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■分かってるつもり?男と女の胸の内■
この連載は、「浦和カウンセリング研究所」で扱ったカウンセリング、相談を基に構成されたQ&Aで、わかりやすいよう脚色された部分があります。
主に浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が執筆し、大関行政書士事務所が監修しています。

■大関洋子プロフィール■
(浦和カウンセリング研究所所長/NPO法人日本カウンセラー連盟理事長/臨床発達心理士/心理カウンセラー/上級教育カウンセラー)
1941年生まれ。高校で国語、音楽を教える。2002年、浦和カウンセリング研究所を設立。結婚、出産、男女の共生等の話題を社会に提起。新聞、雑誌、TV等、連載、出演多数。 教育問題、夫婦・家族の悩み、職場での悩みなど、年間のべ1,000人以上のカウンセリングをこなす。
著書に「この子たちを受けとめるのはだれ?」(文芸社)、「素敵なお産をありがとう」「セクシュアルトークで一家団ランラン」等。

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2017/09/07(木)
第126回【職場編】「でき婚? そりゃないだろっ!」
【Q】
私の会社は男性8割、女性2割の会社です。働きやすくていい会社と思っていたんです。ところが一昨年。先輩の女子社員が、別な部署の男性社員と結婚して退社するっていう話になったんです。そういう時って、普通、みんなで祝福しませんか。それが、表向きは「おめでとう」って言ってはいるんですけど、陰では「求人難で、いい人材確保が難しいタイミングで退社する?結婚を半年ずらすとか、結婚しても子どもが出来るまでは辞めないとか、いろいろやり方はあるよね」なんて、悪口の嵐。
結局、そんな話が本人に聞こえたのか、籍は入れるけど、披露宴は半年後、退社はさらに半年後、なんて話になっちゃったんです。彼女が辞めても旦那は社員なわけだし、仕方ない選択なのかな?
ところが先日、まったく逆なことが起こったんです。後輩の女子社員が別な部署の男性社員と「でき婚」するって言うんですよ。しかも、すぐ退社するとか…。先輩の悪口言いまくってた人なのに、本人が「先輩みたくなりたくないんで先に作っちゃった」って親しい人たちに言ってるっていうじゃないですか。うちの会社っていったいどういう会社なんですか!

【A】
結婚をすると「女はウチ、男はソト」というこの考え方は、実は第一次大戦以降の日本型近代家族の形なのです。今「これからは女性も仕事をする時代だ」とよく言われますが、第二次世界大戦以前、日本の人口の過半数を占めていた農家では、妻も子どもも含めた一家全員で農業をすることが当然でした。
性別に基づく役割分業は、人間社会のほぼすべてに見られる現象ですが、日本で女性が結婚すると生産労働に従事せず「専業主婦」になったのは、長い歴史の中ではまだほんのわずか100年足らずのことなのです。
明治、大正期に産業が発展し、実家を継いで農業をすることができない次男以下の男性が都市部に流入し、比較的安定した収入を得られるホワイトカラー層が登場しました。第二次世界大戦後の好景気がそれを可能にしたのです。そして、女性はソトで働かず、国家に人的資源(夫を労働力として提供し、たくさん兵力になる子どもを産む)を安定供給する役目を求められるようになります。それまでの家制度とは違った過程が確立され、女性は「良妻賢母」として「ウチ」にいて夫に尽くし子育てに責任を負うべきという考え方が浸透していきました。1970年代中頃まではこうした政治的文化的背景によって女性の有業率は上昇に転じ、現在では兼業主婦が多数派を占め、女性が職業と主婦業の二者択一、いや、二重負担に悩むという状況を生み出しているのです。
ですから、あなたの結婚して退社するつもりが「人手不足なのに、今辞めるのか」という悪口の嵐とのことですはが、この「結婚退社にウチで主婦」という文化を考え直してみませんか?また、後輩も「でき婚」で即退社という「良妻賢母」型の生き方を継承しているもっとも顕著な例ですよね。「求人難でいい人材確保が難しいタイミングで退社」という悪口の嵐を「でき婚」ですぐ退社する後輩は受けずにすんで「そりゃないだろっ!」と怒る前に、結婚したら「女はウチ、男はソト」のできあがった近代の発明品である文化をしっかり考え直してみてください。
こういう考え、文化の流れが続いてしまう限り、女性の「ガラスの天井」現象は破れません。人生をどう生きるか、結婚を機会に女性も、そして人生のパートナーの夫も根本から考え、話し合う時代ではないでしょうか。
(文:大関洋子)

2017/08/17(木)
第125回【子親編】「義母が先に亡くなって…」
【Q】
夫とは24歳で結婚しました。それから28年、2人の子どもは独立して、これから夫と2人でゆっくり過ごそうと思ったのも束の間、義母が急に亡くなり、義父の面倒を見るため同居することになりました。もし、残されたのが義母だったら、おそらく施設に入居して介護は考えなくて良かったと思うんですが、義父は施設は嫌いなので、私が介護するしかなかったんです。義父はまだ70代。まだまだ充分男を感じさせる雰囲気の人で、本人も男としての意識を持ち続けています。義母があまりにも突然他界してしまったので、義父は現実を受け入れられていないようで、これまで義母に面倒を見てもらっていた感覚が抜けず、義母の代わりを私にさせようとします。私にとってはまるで夫が2人いるよう…。しかも世代が違う分、義父は夫よりも傲慢で、私の感覚では受け入れがたいことばかりで、毎日怒鳴り出したくなります。

【A】
人が老いを受け入れるのはいつ頃なのでしょうか。何歳になったら老人かということは個人差が大きく明確にすることは難しいので、一般的には65〜74歳が前期高齢者、75〜84歳が後期高齢者、85歳以上は超高齢者と3期に区分されています。しかし、アメリカのJ・タックマンによると70歳代で自分を老人と認める人は38%で、62%の人は「まだ若い」と思っているとの調査結果を発表(1953年)しています。
このように老性自覚の個体差の巾は大きなものとなっています。そして「老いを自覚する契機」として70%以上の人が「視覚の衰え」「易疲労感」「疲労回復困難」を挙げています。(新井保男著 老年心理学)老年期は喪失の時代でもあり、体力の衰え、記憶力の低下、人間関係の縮小、同世代の人や配偶者の死によって自分も老いを受け入れていく過程でもあります。ところがあなたの義父は70代ということや体力的にはまだ元気で、しかも急逝された義母にしっかり面倒を見てもらっていた生き方のくせが抜けず、息子であの妻であるあなたを義母の代わりにしています。あまりにも自分の妻の死が突然で、現実を受け入れがたいのです。
これもアメリカのキューブラー・ロスは「死ぬ瞬間」(1969年)という画期的な著作の中で「人が死を受容するには5つの段階がある。@否認 A怒り B死の代償として何かを望む取引 C抑うつ D受容 の5つの段階である」と言っています。
これは多くの臨床患者本人とのカウンセリングの経験から死の受容に至るまでの心の変遷を明らかにしたものですが、実は義父もまだこのプロセスを完了していないのです。@自分の妻が死ぬわけがない A自分を残してなぜ先に死んだ! B私の面倒は誰が見るんだ!? の段階のように思われます。現実を受け入れ始めると、C妻は私を残して死んでしまった、息子の妻は私の妻ではないのだと落ち込む「抑うつ期」がやってきます。それを経て、人は自分や近親者の死を現実として受け入れ、運命に身を任せ、運命に従っていくのです。
あなたのご心労も分かりますが、ここは夫にも協力してもらい、もう少し時間を稼いで、義父が妻の死を受容できるよう待ってあげていただけませんか?今、やみくもに「私はあなたの妻ではありません!」と声を荒げても、義父はかえってキューブラー・ロスの言う@否認やA怒りに戻ってしまうと思われます。

(文:大関洋子)

2017/08/03(木)
第124回【親子編】「娘の性の教材はアダルトビデオ?」
【Q】
大学1年生の息子と高校2年生の娘がいます。息子には大学に入ってから付き合い始めたガールフレンドがいて、時々家に遊びに来て、夕飯を食べて帰ります。その子とお付き合いするようになるまでは、部屋の中に成人雑誌やアダルトビデオなどが隠してあって、親としては少し不安な面もあったんですが、最近では部屋もきれいに整頓され、余計なものはなくなりました。
ところが、息子の部屋にあった雑誌やビデオを娘の部屋で見つけたんです。子どもたちに確かめるわけにもいかないので、はっきりしたことは分かりませんが、息子が娘にあげたというわけではなく、娘が息子の捨てたものをこっそり自分の部屋に持ち込んだらしいんです。しかも、それを性の教材にしているみたいなんです。
成人雑誌やアダルトビデオの内容を鵜呑みにして、性に対する考え方がゆがめられるのも困るし、そういう相手がいるのではないかととても心配です。

【A】
性交体験の低年齢化、避妊実行率の低下、若年層の性感染症、HIV、予期しない妊娠の増加など、思春期の子どもたちの性を巡る危機的状況があちこちで聞かれます。加えてセクシュアルマイノリティLGBTの性も問題になっています。寝た子を起こすなとか大人になれば自然に分かると言って、先輩が後輩に夜這いや遊郭での性を教え教わっていた時代は、とても間違った性の知識や文化が蔓延していて、妊娠や堕胎で生命を落とす女性があとを絶ちませんでした。いたずらに処女性が祭り上げられ、それが高価な値段で売買されたり、犯されて処女を失ったことで自分の価値がなくなったと思い自ら命を絶ったのも、過去の女性たちでした。これほどまでに暗く苦しい性の歴史を繰り返してきた今こそ、開かれた性教育を国を挙げて行う必要があります。
ところがマスコミなどのメディアはもちろん、学校教育の中でさえ正しい性教育をすることを避ける傾向があります。伝統文化が崩壊したり子どもや女性の性についてのモラルが低下するのではと考える人たちもいるようです。しかし、こういう風潮の中での一番の被害者は、間違った知識や性文化をインプリンティングされるあなたのお子さんたちです。
人を愛すること、性の関わりを他者と持つことの大切さと素敵さを知る思春期こそ、一人ひとりの自立や人権を尊重し、科学的、医学的、そして精神的に充実した性を学び、男女が共に生きる喜びを分かち合える性の文化を獲得するときなのです。
兄から妹へと伝わった性の教材は、決して人の心や身体を尊重し、性も人生と同じ、一人ひとり違っていいことや、自己選択、自己決定によってその喜びを創っていくことを教えるものではありません。画一的ステレオタイプの女性像、男性像を良しとし、性器の形状や発達の違いも否定するまことにお粗末なものでしかありません。それらの雑誌の広告につられて必要のない包茎手術で高額な金銭を使ったり、身体に後遺症を残したりした子どもたちもいます。
この際、ご子息には父親が、娘さんには母親が「愛と性の素晴らしさ」と「科学的な性の知識」を話すチャンスと捉え、そういう時間を作ってみてはいかがですか?できれば家族で話ができたらいいですね。
(文:大関洋子)

2017/07/20(木)
第123回【夫婦編】「お酒が入ると別人になる夫」
【Q】
女ばかりの同僚と飲みに行った居酒屋で声をかけられたことがきっかけで結婚しました。
夫は3歳年上の40歳、結婚して10年です。出会った時は、明るくて楽しい人と思ったんですが、二人きりでデートするようになってシャイで無口な人とわかりました。でもそこが誠実というかまじめな人に見えて、「結婚するならこういう人」と結婚したんです。ある程度は当たりかな?8歳の息子と5歳の娘がいるんですが、子どもに対してもあまり態度が変わりません。
ところがお酒が入ると別人になるんです。とにかくしゃべるしゃべる。それだけならいいんですけど、そのうち会社の愚痴が始まり、だんだん機嫌が悪くなって、最後は私に当たります。とにかくありとあらゆる言葉を使って罵るんですよ。酔っ払いとは言え、さすがに私だって腹が立ちます。
それが週に2、3回。以前は、外で飲んでくるよりはいいかと思っていたんですけど、最近そんな様子を子どもに見せたくないので、飲むのを止めてくれるか、外で飲んで子どもが寝た後帰ってきてほしいと思うようになりました。夫の態度次第では夫婦生活が続けられないかもしれないと感じ始めています。

【A】
いつもはこんな人じゃないのに、お酒が入ると別人になってしまうという人よくいますよね。お酒を飲むと心が開放されるのですが、「普段、口数が少ないのにお酒が入るととたんに饒舌になってしまう」という場合の事例があなたの夫ですね。
もともと、口べた、シャイで無口、自己主張に乏しいタイプの方がなりがちです。心が開放的になるとつい普段言えない鬱積した気持ちを吐き出そうとする心理が働きます。普段よりちょっとよくしゃべり陽気になる程度ならいいのですが、妻に当たり、あらゆる罵詈雑言を使って罵るというのは、今後結婚生活が続けられないと思って当然です。
人は普段、理性によって自分を抑制して生きています。本来の自分を理性によって隠し、人との付き合いを円満円滑に行おうとしています。お酒を飲む理性を司っている前頭葉の働きが鈍くなり、本来の自分が顔を出します。お酒を飲む量、飲むタイミング、飲む状況を自分でコントロールできなくなってしまった状態をアルコール依存症と呼びます。
もうこうなると本人の意志が弱いからと言うだけでなく、耐性ができて酔いにくい身体になり酒量も増え、今までの量では満足できず、飲み続けることになります。こうなってくると、お酒も麻薬や覚醒剤と同様の依存性薬物の一種となる生活習慣や人間関係が悪化し、仕事上でも失敗を犯すことが増えてきて、最悪の場合職を失うことにもなりかねません。
また、よくないことに日本文化では「お酒の上でのこと」は大目に見られ、「あの時はちょっと飲み過ぎちゃって」とか「ちょっとお酒が入っていたものだから」ですまされることも多かったのです。
お酒の歴史は、最も古いとされる果実酒は紀元前4000年ごろにメソポタミア地方のシュメール人によって飲まれ、その後同じくメソポタミアで紀元前3000年ごろには、ビールが造られていたという記録が残っています。ウイスキーや蒸留酒登場の最初の記録は、ずっと後の11世紀初め、イタリアの医師によって作られた医薬品用のアルコールだったそうです。日本酒は、奈良時代8世紀ごろ、祭礼や正月、慶事の時、神前へお供えし、それをいただくという風習でした。「酒は百薬の長」とも言われ、よい飲み方をすることで人間関係を円滑にし、健康にもよいとされています。
あなたの夫の場合は、妻はもちろん、子どもたちにも悪影響が出ていますので、お酒を止めてもらうよう厳しく話し、止めなければ離婚もやむなしとはっきりおっしゃってください。また、夫のひどい様子を動画に撮って、しらふの時に見せ、アルコール依存の治療も視野に入れた方がいいかもしれないと夫婦で相談してください。
(文:大関洋子)

2017/07/06(木)
第122回【恋愛編】「彼の弟が好きな私」
【Q】
彼とは就職のための会社訪問をしたとき知り合い2年間付き合っています。スーツ姿でばりばり働いている彼は頼もしく映りました。その数日後、会社から出てくる彼を待ち伏せして、偶然会ったかのように装って私から声をかけました。
半年くらい経ったころ、彼のお家で夕飯をご馳走になりました。そこで弟を紹介されたんです。長男でしっかり者の彼と次男でおっとりした弟。彼のまじめさやばりばり感に少し疲れてきていた私は、弟の方により惹かれちゃったんです。

その後なるべく彼の家に行くようにして弟に会う機会を増やしました。彼の誕生プレゼントを買いたいから付き合ってと弟を誘い出したり、「私が料理を作るからお兄さんが気に入るか食べてみて」とひとり暮らしの私のマンションに呼んだりもしました。

今では、彼に会う回数と弟に会う回数が同じくらい。弟の方も、私の気持ちには気づいていて、私に好意を持ってくれていると思います。先日、わざとホラー映画に誘って、怖がっているふりをして手を握ったんです。そしたら映画が終わるまでずっと握ったままでいてくれました。そろそろ弟に告白して、彼にも私の気持ちを話そうと思うんですが、それが弟との「別れにつながったら」と思うとどうしても話せません。

【A】
7月6日はサラダ記念日。「この味がいいねと君が言ったから」と歌い出した24歳の新人歌人の俵万智さんはその後の七七を「7月6日はサラダ記念日」と締めくくりました。それまでの万葉集や古今和歌集の短歌を短歌と思っていた人々にこの口語体の短歌は賛否両論を沸き起こし、その中で280万部売れ、今年で刊行30年を迎えました。
その間「サラダ記念日」の10年後、俵万智さんは34歳で「チョコレート革命」を刊行し、ここでは、道ならぬ恋も歌の中に読み込んでいます。「焼き肉とグラタンが好きという少女よ 私はあなたのお父さんが好き」と。この短歌の中の「私」はこの少女の父親のことが「好き」と言っているのですから、道ならぬ恋も恋。すでに妻もいて焼き肉やグラタンが好きな少女がいる男性を好きになってしまったと告白しています。
あなたの恋は、これに比べたらまだほんの序の口。付き合っている男性の父親が好きになったわけでもないのですから症状はまだ軽いと考えて、こじれないうちに手を打ちましょう。告白が別れにつながる心配をしているようですが、映画館であなたの手をずっと握ったままでいたのですから弟も同罪。いえ、あなたと同じ気持ちだったのでしょう。
彼の誕生日プレゼントの買い物を装って弟を連れ出したり、兄さんが気に入るかどうか食べてみてと騙して自分のマンションに呼んだり、最後はホラー映画を怖がる演技までしてお疲れ様でした。だいぶ遠回りをしましたが、兄の方の男性と2年間付き合っていての果てですから、あなたも弟君の気持ちを確かめたかったでしょう。
そこまでは仕方がなかったとしても、もうコソコソと兄の方を欺くのを止めましょう。本当は弟君の方を好きだと気づいたとき、弟君の気持ちがどうかと確かめて乗り移るのではなく、はっきり兄の方に「弟のことが好きになった」と告白して身を引くべきだったと思います。今さら、弟に告白して「別れる」と言われるのが怖いというのは魅力的な女性の考えることではありません。
厳しいようですが、恋人とか夫以外の誰かを愛することがあるのは仕方のないことですが、腹をくくる覚悟を決めて自分の本当の気持ちを伝えてください。ただ、2人とも、恋人とか兄の目を盗んで会うことに刺激を覚えて「愛している」と錯覚することは心理学上よくあることなので、兄が「そう、それならそうすれば」と身を引いたとたん、彼もあなたも気持ちが冷めるかもしれませんので、申し添えておきます。
もう一つ、俵万智さんが彼のために作ったのは実は「サラダ」ではなく、「カレー味の鶏の唐揚げ」だったそうです。

(文:大関洋子)

2017/06/22(木)
第121回 【職場編】「後輩に勘違いされて…」
【Q】
「今年の新入社員はジャニーズ系の子多いよね」と女子社員の間では話題になっているんです。私も確かにそう思います。その男の子達と何度か飲み会をしました。可愛い男の子をゲットしようっていうあからさまな態度の女子社員もいるんですけど、男の子達にしても、まんざらでもないみたいで、何人かは付き合い始めています。私は彼氏もいるし、年下の男の子に興味ないんですけど、不覚にも飲み会の時に体調が悪かったのか酔いが回って、ほんの10分ほど1人の男の子にもたれかかってしまったんです。その男の子は、まだ女性経験が少ないらしく、たったそれだけのことで、私が好意を持っていると勘違いをしてしまいました。その後の彼の目線はそれまでと明らかに違うし、私の身体によく触るんです。後ろから「あのー」と肩に触れたり、私から何かを手渡しするとき、偶然触れてしまったみたいに手を触れたり…。「その気はないから」っていうシグナルは送っているつもりなんですけど、いったん勘違いしちゃうとしつこくて…。はっきり言おうかとも思ったんですが、私にも少しは落ち度があるし、うぶみたいなんで、今後、同じ会社で勤めていくのに、ひどく傷つけちゃったらどうしようと困っています。

【A】
「酔いが回って」という言い訳は無し!
日本のように「お酒の上で」に甘い国は世界中ないそうです。しかも「10分も1人の男の子にもたれかかった」んでしょ?!「たったそれだけのことで」ってあなた、そりゃ女性経験の少ない人でなくても好意を持っているって勘違いしますよ。
本当に勘違いなんですか?
1900年「夢判断」という本を著した精神分析医ジークムント・フロイトは「無意識の中にあるものは、形を変えて意識の中に現れる。それを調べると無意識を知ることができる」と言っています。そして心の底に隠されている無意識は次の3つの形に現れるのです。1つは「夢」、2つ目は「神経症」、すなわち「心の病」、3つ目が「日常生活における“間違い”“失敗”」です。まさにあなたが「間違って」彼に10分寄りかかってしまった「失敗だった」と言っているこの行為です。しかもアルコールで心の底、無意識のふたが開きやすくなっていました。
日常生活における間違い、失敗、しくじり、へまをひっくるめて、精神分析学では「失錯」とか「失錯行為」と呼んでいます。フロイトは「刑事が殺人事件を捜査するとき、犯人が自分の写真と住所を現場に残していくなどということを期待するだろうか。そうではなくて、犯人が知らずに残した微細な痕跡を手がかりにして犯人を捜すのではないだろうか。精神分析においても、特に些細な問題が大問題につながっているのだ」(鈴木晶著「フロイトの精神分析」)と言っています。
あなたは彼氏もいるし、年下の男の子に興味がないと言っていますが、「今年の新入社員はジャニーズ系の子多いよね」と女子社員が話題にし、「私も確かにそう思います」とも言っています。フロイト流に言えば、その時点で無意識にその男の子に好意を抱いていたことになります。「その後の彼の目線」、「身体によく触る」ことなど、「勘違い」しているのは彼ではなくあなたの方かもしれません。無意識にあなたが彼に好意を持ってしまったけれど、意識の世界で「彼氏がいるのにそれはまずいだろ」と考えているのだとしたら、「私にも落ち度があるし」とも思っているのですから、何もわざわざはっきり「その気がないから」と言って、恥をかくことになるのはやめておいてはいかがですか?
それより、これを機会に謙虚にご自身の無意識と向き合って、「年下の男の子と付き合っちゃう」なんていうのもありではないでしょうか。

(文:大関洋子)

2017/06/08(木)
第120回 【子親編】「お義母さんが浮気?」
【Q】
夫の両親と同居して3年になります。家事は私がすべて担うようにしました。義母も家事の負担が減って喜んでいるので、同居することにしてよかったと思うのですが、先日ショッキングなことがあったんです。
久しぶりに友人と銀座でランチをしたんですが、入ったお店に義母が男性と2人でいたんです。義母は65歳ですが見かけは50代、でも相手の男性はどう見ても40代です。楽しそうに食事をしている義母を見たときはびっくりしました。声をかけようかとも思ったんですが、かけられるような雰囲気ではなかったので、むしろ私がいることに気づかれないように店を出ました。
家に帰ってから「お義母さん、今日はどちらに?」と聞くと、「あなたも知ってるわよね、Yさん。上野でお昼をご一緒したのよ」と嘘を言われて、ますますその男性とのことが気になります。私の受けた印象では恋愛感情を持っているのは明らか。私が家事を引き受けていることで義母が浮気をしているとしたら、家事を担っていることがいいのか悪いのか、夫になんて話そうか…。どうしたらいいのか、まったくわかりません。

【A】
余計なお世話ですね。あなたが家事を担うことで浮いた時間をお義母さんが何に使おうとそれは彼女自身のも選択です。あなたが心を煩わすことではありません。65歳の義母はすでに子育ても終わり息子にはあなたのように同居して家事のすべてを担ってくれるいい嫁が来ています。見かけは10歳も若く見える義母が40代の男性と楽しそうに銀座で食事をしていたのをほほえましく思ってあげてください。しかもお義母さんはあなたに聞かれて嘘をついているわけですから、隠しておきたいのは明らか。もし2人が性的関係を持ったとしても妊娠の心配もないわけですし、これが発覚して困るのはお義父さんとの関係だけです。お義父さんとは長い結婚生活の末にこうなっているわけですから、バレたとしても、お義母さんは「もう今までの結婚生活は終わりにしてもいい」と思っているのかもしれません。
いずれにしても、それはご両親が2人で考えること。それによってお義母さんが家を出るというような事態にまで発展するかもしれませんが、それによって被るあなたの被害は世間の目ですか?
65歳で人生最後の恋ができる義母を応援してあげるくらいの余裕を持ってあげられるといいですね。もしこれが義父のしたことならどうでしょう。「男の浮気は年をとっても直らない」「お義父さんてもてるのね」、くらいの軽い気持ちで受け取るのではありませんか。それも偏見です。
浮気を推奨するわけではありませんが、ロンドンに本社を置く「シモンズ」というベッドメーカーは「人生を変えるベッド」として世界に愛されるベッドを製造販売していることを誇っていて、「特定のパートナーがいるときにそれ以外の相手とセックスをしたことのある人の割合」を調査したことがあります。少し古い2004年の調査で、イギリス、アメリカ、オーストリアで日本は入っていませんが、男女の半数弱が「ある」と答えています。
お義母さんも家を出る程の覚悟はなく、軽い気持ちで食事を楽しんでいるだけなのかもしれません。勝手に「恋愛感情を持っているのは明らか」と決めつけてしまうのはいかがなものでしょう。もしそうだとしても、その人間関係をどうするか、今までの家族との関係をどうするかを選択するのはお義母さんです。既婚の女性が男といれば浮気、65歳にもなった義母は浮気はするべきでない等々の偏見は、この際捨ててあなたも楽になってください。
(文:大関洋子)

2017/05/25(木)
第119回 【親子編】「えっ、先生に恋愛感情?」
【Q】
息子がこの春高校に入学しました。中学ではバスケットボール部に入っていて、県の大会にも出場して、一生懸命部活動に打ち込んでいたんです。それほど身長の高い方ではないけれど、高校ではバスケットボールを続けるものと思っていました。
入学当初は、バスケットボール部に入部して、「今度の試合に出ることになったよ。1年では僕1人なんだ」と張り切っていたんです。ところが、ちょっと前から、部屋にあったバスケットボール関係のものを整理しているので、「どうしたの?」と聞いてみると「バスケット部辞めて演劇部に入ることにしたんだ」って言うんです。
あんなにバスケットボールに夢中だったのに何かあったのかと心配したんですが、担任の女の先生が演劇部の顧問でとってもきれいな先生なんだって言っていたのを思い出したんです。
入学後のことを考えてみると、確かに話をするのは担任の話ばかりで、納得はいったんです。でも、あんなに打ち込んでいたバスケットボールを辞めてまで、演劇部に入部するなんて、まさかとは思いますが、もしも先生に対して恋愛感情でも持っていたらどうしようととても心配になりました。

【A】
先日、フランスではこれまでで最も若い39歳の大統領が誕生しました。彼の妻は24歳年上の元高校教師。彼の所属していた演劇部の顧問でもあり、国語(フランス語)の先生でもあります。彼の名前は、ご存じの通りエマニュエル・マクロン、妻の名前はブリジット。出会った当時、彼女は39歳、彼は15歳。現在彼女は64歳になるそうですが、見た目も性格も当時と変わらず、きれいでサバサバした雰囲気で意思表示をはっきりしそうな頭のいい女性という感じです。
マクロン大統領は、メディアの取材に次のようの語っています。
「私は、彼女に多大なる恩があるのです。彼女は、私が私であることを助けてくれた」と。当時、既婚者であったブリジットには3人の子どももあり、高校生が人妻を略奪などと驚いた人もいたでしょうが、アクロン大統領にとって「私が私であることを助けてくれた」という彼女はマクロンの心の支えだったのでしょう。悩み多き少年だったマクロン、それを支えたブリジット。多くは語っていませんが、2人は10年の歳月をかけて様々な困難を乗り越え結婚しました。
彼女の長男のセバスチャンは42歳。マクロンより3歳年上です。その下の長女、ローレンスは40歳で医師、次女、ティファニーは33歳で弁護士。そして、マクロンは7人の孫がいるおじいちゃんです。日本に比べ、はるかに恋愛の形に寛大と思われるフランスにおいても異例中の異例ということのようです。
翻って、あなたの息子さん。バスケットボール関係のものを整理して演劇部に入るとのこと。遠いフランスのマクロンとブリジットに刺激されたのにしろ、そうでないにしろ、息子さんの決めること。決めたことをそっと見守ってあげてください。「まさか恋愛感情?!」と母親が動揺しても思春期真っ只中の息子さんの気持ちを抑えることも曲げることも出来ません。ましてや反対でもしようものなら逆に火に油を注ぐようなもの。だいたいは一時の感情の表出として間もなく沈静化することでしょう。
でなければ、数少ない例ではありますが、マクロン夫妻や私夫婦(当時15歳だった担任した生徒と31歳で出会い、2人に子どもを連れて再婚して今に至っています)のように、息子さんが純愛を貫くのも、また彼の人生の選択に任せましょう。
(文:大関洋子)

2017/05/18(木)
第118回 【夫婦編】「夫に騙されてた?」
【Q】
結婚して8年。5歳の息子がいます。夫も私も会社勤めなので、育児休業開けから子どもは保育園に預けています。夫は優しい人で、出産は立ち会い出産、子育てもそれなりに手伝ってはくれます。保育園の送り迎えや子どものお風呂も嫌がらずにしてくれますし、たまには子どもの食事を作ってくれることもあります。そんな夫をイクメンパパなんて思っていたんです、紙おむつのCMを見るまでは…。
CMは「子育てって長い、トンネルみたい」って始まるんです。「ほんと、ほんと」って見ていたら、「肩や腰が悲鳴を上げる〜♪」「私の時間は、全部君の時間〜♪」なんて続くんです。「…他のママが立派に見えて、もっといいママでいたいのに」なんだこの歌詞は!ママはどんどん追い込まれていっちゃって…。
そうだ、あのころは辛かった。トイレに行くのも大変、まともに食事をしたこともなかった。今だって…。そう思い出したら、夫はそんな苦労していないことに気づいちゃって…。結局、私は夫の優しいふりに騙されてた?夫はイクメンなんかじゃなくて、やっぱり私のワンオペだったんだ。そう思ったら、夫の行動のすべてがふりでしかないように感じて、腹が立ってきました。

【A】
「ワンオペ育児」。母親たちの間でそんな言葉が広まったのは昨年の暮れごろのこと。牛丼店などで従業員の一人がすべての業務を切り盛りすることを「ワンオペレーション」と言いますが、それが元になり使われ出した言葉です。育児や家事を一人で担い、破綻寸前の状況を指す言葉で、Twitterやブログで「ワンオペ育児、私のことだ!」と綴る人が増えました。
あなたは「夫の優しいふりに騙された?」と嘆いていますが、ちょっと古い調査ですが、2011年総務省の社会生活基本調査に家事関連の項目で、女性が家事育児に費やす1日の平均時間は3時間35分であるのに対し、男性はわずか42分となっています。これから見ても世の男性は騙すつもりではなく、これが実態のようです。
あなたは「夫は優しいふり、夫の行動のすべてがふりでしかないよう感じて」腹を立てていますが、私は「ふり」でもしてくれる方が「まだまし」とでも思わざるを得ない、という現状に腹が立ちます。
紙おむつのCMは「ママ達、大変でしょうが、紙おむつの助けを借りて、このワンオペ育児を乗り越えましょうね。子どもはこんなにも可愛いいから」と励ましています。ドラマ形式になっていて、けっこう長いですが、赤ちゃんとママの映像がほとんどで、パパの姿はほんの一瞬、映ったことも気づかない程度しか映りません。
4年前、2013年の厚生労働省の「夫の休日の家事に費やす時間と第2子以降の出生の割合」という興味深い調査があります。これによると、夫の休日の家事育児の時間が0(ゼロ)の場合は、第2子出産も0、2時間以内は29%、2〜4時間だと56.1%、4〜6時間に増えると72.1%の人が出生しています。さらに6時間以上になると80%の夫婦が第2子を設けています。
あなたのお宅も息子さんが5歳になるのに第2子がいないことから考えると、休日もあまり育児に時間を費やしていないようですね。息子さんがやっと5歳になり、少し育児に余裕が出て、夫の協力のなさに気づき、夫の行動すべてに不信感を抱いた今こそ夫婦の大切なとき。この気持ち、私に相談したこの思いを夫に語り、何とか共有してほしいのです。ここで、このまま放置すると第2子の出生はおろか、夫婦の共同生活さえも危うくなるかもしれません。
紙おむつのCMの話なら、あまりギスギスせずに話せませんか?
一日も早い夫婦の語り合いの時間を持つことをお勧めします。
(文:大関洋子)

2017/04/27(木)
第117回 【恋愛編】「この変わり様は何?」
【Q】
つい先日、私の友達2人と友達の彼氏2人とお花見に行ったんです。けっこう盛り上がったんですよ。2人の彼氏とは初対面だけれど、2人とも優しいし、気は利くし…。私の彼は、ちょっと見劣りする感じかな。でも、まあ、今までけっこう仲良くやってるし、私には合ってるのかな、なんて考えていたら、彼が「ねえ、ちょっとビールが足りなくなりそうと思わない?」と他の人に分からないように私に言うんですよ。私はそんな風に感じてなかったので、生返事をしていると、彼が突然「ちょっとビール足りなさそうだから買ってきてよ。あそこの売店に売ってるから」と大声で私に言いました。「足りてますよね?」と私が他の4人に言うと「大丈夫!」とみんなが言っているのに、さらに彼が私に「おまえのそういう態度が、みんなを遠慮させてるんだよ。早く行ってきて!」と言いました。とりあえず買いに行きましたけど、足りなかったのは私の彼だけ。しかもそんな言い方されたことなかったのでびっくりしました。正直、この変わり様は何?って感じです。そろそろ結婚を考えていたのですが、急に不安になってきました。

【A】
あなたの彼は「男らしい」ってこういうことだと勘違いしているようですね。あなたの女友達2人とその彼氏2人の前で「男らしい」自分をアピールしたんです。「ほら、俺って彼女をこんなに自分の言う通りにできるんだぞ!」と見せつけて。

友達の彼氏は2人とも優しくて気が利く、それを見てあなたは自分の彼は「見劣りがする」って感じたんですよね。それを察したあなたの彼は、何とか挽回しようとして取った行動が、「おまえのそういう態度がみんなを遠慮させてる。早くビールを買ってきて!」という言葉になって彼らより気が利く自分と、自分の彼女を言葉一つで自由に動かせるぞという対応で、彼なりの「男らしさ」だったんでしょう。こんな様子では、彼は「男らしさ」だけでなく当然「女らしさ」も誤解していて、「女は気が利いて当たり前」「男の指図には黙って従って当たり前」という性役割を頑なに守ろうとしている人間だと思われます。

これまでの歴史の中で作られた社会的・文化的な性差をジェンダーと言います。「女は優しく、可愛く」「男は強く、たくましく」、「女の子にはピンクの服」「男の子には青い服」、「男は仕事」「女は家事、育児」といった考え方のことです。この「らしさは、生まれつき備わっているものではなく、育てられた環境や学習によって、あとから身につけるものです。

そういう中で、「らしさの性」のような従来の役割や不合理な性差別をなくそうというジェンダーフリーの考え方が広がり始めています。1993年にそれまで女子のみが必修とされてきた中学校での家庭科が男女共修に、翌年には高校でも共修となったり、男性作家の作品に偏っていた国語の教科書の教材も見直しが行われたりしました。けれども、まだまだ出席簿の順が男が先、女が後であったり、校長は圧倒的に男が多かったりするのが現状ですし、家では「お父さんが仕事で稼いでくれるから食べられる」という日常生活の中では、あなたの彼のように、あなたの友達の前で威張って見せることが「男らしくてかっこいい」と勘違いしている男性が多く、今年のジェンダーギャップ順位は、世界144カ国中111位だそうです。

結婚を考えていたようですが、この際考え直してはいかがでしょうか?この時感じた「不安」はとても正しいと思います。「おまえの態度」という「おまえ」という呼び方も男が上から目線で呼ぶ時にしか使わない言葉です。赤の他人に「おまえ」と言われたら喧嘩になるのに「おまえは一生俺のもの」と壁ドンされて喜んでいる時代は終わりにしたいものです。
(文:大関洋子)