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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2013/07/04(木)
第29回【親子編】「息子に性は教えにくい・・・」
【Q】
小学6年生の娘と4年生の息子がいます。娘は昨年初潮を迎えたので、出産と性について丁寧に話をしました。子どもでもパソコンやスマートフォンなどから、簡単に性についての情報を手に入れられる時代なので、放っておくわけにはいかないと思ったからです。息子の方は、どうも私からは話しづらいので夫に任せておいたところ、赤ちゃんはコウノトリが運んで来るだの、お母さんのお腹が真ん中から割れて生まれてくるだのわけのわからないことを教えているみたいなんです。先日「お母さんのお腹のどこが割れるの?」と本気で聞く息子にびっくりして、「割れるわけないでしょ!」とだけ言ってしまいました。最近、息子も自宅のパソコンをいじりだしましたし、そろそろきっちり話さないとと思うのですが、どうも息子には・・・。こんなこと父親の仕事だと思うのですが。

【A】
「コウノトリ」かあ、懐かしいですね。ロマンチックではありますが、「サンタさん」とは違って実害があるので、これはすぐ訂正してください。
ましてや「お母さんのお腹が真ん中から割れて生まれてくる」などというのはロマンにもならないばかりか、近い将来、本当のことがわかった時、親子の信頼関係を壊すことになりかねません。その上、親が隠したり嘘をついたりするのは「性」や「出産」は恥ずかしいこと、いやらしいことという誤った概念を持ってしまうことにもつながり、一生そこから抜けられなくなって、恋愛や性を大らかに楽しむことができなくなる恐れもあります。

私が高校の教師だった時、三者面談で「私はお母さんのお腹が割れると教わって、中学生まで信じていたけれど違った。それで友達に大笑いされた」という女生徒がいました。その生徒は、「お母さんに嘘をつかれたことで、出産や性をとても恥ずかしいと思い込み、今でも男の子を好きになっちゃいけないと思っていて、友達のように恋愛もできない」と泣きながら語っていました。

親が優しさや恥ずかしさから嘘をついたとしても、彼らはいつか違和感を覚えて、この非科学的な性教育に決別するのです。そして、このことを友達やいかがわしい雑誌などで生半可に知った時、本当にショックを受け、その後の恋愛や性に閉鎖的になったり、コソコソ、ビクビクする青春を送ることになってしまいます。

また、男の子には男親が教えるべきというのも、逆に差別的な考え方だと思います。娘さんに出産と性について丁寧に教えたのなら、その時一緒に息子さんにも聞かせて「お姉ちゃんや女の人の身体と自分の違いを認識し、決して月経や出産を忌まわしいものとして扱うのではなく、いたわることを教えて上げたらよかったと思います。すでに、「コウノトリ」や「桃太郎」のように「お腹が割れる」イメージが息子さんに定着していいるのなら、折角「どこが割れるの?」と聞いてくれたのですから、「ごめんね。お父さんがそんなふうに教えたのね。お母さん、びっくりして“割れるわけないでしょ”!」って言っちゃったけど、お姉ちゃんと君はね、お母さんのおしっことうんちの出る穴の真ん中にある赤ちゃんの通る道を抜けてきてんだよ」とできるだけ普通に、茶化したり深刻になったりせず教えて上げてください。

そして彼が、「へーっ、お母さん痛くなかったの?」とか「僕、苦しくなかったのかなあ?」とか聞いてきたりしたら、これもごく普通に「お母さんも赤ちゃんも大変だったけど、頑張って出てきてくれたんだよ。あなたが生まれてきて、みんなとっても嬉しかったよ」と答えて上げてください。

私の娘はちょうど4年生の時、「赤ちゃんの出てくる穴って今でもある?」と聞くので、「あるよ」と答えると「触りたい」と言うので、お風呂に一緒に入った時に触らせたという話を今すると、娘は「やだーっ、私そんなことしたんだ?!」と大笑いしています。娘は二児の母親です。

子どもたちは科学的にちゃんと性のことを教えて上げれば、小さければ小さいほど真っ直ぐ、素直に納得するものです。今からでもなんとか挽回してみてください。できるだけ早いほうがいいですよ!
(文:大関洋子)

2013/06/21(金)
第28回【夫婦編】「夫が急に優しくなったんです」
【Q】
結婚して7年です。最近夫が急に優しくなったんです。今までは、私から話しかけても「ああ」とか「ふーん」とか、そんな言葉しか返ってこなかったのに、最近、夫の方から寄ってきて、「肩、揉んでやろうか?」とか「洗い物手伝おうか?」とか、今までだったら考えられないようなことを言うんです。こんなに変わるのって、どこか変ですよね。どこかの本でも読みました。夫が急に優しくなったら浮気を疑えって。お友達のご主人も優しくなったと思ったら浮気してたんです。結局、離婚しました。私も思い当たることがあるんです。最近、帰りも遅いし、突然ゴルフなんて始めちゃって、休みの日に出かけることも多くなったし。先週は、私に香水買ってきたんです。でも、なんだか覚えのある匂いなんですよ。確か、以前夫のワイシャツについていた匂いのような・・・。カムフラージュですよね、絶対!

【A】
昔、「三年目の浮気」という歌が流行ってましたけど、「三年目の浮気くらい大目に見てよ」と男性が歌うと「許してあげない」と女性が応えるんでしたっけ?
鳥類の中には雄と雌が協力して子育てをするものもあるようですが、哺乳類の子育ての中で、雄と雌が協力して子育てをするのはほぼ人間だけのようです。要するに、弱く、未熟で生まれてくる種は、雌だけで育てるのは難しく、雄の協力が必要となるわけです。
そして、人間の子どもの場合、他の哺乳類がほぼ親と相似形で生まれ、厚い毛皮やすぐに立ち上がることのできる足を持っているのに比べ、まったくの丸裸で親とは違う3頭身の姿で生まれ、ほぼ12ヶ月経たないと、自分で立って、自分で歩いて、おっぱいを飲みに行くことすらできない。こういう理由から、人間の雄は最低3年間は、子育てのために雌から必要とされていると言われています。子どもも3歳になればほぼ自分で食べ物のところまで歩いて行き、自分で口に運べるようになります。

子どもの発達段階から考えると、「三年目の浮気」(結婚を自由に性行為を行える状態と捉え、すぐに子どもができたと考えれば)は理にかなっていることになります。
さて、あなたの夫は結婚7年経っていて、たとえお子さんが4歳、5歳になっていたとしても、そこは人としての愛とか情とかを考えたら、本能の赴くまま新しい女性と種の保存や我が遺伝子をより多く残すための生存競争に走るのではなく、これから実り多い夫婦の絆を作り上げていく時ではないでしょうか。
あれっ? あなたの夫は浮気?
はい! もう間違いありません!
「肩、揉んでやろうか?」「洗い物手伝おうか?」その上「香水」。しかも夫のワイシャツについていた匂い。
まだ、カムフラージュしようと必死な夫の様子を笑って見ていますか? 
それとも出かけたゴルフ場へ乗り込んで、本当にゴルフに行っているか、そして相手は誰なのか確かめてみますか。
それとも「この香水、私の好きな匂い。それを知っててワイシャツにつけてくれてたのね」とチクリとやってみますか。

今の段階では、あなたの夫は、まだほんの浮気のつもりのようですが、探ったり、皮肉を言ったりすると、もっと巧妙に隠すようになり、深みにはまったりします。
ですが、私はこういう男の行動は許したくないので、はっきり「私以外の女性と性の関係を持つのであれば、きっちり離婚をしてからにしてください。その際、慰謝料と子どもの養育費、財産分与は保証してください」と、タイミングを見て、話し合ってみてはいかがでしょうか。
もちろん、逆手にとって、優しくさせて、放っておいて飽きるのを待つという手もありますが、それはあくまであなたに余裕があればですね。
(文:大関洋子)

2013/06/06(木)
第27回【恋愛編】「性行為って子作りのためだけなの?」
【Q】
彼とは付き合い始めて2年です。彼と付き合う前に付き合ってた男性は皆、言い方悪いですけど「手をつけちゃえば俺の女」みたいな人ばっかりだったのに、彼は正反対で、手を握るまでに3ヶ月、キスをするまでに1年かかりました。しかも、まだ一度も抱き合ったことがないんです。何度か2人で旅行にも行きましたけど、「おやすみ」って寝ちゃうし、そばに寄ってこようともしないんです。私に魅力を感じてないのかなあとも思ったんですけど、つい先日プロポーズもされたんです。なんか、面倒くさいっていうか、そういう行為って子どもを作るためだけにあるって思ってるみたいで、愛情の交換っていう考えがないみたい。結婚してもこんな風かと思うと、私としては心配になっちゃいます。

【A】
動物個体が生きている究極の目的は、生き残り、子を作り、自分の遺伝子を次世代に残すことです。その究極の目的達成のため「人間」を含むすべての生物が努力をするわけです。進化の過程でオスとメスによって有性生殖する生物が生まれ、精子を作るのをオス(男性)、卵子を作るのをメス(女性)と定義しました。その二つが受精によって新しい個体、子どもを生み出すわけです。その時子どもの受精率を上げ、生存率を高くするために精子は、ほとんど遺伝子しか持たず、他の配偶子と出会う確率が大きくなるよう小さくて移動性に優れ元気に動き回ることができ、卵子は受精卵が育つための栄養素をたっぷり含んで大きくて、卵子の動きは鈍いけれどたくさんの栄養を子に与えて生存率を上げることができるようになっています。

このような生物学上の違いから、オス(男性)は、小さくて作るのにあまりエネルギーのいらない精子で、できるだけたくさんのメス(女性)を手に入れて交配し、自分の遺伝子を残そうとします。栄養を豊富に含んだ大きな卵子は、作るのにたくさんのエネルギーが必要なので、いっぺんにはそう多くは作れません。ですから、メスがどんなにたくさんのオスと交配しても、できる子の数は自分の卵の数より多くなることはありません。オスは一度にたくさんのメスの卵を受精させられるだけの精子が作れるので、たくさんのメスと交配すればたくさんの子を作り、自分の遺伝子を残すことができます。
従って男性の遺伝学上の特性として、じっくり交際相手を選ぶよりは、できるだけ多くの異性と交際しようとし、女性はその逆にじっくり時間をかけて男性を観察して慎重に交際相手を選ぶという特性を持っていると考えられています。

ですから、普通は男性がさっさとセックスだけですませようとしても、女性ができるだけセックスを先送りして、あの手この手で男性の献身度をテストし、相手が食べ物や隠れ場所などの調達にどの程度優れていて、自分や子どもを守ってくれるかじっくり見定めることになるわけです。そして人間には、男女の協力による長い子育ての期間が必要なことから、「性」の関係も種の保存の場合だけに限定されず、愛の表現としても存在してきました。

ところがあなたの彼は、こういった生物の進化、遺伝学上の理由や人間に与えられた性の行為が愛情の交換であるという大切な点も活用せず、なおかつオスの持つ特性であるより多くのメスと交配できるチャンスさえ利用していないわけですよね。
自分の遺伝子を残すこと、すなわち性行為にガツガツしない男性を、最近では草食系男子と呼び、私たち女性が割と好意を持って受け入れているのは、生物学上自分たちの遺伝子を残すことに夢中になる男性たちの多くが、男が上位で女が下位と考え、自分本位になりがちなのに比べ、あまり乱暴でなく、男女の優位さをつけない価値観を持っているからでしょうか。多少、進化した人種で、生命力は弱目で「面倒くさい」かもしれませんが、新しい生き方ができる可能性を探ってみるのもおもしろいと思います。

ただし、彼のようなタイプは、セックスには前向きではなくても、何かこだわるものを持っていたりすることもあります。性だけのことを考えるのではなく、どういう家庭を築きたいのか、あなた自身がどういう生き方をしたいのか、そんな部分からじっくり考えてみてはどうでしょうか。
(文:大関洋子)

2013/05/23(木)
第26回【職場編】「飲んでて泣いちゃう男って・・・」
【Q】
最近の男って軟弱ですよね! 入社3年目の同期の連中で飲みに行ったんです。男3女2で。1時間半くらい飲んだかなあ・・・。そしたら急に、男の子のうちの一人が、あえてそう言いますけど、ほんとに「男の子」なんです。だって、「僕にはこの会社は向いてない」なんて言って、急に泣き出しちゃうんですよ。他の二人も同調っていうか、同情っていうか、泣きはしないけれど、なんか愚痴っぽくなって、文句ばっかり言って・・・。男のくせに情けないって感じ。でも、それで終わらなかったんです。翌日、その泣いちゃった男の子が私のところに来て、「おまえの前だと本当の自分が出せるんだよ。付き合ってくれないか」って言うんです。あの涙って私と付き合うための演技だったの? まさかね、5人だったんですよ。まあ、悪い奴だとは思わないけれど、そんな男って情けないですよね。

【A】
「男の子」に泣かれるとこっちはどうしたらいいか、ほんと困っちゃいますよね。私もあるある、そういう体験。
「男のくせに情けない」とあなたが言っているように、昔から男の子は「男の子でしょ、泣くんじゃありません!」ってしつけられる。男の子も大変だと思いませんか。転んで泣いたって、悔しくって泣いたって「男の子でしょ!」って怒られるんですから、子どもにとってはわけがわからない。男の子だって痛いものは痛いし、悔しいものは悔しいですもんね。男が泣いてもいいのは、せいぜい親が死んだ時くらい。それも誰もいないところで、何粒か涙を流すくらいでやめないと「女々しい奴」と言われる。男は泣かないものだから「男泣き」という言葉はあっても、女は泣くものだから「女泣き」という言葉はない。男は人前では泣かない、それが男だと私たちは思い込んで育ったし、育てられた。だからあなたも飲んで愚痴って泣いた男って「情けない」と思うし、しかも一人でこっそり泣くんじゃなくて5人もの人前で泣くなんて!と思ったんですよね。その上、次の日「付き合って」と言われてもって感じですよね。

「演技?」とまで疑ってしまいますが、本当に気の置けない仲間や普段から好意を持っているあなたの前でこらえた涙がどっと出たという状態だったのではないでしょうか。これを幼児退行現象とも言います。「泣く」という行為には、浄化作用の効果があり、ひと泣きしてさっぱりした経験はあなたもあるのでは?

そのこと自体に男女の差はないので、男の子だって泣いていいんですが、酒を飲んで自己抑止力をなくしてからグチグチ文句を言いつつ泣くというのは、男でも女でも質のいい人間とは思えません。「酒と泪と男と女」の歌詞に「飲んで飲んで 飲まれて飲んで 飲んで 泣き疲れて眠るまで飲んで」とかいうのがあります。歌としてはなかなか情緒があるのですが、私には古〜い男の生き方に思えてなりません。

小さいころ、「男でしょ、泣くんじゃありません!」と叱られて、「だったらお姉ちゃんみたいに、こんなおちんちんない方がいい!」と思って育った男の人もいっぱいいます。もっとも女だって「泣いてかわいいのは××歳まで」みたいに言われますよね。私くらいの年齢になって泣いたとしても、まあ周りに対する表現としては、間違いなくマイナス。前述したように「泣く」というのは、癒やし効果があるのに、泣くことで癒やされていいのは「若い女性」(子どもも含め)に限られるという、まさに男女差別の最たるものではあります。

ただ、あなたの場合、だから「悪い奴」とは思わず、「幼児退行現象」を起こして平気な男をちょっぴり「かわいい」と迷い、「付き合ってみようかな?」という思いがあるようですが、こういう男はやめておいた方が無難でしょう。一生、母親みたいに面倒を見る覚悟があれば別ですが・・・。
(文:大関洋子)

2013/05/09(木)
第25回【子親編】「義母の視線が怖い」」
【Q】
夫の両親は、私から見るとかなり仲のいい夫婦に見えます。私の両親は、ほとんど会話もないような関係で、ちょっとした買い物でも、何泊かの旅行でもそれぞれ出かけることが多く、ほとんど一緒にいるのを見たことがありません。それに比べ、義父と義母は、いつも一緒。家にいる時もよく話をするし、よく一緒に温泉に出かけたりもします。でも、私が夫の実家に行くと、義父にお酌をせがまれたり、話し相手をさせられたり・・・。私はそのこと自体苦にはなりませんが、そんな風に義父の相手をしている時の義母の目が怖くて、実家に行きづらくなってしまいました。もちろん、義母も私によくしてくれるんです。でも、あの目は絶対敵意を感じている目だと思います。義父と義母には仲良くしていてほしいし、私も義理の両親どちらとも仲良くしたいし・・・。どのように接したらいいでしょう。

【A】
あなたは「義父にお酌をせがまれたり、話し相手をさせられたり・・・そのこと自体は苦にならない」とおっしゃっていますが、すでにその言葉の中に、無意識に「苦になりつつある」という気持ちが表現されています。義父にお酒をついであげる行動を「お酌をする」という言い方をし、しかもそれを「せがまれる」と表現していいることに、自分では気づいていないけれど、違和感を持っていることが示されています。

「お酌」という行為自体、日本独特のもので下位の者がへりくだって上位の者にお酒を勧めることですし、その上「せがまれる」という言葉は「嫌なんだけけれど、しつこく頼まれるから仕方なく…」というニュアンスが充分に含まれています。「話し相手をさせられる」も同様に、「せがまれて」「仕方なしに」という意味ですよね。

こんな些細な言葉の中に、普段は意識されていない人間の精神活動が出ることがあります。私たちは、日常自分が行動や思考、そして感情の動きなどの精神活動について、自分で確かに分かっていると感じていますが、実は無意識下にある種々の気持ちに突き動かされていると言われています。

100年ほど前に活躍した精神科医フロイトは、1900年に「夢判断」という本の中で、「恐れや不快感、苦痛などを無意識の世界に閉じ込めていると夢や言い間違いを通してそれが出る」というようなことを言っています。
あなたの場合は、言い間違いではないけれど、意識の世界にあった強い感情的なこだわりを無意識の世界に閉じ込めて、義父にお酌をしたり、話し相手になっていたりしたのでしょう。義母の視線が嫉妬の敵意の視線に見えたのも、たぶんそのためではないでしょうか。

あなた自身の中に、義父が自分を「女」として好意を持ち、義母はその私をライバル視している、というシナリオが出来上がってはいませんか。
ご相談の中には、あなたの夫のことが何も出てきませんが、父親と息子は同じタイプの女性に好意を感じる例がよくあり、おそらくあなたはお義父様に気に入られているのでしょう。ただ、今あなたには、お義父様との関係が、無意識に負担になっているようですし、むしろあなたの方がお義母様に敵意を持っていることも考えられますので、お義父様のお酌やお話し相手はほどほどにして、お義母様のお手伝いをしたり、お話し相手になってあげられるような方向に持っていけたらいいですね。
(文:大関洋子)

2013/04/19(金)
第24回 【親子編】「ガールフレンドに暴力を振るう息子」
【Q】
高校2年生の息子のことです。ガールフレンドが、息子の部活が終わるのを待って一緒に帰るはずだったのに、女友達と一緒に帰ってしまったといって息子が彼女を殴ってしまいました。その程度がひどかったので、息子は謹慎処分になりました。彼女が言うことを聞かないことに腹を立て殴ってしまったこともあるそうです。最近では私が注意をすると私にも暴力を振るうようになりました。息子は「カッとすると人にひどいことをしてしまう」と言い、自ら精神科の受診を望んだので受診させました。そこでは「境界性人格障害の疑い」と言われました。何か病名が付くようなことなのかととてもショックでした。夫は息子が生まれたころから「仕事が忙しい」と言っては、週末も帰らないことが多く、愛人がいるのではと疑ったこともあるくらいの関係でした。息子が小中学生のころは、息子に愚痴を聞いてもらったり、一緒に買い物やスポーツ観戦に行ったりしました。そのころの息子は、私に気を遣うとても優しい子だったんです。

【A】
母親と息子の関係はフロイトが「エディプスコンプレックス」と名付けた母子密着の状況が表すように、男の子は母親に、女の子は父親に愛着行動を示すと言われています。あなたの場合、息子さんはあなたを安全基地として求めたのにもかかわらず、あなたが逆に息子さんを夫代わりにして愚痴を聞いてもらったり、どこかに一緒に出かけたりしてきました。
本来ならば、お母さんが子どもの不安を解消し、安全を与える存在になることで、子どもは不安になった時にはいつでも安全を確認しつつ、徐々に母親から離れても、多少の不安や危機感を乗り越え、新たな行動を起こしては大人になっていくものなのです。思春期には、彼なりに母親以外の異性との出会いを大切にし、その女性の人格を認め、たとえ彼女が自分の思う通りに行動しなくても、自分の中でなぜなのかと考えたり、悩んだり、彼女と話し合ったりしながら、解決していくように努力します。
ところがあなたは、本来夫が担うべき役割を息子さんに代替させる報酬として、息子さんの言うことをすべて聞き入れてきたのでしょう。そのため彼は、少しでも自分の思った通りに相手が行動しないと暴力を振るって思い通りにさせようとするのです。母親と父親が話し合いながら物事を解決していく場面も目にしたことがないため、すぐ暴力に訴えることにもなります。

「境界性人格障害」というのは、感情が極端に不安定で、強い不安感、激しい怒り、極端な理想化と否定などの特徴が見られる症状を指すもので、対人関係が安定せず、社会生活を送る上で、自分も周囲も苦しむことになります。

アメリカ精神医学会DSM-Vの境界性人格障害の診断基準の中では、
(1)現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとする通常の感覚を超えた努力
(2)不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難

などが挙げられており、そのため些細なことで爆発的に怒り出し、その間は止めようがなくなりますが、しばらくすると涙を流して反省したりします。

その症状の発生原因ははっきりとは解明されていませんが、最近の考え方の一つとして、素質的な要素をベースとして幼児期の母子関係に関わりがあるのではないかとも言われています。母子密着の状態が3歳を過ぎても続くと、子どもが精神的自立をすることが困難になり、「よい子」にしていれば母親に可愛がられ、「悪い子」にしていれば切り捨てられると感じて、0か100かの評価をし、「よい自分」と「悪い自分」とか、「自分を可愛がる母親」「自分を拒否する母親」というような2極化の価値基準を作り上げます。思春期になって好きな異性にも「愛している彼女」と「殺したい彼女」というように、同じ対象を2極化して見るため、暴力にも走ることになります。

お母さんとしては、心理的に少し距離を置いた感じで感情的にならず、息子さんの考えや行動を見守り、話はしっかり聞いてください。その際、自分の価値観を押しつけたり、相手を否定したりせず、共感的に聞くように努力してください。怒りが爆発した時は「冷静になったらまた話すこと、あなたの気持ちを理解しようとしていること」を告げて、その場から避難してください。そして何にも増して大切なことは、夫とこの状況を共有し、夫婦で協力して息子さんの安全基地になってください。
(文:大関洋子)

2013/04/05(金)
第23回 【夫婦編】「時間や予定に細かい夫」
【Q】
夫とは職場で知り合いました。真面目できっちり仕事をこなす夫の姿を見て、この人だったら結婚しても安心と思って結婚しました。結婚を機に私が転職し、今は別々な会社に勤めています。まだ子どもはいないので、待ち合わせて一緒に外食をしたり、二人で旅行をしたりすることも多いのですが、時間や予定にかなり細かい人なので、ちょっとでも時間に遅れたり、予定が変わったりすると不機嫌になります。例えば、私のせいでレストランの予約に10分でも遅れようものならすごい勢いでなじられるし、自家用車で旅行に行ってもまるでツアーのようにあらかじめ決めた予定を変えようとしません。「××に何時、××に何時、××に何時」っていう感じ。いい場所があって、もうちょっとそこにいたいと思っても、「じゃあ、次に行くよぉ」。なんか心がないですよね。声は優しいんですけど、私にはその声が悪魔の声みたいに聞こえるんです。

【A】
サン・テグジュペリの「星の王子様」に「本当に大切なものは目には見えないんだよ」という言葉が出てきます。あなたのパートナーは「本当に大切なもの」って何なのかまだよく分からないのかもしれません。具体的に目に見えたり、手に触れたりしないと気がすまなくて、次々と場所を移ったり、時間に細かくなったりするのではないですか。お二人の場合「本当に大切なもの」は例えば、どこでどんな景色を見ようと、どんな名所・旧跡へ行こうと、そこで「二人でいられることの幸せ」をかみしめ合ったり喜び合ったりすることなのだと思うのですが、いかがでしょうか。

だからレストランの予約に遅れても、旅行の予定が多少狂っても、すでに「レストランを二人で予約する」「旅行の予定を二人で立てる喜びと幸せ」を大切にしたい、あなたはそう考えているのでしょう? でも、パートナーは違う価値観の持ち主だった。でも、この「人生についての価値観」というそれこそ結婚生活のなかで「目には見えないけれど大切なもの」は、あなたが職場で「真面目できっちり仕事をこなす夫を見てこの人だったら安心」と思った時から、実は分かっていたのです。そしてあなたも、「きっちり、きっかり安心」の人生を生きていきたいと思って結婚したわけですから。

もし、どちらかが10分、いえ30分、1時間遅れ、見られるはずの名所・旧跡が何カ所か見られなくなってしまったとしたとき、待ち合わせの時間に遅れてしまった相手を思いやり、遅れなければ見られたはずの美しい風景を二人で想像し語り合って「次に来る時の楽しみ」言い合える、そんな二人でありたい考えているあなた。

初めに行った場所が気に入れば、後の何カ所かは行くのをやめ、半日その場所にぼーっと二人で手をつないでたたずんでいたり、ふと歩いていた道ばたのスミレやきれいな石ころに歓声を上げたり・・・、目的によって喜びを感じるのではなく、その瞬間、瞬間の出来事に
よって喜びを感じたいと思っているあなた。
さてあなたは、「次に行くよぉ」という夫の声は「悪魔の声」とおっしゃっていますが、もし夫が10分遅れたり、満開の桜を見ようと行った桜の名所が三分咲きだったりしたら、あなたはそれでも「あなたが10分遅れたからちょうどお腹も空いてきた」とか「この桜が満開になったらさぞきれいでしょうね」と、彼と一緒にいることを心から喜びとして感じることができますか?

「花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは。雨にむかひて月をこひ、たれこめて春の行方知らぬも、なほ哀に情ふかし。」(徒然草 第百三十七段)

「真面目できっちり仕事をこなす夫の姿を見て、この人だったら結婚しても安心」と考えたあなた。「時間や予定にかなり細かい夫」に、待たされたり予定を変えられたりした経験のないあなた。もしあなたが、待たされる側であったり、予定を変えられたと感じる側であったとしたら、あなたも不機嫌に、魔女のような声を発するのではりませんか。
もう一度自分をふり返り、価値観を少しずつ折り合わせて、お二人で「目には見えないけれど大切なもの」を探す人生の旅を続けてください。
(文:大関洋子)

2013/03/21(木)
第22回 【恋愛編】「男のメンツなんて捨ててよ!」
【Q】
私は38歳、彼は40歳、結婚相談所で知り合いました。どちらも結婚経験はありません。私は20代のころ、もう少しで結婚というところまで行きましたけれど、最後のところで決心がつかず、結局彼に彼女ができてしまって・・・。その後は結婚を考えるほど真剣なお付き合いをすることもなく10年が経ってしまいました。今の彼とは1年近くお付き合いしています。結婚相談所ですから、彼の収入や趣味なども分かります。結婚を意識したお付き合いなので、知り合って半年くらい経ったころから、将来の話をするようになりました。お互いにそれなりの蓄えがありますので、一戸建ての家を購入しようということになったのですが、私は親からお金を借りてでもちゃんとした家をと思いました。ところが彼は、自分たちのお金だけでと言うんです。どちらも一人っ子だし、将来は親の財産も相続することになるんだからと言ったんですが、彼は「僕だって男だから、嫁の両親に出してもらうわけにはいかない」って言うんです。

【A】
私のカウンセリング研究所でも「恋人や夫が私の気持ちを分かってくれない」「彼女が(妻が)自分の性を理解してくれない」から始まって「夫婦の家事分担」や「夫が子育ての手伝いをしない」「自分はバイセクシュアル」、セクハラ、性虐待の問題に至るまで、男女の問題のご相談は後を絶ちません。

時には結婚して半年のご夫婦がお二人でいらっしゃって、私の前で「だから結婚式は延ばした方がいいと言ったでしょ!」「君の親戚で不幸があったなんて知らなかったんだから!」「私はちゃんと言った!」「聞いてない!」と喧嘩を始めるご夫婦もあります。
こんな風にとげとげしくなることが多い一方で、愛し合う男女がなんとか障害を乗り越えて二人で共に生きて行きたいと手に手を取り合ってご相談に見えるカップルもたくさんいらっしゃるのです。男女の間の対立と葛藤、そして愛さえあれば不可能なことも可能になるとまで思わせる男女の愛とはいったい何なんでしょう。今回のご相談者も家の購入を親の支援を得てもしたいという女性のあなたと「それは男のメンツが許さない」という男性の彼との対立です。

この地球上に生き物らしいものが出現したのはおよそ40億年前。その最初の生命は単細胞でした。この原始的な生き物に「性」が出現したと考えられるのはおよそ15億年ほど前。「性」の起源、それに伴う対立や結合はこんな大昔から始まっていたんですね。ところが、私たちが、あって当たり前のように思っている「男と女」の問題が科学として研究されたり生物の行動を分析して論じられるようになったのは、たかだかここ数十年くらいのことです。生物学的に見ると、私たちは男と女が対立、葛藤し合いながらも結びつく大きな要因の一つは、種の保存と繁栄と考えられますが、最近よく論じられるのは、強い種(自分の遺伝子)を残すためには、遺伝的に自分と距離の遠いパートナーに惹かれるということ。女性はなるべく自分と違う遺伝子を持つ男性を、男性はなるべく自分と違う遺伝子を持つ女性を選ぶということです。

ですから、ご相談者のあなたも、このコーナーを読んでくださっている読者の皆さんも、パートナーと意見が違ってぎくしゃくしたら、「ああ、自分はまったく違う遺伝子を持った相手だから惹かれたんだなあ」と考え、それでもなんとか話し合いを繰り返し、折り合いをつけていってください。特に女性は子どもを産み育てるという点からも「住むところ」には安心安全を求めますし、男性は「自分が女性と子どもを守る」という太古の概念が男のプライドとして根強く残っているので、対立と葛藤の争点となることが多いようです。メスとオス、女と男の本質を胸に置きながら一つひとつ乗り越えていいご夫婦になられることを祈ります。

お二人の意見の対立の背景には、お二人がこれまで育ってきたご家庭の考え方が大きな影響を与えていると考えられます。もし、お互いにいいところをたくさん認め合っていて、無事結婚にたどり着きたいとお考えでしたら、お互いのご両親を巻き込むような対立に発展させず、お二人のところでなんとか解決を図ってください。ご両親は、お二人の考えの元となる存在ですから、巻き込んだ時点で解けない対立になり、お二人のお気持ちとは別なところで結婚が壊れてしまう可能性大ですので。
(文:大関洋子)

2013/03/07(木)
第21回 【職場編】「過去のセクハラ事件のせいで・・・」
【Q】
大学卒業後、すぐ今の会社に就職しました。今年で25歳になります。大学では、同級生の男の子と付き合っていた時期もあるんですが、結婚にはちょっと頼りないというか、不安というか・・・。同級生って友達ならいいんだけれど、結婚は年上の方が・・・。彼は結婚を考えていたようで、私が「結婚する気はない」って言ったら、自然と別れることになりました。今の会社には5歳くらい年上の独身男性がけっこういて、声を掛けてくれれば付き合ってみたいなって思う人も数人います。ところが、数年前に社内で、年下の女子社員にセクハラで訴えられるという事件があって、結局和解はしたらしいんですけれど、年下の女子社員には声を掛けないという裏内部規定みたいなものがあって、食事に誘われることすらありません。職場結婚て、相手のこともよく分かるし、選び間違うことも少ないと思うので憧れているんですけど、その事件のせいで、なかなか仕事以外の関係が作れません。かといって、私から付き合ってくださいって言うほどときめく男性はいないし・・・

【A】
数年前のセクハラ事件が原因で社内で年下の女子社員には声を掛けないというかなり徹底した裏内部規定が出来上がっているみたいですね。このセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)は、男女雇用機会均等法11条で「職場において性的な言動がなされることにより労働者の就業環境が害されることのないよう事業主に配慮する」よう求めています。セクハラの定義はされていませんが、原則として性的な嫌がらせを受けた側の主観を基準に判断されます。
例えば、相手の身体に必要以上に触れる。無理やりデートに誘う。性行為を強要するといった典型的なものはもちろん、酒の席で酌をさせる、壁に水着やヌードのポスターを貼ることなども、そのことで気分を害する人がいればセクハラになります。他にも、「彼氏はいるの?」としばしば聞くことや、「いつ結婚するの?」「出産の予定は?」などと尋ねることなども入ります。もっと微妙な行為としては、部下の女性を「○○ちゃん」と呼んだだけでもセクハラになる可能性もあります。「○○さんて、スタイル抜群だね」のように、容姿について言及することも該当します。被害が受けた側の主観が決め手ですので、行為そのものが何であったかにより、すべて同様に判断されるわけではなく、ケースバイケースで判断されることになります。

数年前の事件の内容がどうであれ、会社のイメージダウンは避けられなかったでしょうから、事業主としては、必死で男性社員を教育したものと思われます。
あなたのおっしゃる通り、職場恋愛を経て、職場結婚というケースは、インターネットや結婚相談所での出会いが不透明な部分が多く不安があるのに比べ、その人の働きぶりや人柄といった結婚に最も重要な要素がよく分かる上、価値観の共有という点でも、一緒に過ごしている時間が多いので、「選び間違い」はしにくくなると思います。

あなたの会社のように「セクハラ」の解釈にちょっと行き違いが起きてしまうのは、性的に不快な行為を「そのくらいなら」と許してしまうと、限度をわきまえず平然と相手を傷つけてくる人間がいることや「性的に不快」という基準は一人ひとり微妙に違うので「それならば年下の女性社員には声を掛けるな!」という間違った不文律が出来上がってしまったのでしょう。これでは逆に法律の本質を見誤ってしまいますし、男女差別を助長しかねません。
今のところあなたの方から「付き合って」というほどときめく男性もいないとのことですが、向こうから声を掛けてくれれば付き合ってもいいと思う人は数人いるとおっしゃっていますので、思い切ってその方たちをご自分の方から、あるいは友達も一緒にお茶やお食事にでも誘ってみてはいかがでしょう。上司にも折に触れ、男女雇用機会均等法11条の主旨が、職場やキャンパスで女性も男性も気持ちよく仕事をしたり、学んだり出来ることにあることを訴えてみてください。

ただし、数は少ないですけれど、女性から男性への「セクハラ」も存在しますのでご注意を!
(文:大関洋子)

2013/02/21(木)
第20回 【子親編】「義母だってまだ充分若いので・・・」
【Q】
38歳、会社員です。妻は大学を出てすぐ私の勤める会社に入社して、部下になりました。私より10歳年下です。自己紹介をしたときの彼女の様子が初々しく、その瞬間、惹かれるものがありました。すぐに付き合い始め、1年ほどで結婚しました。現在、結婚5年目です。妻は結婚を機に別な会社に移りました。お互いそれほど仕事が忙しいというわけではありませんが、たまに2、3時間どちらかが遅いということはあります。妻の実家が歩ける距離なので、妻が遅いときは、妻が義母に電話して、義母が私の夕飯を作りに来てくれたりします。先日も義母が来てくれました。恥ずかしいことですが、その時夕飯の支度をしている義母を見ていたら、なんだかドキドキしてしまったんです。それから、義母を見ると、また同じような気持ちになるのではないかと思い、義母の顔をまともに見られなくなってしまいました。義母は49歳。俗に言う美魔女タイプというのでしょうか。

【A】
私たち「ヒト」は長い長い進化の過程を経て今という時代に至っています。動物、特に大型ほ乳類の一種である私たちヒトは、生き残りをかけて自分の遺伝子を次世代に残すため、過酷な戦いを続けてきました。他の生物との生存競争で他の種に負けない強い種として、また、その時代の環境にうまく合う種として生き残ってきました。その上、同じ「ヒト」という種に属する個体間の生き残り競争にも勝たなければなりませんでした。
これは他の動物との生存競争とは違い、目先の「自分の遺伝子残し競争」です。つまり、この「遺伝子残し競争」に勝利するためには、オスはより適合するメス(より強い子孫を残すためには遺伝的に遠い関係の方がいいとされる)を捜すことに必死になり、メスも同じように自分の遺伝子を持つ子どもを安全に育てられるよう協力してくれるオスを見つけることに必死になります。

大部分のほ乳類のオスは子育てに参加しません。オスが子育てに参加する種は5%にも満たないとも言われています。ヒトは、直立二足歩行になって、骨盤の形がしっかりはしましたが、間が狭くなったことで、産道を通る大きさに限りがあり、子どもが未熟で生まれてくることになったので、オスの子育て参加が必要になったと考えられています。

こういった進化の過程から狩猟採集生活社会では、オスは生物学的にメスの妊娠出産能力に着目し、よりたくさんの子どもを残せると考えられる相手を選びます。メスはメスで、より強い自分の子どもを提供してくれるであろうメスを選びます。このようにして私たちは、人類の長い進化の歴史を作ってきました。だから現代社会であっても、男性は子をつくる能力を充分に備えた性的に成熟した年代の女性を選択し、女性は社会的地位が上がり、収入や資産が安定している男性を選ぶことが多くなるわけです。

ところが、時はすでに21世紀。狩猟採集生活からは、遠く離れ、種の保存のために血眼になって競争する必要はなくなりつつあります。もちろん、生物学的見地からは種の保存の原則が続いている考える方がいいと思われますが。

ですから、あなたが10歳以上年上の義母にときめきを覚えても何の差し支えもないと思いますよ。ただし、義母が美魔女タイプと言っているのは、やはり狩猟採集生活社会の男と同じように、できるだけたくさんのメスと性交をし、たくさんの子どもを残そうという原始的欲求の表れでもありましょうが。

お義母様とあなたの“妻”とは、遺伝子がつながり、同じ環境で生きてきた親子。多くの部分がよく似ているはずです。そう考えると、“妻”に惹かれたあなたが、お義母様にときめくのは当然。でも、あなたは最近、“妻”をしっかり見ることが少なくなってはいませんか。

いずれにしても、ご自分のときめきを人類の進化の過程から見直し、ドキドキを楽しむところくらいまでになさってはいかがでしょう。それ以上の関係は夫婦、親子の関係を壊す覚悟をしてからにしてくださいね。
(文:大関洋子)