の意味もあるんだら日光に当てないと」「味噌汁は出汁の素じゃダメ。美味しくないし健康によくないし」「掃除は丁寧にね。窓を拭いたら最後はから拭きしないと」等々。私も仕事をしているので、とてもそこまで手が回りません。夫とは、家事より仕事ということでお互い納得しているので、夫も家事を分担してくれています。義母は夫が家事をやっていることが気に入らないのでしょうか?とうとう最近では「あなたたちもう少しちゃんとした夫婦になりなさい」と。私も夫も、十分ちゃんとして夫婦のつもりなんですが。義母と喧嘩せずに同居を続けるにはどうしたらいいか困っています。 【A】 今年のジェンダーギャップの順位は、前回の順位より3位後退して過去最低を更新、144カ国中114位になりました。11月5日の朝日新聞朝刊「ひもとく」の欄に「「女性の活躍」って」と題する記事が掲載されており、「すべての女性が輝く社会作り本部の会合」とのキャプション付きで、安倍首相の他11人のメンバーが写っている写真(今年6月のもの)が載っていました。本部名からして担当大臣は当然女性だろうと思いきや、「加藤勝信」というれっきとした男性、しかも写っている11人のうち女性はたった1人という有様です。 さて、あなたは夫婦の間で「家事より仕事」ということでお互い納得されているわけですが、お義母様の時代はまだまだ「女は家事育児」「男はしっかり外で仕事」という時代。そんな時代を生きてきたお義母様の言う「ちゃんとした夫婦」というのは、妻が洗濯物を晴れた日にパンパンと手で叩いて干し、味噌汁の出汁は煮干しか鰹節から取り、窓拭きは水拭きしたあと乾拭きし、そして美味しい食事を作って出し、後片付けまでちゃんとやる。そしてまた翌朝には、夫より早く起きて朝食の支度、洗濯、掃除…。そういうイメージです。 そんなお義母様と喧嘩せずに同居を続けるというのは無理というもの。どうしても喧嘩をせずに同居を続けるというなら、お義母様の言うことを聞いてすべてこなしても、それほど大きな手間と時間になるわけではないので、すべてこなすしかありませんね。「やっぱり洗濯物は日当たりに干すと日光の香りがして気持ちいいですね」「やっぱり煮干しで出汁を取ると味噌汁が美味しいですね」「窓ガラスは乾拭きするとピカピカになりますね」という具合にです。 お世辞や我慢では続かないので、あなたが少しずつそういうやり方に慣れ、あなた自身もそういうやり方の方がよりいいと感じるようになることです。ただし、それらの家事をすべて妻であるあなたがやるのではなく、夫にも分担してもらいましょう。いきなり全部こなすのが難しいようであれば、まず1つ、少し慣れたらもう1つと、徐々に増やしていってみてください。そうしながらお義母様と仲良くなっていってください。 もし、あなたのやり方をお義母様に受け入れてほしいということでしたら、夫との家事の分担を徹底し、お義母様があなただけでなく夫にも注意をしなければならない状況を作りましょう。息子には言いにくいものですよ。その上で、お義母様にご夫婦2人で「家事より仕事」という話をしてみましょう。お義母様とあなたの問題として解決しようとするのではなく、お義母様とご夫婦の問題として解決するようにしてみてください。 |
(文:大関洋子) |
2017/10/20(金) |
第129回【親子編】「娘の夢は銀行員」 |
【Q】
高校1年生の娘が、「銀行員になりたい」と言い出しました。私も、夫も猛反対。夫が娘に「おまえはどうして銀行員になりたいんだ?」と聞くと、娘は「銀行って、人の人生に直接影響を与えるところでしょ。例えば個人であれば財産の管理、相続とか投資とか…、会社であれば融資を通じて会社の存続に直接影響を与えてる。そういう人の運命を握ってるってすごいなって。だから私、支店長になって、自分の力で人を幸せにしてみたい」と言うんです。夫は、「女が銀行に勤めたって、窓口業務でこき使われるのが関の山。法人営業が女じゃ、相手の会社はなかなか信用してくれない。私は女の支店長なんて一人も知らないぞ。女なんだから、公務員、教員、看護師くらいを目標に勉強したらいいだろっ!」と強い調子で娘に話をしました。私も夫に同感です。 【A】 ぜひぜひ、娘さんの進路希望をご両親は応援してあげてください。私も、そして日本の社会全体で応援したいと思います。高校1年生でこれほどしっかりした目標、目的を持っているなら、必ず女性支店長になってくれると信じていますし、社会も皆で支えなければなりません。 現在、世界経済フォーラムが毎年発表する「グローバル・ジェンダーギャップ指数」男女平等ランキングで、2016年の調査対象144カ国のうち、日本は111位で、過去最低となりました。前年に比べると10位、10年前に比べると31位も順位を落としています。この「ジェンダーギャップ指数」は、政治、経済、教育、健康の4分野のデータをもとに男女格差を分析したものです。アイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンなどの北欧諸国が上位に来ています。5位にルワンダ、フィリピンが来てちょっと不思議に思うかもしれませんが、この指数は、男女差(ジェンダーギャップ)なので、男女の平均が共にまだ低くても、男女が不平等に扱われていなければ上位に来るわけです。逆に全体としては、この4分野では高い水準であっても、男女差が激しいと、アメリカは45位、イタリアは50位です。北欧を除くヨーロッパでは、男女が平等に扱われているドイツが13位です。 それと大きく離れて、中国99位、日本は111位、韓国116位。114カ国の調査対象国のうち、日本がなぜこんなに順位が低いのかというと、健康面ではほぼ平等、教育も大学進学率などはほぼ平等です。政府は、学ぶ分野で科学、テクノロジー、工学などで女性の数が少なく理科系女子(いわゆるリケジョ)を増やそうとしていますが、実はこれも近年それほど大きな差があるわけではありません。 大きく差が出るのは、政治や経済の分野です。政治では、国会議員、閣僚、首相はじめ地方の長の数は圧倒的に男性が多く、第3次安倍内閣においても20人の閣僚のうち女性はわずか3人でした。 あなたの娘さんが希望している経済の分野では、企業幹部(社長、取締役)に占める女性の数が少なく、ご両親が心配なさるのも分かりますが、現在「女性の登用が企業の利益にとってプラスになる」という考え方が政府はじめ各企業には強くあり、「女性枠」を設けているところもあります。これは単に数を増やせばいいという発想ではなく、女性の様々な視点(ダイバーシティ)があることで、新規事業の成否の判定がより的確になったり、不祥事を防ぐことが出来るなどの危機対応能力が高まることが証明されつつあることによるものです。 |
(文:大関洋子) |
2017/10/13(金) |
第128回【夫婦編】「息子のサッカーコーチに誘われて」 |
【Q】
幼稚園年長の息子がいます。課外のサッカー教室に入りたがったので、夫にも相談して入れてやりました。夫も高校までサッカーをやっていたので、息子がサッカーを始めたことで大喜びしています。私はサッカーはよく分かりませんけど、練習が終わったあとのお母さんたちとのお茶会が楽しくて…。そして、何より楽しいのはコーチが一緒にお茶してくれるとき。先日は「たまにはお子さん抜きでいろいろお話ししませんか」と言われ、幼稚園が終わる前にみんなでお茶しました。気は利くし、優しいし、夫とは大違い。そんな風に思っていたとき、コーチが私に「お子さんのことでお話ししたいんですけど、2人でお茶しませんか」って言うんです。子どものことって言われれば、お断りするのもと思いお茶しました。ところが子どもの話はほんの10分くらいで、あとはなんとなくだらだらと2時間。コーチが席を立つ気配もないし、私はもちろん立ちたくないし。そして別れしなに「またお子さんのことでお話しがあるときは、お誘いしますから」と言われたんです。私は、ドキドキしました。これはますいんじゃないかなあと思いつつ、今度はどこに行くんだろうと期待している自分がいるんです。 【A】 「今度はどこに行くんだろうと期待している自分がいる」と正直におっしゃっています。当然、2人の性の関係を予測してのことですよね。 突然話は飛びますが、「進化」という視点から考えると、動物個体が生きている究極の目的は、生き残り、子を作り、自分の遺伝子を次世代に残すことです。オスは、出来るだけたくさんのメスと交配して、たくさんの子を作り、自分の遺伝子を残そうとします。メスは、どんなにたくさんのオスと交配しても出来る子の数は自分の作る卵の数より多くなることはなく、ヒトを含む哺乳類では、普通、妊娠期間中と授乳期間中も子は作れないので、メスが自分の遺伝子を残せる子の数は一生でとても少なくなります。ですからメスは、数少ない卵が出来るだけ生き延びられるような優秀なオス、あるいは食べ物や隠れ場所など子どもが育っていくのに必要な資源をたくさん持ったオスを注意深く選ぶことになります。 ちなみに、ヒトの男女が残せた子どもの数ですが、1994年のギネス記録では、男は17〜18世紀のモロッコ王、ムーレイ・イスマイルの残した「少なくとも1042人」という数字です。「少なくとも」という曖昧な表現なのは、女の子は途中で数えるのを辞め、男の子も700人を超えたあたりで数えるのを辞めてしまったからだと言われています。 ヒトの女性による子の数のギネス記録は、27回の妊娠で、69人の子どもを産んだとされていて、これもすごい記録ですが、まあ男性の1042人には遠く及びません。 というように進化の歴史をひもとけば、オスもメスも、いえ男も女も、自分の遺伝子の生き残りをかけて性の関係を持つわけですし、はるか昔の狩猟採集時代であれば、獲物を上手に仕留めた男とセックスして、そのセックスと引き換えに食糧を手に入れた女は、その食べ物のおかげでそうしなかった他の女より生き延びて、より多くの子孫を残すことが出来たのです。 資源と引き換えのセックス、セックスと引き換えの資源、太古の昔は進化の過程で動物はもちろん、ヒトもこうして生き延び、自分の遺伝子を命がけでつないできました。 さて、あなたが生きているのはまさしく21世紀の今、進化の生き残り戦略は、もはや必要ありません。にもかかわらずお子さんのコーチは本能の中に隠れている太鼓の生き延び戦略の呼び声にくすぐられて、あなたに近づいています。そして、あなたご自身も同様です。どうぞ、ヒトの進化の過程ですでに不必要になった戦術に思いをはせ、それでも2人の間に真実の愛を見つけられるようなら、次を期待なさるのもよろしいでしょうが、そうでなければ、「次」も「お茶」で止めておくか、お断りになるのが賢明と思います。 |
(文:大関洋子) |
2017/09/21(木) |
第127回【恋愛編】「2人いる彼氏は親友同士」 |
【Q】
22歳、学生です。今、彼氏が2人います。1人は、私にもう1人彼氏がいることを知っているんですが、もう1人は知りません。っていうのは、2人の彼氏は高校時代からの親友で、もともと知らない方の彼と私が付き合っていたんですけど、最近彼の親友の方の彼と付き合い始めたので、元からの彼氏は私が彼の親友と付き合っていることを知らないんです。なんでこんなことになっちゃったかって言うと、あるとき彼氏2人が飲んでいるところに誘われて3人で飲むことになったんですけど、元からの彼氏が先につぶれて寝ちゃったんです。その時彼氏の親友が、私にいきなりキスしてきて…。本気っていうより酔った勢いだったんだと思うんです。そのまま身体をもたれ合っているうちに、そういう関係になっちゃって…。私もけっこう酔っ払ってたから…。それで、元からの彼氏には、秘密ができちゃったんです。秘密を共有するとますます関係が近くなっちゃって…。今でも元からの彼氏は大好きだから別れないでいるんですけど、あとからの彼氏とは好きという感情より、彼と別れたときに元からの彼氏との関係を壊そうとするんじゃないかって不安で別れられないんです。でも、これからどうしていいか全く分からなくて、ずるずるこのままになりそうで怖いんです。 【A】 古今東西、この手の話はよくあることで、裏切ったり裏切られたりということが起こります。私たちは夫や妻はもちろんのこと、恋人や婚約者にも精神的、肉体的忠誠を要求し、何とか浮気されることを阻止しようとします。 そのわけは、男と女では違いがあって、女性は妊娠、出産、子育てという恋愛の次にやってくる大仕事に、男性の精神的裏切り、つまり自分と子どもを捨てて他の女性の元へ走ってしまう浮気は、男性からの献身や経済的資源の供給の終わりを意味し、それは自分と子どもの生きていく支えを失うことになるわけです。 男にとって女の裏切りは、生物として最も重要な種の保存、自分の遺伝子の継承の有無とつながります。メスの体内で受精が行われ、メスに発情期という兆候がはっきり分からない哺乳類のヒトという種では、DNA鑑定でもしない限り、ヒトの男には自分が生まれてくる本当の父親かどうかは分かりません。ですから、男にとって、女の浮気は自分の稼ぎで、狩猟採集時代であれば命がけで闘い勝ち取った獲物で、他人の遺伝子を持った子を何年もかけて育てるということになります。 こういう事情から、私たちヒトは、男も女も相手の裏切り、つまり浮気を何とか阻止しようとするのです。それにもかかわらず、もう1つの本能にかられてヒトは浮気をします。男性は寄り多くの女性とのセックスで自分の遺伝子をたくさん残そうとし、女性は「より優秀な遺伝子を得るため」一人ではない男性と交わろうとします。 というのが、遺伝子学上の浮気の定義ですが、あなたの浮気は「秘密の共有」という刺激と「元からの彼氏は今でも好き」という自分の都合が加味され、ずるずる2人と付き合っているとのこと。まさか、今の時代、夏目漱石の小説「こころ」のように親友が自殺をしてしまい、主人公の「私」は一生それを背負い続けるということにはならないとは思いますが、精神的、肉体的な裏切りが元からの彼氏に分かったときは、彼は少なからぬショックを受けますよね。親友である男性2人の関係もまた、深い苦しみと悲しみに襲われるに違いありません。それをあなたは十分覚悟の上で苦しみながら関係を続けていらっしゃるのですね?それとも、もう全く新しい型の恋愛関係として3人の恋(1人の女性を2人の男性が愛するという恋愛を3人が納得する)を創る努力をしようとしているのでしょうか。いずれにしても、相当の覚悟が必要なことを自覚してください。このままでは、あなたはどちらの男性も失うことになりますよ。 |
(文:大関洋子) |
2017/09/07(木) |
第126回【職場編】「でき婚? そりゃないだろっ!」 |
【Q】
私の会社は男性8割、女性2割の会社です。働きやすくていい会社と思っていたんです。ところが一昨年。先輩の女子社員が、別な部署の男性社員と結婚して退社するっていう話になったんです。そういう時って、普通、みんなで祝福しませんか。それが、表向きは「おめでとう」って言ってはいるんですけど、陰では「求人難で、いい人材確保が難しいタイミングで退社する?結婚を半年ずらすとか、結婚しても子どもが出来るまでは辞めないとか、いろいろやり方はあるよね」なんて、悪口の嵐。 結局、そんな話が本人に聞こえたのか、籍は入れるけど、披露宴は半年後、退社はさらに半年後、なんて話になっちゃったんです。彼女が辞めても旦那は社員なわけだし、仕方ない選択なのかな? ところが先日、まったく逆なことが起こったんです。後輩の女子社員が別な部署の男性社員と「でき婚」するって言うんですよ。しかも、すぐ退社するとか…。先輩の悪口言いまくってた人なのに、本人が「先輩みたくなりたくないんで先に作っちゃった」って親しい人たちに言ってるっていうじゃないですか。うちの会社っていったいどういう会社なんですか! 【A】 結婚をすると「女はウチ、男はソト」というこの考え方は、実は第一次大戦以降の日本型近代家族の形なのです。今「これからは女性も仕事をする時代だ」とよく言われますが、第二次世界大戦以前、日本の人口の過半数を占めていた農家では、妻も子どもも含めた一家全員で農業をすることが当然でした。 性別に基づく役割分業は、人間社会のほぼすべてに見られる現象ですが、日本で女性が結婚すると生産労働に従事せず「専業主婦」になったのは、長い歴史の中ではまだほんのわずか100年足らずのことなのです。 明治、大正期に産業が発展し、実家を継いで農業をすることができない次男以下の男性が都市部に流入し、比較的安定した収入を得られるホワイトカラー層が登場しました。第二次世界大戦後の好景気がそれを可能にしたのです。そして、女性はソトで働かず、国家に人的資源(夫を労働力として提供し、たくさん兵力になる子どもを産む)を安定供給する役目を求められるようになります。それまでの家制度とは違った過程が確立され、女性は「良妻賢母」として「ウチ」にいて夫に尽くし子育てに責任を負うべきという考え方が浸透していきました。1970年代中頃まではこうした政治的文化的背景によって女性の有業率は上昇に転じ、現在では兼業主婦が多数派を占め、女性が職業と主婦業の二者択一、いや、二重負担に悩むという状況を生み出しているのです。 ですから、あなたの結婚して退社するつもりが「人手不足なのに、今辞めるのか」という悪口の嵐とのことですはが、この「結婚退社にウチで主婦」という文化を考え直してみませんか?また、後輩も「でき婚」で即退社という「良妻賢母」型の生き方を継承しているもっとも顕著な例ですよね。「求人難でいい人材確保が難しいタイミングで退社」という悪口の嵐を「でき婚」ですぐ退社する後輩は受けずにすんで「そりゃないだろっ!」と怒る前に、結婚したら「女はウチ、男はソト」のできあがった近代の発明品である文化をしっかり考え直してみてください。 こういう考え、文化の流れが続いてしまう限り、女性の「ガラスの天井」現象は破れません。人生をどう生きるか、結婚を機会に女性も、そして人生のパートナーの夫も根本から考え、話し合う時代ではないでしょうか。 |
(文:大関洋子) |
2017/08/17(木) |
第125回【子親編】「義母が先に亡くなって…」 |
【Q】
夫とは24歳で結婚しました。それから28年、2人の子どもは独立して、これから夫と2人でゆっくり過ごそうと思ったのも束の間、義母が急に亡くなり、義父の面倒を見るため同居することになりました。もし、残されたのが義母だったら、おそらく施設に入居して介護は考えなくて良かったと思うんですが、義父は施設は嫌いなので、私が介護するしかなかったんです。義父はまだ70代。まだまだ充分男を感じさせる雰囲気の人で、本人も男としての意識を持ち続けています。義母があまりにも突然他界してしまったので、義父は現実を受け入れられていないようで、これまで義母に面倒を見てもらっていた感覚が抜けず、義母の代わりを私にさせようとします。私にとってはまるで夫が2人いるよう…。しかも世代が違う分、義父は夫よりも傲慢で、私の感覚では受け入れがたいことばかりで、毎日怒鳴り出したくなります。 【A】 人が老いを受け入れるのはいつ頃なのでしょうか。何歳になったら老人かということは個人差が大きく明確にすることは難しいので、一般的には65〜74歳が前期高齢者、75〜84歳が後期高齢者、85歳以上は超高齢者と3期に区分されています。しかし、アメリカのJ・タックマンによると70歳代で自分を老人と認める人は38%で、62%の人は「まだ若い」と思っているとの調査結果を発表(1953年)しています。 このように老性自覚の個体差の巾は大きなものとなっています。そして「老いを自覚する契機」として70%以上の人が「視覚の衰え」「易疲労感」「疲労回復困難」を挙げています。(新井保男著 老年心理学)老年期は喪失の時代でもあり、体力の衰え、記憶力の低下、人間関係の縮小、同世代の人や配偶者の死によって自分も老いを受け入れていく過程でもあります。ところがあなたの義父は70代ということや体力的にはまだ元気で、しかも急逝された義母にしっかり面倒を見てもらっていた生き方のくせが抜けず、息子であの妻であるあなたを義母の代わりにしています。あまりにも自分の妻の死が突然で、現実を受け入れがたいのです。 これもアメリカのキューブラー・ロスは「死ぬ瞬間」(1969年)という画期的な著作の中で「人が死を受容するには5つの段階がある。@否認 A怒り B死の代償として何かを望む取引 C抑うつ D受容 の5つの段階である」と言っています。 これは多くの臨床患者本人とのカウンセリングの経験から死の受容に至るまでの心の変遷を明らかにしたものですが、実は義父もまだこのプロセスを完了していないのです。@自分の妻が死ぬわけがない A自分を残してなぜ先に死んだ! B私の面倒は誰が見るんだ!? の段階のように思われます。現実を受け入れ始めると、C妻は私を残して死んでしまった、息子の妻は私の妻ではないのだと落ち込む「抑うつ期」がやってきます。それを経て、人は自分や近親者の死を現実として受け入れ、運命に身を任せ、運命に従っていくのです。 あなたのご心労も分かりますが、ここは夫にも協力してもらい、もう少し時間を稼いで、義父が妻の死を受容できるよう待ってあげていただけませんか?今、やみくもに「私はあなたの妻ではありません!」と声を荒げても、義父はかえってキューブラー・ロスの言う@否認やA怒りに戻ってしまうと思われます。 |
(文:大関洋子) |
2017/08/03(木) |
第124回【親子編】「娘の性の教材はアダルトビデオ?」 |
【Q】
大学1年生の息子と高校2年生の娘がいます。息子には大学に入ってから付き合い始めたガールフレンドがいて、時々家に遊びに来て、夕飯を食べて帰ります。その子とお付き合いするようになるまでは、部屋の中に成人雑誌やアダルトビデオなどが隠してあって、親としては少し不安な面もあったんですが、最近では部屋もきれいに整頓され、余計なものはなくなりました。 ところが、息子の部屋にあった雑誌やビデオを娘の部屋で見つけたんです。子どもたちに確かめるわけにもいかないので、はっきりしたことは分かりませんが、息子が娘にあげたというわけではなく、娘が息子の捨てたものをこっそり自分の部屋に持ち込んだらしいんです。しかも、それを性の教材にしているみたいなんです。 成人雑誌やアダルトビデオの内容を鵜呑みにして、性に対する考え方がゆがめられるのも困るし、そういう相手がいるのではないかととても心配です。 【A】 性交体験の低年齢化、避妊実行率の低下、若年層の性感染症、HIV、予期しない妊娠の増加など、思春期の子どもたちの性を巡る危機的状況があちこちで聞かれます。加えてセクシュアルマイノリティLGBTの性も問題になっています。寝た子を起こすなとか大人になれば自然に分かると言って、先輩が後輩に夜這いや遊郭での性を教え教わっていた時代は、とても間違った性の知識や文化が蔓延していて、妊娠や堕胎で生命を落とす女性があとを絶ちませんでした。いたずらに処女性が祭り上げられ、それが高価な値段で売買されたり、犯されて処女を失ったことで自分の価値がなくなったと思い自ら命を絶ったのも、過去の女性たちでした。これほどまでに暗く苦しい性の歴史を繰り返してきた今こそ、開かれた性教育を国を挙げて行う必要があります。 ところがマスコミなどのメディアはもちろん、学校教育の中でさえ正しい性教育をすることを避ける傾向があります。伝統文化が崩壊したり子どもや女性の性についてのモラルが低下するのではと考える人たちもいるようです。しかし、こういう風潮の中での一番の被害者は、間違った知識や性文化をインプリンティングされるあなたのお子さんたちです。 人を愛すること、性の関わりを他者と持つことの大切さと素敵さを知る思春期こそ、一人ひとりの自立や人権を尊重し、科学的、医学的、そして精神的に充実した性を学び、男女が共に生きる喜びを分かち合える性の文化を獲得するときなのです。 兄から妹へと伝わった性の教材は、決して人の心や身体を尊重し、性も人生と同じ、一人ひとり違っていいことや、自己選択、自己決定によってその喜びを創っていくことを教えるものではありません。画一的ステレオタイプの女性像、男性像を良しとし、性器の形状や発達の違いも否定するまことにお粗末なものでしかありません。それらの雑誌の広告につられて必要のない包茎手術で高額な金銭を使ったり、身体に後遺症を残したりした子どもたちもいます。 この際、ご子息には父親が、娘さんには母親が「愛と性の素晴らしさ」と「科学的な性の知識」を話すチャンスと捉え、そういう時間を作ってみてはいかがですか?できれば家族で話ができたらいいですね。 |
(文:大関洋子) |
2017/07/20(木) |
第123回【夫婦編】「お酒が入ると別人になる夫」 |
【Q】
女ばかりの同僚と飲みに行った居酒屋で声をかけられたことがきっかけで結婚しました。 夫は3歳年上の40歳、結婚して10年です。出会った時は、明るくて楽しい人と思ったんですが、二人きりでデートするようになってシャイで無口な人とわかりました。でもそこが誠実というかまじめな人に見えて、「結婚するならこういう人」と結婚したんです。ある程度は当たりかな?8歳の息子と5歳の娘がいるんですが、子どもに対してもあまり態度が変わりません。 ところがお酒が入ると別人になるんです。とにかくしゃべるしゃべる。それだけならいいんですけど、そのうち会社の愚痴が始まり、だんだん機嫌が悪くなって、最後は私に当たります。とにかくありとあらゆる言葉を使って罵るんですよ。酔っ払いとは言え、さすがに私だって腹が立ちます。 それが週に2、3回。以前は、外で飲んでくるよりはいいかと思っていたんですけど、最近そんな様子を子どもに見せたくないので、飲むのを止めてくれるか、外で飲んで子どもが寝た後帰ってきてほしいと思うようになりました。夫の態度次第では夫婦生活が続けられないかもしれないと感じ始めています。 【A】 いつもはこんな人じゃないのに、お酒が入ると別人になってしまうという人よくいますよね。お酒を飲むと心が開放されるのですが、「普段、口数が少ないのにお酒が入るととたんに饒舌になってしまう」という場合の事例があなたの夫ですね。 もともと、口べた、シャイで無口、自己主張に乏しいタイプの方がなりがちです。心が開放的になるとつい普段言えない鬱積した気持ちを吐き出そうとする心理が働きます。普段よりちょっとよくしゃべり陽気になる程度ならいいのですが、妻に当たり、あらゆる罵詈雑言を使って罵るというのは、今後結婚生活が続けられないと思って当然です。 人は普段、理性によって自分を抑制して生きています。本来の自分を理性によって隠し、人との付き合いを円満円滑に行おうとしています。お酒を飲む理性を司っている前頭葉の働きが鈍くなり、本来の自分が顔を出します。お酒を飲む量、飲むタイミング、飲む状況を自分でコントロールできなくなってしまった状態をアルコール依存症と呼びます。 もうこうなると本人の意志が弱いからと言うだけでなく、耐性ができて酔いにくい身体になり酒量も増え、今までの量では満足できず、飲み続けることになります。こうなってくると、お酒も麻薬や覚醒剤と同様の依存性薬物の一種となる生活習慣や人間関係が悪化し、仕事上でも失敗を犯すことが増えてきて、最悪の場合職を失うことにもなりかねません。 また、よくないことに日本文化では「お酒の上でのこと」は大目に見られ、「あの時はちょっと飲み過ぎちゃって」とか「ちょっとお酒が入っていたものだから」ですまされることも多かったのです。 お酒の歴史は、最も古いとされる果実酒は紀元前4000年ごろにメソポタミア地方のシュメール人によって飲まれ、その後同じくメソポタミアで紀元前3000年ごろには、ビールが造られていたという記録が残っています。ウイスキーや蒸留酒登場の最初の記録は、ずっと後の11世紀初め、イタリアの医師によって作られた医薬品用のアルコールだったそうです。日本酒は、奈良時代8世紀ごろ、祭礼や正月、慶事の時、神前へお供えし、それをいただくという風習でした。「酒は百薬の長」とも言われ、よい飲み方をすることで人間関係を円滑にし、健康にもよいとされています。 あなたの夫の場合は、妻はもちろん、子どもたちにも悪影響が出ていますので、お酒を止めてもらうよう厳しく話し、止めなければ離婚もやむなしとはっきりおっしゃってください。また、夫のひどい様子を動画に撮って、しらふの時に見せ、アルコール依存の治療も視野に入れた方がいいかもしれないと夫婦で相談してください。 |
(文:大関洋子) |