大宮区役所の近くに、飲み助にはたまらないお店があります。店の名は多雲坊。「たんぼ」と読みます。上尾で最初の店を始めたとき、田んぼが見えたためなのだとか。大通りには面していませんが、大宮で28年続く密かな有名店です。
店は昔の民家を思い出させます。それも、営業用スペースを民家風に改造したのではなく、本当に古い民家を使って営業しているといいます。目をひくのは襖の絵。これは店主の大崎次郎さんが毎年描き換えます。畳の広間に古めかしいテーブルが多数置かれ、独特の雰囲気を醸し出しています。
お店には50種類もの日本酒があります。それも大崎さんが日本全国の蔵を回って吟味した銘酒ばかり。愛媛の「秘蔵しずく酒」(7年古酒)、飛騨地区限定品の「蔵元の隠し酒」、糸魚川の「雪鶴」などが味わえます。メニューにないお酒も多数ありそうです。大崎さんは「お客さんがわざわざ来てくれているのですから、この店でなければ飲めないお酒を出したいですね」と言います。また、大崎さんは「自分の好みでお酒を集めたくないから」と自分ではお酒を飲みません。その代わり、好み通りのお酒を選んでくれますので、ぜひお話ししてみましょう。
食事メニューも充実しています。この店に来なければ食べられないものが並びます。「半年漬け込んだ豆腐の味噌漬け」(800円)はその一つです。お酒がおいしく飲めるメニューばかりなのは驚きます。
この店ではお酒にしても食事にしてもお品書きは毎日大崎さんが和紙に書き込みます。古文書のようなお品書きに最初はびっくりします。その日の日付入りですから使い回しはできません。「仕入れが毎日違うのですからお品書きが変わるのは当然」と言います。その日その日に最高のものが仕入れられ、お客さんのテーブルに届けられます。
ここはお酒を楽しむ人が集う大人の世界です。秋冬の夜長にお酒をじっくり味わいたい方におすすめです。